ツルゴアXXX

ARTICLE PAGE

28 2014

狼たちの午後

狼たちの午後画像狼たちの午後
【原題】Dog Day Afternoon 1975年【米】


1972年8月22日。
この日の2時57分、ブルックリン三番街のチェイス・マンハッタン銀行支店に三人の強盗が押し入った。だが三人の内の一人、ロビーが土壇場でおじげづいてしまい、なんと仲間を抜けてしまう。
しかし、残った二人、ソニーとサルにとってそれ以上に予想外だったのは、銀行の収入金が既に本社に送られた後だったことだ。
残された1100ドルの金を前に途方に暮れるソニーの元に突然、警察から電話が入る。『銀行は完全に包囲されているから、武器を捨てて出てこい』というのだ。事態は急変した。警官とFBI捜査官250人を超す大包囲網の中で、追い詰められた平凡な二人の男は牙を剥き、銀行員9人を人質にして立てこもりを決める。
詰めかけるヤジ馬、報道陣の中でモレッティ刑事の必死の説得が行われるが、時間は無駄に流れていく。ソニー達の説得に昇進をかけるモレッティの心をよそに、すべて二人の言いなりになければならない警察側とTV報道のインタビューに応える狂人側という状態で、次第にソニーとサルは群衆たちから英雄視され始めた。周りがどっぷり夕闇に浸かった頃、銀行内では犯人と人質達との間には、奇妙な連帯感のようなものが芽ばえ始め……

「オリエント急行殺人事件」の監督シドニー・ルメットが制作した、実際に1972年8月22日にニューヨークのブルックリン区で発生した銀行強盗事件を元にした犯罪映画。

【実際のニュース映像】

オープニング以外にBGMは用意されておらず、実話が下敷きになっている犯罪映画というのもあって一見すると重そうな映画に見えますが、少なくとも前半のうちはユーモラス。
主人公のソニーは元銀行員だった知識を活かし、グダグダしつつも見事銀行を占拠した!……までは良かったんですが、前述したとおり銀行に残った金はたったの1100ドルぽっち。
逃走を図ろうとしたら既に警察が包囲済みという体たらく。
無計画な銀行強盗は失敗に終わり、逃げることもできず立てこもる羽目になるのですがここからが面白い。

ソニーはあくまで金が目当てで人質を殺す気なんてこれっぽっちもない。というかそもそも殺せない性格の人間です。
銀行員も自分や周囲の人間を守ることに必死で、そもそも銀行のお金を守ろうと言う気はありません。まあ状況が状況だし他人の金だから当然ですね。
この極限状況の中、ソニーに殺す意思が無い事がわかり、会話する中で多少なりとも人となりを知った事により、銀行員たちは彼らに対して妙にフレンドリーに接し始めるようになっちゃうんです。
『ストックホルム症候群』というヤツですね。

警察に取り囲まれたソニーが挑発するように「アッティカ!アッティカ!」と叫ぶ下りは名シーン。
差別主義者の白人所員達が黒人の囚人を不当に弾圧し、その結果起きた暴動事件『アッティカ刑務所暴動』を皮肉っているのですが、このソニーの声に応えるようにヤジ馬たちも盛り上がる盛り上がる。
テレビで中継された結果ソニーを応援する者も増え、単なる銀行強盗でありながらヒーローのような扱いに。

しかし後半、説得役がモレッティ刑事からFBIのシェルドン捜査官に代わってからは雰囲気がガラッとシリアスに。
当時のアメリカの社会問題を、娯楽的要素を交えながらバランス良く盛り込んでいるのが堪らない脚本です。
そしてなんとも虚しいラストが印象的な映画でした。
この映画、ソニー役のアル・パチーノを筆頭に多くの場面が役者たちのアドリブで構成されているのだとか。あの熱演の数々がその場その場のアドリブって凄まじい。

ちなみに映画の途中でソニーが大金を得ようとした理由が判明するわけなんですが、現実のソニーはこの映画化のおかげで収益の一部を得て目的を果たすことができたという後日談が。よかったなぁ。
※『SmaSTATION!!』 2011年4月30日「コレも実話!ウソのような実話映画を大特集!」より。

関連記事

0 Comments

Leave a comment