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31 2014

グラント・モリソン&ニック・パケット他/バットマン:インコーポレイテッド

バットマンインコーポレイテッド表紙

「…500人が最初の攻撃準備に入った。信じられるかね?
 リバイアサンの生体兵器のうち、もっとも若い者はわずか1歳半だ。
 闇の騎士が神になったという噂は聞いたか?」

「彼は人の子。我らには勝てぬ。開戦の時は近い」
「最初の兵士は500人。彼らはウイルスと同じ行動をする。
 侵入。感染。そして……破壊」


アルゼンチン。日本。香港。オーストラリア。イギリス。フランス。
バットマンが戻ってきた。
今の彼は世界各地に存在する。


死んだと思われていたブルース・ウェインが復活し、再びコウモリのコスチュームを身にまとう。だが、現在の彼はバットマンであると同時に、さまざまな脅威から社会を守るために、ゴッサムシティの仲間や世界各地のヒーローを集めて、永遠に続く正義のシンボルの旗を掲げた武装組織「バットマン・インコーポレイテッド」の代表であり出資者でもある。
東京、パリ、アルゼンチン、オーストラリア、戦禍に苦しむアフリカの小村、貧困が蔓延しているネイティブ・アメリカンの居留地……闇の騎士のネットワークは世界各地へと広がっていく。悪が隠れる場所はどこにもない。

……そう思っていた。

だが、戦争の準備をしているのは彼だけではなかったのである。
世界を取り囲む“ウロボロスの環”をまたしかり。
大いなる獣が目覚め、世界を飲み込もうとする。世界最凶の犯罪者たちが秘密結社リバイアサンへの忠誠を誓い、悪の魔の手は病魔のごとく広がっていく……。
今、闇の騎士の戦いが始まる。コウモリが羽ばたけば、リバイアサンが捻り潰そうとする。
善と悪。新たな世界戦争の勝者となるのはどちらなのか?


◆関連作品過去記事
【バットマン・アンド・サン】
【バットマン:ラーズ・アル・グールの復活】
【バットマン:ブラックグローブ】
【バットマン:R.I.P.】
【バットマン:ザ・ラスト・エピソード】
【バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル】
【バットマン&ロビン】
【バットマン:ブルース・ウェインの帰還】
【バットマン:ブルース・ウェインの選択】
【バットマン:ゲート・オブ・ゴッサム】

◆収録作品

2011年01月:Batman Incorporated #1
2011年02月:Batman Incorporated #2
2011年03月:Batman Incorporated #3
2011年04月:Batman Incorporated #4
2011年05月:Batman Incorporated #5
2011年06月:Batman Incorporated #6
2011年07月:Batman Incorporated #7
2011年10月:Batman Incorporated #8
2012年02月:Batman Incorporated: Leviathan Strikes!


◆“BATMAN IS EVERYWHERE”
いよいよニュー52突入前のバットマンストーリー、
グラント・モリソンのバットマン新サーガも第三部に突入!


今年2月に刊行された『バットマン&ロビン』のラストにて、ブルース・ウェインが悪との戦いを世界規模に展開することを宣言し、世界中にバットマンを配置し支援する新会社“バットマン・インコーポレイテッド”を設立。
同時収録された「Batman: The Return」では世界中に根を張っている謎の秘密結社“リバイアサン”の存在が仄めかされ、新たな戦いを予感させて締めくくられました。

『バットマン&ロビン』の後に刊行された『ブルース・ウェインの帰還』『ブルース・ウェインの選択』は、バットマン&ロビンのストーリーの裏側を描いた内容だったんで、厳密には続きではなかったんですよね。待ちかねたぞ!

本作は『ブルース・ウェインの帰還』にて破滅的な未来の光景を目撃したバットマンがその脅威に対抗するため、世界中でヒーローをリクルートし、来るべきリバイアサンとの決戦に向けて活動するというストーリー。
戦いの舞台も日本の東京、アルゼンチン、オーストラリアと様々な場所に飛び、その国のヒーローやヴィランと出会いを繰り返すため非常に国際色豊か。
おうどんさんバットウィングことデビッド・ザビンビの初登場エピソードもありますよ!

気になる日本のヴィランですが、なんと桑田次郎版バットマンにも登場したあの死神男が再登場!
【バットマン The BatManga Jiro Kuwata Edition】

バットマン:インクの原書では「ロード・デスマン」という名前なのですが、この邦訳版では桑田次郎版バットマンにならい「死神男」と訳されています。嬉しい!
それに伴い、原書では「数年前はデスマンと名乗っていたがロード・デスマンに改名した」という下りも、「デスマンと名乗っていたが日本で活動するにあたり死神男と改名した」という邦訳独自の改変が施されることに。
引き連れている部下がショッカーチックなのも特撮ヒーローの怪人風味で堪らない。

死神男として再デビュー
日本で“死神男”として再デビューを果たしたデスマンさん
「ひひひ」笑いも桑田次郎バットマンから継承

このヴィランに対抗するのは勿論日本人の青年、ミスター・アンノウンこと治次郎(オサム・ジロウ)
正直妙な名前ですが、これは漫画家・桑田次郎と、その桑田先生が憧れていた漫画の神様、手塚治虫の“名前”を組み合わせてしまったからだとか。
余談ですが、作中の日本の町並み自体はアメコミには珍しく結構それっぽいです。
しかし至る所に不自然な漢字が表記されまくっているのが実にシュール。

死神男に留まらず、本作では『バットマン・アンド・サン』『ブラックグローブ』『R.I.P.』の時のようにほぼ黒歴史化していたキャラや設定を掘り返し、現代向けに味付けして復活させているのが特徴です。

アメコミの歴史から葬られていた初代バットウーマンことキャシー・ケインが本作の重要なファクターになっていたり、1949年のバットマン#56に登場した地味なヴィラン、エル・パパガヨをリデザインして再登場させたり、黒の事件簿に収録された「インディアンの首長バットマン」に登場するヴィラン、ブラックエルクの息子が登場したりとネタが豊富。

また本書はこれまでのモリソンバットマンの集大成的なストーリー展開となっているため、記憶がやや薄れている人は過去のモリソンバットマン作品を読み返しておいたほうが良いかもしれない。
『バットマン・アンド・サン』で登場し、バットマンを罠に嵌めるために暗躍した悪女イザベルや、ヒーロークラブのエル・ガウチョにマン・オブ・バッツとレイブン、元ブラックグローブのスコーピアナにエル・ソンブレロなど様々なキャラが再登場してはシナリオに密接に絡んでくるので。

本書の個人的オススメエピソードは『Batman Incorporated #5』
さして大事件が起きないド田舎で実直に正義の為に戦うマン・オブ・バッツと、いい年しながら無鉄砲過ぎる父に呆れている息子レイブン。
父が違法薬物の売人を抑えたと思ったらポケットから出てきたのは単なるお菓子で、とうとうレイブンは愛想をつかしてコンビを解消してしまう。
そこにバットマンが現れ、リバイアサンの魔の手が伸びている事を警告しにやって来るが……というお話。
最後に判明する真相といい、わりとベタな展開なんですがこういうストーリーは僕大好きです。

◆迷場面
触手モノのエロマンガに引くセリーナさん
日本の触手モノのエロマンガを見て軽く引くセリーナさん

ネット掲示板に書き込みをするバットマン
ネットユーザーが世界各地のバットマンの正体を探ろうとする動きを抑えるため
自らネット掲示板に書き込みを行い突飛な陰謀説に仕立て上げるブルース

◆感想
本作はリランチ、つまりニュー52突入直前まで連載された作品であり、過去にレビューした『バットマン:ブラックミラー』と同じくバットマン関連誌のラストエピソードの一つ。
そしてモリソンバットマンの完結作品でもある……
と言いたいところなんですが、なんと本作のストーリーはそのままニュー52版『バットマン:インコーポレイテッド』に第2シリーズとして引き継がれていきます。

一応本書収録のバットマンインク第1シリーズ最終話である『Batman Incorporated: Leviathan Strikes!』で、本作のメインヴィランであるドクター・ディーダラスとの決着は着くんですけどね。
ちなみにこの最終話、バットマン達が幻覚ガスや迷宮のデザインが原因で時間と空間の感覚が狂ってしまうという展開があるのですが、それを表現するためか時系列がやたら前後したり場面転換しまくったりするために読んでて滅茶苦茶混乱するエピソード。
そして最後に判明する“真の黒幕”との戦いはニュー52版までおあずけ。

第2シリーズでは当然キャラ設定はニュー52版に置き換えられているのですが、ストーリーはこれまで続いてきたモリソンバットマンを踏襲。ライターも勿論グラント・モリソン。
こちらも既に邦訳がアナウンスされているので、座して待とう!完結まであとたったの2冊だ!

【グラント・モリソンの『バットマン:インコーポレイテッド』のニュー52シリーズ】
※1巻は12月19日発売予定との事。

……『バットマン・アンド・サン』から始まったモリソンのバットマンはストーリーがほぼ地続きであり、細かく伏線を張り巡らせているため他の邦訳アメコミのように「この本単独で読んでもOKだよ!」とはなかなか言えないのがネックなのですが、この人が綴る奇想に満ちたバットマンのシナリオはホントに面白いんでもっと多くの人に読まれて欲しいところです。
難解過ぎる言い回しや独特な演出が多く、クセが強いのも確かだけどね。

【バットマン:インコーポレイテッド 補足】
【El Eternauta】

悪い癖まで引き継いじゃったディックとダミアン

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