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10 2014

スタン・リー&ジョン・ロミータ他/スパイダーマン:ステイシーの悲劇

ステイシーの悲劇表紙

『本号について語るべきことは多くあるが、あえて語るまい。
 本号のサブタイトルは最終ページまで秘密にしておくが、
 読者諸君に一つだけ約束しよう。かなり衝撃的だとね』


THE DEATHS THAT STILL SHAPE THE SPIDER-VERSE!
スパイダーマンの世界に大きな影響をもたらした二つの悲劇

1970年代初頭、二つのエピソードが、コミックにおける死の概念を大きく変えた。この波乱万丈のドラマのなかで、スパイダーマンは友人を、恋人を、そして宿敵を失うことになる。これほどまでに読者に衝撃を与えたストーリーは当時としては史上初のことであり、その後においても数えるほどしかない……。


◆収録作品

1970年09月:Amazing Spider-Man #88
1970年10月:Amazing Spider-Man #89
1970年11月:Amazing Spider-Man #90
1970年12月:Amazing Spider-Man #91
1971年01月:Amazing Spider-Man #92
1973年06月:Amazing Spider-Man #121
1973年07月:Amazing Spider-Man #122


DEATH OF THE STACYS
アメスパ121表紙

映画『アメイジング・スパイダーマン』の1と2のストーリーのベースとなった、ピーターのかつての恋人グウェン・ステイシーの死というスパイダーマンの歴史に残る重要エピソード『デス・オブ・ザ・ステイシーズ』が邦訳。
どうせならアメスパ2公開時のタイミングに合わせて出せばよかったのに……と思ったけども、映画だけ見ている人からすれば強烈なネタバレになっちゃうから今ぐらいの時期に出版するのが確かにベターかな。
ただ本作は初邦訳というわけではなく、今回収録されたエピソードは全て1970年代に光文社から刊行されていた『スパイダーマン』3、4、7巻で邦訳済みだったりします。

光文社版スパイダーマン全巻
ただし現在この邦訳本は通販サイトでもなかなか取り扱われないレベルで入手困難

本書前半の『Amazing Spider-Man』#88-#92までのストーリーはスタン・リーが担当。
刑務所から脱獄したドクター・オクトパスとの戦いから始まるエピソードなんですが、この戦いに巻き込まれてしまったグウェンの父、ジョージが死亡してしまうといういきなりショッキングな展開が描かれます。
事件の目撃者やグウェンにはスパイダーマンが殺害したと誤解され、地方検事の立候補者であるサム・ブリットはこの事件を利用してデイリー・ビューグルのJJJと手を組み、「スパイダーマン追放」という風潮を作り出す始末。

父を失い悲しむグウェン
グウェンにとってピーター・パーカーは大事な男性だが、スパイダーマンは父を殺した憎むべき相手
勿論グウェンはピーターがスパイダーマンだとは知らない

誤解が誤解を産み、周囲からの強烈なバッシングに耐え抜きながら孤独に戦うスパイダーマンの姿が本当に辛い。
全市民に嫌われ、グウェンからも憎まれ、殺人犯扱いとなったことで「僕は本当に善人だと言えるのか?」と思い悩むシーンとかね。
しかしそれでも一人で戦って悪人を追い詰めようとするんだからスゴイヒーローだ。
このエピソードではJJJが序盤はともかく、物語後半でまさにジャーナリストの鏡というべきカッコよさを見せるのでそっちにも注目。

ラストを飾るグウェンの死という重要エピソード、『Amazing Spider-Man』#121-#122のストーリーはジェリー・コンウェイが担当。
(スタン・リーが脚本を担当したのは#100までで、#111からはこの人にバトンタッチしていた)

ピーターの親友であるハリー・オズボーンが精神を病み、LSDを服用したことで苦しみ続けているというこれまた衝撃的なシーンから始まる一作。
ハリーの父ノーマンも苦しむ息子の姿を見て精神的に不安定になり、それが引き金となってある事件が原因で喪失していた記憶を取り戻し、ピーターがスパイダーマンという事実と自身がグリーン・ゴブリンである事も思い出してグウェンを攫い、スパイダーマン殺害に動き出すというまさに最終決戦ともいうべき展開に。
ここからのストーリーの流れはもう……あまりに悲惨過ぎる。

◆感想
悲劇的な展開が相次ぐかなり暗いエピソードだけど、名作と言われるだけあって面白かったです。
特に愛するグウェンの死後、ピーターが激情に駆られるその表情は非常に鬼気迫っており、怖いと同時に胸に刺さる。

激情に駆られるピーター

もう40年以上も前に作られたエピソードでありながら、現在発表されているような作品にも引けをとらない重厚なストーリー展開で、ページをめくる手が止まりませんでした。
古い作品だからと敬遠せずに手にとって欲しい一作です。

ここからは余談。
「スタン・リーが休暇中に脚本の代役を頼み、旅行から帰ってきたらグウェンが殺されていてファンと同じくらい衝撃を受けた」というエピソードがネット上でよく語られていますが、解説書によると実際の所はグウェンが死ぬという話はスタンにも早い段階で知らされていたとか。
ただし、各作家のインタビューの時期などによって視点や証言がぶれていたりするため、ハッキリとした真相は藪の中だったりするのですが。

例によって今回も訳者の高木亮氏がブログ上で本作の補足解説をアップされています。
別の単行本でのカラリングの違いやページの書き直しなどマニアックな情報が掲載されているので要チェック。
【スパイダーマン:ステイシーの悲劇 補足】
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1 Comments

No Name  

時系列ではだいぶ後のアメリカン・サンと比べてみると
ノーマンのハリーに対する父性の顕れがかなりのものなのも見所なのか。
後にどんどん歪み続ける人間関係を思うと一層悲しい…

2014/09/11 (Thu) 08:39 | EDIT | REPLY |   

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