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06 2014

ダーウィン・クック&アマンダ・コナー他/ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン/シルク・スペクター

ミニッツメンシルク・スペクター表紙

「アーシュラが死んだ後のサリーの章はどうなんだ?ネルソンの件も同じだよ。
 この本が世に出ればミニッツメンの名声に傷が付くんだぞ。
 君一人が責任を取って済む問題じゃなかろうに」

「それが本音か。君はサリーも他の誰も気にかけちゃいない。
 ブランドが損なわれる事を心配してるだけだ。
 なぁラリー、なぜミニッツメンがうまくいかなくなったと思う?
 君と言う人間はすべての価値を損得と数字だけで計ろうとする。
 だが我々の中には、それ以外の理由で命を懸けた者もいたんだ。
 高潔なる目的のために。
 真実は嫌いか?だが本は出すぞ」


アメリカンコミックスの金字塔『ウォッチメン』の前日譚を描いた注目作、ついに登場!
第2弾は、鬼才ダーウィン・クックが描く、ミニッツメンとシルク・スペクター。

ミニッツメン
1940年代、アメリカの繁栄を映すかのように一瞬の煌めきを放ったミニッツメン。その笑顔の裏に隠された、驚くべき実像が今、明らかになる。

シルク・スペクター
時は1966年。母の見果てぬ夢を背負わされた少女は、激動の時代にあって、自らの人生を探し求める。大人への階段を登った先に、彼女を待つ未来とは。


◆関連作品過去記事
【ウォッチメン(Watchmen)】
【ビフォア・ウォッチメン:コメディアン/ロールシャッハ】

◆収録作品

2012年08月:Before Watchmen: Minutemen #1
2012年08月:Before Watchmen: Silk Spectre #1
2012年09月:Before Watchmen: Minutemen #2
2012年09月:Before Watchmen: Silk Spectre #2
2012年10月:Before Watchmen: Minutemen #3
2012年11月:Before Watchmen: Silk Spectre #3
2012年12月:Before Watchmen: Minutemen #4
2013年01月:Before Watchmen: Silk Spectre #4
2013年02月:Before Watchmen: Minutemen #5
2013年03月:Before Watchmen: Minutemen #6


◆INTRODUCTION
アメコミの名作『ウォッチメン』の前日譚を描くまさかの続編『ビフォア・ウォッチメン』の第2巻であるミニッツメン&シルク・スペクター編が発売!
正直前巻のコメディアン&ロールシャッハ編はあまりにも肌に合わない内容でちょっとテンションが下がってしまったのですが、『ビフォア・ウォッチメン』それぞれ担当ライターが異なる作品。
コメディアンとロールシャッハを担当したブライアン・アザレロの『ビフォア・ウォッチメン』独自色が非常に強い作品でしたが…

ダーウィン・クックが担当する第2巻『ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン/シルク・スペクター』はというと、割と本編『ウォッチメン』の作風に寄せた作品となっていました。
一ページに基本9コマ配置するというコマ割りやナレーションの多用、章末の引用文などが極力再現されています。

まずは初代ナイトオウルことホリス・メイソンが主役に展開される『ミニッツメン』編。
こちらはウォッチメン本編でも一部を読むことができた彼の自伝『仮面の下で』を発表するまでの23年間を、時代を複雑に前後させながら展開させていく内容になってます。
その中には自伝の中で語られることが無く、そのまま闇に葬られた事実や事件があった…というお話。

ミニッツメンの会合
事件を『選ぶ』ミニッツメン

精神を完全に病んでしまう前のモスマンの活躍が拝めたり、ホリスはシルエットに恋愛感情を抱いていたという事実が新たに明かされたり、本編で軽くほのめかされたフーデッド・ジャスティスとキャプテン・メトロポリスの関係もより明確になっております。
さらにウォッチメン本編ではぼかされていたフーデッド・ジャスティスの正体とその最期も判明。
シルエットの死の下りを大きく膨らませた一篇でもあり、特にストーリー終盤は緻密で陰惨で、ページを開く手が止まらなくなるほど引き込まれました。

次は『シルク・スペクター』編。ライターは同じくダーウィン・クックですが、アートは女性キャラを愛嬌たっぷりに描くアマンダ・コナーが担当。
二代目シルク・スペクターであるローレル・ジェーン・ジュスペクツィクを主役としているのですが、ストーリーは『親に反発する16歳の女の子』という部分を前面に押し出しており、序盤では親に内緒で家を飛び出してボーイフレンドのグレッグと駆け落ちするという展開なもんで「あれこれウォッチメンだよね?青春映画じゃないよね?」と思ってしまう内容。

反抗期ローリー
戦闘技術を叩きこむ母親に反発するローリー

しかし駆け落ちした先で、アシッドパーティを利用し小金を稼ぐグルスタインという男の罠にかかり、グレッグは病院に搬送されてしまうのです。
こちらは1966年のカウンターカルチャーの幕開けとなった時代を舞台にした一作。
ラストシーンは結構希望に満ちた締めくくられ方なんですけど、『ウォッチメン』のストーリーを知っているとあまり笑えなかったり。

ちなみに今作『ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン/シルク・スペクター』では、コメディアンがかなり印象に残る役どころで登場します。
本編では露悪的なキャラ(読み進めていくうちに二面性があることが分かるものの)というイメージが強いコメディアンですが、本作ではやや善人な部分を打ち出しているような。

小ネタ
あと本編を読んでコメディアンとローリーの関係を知っているとニヤリとするシーンが

◆感想
思いのほかウォッチメンしていて普通に面白かったぞ!

特に良かったのがミニッツメン編。こちらはチーム内の関係が少しずつこじれはじめ、じわじわと崩壊していく様が丁寧に描かれており、また本編で断片的に描かれた“事件”と本作で初めて明らかになる“事件”を上手く絡ませた秀逸なエピソードでした。
描写が少ないミニッツメンの面々でよくもまあここまでの話を作り出したもんだ!

というわけでこの2巻は割とおススメです。シルク・スペクター編はローリーが(16歳と言う年齢設定もあって)本編のキャラとはやや異なっており、ちょっと意見が分かれる作品かもしれませんけども。

…ただ、これは個人的な意見なんですが、やっぱり本作はどれだけストーリーが良くてもなんとなく二次創作を読んでいるような気分になってしまいますね。設定を追加するだけでなく、本編であえて曖昧にされていた要素が明らかになる部分があまりに多いんで。
公式の企画である以上、『ビフォア・ウォッチメン』で描かれたエピソードは事実という扱いになるはずなんで認めなければいけないけれど…
複数の作家が手がけていく普通のスーパーヒーロー物と違い、『ウォッチメン』はムーア一人の手で完結させていた作品だからどうしても抵抗感があるのかなぁ。

次の3巻『ナイトオウル/ドクター・マンハッタン』はJ・マイケル・ストラジンスキーとレン・ウェインがライターをそれぞれ担当しているとか。彼らが手がけた作品は『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』『スーパーマン:アースワン』『DCユニバース:レガシーズ』と邦訳はちょくちょく出てますね。
一体どんなストーリーになるのやら。
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5 Comments

森野大吉  

非常に面白かったです。
特に『ミニッツメン』は『ウォッチメン』で残された謎を上手く物語に絡めており、『仮面の下で』においてヒーローの真実を暴いたホリスが、自らのそれは隠していた、というのは非常に巧みで感心致しました。
『シルクスペクター』は決して駄作ではないものの、もう少し本編に絡んだ内容だと良かったですね。最後の会合シーンで二代目ナイトオウルのゴーグルについて何か感想を言わせる位でも良かったから。
あとアートは共に好みでした。特にクックの描くシルエットの美しいこと。
では今回はこの辺で。以前書いたように、暫くコメントを出来ない森野でした。

2014/03/06 (Thu) 14:36 | EDIT | REPLY |   

アウル  

あのアラン・ムーアが「金払うからそうゆうことはやめてよ」っていったのを
振り切って強引に連載しちゃっている以上、こっちも「金払うから頼むムーア、読ましてくれ!」くらいの覚悟は必要でしょうね(絶対違う)

個人的にはやっぱコメディアンの活躍がちょいちょい多くてよかったですね。
思えばベトナムに限らず戦争から帰還した兵士がPTSDで苦しんでおられる
話しをよく聞きますが、コメディアンはそれを自分流で克服して殺されるあの日までヒーローとして国に仕えつつ娘を影から見守っていたと思うと、
ウォッチメン本編ではイメージし辛かったコメディアンの内心がちょっとでも知れてよかったと思います。

2014/03/10 (Mon) 14:07 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>森野大吉さん
>クックの描くシルエット
シルエットは作中でもいいキャラしてましたねー。
まさかミニッツメンの中で一番ヒーローしていた人だったとは。

>>アウルさん
>娘を影から見守っていた
父親としての姿のコメディアンが本編以上に明確に描写されていて結構印象に残りましたね。
今改めて本編チャプター9を読み返すとなんだかより切ない。

2014/03/12 (Wed) 23:22 | EDIT | REPLY |   

メダロポリス  

「ミニッツメン」良かったです

コメディアン/ロールシャッハ誌の方では少し面白さに疑問符がつく感じでしたけど、今回のミニッツメンはこれ自体が一つの作品として成り立っているように感じて凄く面白かったです
ミニッツメンの面々もある意味でウォッチメンよりも濃いキャラだったのが意外でした

2014/06/28 (Sat) 05:35 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>メダロポリスさん
元々本編ではそこまで掘り下げられて描写されていたわけではない面々だったんで、結構新鮮なストーリーでしたね。
読めば読むほどシルエットさんの株が急上昇していきました。

2014/06/29 (Sun) 23:18 | EDIT | REPLY |   

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