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08 2014

ノーカントリー

ノーカントリー予告編ノーカントリー
【原題】No Country for Old Men
2007年【米】


舞台は1980年のアメリカ合衆国テキサス州西部。凶悪化する犯罪を憂う保安官エド・トム・ベルの語りを背景に、脱走した殺し屋アントン・シガーが殺人・強盗を繰り返すシーンから物語は始まる。

一方その頃、銃を持ってプロングホーンを撃ちに行ったベトナム帰還兵のルウェリン・モスは、偶然にも殺人現場に遭遇する。状況からすると麻薬取引がスムーズに進まず、途中で銃撃戦に発展したようだ。死体の転がる中を歩くモスは、麻薬を積んだトラックの運転席で息も絶え絶えになっているメキシコ人を発見する。いろいろと質問するモスだが、相手の言う言葉は「アグア」(スペイン語で「水」の意)のみ。
その後、モスは事件現場から少し歩いたところにあった男の死体から札束の詰まったブリーフケースを発見し、自宅に持ち帰る。
しかしその夜、運転席で苦しんでいた男のことが気にかかったモスは水を持って現場に戻るが、不運にも戻って来たギャング達に発見されてしまう。命からがら脱出したものの現場に置き去りにした車から身元が割れ、モスは金の発見を請け負ったシガーに追われる身となるのだった……

***

コーマック・マッカーシーの犯罪小説『血と暴力の国(No Country for Old Men)』を原作としたバイオレンス・ドラマであり、第80回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞を受賞した作品。

正直何も考えずに見ると、この映画は「中年男が殺し屋にひたすら付け狙われ続けるサイコスリラー」でしかありません。
しかもBGMという物が皆無で静かに淡々とストーリーが展開していき、様々な人物がシガーに理不尽に殺されていく内容なため、緊張感こそ感じ取れるものの単純に「面白い!」とは言いがたいでしょう。
あまりにあっさりとしたラストも初見時はポカンとさせられるかもしれない。

が、この作品が置いている視点はモスとシガーの追いかけっこなどではなく、「世界が腐敗しつつある」という悲観的で抽象的な部分。
老保安官ベルは釣り合いがとれて見えない善と悪の戦いを懐疑的な目で見ており、無力さを痛感している男。
この作品で強烈な印象を残す殺し屋シガーは、現実に起こりえる理不尽な死というものを目に見える形にした象徴的な存在なのです。
「もはや老人の住む国にあらず(No Country for Old Men)」という原題が表すとおり、かつてのアメリカと今では時代が違う。
「時代」に取り残された老人ベルがシガーという異質な存在を知って諦めの境地に達しながらも、かすかな希望の光を捉えてそれに向かっていくまでを描いた作品……だと思います。
最期までシガーに立ち向かったモスや、老保安官ベルなどの登場人物を見ていると、字面や語呂の良さを優先した「ノーカントリー」って邦題は適切じゃあないかも。

各登場人物の背景も意図的にぼかされており、視聴者に様々な解釈を委ねる作り。何度か見返してシーンやセリフの意図を自分なりに掴んでいく必要がある、人を選ぶ一作です。
いやしかし滅茶苦茶レビューが書きづらい映画だ!知ったふうな事を書いてますがこの映画ホントに小難しいし!

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