ツルゴアXXX

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11 2011

アラン・ムーア&ブライアン・ボランド他/バットマン:キリングジョーク アラン・ムーア DCユニバース・ストーリーズ

表紙
"コミックス70年の歴史に燦然とその名を刻むアラン・ムーア。
 その奥深き創作の世界を堪能していただこう"

アラン・ムーアは、1953年11月18日、イギリスはノーザンプトンで生を受けた。家の外にトイレがある、典型的な労働者階級の家庭だったという。コミック漬けの少年時代を送った彼は、やがてアンダーグラウンド系のコミックファンジンに参加。20歳で結婚した彼は、配管工として働きながら、地元紙にコミックスを連載するなどの作家活動を続けていた(当時は作画も兼任していた)。そして、友人のスティーブ・ムーア(血縁関係なし)の紹介で、マーヴルコミックスのイギリス支社であるマーヴルUKに職を得た彼は、そこでプロの仕事を学んだ。

1982年、イギリス独自のコミック誌『ウォリアー』の創刊に参加した彼は、初期の代表作となる『マーベルマン』『V・フォー・ベンデッタ』を発表。権威あるイーグル・アワードを、1982年、1983年と連続で受賞し、その名はアメリカでも知られるようになった。そして1983年、DCコミックスの編集者だったレン・ウェインにスカウトされ、1984年1月『サーガ・オブ・スワンプシング』#20で全米デビューを飾ったのである。『スワンプシング』の連載に加え、1986年には『ウォッチメン』、1988年には『キリング・ジョーク』と、コミック史に残る名作を発表、その名は不動のものとなったが、コミックスに年齢制限を設けようとするDCの方針に反発、1989年を最後にDCを離れてしまう。

その後、中小の出版社に活動の場を移した彼は、寡作ながらも自由な作家活動を展開、この時代の代表作『フロム・ヘル』は、ジョニー・デップ主演で映画化された。1999年、独自の出版社ワイルドストームを興していた人気アーティスト、ジム・リーに誘われた彼は、専属のブランド「アメリカズ・ベスト・コミックス」を創設。映画化もされた『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』を発表し、さらには、『トップ10』『プロメテア』『トム・ストロング』『トゥモロー・ストーリーズ』の4誌を同時連載するなど、意欲的な活動を展開。コミックスシーンのメインストリームにカムバックした。

現在も故郷ノーザンプトンで、妻と二人の娘に囲まれて暮らすムーアは、2003年の50歳の誕生日を期して引退を宣言。その後はマジシャンを目指すと言う。


◆収録作品

1984年02月:The Saga of Swamp Thing #21
1985年04月:Detective Comics #549
1985年05月:Detective Comics #550
1985年05月:Green Lantern Vol.2 #188
1985年05月:Vigilante #17
1985年06月:Vigilante #18
1985年07月:Superman Annual #11
1988年03月:Batman: The Killing Joke


◆アラン・ムーア傑作選
『V・フォー・ベンデッタ』『スワンプシング』『ウォッチメン』とコミック史に残る名作を数多く発表し、
その名を不動のものとしたカリスマライター、アラン・ムーア。

JIVEから発行された本書はムーアが担当したDCコミックの短編を6作品収録したものとなっています。
バットマンやスーパーマンなどの有名ヒーローの作品、
ホラーであるスワンプシング、
ギャグ短編であるグリーンランタンコーズやハードボイルドなグリーンアロー、ビジランテ。

軽めの内容や重めの内容までバランス良く揃い、様々なアメコミ作品を本書一冊で楽しむことが出来ます。

…が、現在この本は絶版。
下手にネットで買おうとしても現在プレミア価格が付けられており、かなり足元を見られます。
一部作品は現在発行されている本に再収録されていたりするのですが…

◆バットマン:キリングジョーク
ジョーカーのオリジンが語られる名作短編。
作品のレビュー自体は過去に行ったのでそちらで。
【バットマン:キリングジョーク完全版】

本書収録のキリングジョークと同一の内容です。
翻訳もおんなじ。
ですが最大の違いが一つ。

キリング_convert_20110411171056

それは彩色の違い。
完全版では全体的に落ち着いた彩色がなされていたのですが
本書では黄色などの色をふんだんに用いたけばけばしい彩色となっています。
ジョーカーの狂気にまみれた回想を見せられている・・・といった印象が強くなっている気もします。

ジョーカー_convert_20110411172635
このサイケな色使い!

彩色が異なるだけでも作品から受ける印象が大きく変わるのは面白いです。
個人的にはやっぱり彩色が落ち着いていて読みやすい完全版派ですけど。

◆スワンプシング THE ANATOMY LESSON
スワンプシング_convert_20110411173531

ある老人の圧力により仮釈放された科学者、Dr.ジェイソン・ウッドルーは、
射殺された元人間、アレック・ホランドが姿を変えた『スワンプシング』の研究を任される事となった。
そして研究の末、細胞による記憶の伝達がなされていることが分かり、
スワンプシングはアレック・ホランドの意識が憑依した植物であることを発見する。
しかし、老人には研究の成果が理解されず、いとも簡単にクビにされる。
そしてウッドルーが取った行動は…

当時人気が低迷していたスワンプシング。
しかし原作者をムーアに起用し、彼の手で徹底的に再構築された事で、
人気作品となって蘇った作品です。
ホラーとSFが絶妙に入り混じり、不気味な雰囲気を漂わせています。

◆スーパーマン FOR THE MAN WHO HAS EVERYTHING…
スーパーマンが異星人モンガルの罠によって寄生植物に取り付かれ、
自分が望む理想の世界に閉じ込められてしまうストーリー。
本作は現在、『スーパーマン:ザ・ラスト・エピソード』に再録されています。
詳細なレビューもそちらで。

【スーパーマン:ザ・ラスト・エピソード】

スーパーマン_convert_20110411175607

こちらは再録版と違いは見られないです。
せいぜい色調が若干違うかな?といった程度ですか。
印刷の差が出ただけな気もしますが。

◆グリーンアロー NIGHT OLYMPICS
グリーンアロー_convert_20110411181118

町に現れる犯罪者を捕らえるクライムファイターとしての活動を続けていたグリーンアローとブラックキャナリー。
しかしここ最近は恐れをなしてろくに抵抗もしない犯罪者が増え始め、
二人は歯ごたえのなさを感じていた。
しかし、その油断をつかれ危険な犯罪者の襲撃を読むことが出来なかった。
ブラックキャナリーが弓矢で攻撃を受け負傷。
グリーンアローは急いで相手を追いかけるのであった。

さして長くない14ページ程度の短編ですが、
『一応』グリーンアローは子供向けヒーローでありながら、
恋人のブラックキャナリーとのラブシーンや正義のヒーローらしからぬボヤきを繰り返すためなかなか異彩を放っているキャラクターではあります。
グリーンアロー主役の邦訳は貴重なんでもっと色々読んでみたいものです。

◆グリーンランタンコーズ MOGO DOESN'T SOCIALIZE
メンバーの中には~_convert_20110411182807

グリーンランタンのメンバー、アリシア(右)がトマー・レとメンバーの事で雑談している所から始まる作品。
グリーンランタンは3600人ものメンバーで構成されており、
その中には天然痘ウィルス抽象数理数列という信じられないような人材(?)も所属しています。
その中でも面白い話があるというトマー・レは『人付き合いの苦手な』モゴというメンバーのエピソードを語ります。

ボルプンガ_convert_20110411182837

"不屈のボルプンガ"と呼ばれるこの男は、
己の名を銀河に轟かせる為に『宇宙最大の脅威にして謎の存在』とまで呼ばれたモゴのいる惑星に降り立ち、
決闘を申し込もうとした。

しかし、どこを探してもモゴなる人物は現れない。
そもそもモゴがどのような姿をしているのか知らないため探索は決して楽ではなかった。
数ヶ月、数年探索を続けても見つからないモゴ…

そしてある晩、ボルプンガはモゴの正体に気づくという話です。

ちょっとネタバレ臭いかな?
でも傑作短編なんで是非読んで欲しい作品です。
現在グリーンランタンの邦訳は『グリーンランタン:リバース』しかない状況ですが、
こんな感じで様々なメンバーが登場する話もいろいろ読みたいものですね。

◆ビジランテ Father's day
元検事のヒーロー、ビジランテ。
ある犯罪組織のボスを検挙した報復にアパートを爆破され、
妻と二人の子を失った彼は復讐鬼と化し、犯罪と戦い続けるビジランテとなったのだった。

本作品はある一家、娘と妻を虐待する父親の手から二人を救うためにビジランテが動くという話。
妻は娘のジェーンを救うために外に逃がした結果、命を奪われてしまう。
ジェーンはその途中で二人の娼婦、フィーバーとルイーズに出会い、一時的に匿ってもらえる事に。

冒頭_convert_20110411185718

ビジランテはジェーンを匿ったフィーバーを始めは誘拐と勘違いして捉えるが、
話を聞いて誤解であった事を知り、一緒に行動する事になる。
しかし、その後ルイーズが虐待父の襲撃を受け殺されてしまい、ジェーンも連れ去られてしまう。

"あの男を殺せば皆幸せになれる…"
そう信じて二人は虐待父の後を追いかけるのであった。

ラストは色々考えさせられる終わり方となっています。
ビジランテの邦訳も今の所これしかなさそうですね。
DC版パニッシャーといった設定の主人公ですが、
向こうと比べるともう少し人間味があるキャラとなっています。

なめられてる?_convert_20110411190458
なめられてる?

捜査するにも話の聞きだし方がヘタクソだったり、
油断した隙にバイクを盗まれたり、
フィーバーの車に置いていかれそうになったりと過激な自警活動をしている割に
市民にナメられてる感があって少しクスリときます。

◆感想
今回から本をスキャンして作成してみました。
購入4年目にしてプリンターにスキャン機能が付属していた事に気づきました。

こんな感じにバラエティに富んだ傑作短編が読める本書。
巻末にはキャラ紹介や解説も付属しています。
アメコミの邦訳はどうにも対象となるヒーローが片寄りがちなんで、
もっと様々なヒーローの作品を訳してくれるのを切に願います。

需要を見込んでの邦訳が多いからああなりがちなんでしょうけども…
まだまだニワカなんでアメコミ映画の便乗だけでなく、思い切った邦訳チョイスも行なってほしい今日この頃。
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