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01 2015

トム・デファルコ&オラシオ・ドミンゲス他/アントマン:シーズンワン

アントマンシーズンワン表紙

「僕の精神には問題がある。誰だってそうだろう?
 子供時代、父さんが母さんを家から叩きだした。
 それが父さんの“家族の絆”だ。以後、父親には失望しっぱなし。
 妻の死の復讐に乗り出しても精神は不安定のまま。
 なんの解決にもならなかった。
 スターは僕の研究を盗み…僕を強制的に縮小したのに。
 そうさ。わかってる。僕は何ひとつ解決できない…
 頭のネジがゆるんだ男だ」


“アベンジャーズ”の創立メンバーにして、最小ヒーロー“アントマン”
その誕生秘話に迫る!

妻を殺害され、パラノイアに悩まされている科学者ハンク・ピム――。
この男こそが、アベンジャーズのオリジナルメンバーであり、アントマンとして活躍する以前のハンクの姿である……。
彼は一体どのようにして、苦難を乗り越えアントマンという地球上最も強いヒーローの一人として立ち上がったのだろうか?
ここに今まで語られることのなかった、最小ヒーローの誕生秘話が明らかに!


◆収録作品

2010年08月:Avengers Academy #1
2012年07月:Ant-Man: Season One


◆I'd rather be crazy than ant-sized
全米で7月に公開予定の映画『アントマン』に便乗して、小プロからなんとアントマンが主役の邦訳本が刊行!
自ら開発した「ピム粒子」の力で自由に身体のサイズを変えられる上、虫たちを操ることができるという一風変わった能力を持つヒーロー『アントマン』
最近は「あのヒーローの単独誌が邦訳されるの!?」って事が増えて嬉しい限り。

アントマンの邦訳タイトルとしてチョイスされたのは、近年のマーベル映画ラッシュで増えた新規ファン向けの「シーズンワン」シリーズの一つ。
シーズンワンシリーズは向こうでは11冊ほど刊行されており、日本でも少し前にアベンジャーズのシーズンワンが邦訳済です。
『Season One Digital Comics - Marvel Comics』

本書『アントマン:シーズンワン』はアベンジャーズ創立メンバーにして“最小ヒーロー”であるアントマンのオリジン(誕生秘話)を現代風にリメイクした一作。
そのため、ピム初登場の『Tales to Astonish #27』の描写とは異なり、本作独自のオリジナル設定もいくつか盛り込まれております。
死んだ妻のマリアも科学者だった、ピムの両親は離婚済、オリジンにピムの父親ウォーレン・ピムが関わるなど細かい違いは多いのですが、本作独自の設定で一番目を惹くのは、ピムが「アントマンになる以前から精神的に問題を抱えている」という部分でしょうか。
『アントマン:シーズンワン』ではこの一作にアントマンの歴史を凝縮するため、あえて最初からこの設定を付け加えている模様。

ハンガリーで妻のマリアがテロリストによる爆破事件に巻き込まれて死亡し、その光景を間近で目撃してしまったがためにPTSDにかかり、常に不安に取り憑かれるようになってしまったハンク・ピム。
半年たった今でもマリアの事を考えるばかりで、常にセラピーにかかりきりなのですが、頑固な父に無理やり外へと引っ張りだされ、科学企業エッグヘッド・イノベーションズ社で働くことに。
ですがその日の夜、かつてのマリアとの会話を思い出し、会社の社長エリアス・スターが彼女の研究成果を独占するために殺されたのではないかという考えに至ってしまいます。

そこでこっそりと会社のPCをハッキングして調査を進めつつ、物質を自在に縮小させる「ピム粒子」の研究を行うのですが、エリアスに先手を打たれ、逆にピム粒子の実験台にさせられてピムは小人になり、外に放り出される事に!

そして蜘蛛に襲われたり、アリの巣の中に入って命の危機に貧したりと、ヒーローコミックというよりは怪奇短編コミックチックな展開が目白押しに。
それでもなんとかこの極限状況を切り抜けて研究助手のビリーの元に向かい、ピムはマリアの発明を発展させて虫を操るヘルメットと身体保護スーツを作成した事で、スーパーヒーロー「アントマン」が誕生するのでした。

ピムは正気といえるのか
他人とのコミュニケーションがヘタな上にパラノイアなため、周囲からの信用が皆無なピム
読者の目から見ても本作のピムは思い込みが強すぎるんで見ていてヒヤヒヤする

ぶっちゃけ根拠が妄想に近い状態で妻の死の真相に近づこうと、エッグヘッド・イノベージョンズ社への復讐を決めて戦いに向かうアントマン。
コスチュームを着て戦う姿も作中では「狂人がコスプレして社員に襲いかかっている」という扱いなのがなんとも言えない。
味方が少ないこの状況で、アントマンは復讐を果たすことができるのか。
そして、妻マリアの死には本当にエッグヘッド・イノベージョンズ社の社長、エリアスが関わっているのか!?
そこら辺は是非本編で。

本書にはおまけとして、クロスオーバーイベント『シージ』以降のヒロイック・エイジ時代に刊行されたコミック『アベンジャーズ・アカデミー』の第1話が収録されております。
ノーマン・オズボーンが世界中から集めていた特殊能力持ちの若者たち。
しかしそのオズボーンが失脚し、アベンジャーズはその後始末に取り掛かっていた。
本作『アベンジャーズ・アカデミー』は、そんなオズボーンが集めた若者たちをヒーローが導くために作られた学園を舞台にしたシリーズです。
地味にヴィレッジブックスが刊行しているニューアベンジャーズシリーズとクロスオーバー作品の邦訳の補完にもなっているのでありがたい邦訳だったり。

スピードボールは講師として復帰

あの『シビル・ウォー』勃発のキッカケとなった「スタンフォード爆発事件」に関わっているヒーロー、スピードボールの現在の姿も本作で拝めます。
スピードボールはあの後罪悪感に苦しみ、犠牲となった市民と同じ数、612本の針が皮膚に刺さるコスチュームを身に纏い、その痛みをパワーに変える“ペナンス”に生まれ変わり、洗脳されてオズボーンの元で働いていたとか。

復讐の鬼ペナンス
『シビル・ウォー』をダークヒーロー誕生のオリジンにするというのは結構面白い

しかしアベンジャーズによって解放されて治療を受け、今は過去の悲惨な経験を通してこのアベンジャーズ・アカデミーで講師として働いているわけなんですね。
例によってこの1話以降の邦訳はなされないようですが、今回は『アベンジャーズ・シーズンワン』の時とは異なりその後の展開が解説書に記載されています。

◆感想
面白かった!
マーベル映画を一本見終わったかのような満足感のある内容でした。話のテンポもいいし、良くも悪くもメンタルが弱い主人公、ピムも人間臭い魅力にあふれていて堪らないキャラクターだと改めて思いました。
まあ今度公開される映画『アントマン』の主人公は2代目のスコット・ラングだけどね。
「ピム=クズ」という近年の極端すぎるイメージを払拭してくれる一冊にもなるはずです。やらかすことが多いのは事実だけど。
オススメ!!

ハチに追い回されるアントマンとビリー
マーベル映画っぽくちょこちょこユーモラスな場面もあります

◆翻訳者:光岡三ツ子氏による補足

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2 Comments

アウル  

なんか光岡さんの補足で吹きましたw
映画もヒットしたらいいですね、みんな待っていた(割とガチな上、結構長く)作品ですし。

2015/02/03 (Tue) 22:18 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>アウルさん
ヒットして注目を集めてまた別のアントマンの邦訳が出たらいいなぁ~。

2015/02/04 (Wed) 16:46 | EDIT | REPLY |   

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