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01 2015

グラント・モリソン&フランク・クワイトリー/オールスター:スーパーマン

オールスタースーパーマン表紙

『記録中:
 クリプトンに生まれしカル-エルたるこの私は、
 これが最後の記述である事をここに宣言する…
 これはスーパーマンの遺書だ。もう時間がない。
 最後の刻が迫っているのに、成し遂げた事の方が遥かに少ないのが現状だ。
 タイムトラベラーのサムソンによれば、
 私は死ぬまでに十二の伝説的偉業を達成するらしい。
 答えることのできない問いに答え、かのソラリスを打ち負かし…生命を創生する。
 各々の試練が私を死へと近づけていくのだ。達成した試練は7つになるはずだ。
 時間がない』


C A P E D W O N D E R S T U N S W O R L D

全てのスーパーヒーローの父であるスーパーマン。

1938年の登場以来、常に時代の先頭にあった稀代の英雄を、現代のコミックスシーンをリードする鬼才グラント・モリソンが全身全霊を込めて、新たに紡いだ話題作。

かつてスーパーマンの紙面を飾った様々な要素を余すところなく盛り込み、それでいて、前例のない斬新な視点でかの鋼鉄の男の本質を見事なまでに喝破する。

この物語は、まさしく現代の神話であり、アメリカンコミックスの、ヒーローコミックスの一つの極致でもある。

DCコミックスが21世紀に問う「オールスター」ブランドの最高傑作にして、スーパーマン史上に残る名作『オールスター:スーパーマン』。待望の邦訳登場!


◆収録作品

2006年01月:All-Star Superman #1
2006年02月:All-Star Superman #2
2006年05月:All-Star Superman #3
2006年07月:All-Star Superman #4
2006年09月:All-Star Superman #5
2007年03月:All-Star Superman #6
2007年06月:All-Star Superman #7
2007年08月:All-Star Superman #8
2007年12月:All-Star Superman #9
2008年05月:All-Star Superman #10
2008年07月:All-Star Superman #11
2008年10月:All-Star Superman #12


◆「鋼鉄の男」が死を目前にしたら、彼は一体どうするだろう?
ロイスに自らの正体を告白するスーパーマン

本作、「オールスター:スーパーマン」は、2005年にDCコミックスが有名クリエイターと有名キャラクターを組み合わせて発足した新ブランド、「オールスター」の第2弾となる作品。
(第1弾は2012年に邦訳版が刊行されたフランク・ミラー&ジム・リーの「オールスター:バットマン&ロビン」
マーベルコミックスの「アルティメット」シリーズのように、この「オールスター」ブランドは新規読者の開拓を目指したものとなっており、世界観もそれまでの作品と異なる新たなDCユニバースが舞台。単体で楽しめるように作られているのが特徴です。

クリエイター達が独自に、担当したキャラクターの本質や新しい魅力を描いていくこの「オールスター」シリーズ。
鬼才グラント・モリソンが描く本作のスーパーマンは、奇をてらって既存のイメージを壊していくようなものではなく、様々なメディアで描かれてきた要素を拾い集めて違和感なく繋ぎあわせ、まさに「スーパーマンらしいスーパーマン」を見せる事に注力してくれています。

悪人顔
※奇をてらって既存のイメージをぶっ壊しにかかった例

その一方でスーパーマンの脇を固める厳選されたキャラクターたちには過去になかった味付けを盛り込みつつ、過去のスーパーマン作品に対するリスペクトやオマージュも込められたものとなっているのがまた素晴らしい。
(解説を見るとそのアイデアの元が分かってまた楽しい)
それでは本編のあらすじを軽く紹介。

◆YOU'LL BELIEVE A MAN CAN BE SUPER!
人類初の有人太陽探査船を救ったスーパーマン。
だが、人々を救うために太陽の元に向かって飛行し続けた結果、スーパーマンは細胞の処理能力を越える量の放射線を浴びてしまい、細胞が死に始める事となってしまった。
それはつまり、彼の命がもう長くない……「鋼鉄の男」スーパーマンの死を意味する。
さらにこの出来事は全て彼の宿敵、レックス・ルーサーが裏で糸を引いていたのである。

自らの死が目前にまで迫っている事を知ったスーパーマンは、避けられない運命を受け入れ、自分がこの地球から消えてしまう前に、自らに課せられた試練を解決していく事を誓う。
まずは第1に、人間クラーク・ケントとして勤務していた新聞社デイリー・プラネットの同僚で、長年スーパーマンに夢中であった女性、ロイス・レーンに自らの正体を告白する。
しかしながら、突然「クラークとスーパーマンは同一人物」という事実を突きつけてもロイスは信じようとはしてくれない。
スーパーマンは大切な人であるロイスと最後のデートを楽しむのだが、結局最後まで「クラーク・ケントがスーパーマンである」という事実だけは信じてはもらえないのであった。

最後の逢瀬

その後、スーパーマンはクラークとして日常生活を送りつつ、自分に残された時間を使命の達成のためだけに費やし、全力全霊で立ち向かっていく。
田舎町スモールビルにケント夫妻と暮らしていた頃の思い出、様々なビランとの戦い、地球を第2のクリプトンにせんとする二人のクリプトン人との接触、自分がいなくなった世界を思い描くために、自ら新しい世界を創造するという偉業、そしてルーサーとの決着……
「善」の体現者であるスーパーマンが自己犠牲の末に消えた後、残された人類はどのように生きていくのだろうか?

◆感想
「アイズナー賞に輝いた最高傑作」という帯のアオリ文句は決して誇張ではない、間違いなくスーパーマン、いやさこれまで読んできたアメコミの中でも最高レベルの作品でした。
フランク・クワイトリーの緻密なアートもまた本作の雰囲気によくマッチしてます。随所で描かれるスーパーマンの優しげな表情が素晴らしいんだこれが。

モリソン作品らしく伝説や神話を下敷きにし、さらに少々小難しい言い回しやスケールの大きい表現が多用されるSF色の強い部分や独特な話運びのテンポもあってそこはややクセがあるのですが、かのモリソンバットマンに比べると読みやすい部類。あそこまでトリップはしてない。
スーパーマンが新たな世界を創造するという下りはホント神話感あります。彼が創る「アースQ」とされる世界がどんなものなのかは本編で。ビックリしたと同時に思わずにやけてしまった。

それと本作でのスーパーマンの宿敵、レックス・ルーサーとスーパーマンの関係性も好き。
ルーサーは科学者としては世間的に名を成している人物でありながら、スーパーマンという完璧な存在が出現し、そのコンプレックスに押しつぶされて「スーパーマン抹殺」に取り憑かれてしまった男。
作中での「スーパーマンさえいなければ私がこの星を任されていたはずなのに!」というエゴイストな発言に、本作でのルーサーのキャラクター性が集約されていると思う。

その一方でわざわざ刑務所までインタビューにやってきたクラーク・ケントとは普通に親しげに会話しており、危うくクラークがドジを踏んで怪我しそうになった時は(もちろんスーパーマンの演技ではあるのだけれど)口こそ悪いが心配する声をかけたり身を挺して守ったりと人間らしい一面を見せています。
『フォーエバー・イービル』に次いでルーサーの魅力的なビランっぷりが堪能できてほんと良い。

喜んで電気椅子に座るよ
スーパーマンは憎き宿敵だが新聞記者のクラーク・ケントとは割と親しいルーサー
もちろんルーサーは彼の正体を知らない

過去作のオマージュが大量に込められているとは前述しましたし、確かにネタに気付いてニヤニヤするのも本作の楽しみの一つなんだけれども、それ以上にシンプルにシナリオが練りに練りこまれており、それが感動の展開へと繋がっていくので細かい事を気にしなくても充分面白い作品です。
もうなんかこれ以上内容に触れるのは勿体無い気がしてきた!超おすすめ!読もう!
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