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19 2014

斎藤ゆうすけ/小説版アイドルマスター

ゲームだけでなく、コミカライズ、CD、アニメ化、グッズ化、タイアップなど様々なメディアミックスが積極的に行われている『アイドルマスター』シリーズ。
しかし、その実ノベライズとなると異様に数が少なく、2014年6月現在でたったの2冊しか刊行されていません。
(コミカライズやムック本などにちょっとしたショートストーリーが掲載されることはありますが。あとゼノグラシアのノベル版……)
しかもその2冊は、まだアイマスがアーケード時代だった2006年頃の作品。
というわけで本記事では、ファミ通文庫のちょっぴりマイナーな小説版アイドルマスターの紹介をしたいと思います。

◆第1巻 やすらぎの旋律
やすらぎの旋律表紙

芸能プロダクション765プロのアイドル候補生、如月千早はデビューを夢見て自主練習を続けていた。
そんなある日、ついに彼女にもプロデビューのチャンスが巡ってきた。期待と不安に胸をふくらませ、事務所を訪れた彼女の前に現れたのは見るからに頼りなさそうなプロデューサー。
はたして千早は無事にデビューすることができるのだろうか!?
ナムコの大人気アイドルプロデュースゲーム『アイドルマスター』の小説版がついに登場!


記念すべき小説版第1巻。
1巻も後述の2巻も表紙や挿絵のイラストはオイコ氏が担当。ちなみに『オイコ』というPNは現在もアイマスの公式イラストを手がけている杏仁豆腐氏の旧名義です。

メインとなるアイドルは表紙を見ての通り千早であり、彼女がアイドルとしてデビューするまでの物語を描く作品となっています。ストーリーは勿論アーケード版が下地になっているのですが、設定や展開にオリジナルの要素が非常に多め。
アイドルとしてデビューしてからを描いていくのではなく、「デビューするまで」の話を大きく膨らませているのがポイントです。

歌手として活動できる日を夢見ながら毎日自主練習を続けていた千早に、ようやくデビュー曲とプロデューサーが与えられる。
しかしそんな彼女の前に現れたプロデューサー、芳野裕行という男はボサボサの髪に無精髭というだらしない風貌だった上、プロデュース業は初めてな元ミュージシャン志望という人物だった!
「こんな人に私の夢を託さなければいけないなんて」と第一印象が最悪だった上に、それ以降芳野Pは事務所に姿をろくに現さず、千早は自主練習を続ける毎日。
家に帰れば不仲な両親が毎日のように喧嘩をしており、不満は募っていくばかり。
そんなある日、彼女の携帯に小さい頃弟と一緒に遊んでくれていた『ユキ兄さん』から久しぶりにメールが届き、千早に唯一の心の拠り所が出来る……というのが物語序盤の流れ。

それからようやく芳野Pのプロデュースがスタートするも、千早とのすれ違いも続きなかなか距離が縮まらない。信頼関係が築けなかった結果、とうとう千早がドタキャンをしてしまうというなかなかシリアスな展開です。

やすらぎの旋律千早

本作では未だ公式でしっかりと描かれていない千早の父親や、アニマスに先駆けて千早の母親、千種(この当時は名前は設定されていませんが)も登場して話に絡んでくるため、わりと貴重なエピソードかもしれません。

ちなみに他の765プロアイドルは、先にデビューしたアイドルユニット『Proro』という設定で律子、春香、雪歩が登場。公式に採用されているのかは分かりませんが、作中では千早が年上の律子を呼び捨てにしている経緯も描かれます。
また本作オリジナルのキャラとして『Proro』のプロデューサー、山崎武則や、伝説のプロデューサーとして存在だけ語られる実喜綾乃も登場します。
(加えてゲームでは単なるNPCだった堀北ルナというアイドルが、本作では実喜Pが手がけたトップアイドルという設定になってたり)

◆第2巻 ときめきのSummer Days
ときめきのサマーデイズ表紙

マネージャーになることを夢見て芸能大手プロダクションの入社試験を受けた秋月律子。
しかし、結果は不採用。夢を諦めきれない律子は落ち目の芸能プロダクション『765プロ』に入社する。
そんな彼女の前に多くのアイドルを世に送り出してきた伝説のプロデューサー・実喜綾乃が現れる。綾乃にアイドルとしてデビューするように命じられた律子は……。
小説版アイドルマスターの第2巻が登場!!


第1巻の千早の物語から3ヶ月ほど前に時系列が遡り、マネージャー志望だった律子がアイドルユニット『Proro』としてこれまたデビューするまでの物語を描くのがこの第2巻。
前巻では千早視点と第三者視点を交互に入れ替えながらストーリーが展開していったのですが、2巻では終始一貫して律子が主役です。
そして1巻では存在だけ示唆された実喜Pが、ようやくがっつりと話に絡むことに。

ときめきのサマーデイズ律子

マネージャー志望として大手芸能プロダクション『西園寺プロ』を受けるも理不尽な理由で不採用となり、逆に闘争心を燃やした律子は弱小プロダクションである『765プロ』を受けて採用、入社するのですが……
高木社長が765プロ再建のために雇った伝説のプロデューサー、実喜綾乃にいきなりクビを言い渡されてしまいます。
それに律子が食って掛かった結果、律子と実喜Pがそれぞれ春香、雪歩をプロデュースし、マネージメント能力を図る事になるのでした。

そんな流れでまあ律子が春香のプロデュースを手がけるのですが、芸能界の常識やプロデュースのノウハウなど全く知らない律子は見ているこっちの胃が痛くなるほどミスを繰り返しまくり、あっさりプロデュース対決に敗北。
ここら辺の流れは、2やアニマスでプロデューサー姿が当たり前となった今ではなんとも新鮮な1シーン。

実喜Pは「最終的に私がプロデュースするのは一人だけ」と言い放ち、春香までクビにしようとするんですが、そこで律子が春香をクビにしないでと懇願した結果、「自らもアイドル候補となって雪歩、春香と競ってもらう」という妙な条件を飲まされることになってしまうのでした。
そっからどうしてアイドルユニットになったのかは本編で。

この2巻でも登場する765プロアイドルは1巻と同じであり、律子ら以外では千早がちらっと登場するのみに留まっています。一応他の765プロアイドルも所属はしているらしいのですが、ストーリーには全く登場しません。
(やよい、あずさも活動していることが軽く触れられるぐらい)
1巻、2巻とどちらも最初に765プロアイドルの紹介ページがあるのになぁ。売れてれば他のアイドルのストーリーが執筆されたりしたのかな。

あと初期アイマスのライバル事務所、『西園寺プロ』もこの2巻に登場。
コミカライズとこの小説版で細かく設定が変わっていますが、この当時は『西園寺プロ』という芸能プロダクションを今で言う961プロポジションに置こうとしていたんだなということもわかって面白かったり。
今後西園寺プロが公式で拾われることはあるのだろうか。

◆感想
初期の作品なんで、現在と比べるとキャラの言動に違和感があったり、小鳥さんの各アイドルに対する呼称が異なっていたりするのはご愛嬌。
作中でアイドル達に与えられる曲も何故かゲーム登場曲ではなく、まさかの完全オリジナルなのもご愛嬌。

1巻、2巻と分けられてはいるもののどちらも内容的には独立しているため、いきなり2巻から読み始めても問題ない作りになっているのも特徴ですね。
ただぶっちゃけるとどちらの作品も全編通してやや盛り上がりに欠けており、「すごく面白い!」とまでは言えない話作りだったんであまり強くはオススメしません。良くも悪くもあっさりしたー……というか先の展開が読みやすいベタなストーリーです。
あと正直作者の文章力が……ゲフンゲフン

それでも上記で挙げたように見どころのあるシーンもちょくちょくある作品だったので、それらが気になるなら手にとってみてもいいんじゃあないでしょうか。
特に2巻のお風呂シーン、「腕もすべすべですね、えへへ」と言いながら雪歩が律子の腕に頬ずりしだす場面は唐突に百合っぽくなって何事かと思った。
 
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