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30 2014

スコット・スナイダー&ジョック他/バットマン:ブラックミラー

バットマンブラックミラー表紙

「ゴッサムは底なし沼と同じだ。誰もこの街を理解することはできない…
 相手がアーカムの連中なら、その悪意だって理解できる。
 でも、ミラーハウスにいたのはごく普通の市民だった…
 最近、この街は以前よりも堕落しているような気がする。
 何かが変わりつつある。見知らぬ街みたいに思えるよ」


バットマンが対峙する、ゴッサムシティの暗黒面……

ブルース・ウェインが帰還した後も、ディック・グレイソン(元ナイトウィング)は“もう一人のバットマン”としてゴッサムシティを守っていた。

スーパーヴィランの武器や道具を収集し、裕福な市民に売りさばく“ディーラー”……禍々しい雰囲気を漂わせて街に帰ってきたゴードン本部長の息子……そしてジョーカー!
ディックはバットマンとしての自己を確立するためにあがきつつ、ゴッサムシティの闇に巣食うおぞましい事件に挑む!

バットマン“梟”三部作のスコット・スナイダーが贈る、スタイリッシュなダーク・ミステリー!!


◆関連作品過去記事
【バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル】
【バットマン&ロビン】

◆収録作品

2011年01月:Detective Comics #871
2011年02月:Detective Comics #872
2011年03月:Detective Comics #873
2011年04月:Detective Comics #874
2011年05月:Detective Comics #875
2011年06月:Detective Comics #876
2011年07月:Detective Comics #877
2011年08月:Detective Comics #878
2011年09月:Detective Comics #879
2011年09月:Detective Comics #880
2011年10月:Detective Comics #881


◆The Face in the Glass
本作『ブラックミラー』は、NEW52直前のディテクティブコミックス誌で展開されたバットマン最後のエピソード。
(※「NEW52」については過去記事で解説しているのでそちらで)
数あるバットマン関連誌の最終話の一つがついに邦訳。評価が非常に高い作品と聞いていたのでこれは本当に嬉しい。個人的にも邦訳希望アンケで何度かリクエストしていましたし!
こうして翻訳が出たということは、やっぱり国内でもこの作品を望む声が多かったってことなんでしょうかね。

上記の関連作品に『バトル・フォーザ・カウル』『バットマン&ロビン』の2作品を挙げましたが、「なぜディックがバットマンになっているのか」が気になるなら読めばいいというぐらいで、本作『ブラックミラー』とのストーリー的な繋がりはさほどなく、十分単独で楽しめる作品になっています。
それにディックがバットマンになっている理由は解説でもフォローされているんで。

時系列的には『バットマン&ロビン』でも描かれたブルース・ウェインの帰還後、ウェイン・インタープライズの新会社『バットマン・インコーポレイテッド』が発足された時期にあたるとのこと。
(ちなみにこの新会社がメインとなるモリソンバッツ第三部、『バットマン:インコーポレイテッド』も10月に邦訳版が出る予定。こちらもリランチ前バットマンの最後のエピソードの一つ)
ブルースは世界中でバットマン候補を探している最中なため、ゴッサムには不在という設定。
そのため『バットマン&ロビン』に引き続き、現在もディックが二代目バットマンとしてゴッサムで活動しているというわけなのです。

本作『ブラックミラー』はゴッサムで様々な事件が発生し、現在バットマンとして活動しているディックが調査に乗り出すというストーリー。
第1に謎の男、ディーラーが上流階級向けに夜毎開催しているという、ゴッサムヴィランの小道具を売り出す闇オークションの調査。

闇オークションの開催者ディーラー
本作初登場のヴィラン、ディーラーはミラーハウスという闇オークションを開催している男
オークション参加者は雰囲気に酔っているわけではなく、本気で『悪』の魅力に取り憑かれている

次にゴッサム・グローバル・モダン銀行で起こった、「火曜朝に、巨大なシャチの死骸が何故か銀行内で横たわっていた」という奇妙な事件。
そして最後に、ジョーカーの脱走……

ディックはゴードン本部長と協力して捜査を進めていくのですが、それと並行して、ゴッサムに帰ってきたゴードン本部長の息子、ジェームズ・ゴードン・ジュニアとの家族間の問題を描くストーリーも進行していきます。
不気味な悪童だったジェームズ・ゴードン・ジュニアがゴッサムに帰還した理由……それは読み進めていく内に明らかになるはずです。

PICK UP キャラクター ジェームズ・ゴードン・ジュニア
ジェームズ・ゴードン・ジュニア「ジョークだって。僕はジョークが下手だから…ごめんよ」

本作『バットマン:ブラックミラー』のメイン登場人物として立ちまわるキャラクターの一人、それがジェームズ・ゴードン・ジュニア。
ゴードン本部長と彼の前妻の間の息子であり、オラクルことバーバラ・ゴードンの義弟にあたる人物です。
新キャラではないですが、青年としての姿が描かれるのは本作が初。

~ゴードン一家の遍歴~

息子ジェームズ・ジュニアの誕生後、ゴードンが交通事故死した弟夫妻の娘、バーバラを引き取る。

妻、息子ジェームズ・ジュニア、姪のバーバラの四人家族で暮らし始める。
(妻の名前もバーバラなので、一家の中にバーバラという人物が二人いることになる)

しかし夫婦仲が悪化し、妻バーバラはジェームズ・ジュニアを連れて出て行く。

その後、ゴードンは養女バーバラと二人きりで生活を続けるが、
かつて不倫関係にあった(イヤーワン参照)サラと再会。

再び二人は恋に落ちついに結ばれるが、サラはジョーカーの手により帰らぬ人となってしまう。
さらにバーバラもジョーカーに腰を撃たれ(キリングジョーク参照)半身不随に。

結局ゴードンとバーバラ二人きりの生活に逆戻り。
バーバラはバットガールを引退し、オラクルとして様々なヒーロー達のバックアップを担当する。


歴史的な初登場は『Batman #407』。つまり『バットマン:イヤーワン』でギャングに誘拐されていたあの赤ん坊がジェームズ・ゴードン・ジュニアの初お披露目となっています。
元々かなり出番の少ないキャラであり、本作が久々の登場であるとか。
(コレ以外のNEW52以前の登場は『Batman: The Long Halloween』、『Secret Origins Vol.2 #20』、『Batman: Legends of the Dark Knight #13、#159、#161、annual #2』、『Batman: Night Cries』ぐらい)

本作のジェームズ・ジュニアはなんと、幼少の頃から罪悪感や良識に欠けていたサイコパスとして姿を表わすことに。
少年時代のある出来事がきっかけでゴッサムを離れていたのですが、今回12年ぶりにゴッサムに戻ってきたのです。
ただ今の彼は自身がサイコパスである事を自覚しており、医者から処方された薬を飲んで外界からの刺激を正しく受け取れる状態。
ゴッサムに戻ってきたのも、医者であるレスリー・トンプキンスの下で働けるよう父から口利きしてもらうためという至極真っ当な理由でした。
しかしゴードンは幼少の頃の息子の姿を知っているため、どうしても彼の言葉を信じ切れずにいるのです。

実際幼少期のジェームズ・ジュニアはろくに笑わず、個人的な興味で動物を殺し、ハロウィンではよりにもよってジョーカーの仮装をするような倫理観に欠けた子供でした。
さらに当時発生したバーバラの友人、ベスの失踪事件に関わっている可能性もあり……?

彼がこのように“おかしく”なったのは前述した『Batman #407』で橋から落ちた時の衝撃が原因かもしれないし、ゴードンが仕事一辺倒であまりかまってやれなかったせいかもしれないし、生まれつきの性質だったのかもしれない。
兎にも角にも、バットマンでこういう『リアルな怖さ』を持ったキャラを見たのは初めてでした。

幼少時代のジェームズ・ゴードン・ジュニア
幼少時代のジェームズ・ゴードン・ジュニア

ちなみにNEW52で再スタートを切ったバットマンのストーリー、『梟の法廷』の一話目にもちらっと顔出ししていますが、まだ本作を読んでいないのであれば若干のネタバレになってしまうので確認する際は注意。
何気にNEW52に入ってからもバットガール誌などで再登場している模様。

◆感想
『ブラックミラー』はNEW52を受けて終了した数あるバットマン関連誌の内のラストエピソードの一つではありますが、本作のメインはゴードン本部長の一家を巡る陰惨なダークミステリーであり、わりと最終話感は薄かったりします。
(代わりに様々なゴッサムヴィランの小道具が話に絡んだり、『イヤーワン』『ダークビクトリー』に登場した人物の名前が出たりして少しニヤリとする場面は多いですが)

素直に愛情を示すことが苦手なブルースに養子として育てられたディックが、いまや正義のヒーローとして真っ当に成長した一方で、警察官の息子であるゴードンに育てられたジェームズ・ジュニアは倫理観が大きく欠如した性格に歪んでしまっている。
ディックとジェームズ・ジュニア、鏡のように対照的な二人の息子の描写も印象的。

久々の再会
ディック・グレイソンとジェームズ・ジュニア、久々の再会

これまで読んできた邦訳バットマンの中でもトップクラスに好きな作品かもしれない。超オススメです!……めちゃくちゃ暗くて重たい内容だけれども!
邦訳ではやや貴重な『ミステリーをやっているバットマン』が楽しめる一作でもあるので、探偵物が好きな方も是非。ただミステリー重視な分、アクションはやや控えめです。『Detective Comics』だからね。

巻末にはディックがバットマンとして活躍した未邦訳エピソードの解説もあるので要チェックです、
この頃はメインストーリーがモリソンの書く『バットマン&ロビン』誌、『バットマン:インコーポレイテッド』に移っており、当時のバットマン誌がどうなっていたのか気になっていたので本当にありがたい。
『バトル・フォー・ザ・カウル』で描かれたブラックマスク、ペンギン、トゥーフェイスの三つ巴の抗争の顛末もここで確認できます。
(リランチ前のバットマン関連誌ではゴッサムヴィランとの明確な決着を描いたエピソードってのは特に無かったと知って、ちょっと残念なようなそれはそれでアリなようなフクザツな気分)

来月はこれまたスナイダーがライターを務めた『バットマン:ゲート・オブ・ゴッサム』が、そして7月はNEW52バットマンの続き『デス・オブ・ザ・ファミリー』が連続刊行!
今年はちょっとしたスナイダー祭りやで!
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3 Comments

えりー  

いつも楽しくブログ拝見してます。

ブラックミラー…ノーチェックだったのですが、ここのレビューを見て衝動買いしてしまいました。
大変面白かったです!

ところで、話中のシャチ事件(ハングリーシティ)って、一連の事件とどう関係性があるんでしょうか?よく分かりませんでした…。

2014/06/02 (Mon) 22:17 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>えりーさん
あの書き方だと『ハングリーシティ』で描かれる事件も黒幕が関わっているように思えちゃいますね…ゴメンナサイ!修正しました。
この事件は全く黒幕が糸を引いていない、独立した事件です。

『ハングリーシティ』は「ディックが物事の上辺だけを見て真実をすぐに見抜けなかった」という展開の後に、読者にだけ黒幕の本性を明かすという皮肉めいた演出をやるためのエピソードって感じですね。

2014/06/02 (Mon) 22:56 | EDIT | REPLY |   

森野大吉  

け、携帯代が。
それはさておき、暗い、重い、ついでに痛い作品でした。ホラー嫌いな友人に、黙って読ませようかしら。

2014/06/04 (Wed) 12:22 | EDIT | REPLY |   

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