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03 2015

ニック・スペンサー&ラモン・ロザーナ他/アントマン:セカンド・チャンスマン

セカンドチャンスマン表紙

『俺はスコット・ラング。通称アントマン。
 はいはい、皆まで言うなって。
 今度のアントマンもまたハズレだって、そう思ってんだろ。
 なってみりゃ悪くもないぜ。時と場合によるけどな。
 超人同士のパーティーにゃ“雷を操れる不死の神です”
 “ミュータントな上にアトランティスで王様やってます”
 みたいなのがウジャウジャいるわけよ。
 …で、俺はって?
 小さくなってアリとお喋りできます。
 補足するとアントマン系ヒーローはこれまでにも大勢いて、
 その大半が死ぬか闇堕ちするかしてる。イイトコなしだよな。
 盛ってるだろって?経験者は語る、だよ…』


I'M NOT GIVING UP I'M JUST STARTING OVER

投獄、離婚、そして死……。
数々の悲劇に見舞われてきた2代目アントマンことスコット・ラングは現在、無職。

全うな暮らしを送ろうと努力を重ねるものの、生来の飽きっぽい性格故にヒーロー仲間からさえも疎んじられる日々。
そんな彼の唯一の慰めは、娘であるキャシーの笑顔だけだった。

だがしかし、そんなささやかな幸せにさえ終焉の時はやってくる。
キャシーとの別れを前に、あらゆる困難から逃げ続けてきた男が下した決断とは……?

映画化で俄然、注目の“小さな巨人”アントマンの新たなる旅立ちをユーモアとペーソスを込めて描く話題作、早くも邦訳!


◆収録作品

2015年03月:Ant-Man Vol.2 #1
2015年04月:Ant-Man Vol.2 #2
2015年05月:Ant-Man Vol.2 #3
2015年06月:Ant-Man Vol.2 #4
2015年07月:Ant-Man Vol.2 #5


◆WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS
歴代アントマンはなぜか皆なにかしら問題を抱えている人物ばかり。
初代アントマン、ハンク・ピムは天才科学者であり、ピム粒子を発見して肉体の縮小能力を得た偉大な人物なんですが精神的に不安定な部分があり、一般人を危険に晒した咎でアベンジャーズを退団させられ、さらには自作のロボット、ウルトロンをアベンジャーズに襲わせてそれを自分が撃破するという自作自演でチームに復帰しようとするなど問題行動が目立つヒーローでした。

クリス・マッカーシーはアントマン・スーツを盗んでその能力を自分のために使おうとしたシールド隊員。
ただそのスーツの能力を使いこなす前にシールド本部を襲撃したテロ組織ハイドラの刺客に殺害されてしまいます。

3代目アントマンのエリック・オグレディはそんなクリスの友人で、殺された彼からアントマン・スーツを剥ぎとってその能力を私利私欲の為に使いまくった、とてもヒーローとは言いがたいシールド隊員。
改心してアベンジャーズに参加するようにはなったのですが、任務中に子供を守って死亡。

そして本書の主人公、2代目アントマンことスコット・ラング元窃盗犯で、家庭を持ってからも必要な物ができる度に他所に侵入して盗みを繰り返していたガチな犯罪者。
ですが心臓病を抱えていた娘キャシーのため、とある研究施設に監禁されていたソンドハイムという医師を救い出そうとアントマン・スーツを盗み出した事がきっかけで2代目アントマンを襲名。現在に至るというわけです。
ちなみに彼も死亡経験があり。なんか歴代アントマン死んでばっかだな!

で、本作『アントマン:セカンド・チャンスマン』はそんな主人公のスコット・ラングが40にして無職を続けてきた結果必死に就職活動するも世間の冷た~い風を受けまくるハメになるというなんかもう見ていて痛々しいお話になっています。
必死に人生をやり直そうとしているのは分かるのだけれども、面接にリクルートスーツではなく新調したコスチュームを着てきたり、トニー・スタークのコネにすがろうするも滾々と説教されてしまうなどで本当にもう……

ダメな父親だけど娘には慕われている
「どうかしているのは俺じゃなくて世間だぜ」と心の中で愚痴りまくるダメ人間なスコット
しかし子煩悩パパな一面もあるので娘キャシーには慕われている様子
……が、現在娘は離婚した元妻ペギーと生活中
キャシーと違いペギーは親権がないのにやたら娘に会いたがるスコットを鬱陶しく思っている

序盤は彼のダメダメっぷりをユーモラスに描きながら展開していくのですが、それでも何とか実力で銀行の融資を受けるところまで辿り着き、驚いたことにスコットは警備会社を立ち上げてしまいます。
同じく職にあぶれて裏稼業に戻ることを検討していた、B級ビランなグリズリーという男を従業員として採用。
この会社が軌道に乗りさえすれば、娘や元妻にも胸を張れる全うな人生を送れるぞ!

トニーに訴えられる!?
「情けは人のためならずか…誰かが誰かにセカンドチャンスを与え続けないとな。
 これでカルマも赤丸急上昇ってか?人を雇うなんて、何だか会社らしくなってきたなぁ…」

……と、ここまで見るとようやく負け組から脱出な感じに思えるのですが、やはりそんなに人生うまく行くはずもなく、この後スコットは大きな選択を迫られる事件に巻き込まれる事になってしまいます。
そこは是非本編で。

◆感想
めっちゃくちゃ面白かった!!
ダメ中年の就活&再出発ストーリーという痛々しくていたたまれない内容なのに、ユーモアたっぷりなシナリオのお陰でテンポよく、面白おかしく読み進められる作品でした。
身体を縮小してオモチャの家に住み込み、絞って出てこなくなった歯磨き粉をチューブの中に入り込んでまで使用する生活をしている惨めな主人公。
いくらスーパーヒーローやスーパービランとはいっても、仕事しなければ生活できないのだ……

スコットだけでなく、ビランの描写もまた面白いです。
「熊の着ぐるみ被った元囚人をどこの誰が雇うってんだよ、ねぇだろ!」とグチっていたがスコットに雇われてからは彼を「ボス」と呼んで付き従うようになったビラン、グリズリー。
子供の遊び相手になるバイトで食いつないでいたビラン、マシン・スミス。
かつては暗黒街の顔役フッドの元でアベンジャーズと戦ったりもしていたが、今現在は女房に嫌味を言われながら小さな犯罪をこなして「…昔に戻りたい」とこぼす悲しいビラン、クロスファイヤー。
こんな感じで色んな中年男たちの悲哀が描かれ続けているので、一応スーパーヒーロー物なのにやたら親近感が湧いてしょうがない。
ややもすると高潔なヒーローが主役な作品よりも感情移入しやすいかもしれない。

しかしストーリーの終盤はしっかりスーパーヒーロー物らしいバトルシーンや感動的なシーンがありますよ!
主人公のスコットは本当にロクデナシだけど、そんな彼が本作のラストで娘の事を本気で考えて取った選択がもうね……
とにかくお勧めの一冊。事前知識もほぼ不要なのでこれは多くの人に読まれてほしい。

勝手に宿敵扱いされて不快になるタスクマスター
勝手にスコットに宿敵扱いされてちょっとイラッとするタスクマスター

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