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10 2014

J・マイケル・ストラジンスキー&アンディ・キューバート他/ビフォア・ウォッチメン:ナイトオウル/Dr.マンハッタン/モーロック

ビフォア・ウォッチメンナイトオウルDrマンハッタン表紙
「箱は謎を収める。箱自体が謎だ。
 開くまで、中が何なのか確認できない。
 この瞬間、私は箱の中にいるはずなのに、いない。いないのだ。
 なら私はどこだ?なぜ私なのだ?
 箱の中身は?」

アメリカンコミックスの金字塔『ウォッチメン』の前日譚を描いた注目作、ついに登場!
第3弾は、J・マイケル・ストラジンスキーが贈るナイトオウル、Dr.マンハッタン、モーロック、三つの物語。
生ける伝説ジョー・キューバートの遺作にして、名手アダム・ヒューズ渾身のアートワークは必見!

ナイトオウル
時は1962年。ナイトオウルに憧れる青年、ダン・ドライバーグは、如何にしてかのヒーローと巡り会い、その名を継ぐ事になったのか?その秘められた私生活を含め、彼が新たなナイトオウルとなる道が語られる。
そして時は過ぎ、クライムバスターズの時代。不発に終わったヒーローチーム結成の夢ではあったが、ナイトオウルはロールシャッハという盟友を得る。
次第に荒みゆく街角で、お互いだけを頼りに戦い続けてきた二人の絆。しかし、麗しき悪女、トワイライト・レディの登場に、徐々に開いていく二人の距離。
それぞれが胸に秘めたトラウマに苛まれる中、共通の敵を前に、ナイトオウルとロールシャッハは再び手を取り合うことができるのか。
そして、ナイトオウルとトワイライト・レディの許されざる逢引きの行方とは……。

Dr.マンハッタン
神の如き力を備える、文字通りの“スーパー”ヒーロー、Dr.マンハッタン。過去、現在、未来を、一時に感知できる彼にとって、この世界は如何なる場所なのか。
時計の分解と組み立てに熱中した少年時代。
ジェイニー・スレーターとの情事。
ベトナムでの戦争。
火星に降り注ぐ流星群。
冷えたビールの感触。
灰となったロールシャッハ。
コメディアンの葬儀。
オジマンディアスとの会話。
モーロックの死。
I.F.チェンバーの事故。
シルク・スペクターとの逢瀬。
床に散らばる時計の部品。
クライムバスターズの第1回例会。
ドイツ軍の脅威。
砂に落ちた写真。
プレゼントの箱。
無数の時間と場所、無数の自分が交差する驚異の世界に、彼は何を見るのか。

モーロック
獄中で男は振り返る。幼少の頃からのあれこれの出来事を。
風変わりな風貌故に苛めの対象となった少年時代。
そんな彼に、一時の夢を垣間見せ、新たな道を示してくれたマジックとの出会い。
恋に落ちた少年は、何故に故郷を捨てねばならなかったのか。
都会に出た少年は、如何にして暗黒街で頭角を現していったのか。
そして訪れるミニッツメンとの時代。男は彼らの“宿敵”として、幾多の衝突を繰り返す。だが、そんな日々もついに終わる日がやってくる。
真の“スーパー”ヒーロー、Dr.マンハッタンの出現に、全ては昨日へと去ったのだ。
過去に思いを馳せ、神にすがるしか無い男の前に、ある人物が現れる。老いぼれた、前科持ちのマジシャンに手を差し伸べてくれたその人物の下で、男は次なる人生を送り始めるが……。


◆関連作品過去記事
【ウォッチメン(Watchmen)】
【ビフォア・ウォッチメン:コメディアン/ロールシャッハ】
【ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン/シルク・スペクター】

◆収録作品

2012年08月:Before Watchmen: Nite Owl #1
2012年10月:Before Watchmen: Nite Owl #2
2012年10月:Before Watchmen: Doctor Manhattan #1
2012年11月:Before Watchmen: Nite Owl #3
2012年12月:Before Watchmen: Doctor Manhattan #2
2013年01月:Before Watchmen: Moloch #1
2013年02月:Before Watchmen: Moloch #2
2013年02月:Before Watchmen: Nite Owl #4
2013年02月:Before Watchmen: Doctor Manhattan #3
2013年04月:Before Watchmen: Doctor Manhattan #4


◆INTRODUCTION
ビフォア・ウォッチメンの邦訳もいよいよ3巻目に突入!
モーロック編とダラービル編は、邦訳でもちゃんと収録されていると知って一安心。
(『ダラービル』編は最終4巻に収録予定)
この2作品の収録は書店配布の小冊子で早い段階に予告されてたんですが、折込チラシでは明言されたりされなかったりでちょっと不安だったんですよね。

まあ前置きはこのぐらいにして、まずはナイトオウル編から紹介!
二代目ナイトオウルの誕生譚と、本編では軽くほのめかされるだけだった悪女トワイライト・レディとの関係が明確に描写されるストーリーとなっています。
というか基本的にトワイライト・レディとの色恋沙汰がメイン。

しかしその中で相棒ロールシャッハとの出会いやコンビでの活動、恩師である初代ナイトオウルとの絡みも多く、常人ヒーローの物語として楽しめる。
ウォッチメン本編のエピソードと新エピソードを上手く織り交ぜつつも、わりと普通にヒーローコミックしている一作です。
作中ではナイトオウルとロールシャッハコンビの仲良さそうな会話が見れたり、火事現場に乗り込んで二人して子供を抱えて救出するシーンがあってちょっとほっこりしました。

ナイトオウルとトワイライト・レディ

ただこの話、トワイライト・レディが完全にヒーローとして描かれており、PS3のゲーム『WATCHMEN: The end is nigh』のストーリーと矛盾してるんですけどね……
この際ゲーム版の方は並行世界と考えたほうがいいかもしれない。あっちも一応オフィシャルな作品だけども。
【『Watchmen: The End is Nigh Part2』デモふいんき訳】(※『デムパ新聞者』様)

次にDr.マンハッタン編。
量子宇宙理論を絡めた難解な言い回しと、「あらゆる時間に存在でき、あらゆる時間を等価に感じる」という彼の非人間的な感覚を表現するためか時間軸が飛びまくったり並行して描かれたりする演出が合わさるため、かなりクセの強いハードSF作品に仕上がっています。
アートを務めているのがカバーアーティストとして有名なアダム・ヒューズであるのにも注目。
(現在コミック本編のアートを手がけることは殆ど無く、これだけまとまったページを描くのは本作が20年ぶりだとか)

【カバーランてなんだ?】
※『カバーラン アダム・ヒューズ カバーアートコレクション at DCコミックス』の発売を記念して作成されたWEBサイト。

時間軸を見まくるマンハッタン

I.F.チェンバーの事故に巻き込まれず、自身が超人へと変貌せず一科学者としての人生を続けている量子世界を発見してしまうDr.マンハッタン。
あらゆる時空の観察を続けていく内に、「左か右か」「白ワインでなく赤ワインを飲む」「タクシーに乗らず歩く」など、自身の些細な決断によって様々な可能性の量子世界を生み出してしまっていたことを知ってしまうというストーリー。
世界が核の炎に焼かれてしまう悲惨な未来を無くすため、Dr.マンハッタンが量子観察者として分岐して生まれてしまった世界を一つずつ閉ざしていくというスケールが大きすぎる内容です。
時間軸を超えて世界を修正していくというこの展開は、Dr.マンハッタンがかつては時計職人を志していたというエピソードに引っ掛けている気もする。
ウォッチメン本編の様々な名場面に、独自の新エピソードと量子世界(要は並行世界)の描写を挟んでいくという構成が面白いです。

最後に収録されているのはモーロックことエドガー・ジャコビの物語。こちらは全2話とやや短め。

心酔するモーロック
ミニッツメンの宿敵である“スーパービラン”モーロックのその生涯が描かれていく

1話こそモーロックのオリジンを語るシンプルな内容だけども、2話目からはモーロックがオジマンディアスに利用されていることに気づかないまま、彼の目指す計画がじわじわと進行していく様を見せつけられる、なんとも言えない怖さのあるストーリーにシフトしていきます。

Dr.マンハッタンの登場により、ヴィランとして活動することもできなくなり、ただの前科者の老人となって弱っていた心の隙をオジマンディアスに付け込まれたモーロック……
オジマンディアスの計画の単なる「コマ」である事も知らず、自分を救い仕事を与えてくれた彼に心酔し続けるその様が見ていて辛い。ただただ時流に流され続ける、一人の男の悲惨な物語です。
このモーロック編を読むと、ウォッチメン本編でのモーロックの死亡シーンの印象が大きく変わるかも。

◆感想
この3巻は前巻以上に「ウォッチメン本編の補完」に力が入っており、Dr.マンハッタン編に至っては前日譚どころか本編後の描写まで盛り込むという思い切った一作になっていました。
本編との整合性もとれているし、それだけでなくナイトオウル編やモーロック編では他の『ビフォア・ウォッチメン』での描写とも上手く絡めている。
これだけ丁寧に作られた前日譚であれば、読んでいて違和感もないし面白い。

ビフォア・ウォッチメンの邦訳も、いよいよ次の4巻『ビフォア・ウォッチメン:オジマンディアス/クリムゾン・コルセア/ダラービル』でラストかぁ……
最初は不満もあったけど、読んでみるとなんだかんだで面白いエピソードもちらほらあったし発売が楽しみ。
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