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29 2014

ジョン・レイマン&ジェイソン・ファボック他/ジョーカー:喪われた絆〈上・下〉 (THE NEW 52!)

喪われた絆上巻表紙 喪われた絆下巻表紙

今度こそ、本当に殺す。

彼こそバットマンの最大の宿敵である。その混沌とした狂気は、バットマンの冷徹な理性と好対照をなしている。闇の騎士に対する道化王子。二人は何年も死闘を繰り広げてきたが、1年前、ジョーカーは忽然と姿を消した。ゴッサムの悪魔はその不気味な笑顔を剥ぎ取られて、いずこともなく去っていった。それ以来、街は平和だった。
時が経つにつれ、バットマンをはじめとするクライム・ファイターたちは、あのサイコパスがもう戻ってこないのではと期待するようになった。だが、ジョーカーは水面下で、史上かつてない狂気に満ちた計画を練っていたのだった。
そして今、奴が戻ってきた。今回のジョーカーの標的は闇の騎士の最大の弱点、すなわち彼の家族だった。キャットウーマン、バットガール……バットマンの友人や仲間に危機が迫る。ジョーカーのかつての仲間であるハーレイ・クインすら、ジョーカーの餌食となる。
ジョーカーは脱皮した。そして、その下から現れたのは、さらに凶悪な魔物だった……。

お前らには、これから殺し合いをしてもらう……

キャットウーマン、バットガール、そしてハーレイ・クインを毒牙にかけたジョーカーの次なる標的はナイトウィング、レッドフード、レッドロビン、そしてロビン……バットマンの片腕ともいえる重要な者たちばかり。
悪意に満ちた罠を仕掛けられた彼らを待ち受ける運命は……?


◆関連作品過去記事
【バットマン:ブラックミラー】
【NEW52:バットマン】
【バットマン:梟の法廷】
【バットマン:梟の街】
【バットマン:梟の夜】
【バットマン:喪われた絆】

◆収録作品

◯上巻
2012年12月:Batman Vol.2 #13(※ハーレイ・クイン登場部分のみ)
2012年12月:Catwoman Vol.4 #13
2012年12月:Batgirl Vol.4 #13
2013年01月:Catwoman Vol.4 #14
2013年01月:Batgirl Vol.4 #14
2013年01月:Suicide Squad Vol.4 #14
2013年02月:Batgirl Vol.4 #15
2013年02月:Detective Comics Vol.2 #15
2013年02月:Suicide Squad Vol.4 #15
2013年03月:Batgirl Vol.4 #16
2013年03月:Detective Comics Vol.2 #16
2013年04月:Detective Comics Vol.2 #17
◯下巻
2012年12月:Red Hood and the Outlaws #13
2013年01月:Red Hood and the Outlaws #14
2013年01月:Teen Titans Vol.4 #14
2013年01月:Nightwing Vol.3 #14
2013年02月:Red Hood and the Outlaws #15
2013年02月:Teen Titans Vol.4 #15
2013年02月:Nightwing Vol.3 #15
2013年02月:Batman and Robin Vol.2 #15
2013年03月:Red Hood and the Outlaws #16
2013年03月:Teen Titans Vol.4 #16
2013年03月:Nightwing Vol.3 #16
2013年03月:Batman and Robin Vol.2 #16
2013年04月:Batman and Robin Vol.2 #17


◆Nothin' But Smiles
ニュー52でのジョーカーの帰還を描くバットマンの重要エピソード『バットマン:喪われた絆』
本作も梟の法廷編と同じく、本編エピソードはバットマン誌で展開しつつ、補完的なエピソードや外伝的なエピソードを他のバットマン関連誌で描くというクロスオーバーがなされていました。
そのサブストーリーを纏めたのが本書『ジョーカー:喪われた絆』
今回はどの関連誌も2話以上の尺が割かれているため、タイインのボリュームは『梟の夜』以上となっています。
というわけで、さっそくそれぞれのエピソードを順番に紹介!

◆バットマン編
ディテクティブコミックス喪われた絆

“始まりはいつも同じだ。
 ジョーカーに惹かれ、彼に熱中する手段を見つける。
 彼に関する新聞記事を集めたり……ジョーカー風のイラストを描いたり。
 やがて、それは別の形に変わる”


ライターはジョン・レイマン、アーティストはジェイソン・ファボックとアンディ・クラーク。
『喪われた絆』の本編同様バットマンが主役のエピソードではあるけれど、このタイインはジョーカー復活の影響で起こったもう一つの事件を描いており、ゴッサムに現れたジョーカーの信奉者集団『リーグ・オブ・スマイルズ』とそのボス、メリーメイカーとの戦いを描く一作になってます。

ジョーカーの手口を模倣して殺人を重ねるリーグ・オブ・スマイルズと謎の男・メリーメイカーの正体を追うストーリーであり、収録作の中では最も外伝的要素が強め。
全3話できっちり完結しているため、わりとコレ単独で楽しめるストーリー。
リーグ・オブ・スマイルズの面々が、上記の画像を見ての通りギリギリ実在してそうなサイコパスばかりで結構怖い。
また作中ではジョーカーが一般人に与える強烈な影響力について掘り下げられており、ラストシーンはサイコスリラー映画のオチのような印象に残る終わり方でした。

◆キャットウーマン編
キャットウーマン喪われた絆

“かわいそうなシンデレラ。
 カボチャの馬車が来るのを待ち、ガラスの靴は小さすぎる。
 キスで目覚めるまでずっと死んだまま”


ライターはアン・ノセンティ、アーティストはラファ・サンドバル。
情報屋のトリップ・ウィンターから受けた依頼、それはジョーカーの罠だった!
ジョーカーはキャットウーマンに襲いかかり、バットマンの敵になる事を要求するが……というエピソード。
何気にブルースよりもいち早く、ジョーカーがバットマンに抱いている感情を『愛』と見抜いたキャットウーマンの姿に注目。

それと例によってキャットウーマンのサービスシーンが合間合間に挟まれています。『NEW52:バットマン』『梟の夜』でのキャットウーマンのアーティスト、ギレム・マーチよりも絵柄の濃ゆさが抑えめなんで、個人的にはこの人のアートのほうが好みかも。

◆ハーレイ・クイン編
ハーレイ・クイン喪われた絆

「お前は俺が作った失敗作の一つだ。
 失敗作を回収しないと、俺様のメンツにかかわる」


ライターはアダム・グラス、アーティストはフェルナンド・ダニーノ。
喪われた絆本編でのハーレイ登場シーンを間に挟みつつ、彼女とジョーカーの再会を描いたストーリー。
ハーレイ・クインはバットファミリーではありませんが、ハーレイがスーサイド・スクワッドというチームで活動し、メンバーのデッドショットと“浮気”していた事もあって、ジョーカーは「再教育」と称して彼女にも魔の手を伸ばすのでした。
このエピソードでのハーレイに対するジョーカーの暴力の振るい方は既にDVの域を越えていらっしゃる。

読んだ感想としては……ハーレイのキャラがリランチ前から結構変化していてショックな感じでした。
いくら虐げられてもめげずにジョーカーに付きまとい続けるハーレイのコミカルなキャラが好きだったんで、ニュー52でよりサイコな面が強調されたことや、本作でジョーカーとの関係が変わってしまったのが正直寂しい。
そのうち旧設定寄りなキャラに修正されないかな(小声)

◆バットガール編
バットガール喪われた絆

『バットマン、悪いけど……あなたは間違ってる。
 この男は救えない。誰にも救えない。絶対に許さない。
 わたしはこいつを殺す。迷いはない』


ライターはゲイル・シモーン、アーティストはエド・ベニスとダニエル・サンベレ。
バットガールはタイインがなんと4話も割かれておりなかなかのボリューム。
内容もバットガールが本編では分からなかったジョーカーに捕らえられるまでのエピソードを描いており、かつて自分を銃撃して車イス生活に追いやった因縁の敵・ジョーカーの対決と、サイコパスな弟、ジェームズ・ゴードン・ジュニアが絡む濃密なシナリオになってます。
(「ジェームズ・ジュニア」に関しては過去記事『バットマン:ブラックミラー』で解説したんでそちらで)

ずっとジョーカーの悪夢に苦しめられてきたバットガールが本人と改めて対面し、本気でブチ切れてジョーカーを殺害しようとする彼女の姿は強烈。
ジェームズ・ジュニアも梟の法廷の頃はアーカムに収容されていたのにいつの間にやら脱獄しており、バットガールこと姉のバーバラに復讐するためだけに一般人を装いながら彼女のルームメイトのアリシアに接触していたという始末。
カワイイ女性が主役のパッと見は華々しいコミックなのに、シリアス度はバットマン誌に匹敵するレベルだから驚き。

◆レッドフード&レッドロビン編
喪われた絆レッドロビン&レッドフード編

『僕の人生においてはもっとも兄に近い存在かもしれない。
 世界一の秘密クラブにおける二人の部外者。
 元ロビンとレッドロビン。バットマンの元相棒。
 ジェイソンが死から復活して復讐の鬼となってからは、
 あまり話したことはないけど……これだけは言える。
 ジョーカーと対決するなら……彼ほど頼りになる味方はいない』


ライターはスコット・ロブデルとファビアン・ニシーザ。アートはティモシー・グリーンⅡとブレット・ブース。
『レッドフード&アウトローズ』誌と『ティーンタイタンズ』誌のメインライターはどちらもロブデルだったのもあってか、互いにクロスオーバーしながらストーリーが進行していくのが特徴のエピソードです。
いつの間にかジョーカーに攫われてしまったレッドロビンと、同じく罠にかかりジョーカーに捕まったレッドフードを救い出すため、ティーンタイタンズのメンバーとアウトローズのアーセナルとスターファイアーが協力しあうという展開。

バットマン誌でありながら、未熟な若手ヒーローに的確な指示を出してピンチを乗り切るというアーセナルの大活躍っぷりが拝める一編。
しかもアーセナルとキラークロックの意外な関係まで描かれるため、終盤までレッドロビンとレッドフードの影が薄かったり。
ただラスト、今や殆ど会話しない関係でありながら互いの信頼が垣間見れるレッドロビンとレッドフードの共闘シーンは素晴らしいです。

あ、あとあんまストーリーとは関係ないけどケネス・ロカフォートがアーティストを降りてたのがちょっと残念。
この人のアートもの凄く好きなんだけど、レッドフード&アウトローズ#11以降はカバーアートぐらいしか担当してなかったのね……

◆ナイトウィング編
喪われた絆ナイトウィング編

「てめえはバットマンの偽物のなかでも最低なんだよ。
 俺の王を軟弱者に変えた最大の元凶。
 ナイトウィング、お前は他の誰よりも人との絆を大切にして仲間に囲まれてる。
 けど、奴らはいつだって裏切るのさ」


ライターはカイル・ヒギンズ、アートはエディ・バローズ。
自分の古巣であるヘイリーズ・サーカスの団員たちが次々とジョーカーに狙われる。
ジョーカーが残したヒントを手掛かりに潜伏先を突き止めたナイトウィングが、今度はジョーカーに操られたサーカス団員に襲われるという、ディックにとっては容赦の無い展開。

バットマンの一番最初の相棒であり、ジョーカーからすれば愛する王、バットマンを弱くした最大の元凶であるディック・グレイソン。
他のバットマンファミリーとは異なり、最後のショーを残した前段階の時点でディックを徹底的に痛めつけているあたりにジョーカーの狂的な憎しみを感じるエピソードです。

◆ロビン編
喪われた絆ロビン編

「お前らこそ、奴のお荷物なんだよ!奴がどれだけ迷惑してるか!
 大事な仕事の邪魔ばかりする10歳のガキがどれほどウザいか!
 保護者としての責任感に縛られて、そこから逃げたくても逃げられねぇ!」


ライターはピーター・J・トマジ、アートはパトリック・グリーソン。
そろそろ新デザインのジョーカーも見慣れたかなと思っていたけど、画像を見ての通りグリーソンの描くジョーカーの顔は滅茶苦茶グロテスクで正直直視するのがキツい。

バットケイブに残ってモニター業務についていた現ロビンことダミアンが、街全体を守ることで手一杯な父ブルースに代わり、ジョーカーに誘拐されたアルフレッドを見つけ出すために留守番をほっぽり出して捜索に乗り出すという展開なんですが、案の定ジョーカーにとっ捕まってしまい……というエピソード。

ファミリーがバットマンを責め立てていた事に憤ったり、ジョーカーに操られたバットマン(?)と戦う羽目になり、必死に説得を試みたりと、ダミアンの父想いな姿が丁寧に描写されている一編です。もうクソガキとは言えねぇ……
あとこのエピソードのジョーカーのバットマン語りも濃密です。個人的に『喪われた絆』タイインでは一番好きな作品。

◆上巻感想
上巻は女性キャラが中心の構成になってますが、ジョーカーが関わるストーリーというのもあって華やかさは皆無。シリアスで陰惨な展開が目白押しでした。
どれも本編の補完というよりは充分単独でも楽しめる出来であり、また普段は邦訳されないバットマン関連誌が読めるのでそういう意味でもオススメの一冊。
個人的に上巻では、あのジェームズ・ゴードン・ジュニアが再登場してガッツリ活躍するバットガールのエピソードが一番好きですね。
今回解説ページでは各タイトルの本書収録のエピソードに至るまでのあらすじとその後の展開が詳細に纏められており、資料的価値も高いので必見。

◆下巻感想
下巻はロビン中心の構成となっており、『喪われた絆』本編と密接にクロスした重要エピソードばかり。
また『喪われた絆』の真のラストともいえるエピローグ『Batman and Robin Vol.2 #17』が収録されているため、本編を読んだ人は是非とも抑えておいて欲しい一冊でした。
この下巻は相手がロビンたちな所為か、上巻の時よりもジョーカーの異常なバットマン愛が気持ち悪いぐらいに描写されていた気がする。

【「ジョーカー:喪われた絆(下)」 ミス】
 
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2 Comments

No Name  

1章ラスト付近の「ジョーカーは精神的に不安定な人には霊感を与える」 というセリフは現実の犯罪に繋がってるようで生々しくて怖かったです。

 他にもバーバラが半分バットマン化してるのを見てナイトウイングの心労が増えそう、とか思ったりしました。

「喪われた絆」 シリーズはジョーカーのガチっぷりにちょっと疲れるので、ラストエピソードに収録されたブラックアンドホワイトの楽屋裏みたいなのを想像して癒されてます。

2014/08/31 (Sun) 00:03 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
バットマンは面白いんですけども、いかんせん展開が暗すぎて気が滅入りますからね……
僕は無限在庫や黒の事件簿に収録されているアホいノリだった頃のバットマンを読み返して癒やされてます。

2014/09/03 (Wed) 21:05 | EDIT | REPLY |   

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