ツルゴアXXX

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11 2011

マーク・ウェイド&アレックス・ロス/キングダム・カム

表紙_convert_20110309073147
"木々の3分の1が焼け…
 またすべての青草が焼け…
 太陽も空も暗くなった!
 神を畏れ、そして讃えよ!

裁きのときは迫っている!"

近未来、そこはヒーロー不在の世界だった。正義と真実の象徴であるスーパーマンは引退し、多くのヒーローたちも姿も消していた。
一方、台頭する新世代の超人類は我を忘れ、自らのパワーをみだりに使い、世界を混沌の渦へと巻き込んでいった。平和を希求する人々はなす術もなく、ただこの世の終焉を待つのみであった。
だが、この状況を目にしたスーパーマンは苦悩と自責の念にかられながらも、世界のために復帰を決意する。
スーパーマンは、バットマン、ワンダーウーマン、グリーンランタンなどかつての仲間たちとともに秩序を取り戻すべく立ち向かうのだが…。


◆収録作品

1996年05月:Kingdom Come #1
1996年06月:Kingdom Come #2
1996年07月:Kingdom Come #3
1996年08月:Kingdom Come #4


◆Truth and Justice
1980年代半ばに発表された
『ダークナイト:リターンズ』『ウォッチメン』はアメコミ界に劇的な変化をもたらしたのですが、
この2作の衝撃的なストーリー展開に影響を受けたクリエイター達は、
過激な描写を含む作品を生み出すようになってしまいました。

暴力的なコミックスの中には名作と呼ばれる作品もあったのでしょうが、
ここで一度ヒーロー達の魅力を見直そうという動きが現れ、
本作、『キングダム・カム』が生み出されたのです。

あらすじをかいつまんで解説すると、

現代では、スーパーマン、ワンダーウーマン、バットマンなどの多くの名ヒーローが引退し、
ヒーローという名の荒くれ者新生代のヒーロー達が
世界を守る名目で好き勝手暴れまくっていた。
引退したヒーローであるスーパーマン達は、新世代ヒーローの更正に乗り出すのだが、
この行動は後に新世代のヒーロー達との対立を招き、
この期に乗じてJLAの壊滅をもくろむ組織も絡み世界規模の戦いに発展していく…


といった内容。

この壮大な闘いを、表紙の老人『ノーマン・マッケイ』が精霊『スペクター』と共に見届ける事になります。
スペクターは過去に紹介した『グリーンランタン:リバース』にも登場しますね。

本作で第一に目を引くのがアレックス・ロスによる超美麗な絵。
表紙の絵でも絵画のような美しさですが、
この水準で漫画を読む事が出来るというのはそれだけで衝撃ですよ。
ストーリーもテーマ性が大きいだけに絵の迫力と合わさって没入感が半端じゃなく大きくなります。

その分DCコミックのヒーローに思い入れがある状態で読んだほうが良いかもしれません。

愛蔵版である本書にはラフスケッチなどの資料が100ページ以上収録されており本編以外の要素も豊富です。

◆STORY
スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、グリーンランタン…
伝説的なヒーローはスーパーマンの引退を期にそれぞれの場所へ帰っていき、
世界の平和は新たな世代のヒーローに委ねられた…

…のだが、新世代のヒーローは始めの頃こそ『らしく』振舞っていたが、
新世代ヒーローの中心人物『マゴッグ』の暴力的な範に習うようになったために、
人命や町の被害も省みず戦いを楽しむならず者だらけになっていた。

精霊である『スペクター』は、
近く悪をなす者を裁く際、『人の心』も含めて判断するため、
神父である『ノーマン・マッケイ』を見届け人として任命し、二人で事の流れを見守る事にした。

スペクター_convert_20110311173620
人間の心の代表として選ばれるノーマン

その頃、米国の都市セントルイスでまたも新世代ヒーローによる痛ましい事件が起こる。
マゴッグ率いる『ジャスティス・パダリオン』
ヴィランであるパラサイトをカンザスの麦畑に慈悲を乞う声を無視して追い詰めた結果、
パラサイトが自棄になって『キャプテン・アトム』捨て身の攻撃を仕掛けた。
キャプテン・アトムは原子力を操るヒーローであり、引き裂かれた身体から放射性物質が溢れ出してしまった。
結果100万人以上の犠牲者を出した上、
穀倉地帯への打撃も起きたために食糧難の到来が避けられなくなってしまった。

カルとダイアナ_convert_20110311173607

ワンダーウーマン(ダイアナ)スーパーマンに世界が深刻な状況に陥っている事を伝え、
JLA(ジャスティスリーグ)の復活を持ちかける。
新世代のヒーローを導き…必要であれば武力をもって秩序を回復するために。


『彼は我々を見捨てはしなかった』

『再び空を飛ぶその姿に希望は蘇った』

『彼が帰ってきた…そして…』



『おお…神よ!』

『アルマゲドンの脅威は去っていない』


『たった今始まった!』

復活_convert_20110311173632

◆PICKUP キャラクター マゴッグ
マゴッグ_convert_20110311181855

現代的ヒーロー像の象徴ともいえる造形のキャラクター。
寺沢武一のコブラあたりに悪役で登場してそうだがヒーローである。
元々大衆がスーパーマンらを『21世紀に適応できない旧世代』と批難し、
強くて非情なヒーローを求めた結果、マゴッグのような超人類がもてはやされ現在の状況を作り出してしまった。

マゴッグはスーパーマンとは違い『悪人を殺す事ができる』ヒーローであったため、
プラネットを襲って93人もの人間を殺害するという事件を起こしたジョーカー
投獄することなく仕留めた。

やりやがった…_convert_20110311181907

この事件に対し、スーパーマンはマゴッグを批判したが世論はマゴッグに傾いたため、マゴッグは英雄に。

結果、これがきっかけとなってスーパーマンは引退したのである。

これだけ見るとマゴッグは戦いに飢えている野蛮人のようだが実はそうではない。
チャプター2では復活したJLAが新世代ヒーローの更正(反抗的な人物が多いため半ば強制だが)に務めており、
その過程でマゴッグとも接触、スーパーマンとの一騎打ちを行うシーンがあるのだが、
この戦いでマゴッグは己の心情を吐露する。

『あんたのせいだ…あんたが変わらなかったから…』
『俺が選ばれた』


◆PICKUP キャラクター カブキ・コマンドー
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異世界であるフォース・ワールドで活躍する日本人の勇者。
やはりコイツも始めはスーパーマン達と衝突しているが(91ページ)
展開を見るにあっさり負けて傘下に加わったのだろう。
画像は旧世代のヒーロー、『キャプテン・コメット』に折檻を受けた同輩を抱えようとしているシーン。

見ての通りデザインが非常にダサいキャラクターだが、
まさに外人の考える和風キャラといった感じで何かほほえましい。
ちなみに名前は設定されているがラフスケッチは無い。

要は有象無象の脇役の一人にすぎないのだが画像を見ての通り、
何ともいえない日本語をしゃべっているのと(しかも手書き文字)
奇抜なデザインが合わさって妙に印象に残るキャラクターである。
セリフは画像の発言と
『おこる の だったら わたくしじゃなくて…かれをおこって!』
の二つだけ。

脳筋キャラだからゆるい日本語を話しているのか、
単にライターが無理しただけで普通のキャラなのかは不明。

最終決戦後に姿が見られないことから残念な事に死亡した模様。

◆RE DESIGN
キンカムのもう一つの魅力がリデザインされたヒーロー達。
新たに衣装がデザインされた事によって新たな魅力に気づく事ができる。

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戦士らしさが強調されたワンダーウーマン

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進化がさらに進み輪郭がぼやけるほどになったフラッシュ

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個人的に一番好きな新デザインのバットマン。
トゥーフェイスとベインがウェイン邸襲撃を決行した際に背骨に致命傷を負ったため、
外骨格のようなスーツに新調したのだとか(解説より)

◆感想
傑作エルスワールドモノの本書。
超人であるヒーローたちがなすべき事は何なのか…

引退したヒーローの葛藤を描ききった本書は
『スーパーマンやらバットマンしか知らないよ!』といった人でもヒーロー同士のぶつかり合いは楽しめるでしょうが、
やはりDCヒーローの知識を持ってからのほうがより楽しめると思います。
(新世代ヒーローには伝説のヒーローの後継者や子孫が居たりするため)

また、資料ページの充実振りも半端じゃありません。
読了したら設定部分を読み込んだり小ネタ解説を読んだりしてニヤニヤするのも良いでしょう。

◆小ネタ
シャッハさん
ロールシャッハさんこんなトコで何してはるんですか

マゴッグ_convert_20110311204507
ニューアースでもマゴッグは登場。
(ただしキンカムとは別人)

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