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31 2014

レン・ウェイン&ジェイ・リー他/ビフォア・ウォッチメン:オジマンディアス/クリムゾン・コルセア/ダラー・ビル

ビフォアウォッチメンオジマンディアス表紙

『私は無言のまま5分も彼の部屋の前に立ち、
 老夫婦がエレベーターで去って…目撃者がいなくなるのを待った…
 それからゆっくりと深呼吸して…踏み込んだ!
 それにしても恐ろしい皮肉だと思う…
 今度は私がオチをつける役に回るのだから!』


アメリカンコミックスの金字塔『ウォッチメン』の前日譚を描いた注目作、ついに登場!
最終章は、アラン・ムーアをアメリカに招いた大ベテラン、レン・ウェインが綴る“超人”オジマンディアスの物語。
クリムゾン・コルセア、ダラー・ビルも同時収録。

オジマンディアス
1985年10月11日。オジマンディアスことエイドリアン・ヴェイトは、南極の城塞にいた。行動の時は間近に迫った。静かに目を閉じる彼の脳裏に、これまでの道程が甦る。
神童と呼ばれた少年時代。両親の記憶。問題を排除するために“力”を求めた事。
両親との永遠の別離。アレキサンダー大王の足跡を巡る旅の日々。
オジマンディアスを名乗ったあの日。そして始まる“悪”との戦いの日々。
先人たるミニッツメンへの興味。その果てのコメディアンとの衝突。
Dr.マンハッタンとの邂逅。スーパーヒーロー達との対面。
ブバスティスの誕生。
ベトナムの戦争。変革するアメリカ。
ついに手にした全てへの回答。そのための備え。そして再びのコメディアン……。
過去から現在へと辿る旅路で明かされるヴェイトの真意。今、全ての歯車が動き始める。

クリムゾン・コルセア
時は1771年。英国海軍の新米士官、ゴードン・マクラクランは、初の遠洋任務に、リバプールの港から旅立った。来るべき冒険の日々に思いを馳せるマクラクランだったが、船内での些細な窃盗事件を機に、彼の運命は大きく狂い始める。
何よりも秩序を求める横暴な船長に反旗を翻したマクラクランだったが、叛乱は敢えなく鎮圧され、彼には処刑の時が迫る。
そこに現れるスペインの軍艦。激戦の中、海へと放り出されたマクラクランの孤独な漂流が始まった。
人食い鮫の襲撃を退けた彼の目前に、謎の船が姿を見せる。甲板へと引き上げられたマクラクランを待っていたのは、真紅の海賊、クリムゾン・コルセアを名乗る不気味な男だった。
思いもかけない出会いから始まったマクラクランの激動の日々。
悪夢のような体験を重ねながら流転を続ける彼の行き着く先とは……。

ダラー・ビル
曲者ぞろいのミニッツメンにおいて、誰からも愛された偉丈夫、ダラー・ビル。大学スポーツの花型スターだった彼は、何故にコスチュームに袖を通す事になったのか。しかも、銀行の宣伝のために。
プロへの道を断念させた試合中の怪我に始まる激動の日々。
食べていくために宣伝マンの道を選んだ彼は、上司の命じるまま、ミニッツメンのオーディションに臨む。
パスした彼を待っていたのは、栄光と冒険の日々だった。
“スーパーヒーロー”ダラー・ビルとして、名声を欲しいままにする彼だったが、終焉はある日、突然に訪れる。永遠の別れが。
葬儀に集ったヒーロー達は、思わず口にする。
「半年も経てば、誰が彼を憶えていると言うんだ?」
果たして、その答えとは……。


◆関連作品過去記事
【ウォッチメン(Watchmen)】
【ビフォア・ウォッチメン:コメディアン/ロールシャッハ】
【ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン/シルク・スペクター】
【ビフォア・ウォッチメン:ナイトオウル/Dr.マンハッタン/モーロック】

◆収録作品

2012年09月:Before Watchmen: Ozymandias #1
2012年10月:Before Watchmen: Ozymandias #2
2012年11月:Before Watchmen: Ozymandias #3
2013年01月:Before Watchmen: Ozymandias #4
2013年03月:Before Watchmen: Ozymandias #5
2013年03月:Before Watchmen: Dollar Bill
2013年05月:Before Watchmen: Ozymandias #6
※「Before Watchmen: Crimson Corsair」は、ビフォア・ウォッチメンのリーフ巻末に掲載されていたコミックを纏めたものとなっています。


◆INTRODUCTION
ついにウォッチメンの前日譚シリーズ、ビフォア・ウォッチメンが完訳!
話数だけならずっかりウォッチメン本編を越えるボリュームになりましたね~。
しっかり完訳されて嬉しい限りです。
これまでのビフォア・ウォッチメンのライターは現在も第一線で活躍する「ムーアの後輩」にあたる方たちが手がけてきましたが、この最終巻はコミックライター件編集者であるムーアよりもキャリアの長い大ベテラン「レン・ウェイン」を起用。
レン・ウェインはウォッチメン本編でも(途中降板はしたものの)編集者として関わっていた方であるため、本作はオリジナルのスタッフが制作する唯一の前日譚でもあります。

まずは本書のメインである、ウォッチメンの“黒幕”、オジマンディアス編から紹介。
オジマンディアス編は、オジマンディアスことエイドリアン・ヴェイトが如何にして超人的な存在になりえ、かつあのような計画を実行するに至ったのかを彼の幼少時代から辿っていくオリジンストーリーです。

ウォッチメン本編では具体的に描かれずに終わった場面の数々を、彼の女性関係やペットのブバスティス誕生譚など本編では拾われなかった要素を交えつつ、余すことなく網羅していく内容。
ビフォア・ウォッチメンで描かれたシーンもしっかり拾っており、最終章を飾るにふさわしい総括的なエピソードとなっています。

ビフォアウォッチメンオジマンディアス
戦争回避のアイデアを探し求め、様々なSF映画やTV番組にも目を通すオジマンディアス
そして彼は『アウター・リミッツ』の第3話を見て計画のヒントを得る
これはムーアによるウォッチメン本編ラストの展開がこの第3話と被ってしまった事を拾った1シーン

余談ですが、65ページ1コマ目のコメディアンのセリフ「Blow me, showgirl.」というセリフが「倒してみな、ネェちゃん!」と訳されているなど、この邦訳ではコメディアンの過激なセリフが全体的にマイルドに変更されている模様。

次に紹介するのはクリムゾン・コルセア編。
これはビフォア・ウォッチメン各号の巻末に毎回2ページずつ、全28話が掲載されるという変則的な発表形式をとったコミックです。
アーティストはウォッチメン本編でカラリストを務めたジョン・ヒギンズなため、これまたウォッチメンのオリジナルスタッフが集まった豪華な一作であります。
が、本作はウォッチメン本編の劇中劇『黒の船』にインスパイアされて制作されたオリジナルの物語であり、ウォッチメン本編ともビフォア・ウォッチメンともぶっちゃけ内容的に関連性はありません。

ビフォアウォッチメンクリムゾン・コルセア
「エグい」展開が目白押しのホラーテイストな冒険もの
呪いの船フライング・ダッチマン号に魂を囚われた主人公マクラクラン
自由になるにはある3つの品物を手にしなければいけない
果たしてマクラクランは品物を集め、フライング・ダッチマン号から解放されることができるのか

最後はダラー・ビル編!
「回転扉にマントを挟まれて死亡」という、ジョークのような死に様が語り草となっている彼を主役に据えた一話完結の短編です。
フットボールの試合での怪我が原因でプロスポーツ選手の道が閉ざされ、思わぬ方向に人生がネジ曲がっていくダラー・ビルことウィリアム・ベンジャミン・ブレイディの数奇な運命を、これまた『ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン』のエピソードを織り交ぜながら描いております。

ビフォアウォッチメンダラー・ビル
食べていくために銀行の宣伝マンの仕事を受けたウィリアム
こうして彼はスーパーヒーロー『ダラー・ビル』となり一躍人気者に
その後銀行からの命令で、さらなる宣伝のためにミニッツメンに所属することになってしまう

最初は生活のためだったものの、犯罪と戦ううちに学生時代の闘志に燃えた日々を思い出し、ヒーローとして活躍する好漢、ダラー・ビル。
ただウォッチメン本編を読んでいれば御存知の通り、彼はあまりに間抜けな最期を遂げてしまうわけでして……ダラー・ビル亡き後も、長きにわたって彼の活躍を覚えていてくれる人々は果たして存在するのか?
その答えは本書で是非どうぞ。

◆感想
ビフォア・ウォッチメン1巻から4巻まで読んだ感想としては「エピソードの質にバラつきはあったけど、全体的に見ればそれなりに満足できる出来だった」という感じ。
いや、本当言うと自分の中ではやっぱりウォッチメンはムーアの本編だけで綺麗に完結している印象が拭えていないので、ビフォア・ウォッチメンで語られた新事実が公式というのが未だにピンときてなかったりするんですけどね。コレ何回も言ってるな。

オジマンディアス編は具体的に描かれなかったシーンが掘り下げられるというウォッチメン本編の裏側を見せる一作ですが、新たに語られる新事実はごくわずかであり、基本ウォッチメン本編で知り得ている事実が改めて語られるため、ストーリーの補完といっても面白みがやや少なめ。
ただレン・ウェインの冷たい雰囲気のアートは、オジマンディアスのストーリーに非常にマッチしており堪らないです。

クリムゾン・コルセア編は、前述したように全然ウォッチメンと関係ない作品なので読んでて戸惑いを覚える一作なのですが、あえて昔のホラーコミック風に作られており、全体を包む不気味な世界観や随所に盛り込まれたサスペンス要素は読んでいてなかなか引き込まれました。
でもウォッチメン本編に挿入された黒の船と違って暗喩的な物は含まれていないように感じたんで、存在する意味がイマイチよく分からない作品だ……

ダラー・ビル編はたった一話と短いものの、スティーブ・ルードによるほんのりユーモラスなアートと快活なストーリーで、全体的に陰鬱さが漂うビフォア・ウォッチメンシリーズで唯一気分よく読める一作でした。
まあちょっと引いた目で見ると、周囲にいいように振り回されて最期には命を落としたようにも取れるんですが。

この最終巻を読んだ感想は……『わりと普通だった』ということで。
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