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05 2014

内藤泰弘/サムライスピリッツ

内藤侍魂表紙
烈火のごとき剣戟に身を投じ…
我が身染める血風 絶える事無し
明日は別れよと今日の月に語り
草を褥にふるえて眠る
極むるは生 果てに待つるは死
哭きながら征く 阿修羅の道なり――

妖斬鬼哭編 サムライスピリッツ

――時は天明八年、徳川家斉公の治世に黄泉から蘇った天草四朗時貞!
天草の操る化け物に挑む、無敵の剣客覇王丸!
修羅の旅が続く――!!


◆迫力ある作画で独自のストーリーを描く一作
昨年は「武器あり対戦格闘」というジャンルを確立した名作格闘ゲーム『サムライスピリッツ』の20周年という記念すべき年でもありました。
といっても新作ゲームの開発にあまり積極的でなくなってきたSNKプレイモア、2013年は特に何かしら20周年記念の企画を立ち上げるわけでもなく、12月15日に『真サムライスピリッツ』のスマホ移植を発売しただけでした。

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元々のボタン同時押し操作に加え複雑なコマンド入力が多い真サム
スマホの操作性であの超反応CPU戦を戦いぬけるんだろうか

「せっかくのサムスピ20周年がこれだけってのはなんか寂しいなぁ」
…と、思ってたらなんと!
年末の28日に、あの「トライガン」の内藤泰弘先生が過去にあのウソ技で多くの純真な子供たちを騙してくれたファミマガという雑誌で連載していたサムスピのコミカライズの復刊本が発売されるとかいうじゃないですか!やったー!

覇王丸!
斬サムのデザインに先駆けてざんばら髪がボリュームUPしている内藤版覇王丸

改めて解説。
本作は「ファミリーコンピュータ―Magazin」という子供向けのゲーム雑誌で1994年11号、21号~26号にかけて、サムスピのSFC移植に合わせて連載されたコミカライズです。
本作のコミカライズを手掛けたのは、後に「トライガン」で名を馳せることになるあの内藤泰弘先生。
このサムスピ漫画が内藤先生の連載デビュー作という事もあり、まさに記念すべき一作でもあります。
(この縁もあって、後に『サムライスピリッツ零』の新キャラクター『妖怪腐れ外道』のデザインを手掛けていたりもします)
95年に単行本が発売されたのですが現在は絶版。
本書は表紙を新たに描き下ろし、『プレイステーションMagazin』に掲載された斬サムのイラストを新たに追加収録した復刻版です。

描かれるストーリーは完全オリジナル。
復活した天草四朗時貞がその邪悪な力をもってして各地で天変地異や戦乱を巻き起こし暗黒の時代へと向かわせているため、彼の野望を止めるためそれぞれの目的を持った剣士たちが戦いに赴く…という大元の展開自体はゲームと同一なのですが、オリジナルキャラの出番が非常に多い。
覇王丸らが戦う相手は、主に天草四朗によって伴天連バテレンの秘術を施された配下達
この作品は、強い奴との果し合いを人生の糧として生きている男・覇王丸が旅の途中で様々な人物と出会い、また次々に遭遇する妖怪のような敵を叩き切っていくある種爽快なストーリーとなっています。

天草四朗時貞

ちなみにこの漫画、子供向けのゲーム雑誌に連載されていたとは思えないくらいに残酷な描写が多い!
殺害した相手のその目と口を縫い付けてその首を持ち帰る楠田霊鑑、カムイコタンの妊婦を喰い散らかし、中にいた胎児の目玉を口の中で転がしている怨天丸の部下、どこかの村の娘をミキサーのような装置に入れ、そこから絞り出した血の風呂に入っている天草四朗など、「こんなん小さい子が見たらトラウマ級だろ!」と言いたくなるほど凄惨なシーンが次々に飛び出してきます。

喰われる妊婦
子供泣くで

実際サムライスピリッツというゲームで描かれるストーリーは基本的に暗い物が多く決して明るい作風ではないのですが、それを差し引いても子供向け雑誌でやる域を超えている。
知らなければ青年向け雑誌で連載されていたものと勘違いする人も多そう。

◆内藤泰弘先生による本作のよもやま話

◆感想
先に言っておくとこの作品、ストーリーが未完のまま終わっています。
前述した内藤泰弘先生のよもやま話にある通り、単行本一冊に収めようとしたものの構成力が拙かった為に打ち切りENDのような締め括りになってしまったとの事。
最終話で天草四朗の側近集団である『来須衆』12人が一気に登場、そしたらこっちも王虎・シャルロット・千両狂死郎・不知火幻庵・服部半蔵・ガルフォード・タムタムが初登場し加勢するというすごい駆け足っぷり。
そしてラスボスの天草四朗との戦いは描かれずに終わるというまさにソードマスターヤマトのような展開。
単行本一冊分だけじゃ尺が足りなかったんや…
ただまあラスト付近の戦いは超スピードになっちゃってますけど、覇王丸という男の物語はこの単行本一冊で十分に描かれていると思います。

本作のもう一つの見所はやっぱり内藤先生によるオリジナル要素。
登場する天草四朗の配下のデザインは原作の雰囲気を損なうことのない非常にハイセンスな仕上がり。
後のポリサムに登場する『巖陀羅』『木偶』を思い起こさせるデザインです。
それとサブ主人公として登場するオリジナルキャラクター・小綱(おづな)という少年。

小綱が閑丸のモデル?
天草の配下に家族を殺され、郷を追われた少年・小綱。
「強さとは何か」を知るために覇王丸の旅に付いて行くことを決める

このオリジナルキャラクター、どうも後の斬サムで新キャラクターとして登場する事になる緋雨閑丸に似ている気がします。
特に公式で明言されたわけではないのですが、天サムのEDでは覇王丸とナコルルがちらっと登場するというのも本コミカライズを意識しての演出な気がしないでもない。
ちなみにこれは余談ですが、『るろうに剣心』の作者である和月伸宏先生は閑丸を見て『剣心がモチーフなんじゃないか?』と思い一人喜んだというエピソードがあります。
(しかも後にスタッフから否定されるというオチ付き)

初代のコミカライズでありながらおとなしめな性格のナコルル(初代では活発な性格に描かれていた)、前述した覇王丸の髪のボリュームUPという独自のアレンジといい、後のサムスピシリーズに色々影響を与えているコミカライズなのかもしれません。
本作は初期のサムスピのオカルト+和風の雰囲気を完全オリジナルのシナリオで表現しているため、話は綺麗に畳めていないけれどSNK格ゲーの名コミカライズの一つだと断言しても良いはず。
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5 Comments

No Name  

初めてまして
僕も今日買いました
この作品が無ければ徳間の少年キャプテンでトライガンが連載されなかったと思われるのである意味偉大な一作ですね
サムスピの世界観と内藤先生が持つ作風が調和して描かれておりゲームのコミカライズでは理想的な内容でした
登場キャラの殆どが弱さを持ちつつも理不尽や、強敵に立ち向かう後ろ姿は後のトライガンにも通じると思えます
(来須衆はぶっちゃけガンホーガンズだよなぁ…。前者は非人類でガチで容赦ないせいか後者のほうが凄くマシに見える)

2014/01/05 (Sun) 22:48 | EDIT | REPLY |   

流浪牙-NAGARE@KIBA-  

内藤泰弘版サムライスピリッツは中途断絶なんですか……評判の良さがあるだけに残念です。
とりあえず内藤泰弘版サムライスピリッツの話が出たので、もう一方の島本和彦版サムライスピリッツの方にも
何らかのスポットが当たって頂けると嬉しいですね、と。
あと、車田正美版サムライスピリッツは何故執筆自体が取り止めになってしまったのかという事については、その……

ついでにファミマガ=子供向けというのは少し違う様な気がしますね。
どう見ても(?)子供よりチョット高めの少年層から一般の皆さん向けだったような気がしてならないような。
(読者投稿ページなんか明らかに子供じゃ無い人ばっかりだったハズなのは朧気ながら、ですが)
まぁ、勝スーパーファミコンとかファミコン通信あたりに比べると子供にも勧め易い雑誌だったのは確かなんですが。
子供ながらに何かが違うな――と感じたりはしていましたので。

2014/01/08 (Wed) 18:54 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
オリジナルで構成されている要素が多いのに、サムスピの雰囲気を全く壊していないのが素晴らしかったですねー。
実は僕トライガンは殆ど読んだことがないんで、この機会にちゃんと読んでみようかなと思いました。

>>流浪牙さん
>ファミマガ=子供向けというのは少し違う様な気がしますね。
あれっそうですか?なんか僕の中では結構子供向けな雑誌だったイメージが…
後に編集長自身の「子供に向けた誌面作りを志した」という発言も見た気がしますし。

2014/01/10 (Fri) 23:34 | EDIT | REPLY |   

電子の海から名無し様  

なつかしい・・・!
小学生の頃だったかに読んでマジトラウマになった記憶ががががが。
特にナコルルの仲間の末路はもう未だに記憶にこびりついて離れないほどですよマジで。
それほどのインパクトのある作品でした。というか小学生に読ませるものじゃない絶対にTT

2016/01/30 (Sat) 11:38 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>電子の海から名無し様さん
なぜあんなに気合の入ったグロ描写を盛り込んでしまったのか!
サムスピ自体はゲームも一応グロ&オカルトな作風ではあるけども!

2016/01/31 (Sun) 16:28 | EDIT | REPLY |   

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