ツルゴアXXX

ARTICLE PAGE

04 2015

フランク・ミラー&ジョン・ロミータJr.他/デアデビル:マン・ウィズアウト・フィアー

デアデビルマンウィズアウトフィアー表紙

『無論、彼の旅路は凄惨だ。失敗と罪悪感と苦痛に満ちている。
 当然だ。マット・マードックの人生に、容易な道などないのだから。
 しかし艱難辛苦の一つ一つが、
 貧民窟の悪戯小僧を正義の戦士に変えたのだ。
 凄惨な旅路。そこを歩む彼も完全無欠ではいられない。
 師が示した聖戦士の教団に彼が加わる事はない。
 しかし自分にできる事を全力でやった結果、彼はヒーローと呼ばれる。
 そして死ぬまで横暴と戦い続けるのだ』


YOU SHOULDN'T HAVE CALLED ME THAT.

コミックス史上にその名を刻む稀代のクリエイター、フランク・ミラー。
その彼が、自らの出世作であるデアデビルのオリジンを再構築した注目作が、本作『デアデビル:マン・ウィズアウト・フィアー』である。

ミラーにとって、最後のデアデビルとなる本作は、コミックにおけるリアリティを極限まで追求し、デアデビルというキャラクターをさらなる高みへと導いてみせた。

デアデビルにとってはアルファであり、オメガである本作は、ミラーが辿り着いたヒーローコミックスの一つの頂点である。


◆収録作品

1993年10月:Daredevil: The Man Without Fear #1
1993年11月:Daredevil: The Man Without Fear #2
1993年12月:Daredevil: The Man Without Fear #3
1994年01月:Daredevil: The Man Without Fear #4
1994年02月:Daredevil: The Man Without Fear #5


◆デアデビル誕生
Netflixにて独占ストリーミング中の海外ドラマ『デアデビル』
マーベル・シネマティック・ユニバースにも属している作品ということで気になって視聴している方も多いのではないでしょうか。

2015y10m04d_074440181.jpg
現状シネマティック・ユニバースのヒーローは超人だらけなだけに
常人であるクライムファイター、デアデビルが新鮮に映る

かつて2003年にも実写映画になっていたデアデビルにもう一度注目が集まったことで、ドラマのストーリーの原案にもなったミニシリーズ『デアデビル:マン・ウィズアウト・フィアー』が邦訳刊行の運びになったのは凄く嬉しい。
デアデビルの邦訳ってめちゃくちゃ数が少ないのだ。

本作のライターは『バットマン:ダークナイト・リターンズ』『シンシティ』『ハードボイルド』、そして映画『ロボコップ2』の原案などを務めた事で有名な、ハードボイルド描写に定評のあるフランク・ミラー。
しかもデアデビルはミラーが一時期ペンシラーやライターを手がけて人気を大きく押し上げた、まさに氏の出世作ともいえるコミック。
『マン・ウィズアウト・フィアー』はミラーが2015年現在最後に執筆したデアデビルとなっています。
ミラー最後のデアデビルがオリジンのリメイクというのが締めくくりとしてはピッタリ。
それではあらすじをざっくりと紹介。

◆THE TALE IS THE ALPHA AND THE OMEGA
盲目の老人を救おうとして放射性物質を積んだトラックと交通事故に遭い、自らも盲目となってしまった少年、マット・マードック。
目が見えないという現実に打ちひしがれ、絶望に苛まれるマットだったが、そんな彼の前に謎の人物……生まれつき全盲だと語るスティックという男が現れる。
彼は盲目でも自由に、いやそれ以上に行動できるよう鋭敏に動ける訓練をマットに授けた。
加えて高い戦闘術までも指南され、高校生となった今のマットは弱虫のガリ勉とからかわれては衝動的に反撃するただの命知らずデアデビルではなくなっていた。

一方、息子を養っていくためにやむなくギャングと手を組み、普段は八百長を行ったり街に出てみかじめ料を取り立てる仕事をしている心優しいマットの父、プロボクサーのジャック・マードックは、ある日の試合で息子に誇り高い戦士としての姿を見せるためだけに、八百長を促したギャングに逆らって見事KOを勝ち取る。
だが、その後会場を出たジャックは出口で待ち受けていたギャングによって凄惨なリンチを受け、最後には銃で殺害されてしまうのだった。

モルグで父の亡骸を見つめ、氷のように冷たくなった肌に触れるマット。
だが、マットの腹の底で膨らみつつある塊はそれより遥かに冷たかった。

ギャングに報復するマット

父を殺したギャング達を一人一人追い詰め、見事復讐を果たしていくマット。
だが、その過程でマットは罪のない女性を巻き込み死亡させてしまう。
感情的になりすぎた結果招いた悲劇。マットは「人を殺してしまった」という罪の意識に強く苛まれ続けることになっていく……

それから一年。
大学生となったマットはコロンビア大学の法学部に在籍、親友のフォギーと共に弁護士を目指し、法で悪と戦うために日々勉学に打ち込んでいた。
かつて自分が法を破り暴走した結果痛ましい悲劇が起こったあの出来事は、未だ秘めたるトラウマとして彼の心の中に残っているのだ。
そんなある日、マットは同級生の美しい女性、エレクトラと出会い、そのワイルドで向こう見ずで情熱的な性格に惹かれはじめていく。
互いに笑いつつ舞う、最高の遊び仲間。
幸せを享受するマット・マードック。
だが彼は知らなかった。エレクトラが強い暴力衝動を持つ邪悪な女性だという事を……

5人も殺害したエレクトラ

◆感想
傑作だこれ……!
少年時代の出来事がきっかけで暴力衝動を抑えこもうとしても、結局エレクトラとの出会いやその後に起こるある誘拐事件をきっかけに、自身の持つ本能や正義感に突き動かされて戦いの中に身を投じるデアデビルの姿が渋すぎる。
フランク・ミラーの作品はナレーションやモノローグがやたら多くて「小説かな?」って感じなんだけど、このセリフ回しがまた印象に残るものばかりでスラスラ頭に入るんだこれが。

『ニューヨーク。変わらぬその名に変わらぬ感情が湧く。
 そして甦る記憶。校庭であざ笑ういじめっ子。逃さないぞ、と街が吠える。
 逃げられないぞ、お前自身からは。いかにも、マットは帰ってきた』


デアデボー第4シリーズより

デアデビルといえばやっぱりこの悪魔のような外見のコスチュームが印象的なんだけど、本作ではこのコスチュームは本編ラストの見開きまで登場しません。
序盤から終盤まで本作のデアデビルは粗雑な被り物や馴染みの薄い即席の黒装束に身を包んだ姿で戦い、最後の最後にお馴染みのコスチュームを描くというのが実にナイスな演出だと思う。
でもスーツ姿や地味な黒装束で戦う姿もこれはこれでカッコいいな……

ちなみに上記のあらすじで「マットは罪のない女性を巻き込み死亡させてしまう」とは書きましたが、後のエピソードでこの女性はビランとなって再登場を果たしちゃったりしています。
アメコミはすぐ後付けで復活しちゃう~!まあ本作だけを読む分にはあんまり気にしなくていいけども。

あ、そういえばフランク・ミラーの『デアデビル:ボーン・アゲイン』通販限定で再販されるみたいっすよ(さも今思い出したかのように)。
【デアデビル:ボーン・アゲイン発売日:2015年12月15日(Fujisan.co.jp)】

ずっとプレ値がついてた邦訳だったけどこの機会にみんな読めばいいと思う。これも傑作だから!

悪魔デアデビル

関連記事

0 Comments

Leave a comment