ツルゴアXXX

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21 2013

カレン・バン&ダリバー・タラジッチ他/デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース

デッドプール&パニシャーその1 デッドプール&パニシャーその2

「こんなのは朝メシ前さ。まだまだ食い足りねぇぜ」
[いや。今のは過去のデッドプールの喋り方だ。
 もはや誰かを感心させる必要はない。お前には俺がいる]

「お前、昨日今日の仲じゃねぇな…
 ずっといたんだろ、オレの心の奥底に。
 この何年か、オレを内側から腐らせていたのはお前なんだろ、おい?」

[難しく考えるな。ショーを欲しているのは奴らだ。
 だがもう奴らに踊らされる必要はない]


KILL THE MARVELS!

無数に存在する多次元世界。その一つ一つに固有の物語が存在する。
数ある世界の中には、無敵のマーベルヒーローが無残な最期を迎えた世界も少なくない。
そして、ここにもそんな世界が一つ……。

一つは、デッドプールが己が存在の意味を見出した世界……。
そしてもう一つは、パニシャーがヒーロー達への復讐に駆られた世界……。

デッドプールとパニシャー、
二人の怒りの前に、マーベルユニバースは崩壊の時を迎える……。

マーベルヒーローは皆殺しだ!
コミックスの常識を遥かに超えた内容で大反響を呼び起こした二つの問題作が奇跡のカップリング!


◆収録作品

1995年11月:Punisher Kills the Marvel Universe
2012年10月:Deadpool Kills the Marvel Universe #1
2012年10月:Deadpool Kills the Marvel Universe #2
2012年10月:Deadpool Kills the Marvel Universe #3
2012年10月:Deadpool Kills the Marvel Universe #4


◆NO HOLDS BARRED
ヴィレッジは年の瀬にイロモノ作品を邦訳しないと死ぬ病気にでもかかっているのかっ!

…と叫んだところで、今年開催された『海外マンガフェスタ』にて邦訳がアナウンスされ、今年の20日に発売と相成ったヴィレッジブックスの“顰蹙枠”(公式な呼称)第3弾、『デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース』を紹介します。
(ちなみに第1弾、第2弾は『マーベルゾンビーズ』シリーズでした)

国内でも人気はあるけれど、邦訳本ではなかなか活躍が拝めないマーベルキャラであるデッドプールとパニシャー。
そんな2人も最近はちょくちょく単独誌の邦訳版が刊行されてきました。

※過去記事
【パニシャー・ウォージャーナル:シビル・ウォー】
【X-MENユニバース:シビル・ウォー】
【デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス】

そしてこの年の瀬にデッドプールとパニシャーがそれぞれ主役を務める単独作品が、日本版独自のカップリング仕様としてまたも発売となったのです!
…が、その内容は彼らがマーベルキャラクターを皆殺しにするというとんでもない衝撃作。
あくまでIFストーリーとはいえこれは悪趣味!悪趣味すぎる!

まずは全4話で展開される『デッドプール/キルズ・マーベルユニバース』
チャールズ・エグゼビア教授はデッドプールを救うため、優秀な精神科医に預けて彼の精神治療を試みようとします。
しかしこの精神科医は実は『サイコマン』というビランが化けた姿であり、彼の手によりデッドプールの頭の中にいた二人の人格黄色いモノローグ白いモノローグが消滅。心の奥底に潜んでいたもう一つの人格赤色のモノローグが姿を現してしまいます。
そして自分の存在するこの世界の“残酷な真実”を把握してしまったデッドプールは、ヒーローやビランを皆殺しにするという凶行に走る…という展開。
今回のデッドプールは『マーク・ウィズ・ア・マウス』の時のようなおちゃらけたセリフは非常に少なく(凶行に走る前、精神科医を前にして『ウォッチメン』のロールシャッハネタを口走るシーンぐらい?)、傍から見れば完全なるサイコキラーとしてヒーローやビランらの前に立ちはだかります。

しかしこの作品のデッドプールは非常に強い。
描写だけ見ているとヒーロー達が若干油断しすぎなきらいもあるんですが、基本的に苦戦することなくデッドプールはどんどん相手を殺害していきます。
的確に作戦を立てて並み居る相手達を一網打尽にしていくデッドプール…胸糞悪すぎるシーンの連発だけれど結構引きこまれてしまう。

どこか孤独なデッドプール
孤独なデッドプール

お次は上記の作品の元ネタである、1話完結の短編作品『パニシャー・キルズ・マーベルユニバース』
ライターは今年の8月に邦訳本も発売されたアメコミ『ヒットマン』を手掛けたあのガース・エニスですよ。

※過去記事
【ヒットマン Volume1】

事の発端は、セントラルパークでヒーロー達がビランと大規模な戦いを繰り広げていたことから始まります。
ヒーロー達はビランとの戦いに勝利を収めたのですが、その戦いに一般市民を巻き込んでしまうのでした。
急いで現場に駆け付けたフランクは、その現場で自分の子供と妻が死んでしまっている光景を目撃してしまいます。
茫然とするフランク。
それに対してサイクロップスは謝罪の言葉を述べるのですが、その言葉がいけなかった。

「すまない、我々は…彼女達がそこにいるとは…」

家族の死を「すまない」の一言で片づけられたフランクは怒り、拳銃でサイクロップスを含む数名のヒーローをその場で殺害してしまいます。
(ちなみにサイクロップス、フランクが近づいてくるのに気づくまでは後から来たデアデビルの追及に対して逆ギレ気味に言い訳をしてました)

当然そのまま連行され、裁判にかけられる事となったフランク。
弁護士となっていた幼馴染みのマットはフランクの弁護を買って出て、彼に公平な判決が下るよう力を尽くします。
結果としては終身刑が科せられたフランク。しかし、護送車に乗せられたフランクを待っていたのは刑務所ではなく、一人の老人、ケッセルリンクという男でした。
ケッセルリンクはスーパーヒーローの戦いに巻き込まれ、身体や家族を失った被害者たちの団体を率いている人物。
ただ一人ヒーロー達にやりかえしたフランクを見込んだケッセルリンクは金の力で彼を脱獄させ、被害者を代表してヒーローやビラン全てに対する復讐を依頼する。
これに同意したフランクはこの日からパニシャー罰する者と名乗り、マイクロという人物のサポートを受けながら長い長い復讐の戦いに身を投じる…というダークなストーリー。

「すまない」だと!?
パニシャーのこの一言に全てが詰まっている

「もし家族を失った原因がヒーローの所為だったら?」という体で展開していく本作『パニシャー/キルズ・マーベルユニバース』
スーパーパワーを持つ超人ではなく、あくまでただの人間であるフランクが銃器や兵器をフル活用してヒーロー達を容赦なく殺害していく光景は衝撃的。
しかし単純に血なまぐさいシーンを繰り返していくような内容ではなく、必死にフランクを救い出そうとするマットのシーンや、憎しみに突き動かされながらもギリギリの部分で一線を踏み越えていないフランクなど、人物描写が非常に上手い一作。
『ヒットマン』の時も思ったけど、ガース・エニスの書くハードボイルドは素晴らしい。

ちなみにフランクがヘルズキッチン出身なのとマットの幼馴染み設定は、あくまで本作のみの独自設定です。

◆感想
パニシャーとマット・マードック
フランク・キャッスルの連続殺人を何度も説得して止めようとする幼馴染みのマット・マードック

個人的にはデッドプールの方よりも、元ネタであるパニシャーのエピソードの方が面白かった印象。
こちらはヒーロー達と戦う動機には正直共感するしラストシーンも非常に印象深い。
一話完結の読み切りでありながら本当に完成度の高いストーリーでした。
この作品が読めただけでも満足感がある…というかヴィレッジは、単独ではページ数の少ないこの作品を邦訳するために世間で話題のデッドプールをくっつけたんじゃないかと邪推してしまう。
本作の世界のヒーロー(パニシャーとデアデビル以外)は、どうも市民を巻き込んでも「仕方ない」で済ませるきらいのあるアレな性格なようなので、人によってはこの作品も結構不快かもしれませんが…

デッドプールの方は悪趣味路線の強い破天荒な内容であり、ストーリーのオチ含めて「ああやっぱりこれはデッドプール誌なんだなぁ」と思わせられるお話だったんで若干好みが分かれるかも…
(作中のデッドプールの主張には色々考えさせられる物がありますが)
殺害描写も一部のキャラはどうやって倒したのかよく分からない場面がチラホラあったんで、そこはあんま深く考えて楽しむ内容ではないかなぁ。

ちなみにこのデッドプールのシリーズは『デッドプール・キルロジー』三部作の内の第一部に過ぎないとかなんとか。

キルストレッド デッドプールキルズデッドプール

第二部の『デッドプール:キルストレイテッド』はマーベルから連絡を受け取ったシャーロック・ホームズが対策チームを結成してデッドプールを打ち倒そうとするお話。
ラストを飾る第三部『デッドプール/キルズ・デッドプール』はとうとう並行世界のデッドプールを殺すために戦うお話だとか。いやどこまで行くんだこの殺戮ストーリー!

“顰蹙枠”として刊行されたこの作品ですが、デッドプールとパニシャーのどちらもストーリーはかなりシリアス。
いやここまでヒーロー達がバカスカ殺されていくと、一周回ってギャグに見えなくもないんですけどね。
普段の正史世界を扱った邦訳ではまず見られないシナリオが楽しめるので、思い切って手に取ってみるのもアリじゃないでしょうか。
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2 Comments

No Name  

「自分はコミックブックのキャラクター」なんて狂ってでもいなければ受け入れられない事実なんでしょうね。
…で、マトモになったらどーなるの?を描いたのがこの話。と自分は感じました。
印象に残ったのは…
劇中でやたらと素顔を晒すデッドプールと丸焼きにされた例のアヒル、そして人形強すぎ。

2014/01/05 (Sun) 02:40 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
パペットマスターの能力強力すぎますよねやっぱ!
邦訳では殆ど見たことないんですけど、正史世界でのヒーロー達はこのビランをどうやって倒してきたんだろう。

>劇中でやたらと素顔を晒すデッドプール
素顔にコンプレックスがあって覆面を外そうとしないと聞いてたんですが、本書やマーク・ウィズ・ア・マウスでは結構彼の素顔を拝めるシーンが多いのにちょっと驚きました。

2014/01/05 (Sun) 21:45 | EDIT | REPLY |   

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