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08 2013

桑田次郎/バットマン The BatManga Jiro Kuwata Edition

桑田次郎バットマン表紙
原子力げんしりょくカーだ、光線銃こうせんじゅうだ!!すごいぞ、つよいぞ正義せいぎおとこ!!』

もう一つの“ゴッムシティ”を体感せよ!

1939年の登場以来、様々な派生作品や映画が制作されている不朽のアメリカンコミックヒーロー『バットマン』。

今から約50年前『バットマン』を描いた日本人漫画家が存在しました。
その漫画家は『8マン』『月光仮面』といった数々のヒット作を生み出した桑田次郎です。

1966年4月にTVドラマシリーズが日本で放映開始されるのと同時に、
D.Cコミックとの独占契約のもと「少年キング」「少年画報」の2誌にて漫画版がスタートしました。

桑田の繊細で硬筆な描写はアメコミとマッチし傑作となりました。
米のバットマニアの間でも桑田バットマンの評価は高く
米の出版社Panteonから『BATMANGA』 というダイジェスト翻訳版が2008年に出版されています。

今回は「少年キング」連載の全43回と「少年画報」連載の全10回を完全収録、連載当時のカラーページも再現。
3冊をBOXに収めた日本初単行本化企画です。


◆これが日本のバットマンだ!
スピード感満載
スピード感満載な迫力のアクションシーン

1966年、テレビドラマとして放送が始まった『バットマン』に合わせて、「週刊少年キング」「少年画報」の2誌にて、日本オリジナルのバットマン漫画が連載される事となりました。
その漫画を手掛けたのはなんと『まぼろし探偵』『8マン』桑田次郎先生!
(ちなみに現在のペンネームは桑田『二郎』)


1966年のTVドラマ版バットマンはかなりコミカルな内容であり、吹き替えがおちゃらけていたのも相まって完全なギャグ作品と化していたのですが、この桑田次郎版バットマンはシリアスな科学探偵のバットマンを楽しめる作品になっています。
(ちなみに本国のバットマンのコミックも荒唐無稽な作風では人気が落ちてきたので、1964年あたりにはシリアスな作風に舵取りをしたとか)

うらやましいロビン
でも和むシーンもちゃんとあるよ!

桑田次郎バットマンは海外でも評価が高く、2008年の『バットマン:ブレイブ & ボールド』の51話では、なんと本作の第1巻に収録されている「死神男の巻」の後半部分がアニメ化されたりもしました。

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しかもこの回では『8マン』のOPアニメがパロられており力の入りようがスゴイ

そんな伝説の翻案漫画である本作ですが、なんと日本では一度も単行本になっておりません。
厳密には『枚方映研』という様々な入手困難作品を単行本化していた同人グループが本作を単行本化していたとの事ですが、無許可で復刻していたのが問題になったらしく、(当然ですが)今は活動していないようです。
そのため、本作を読むには海外で復刊されたダイジェスト版の『Bat-Manga!』(洋書なので当然全て英語に翻訳済)を購入するしか方法がなかったのですが…

今年の10月にまさかの復刊!!
しかも全話収録という完全版仕様!
「復刊されたら絶対買うよ!」と発言した身としては購入せざるを得ない!
本書の中では特に触れられていませんが、どうも『復刊ドットコム』でそれなりに票数を得たのが復刊に至った経緯なようです。
(「この票数で決まったの!?」という驚きがなきにしもあらず)

この復刊本はBOXに全3巻のコミックが同梱されており、1~2巻が少年キング版(全43回)、3巻が少年画報版(全10回)という構成。

お馴染みのキャラはバットマン、初代ロビン、ゴードン署長ぐらい。
ジョーカーやペンギンといった有名処のヴィランは登場せず、原作でも基本的に一回きりの登場であったマイナーなヴィランと戦う(その辺は後述)事になっております。時にはアウトサイダーキャットマン(猫男)との戦いを描いたエピソードもあったりしてちょっとマニアック
本作に収録されているエピソードで、邦訳フラッシュポイントのキャラデザに関するページに書いてあった「オリジナルのアウトサイダーの正体は、バットマンの執事のアルフレッドだったのだ」の記述の意味が判明してかなりスッキリしました。

2巻に収録されている桑田次郎先生のあとがきによると、本作は当初は原作通りの画風で描こうとしていたのだとか。
しかし自分の画風から離れアメコミの画風に合わせて描くとなると作業量が何倍にも膨れ上がってしまい、他に抱えている仕事に取り掛かれなくなってしまうため、結局諦めて自分の画風でバットマンを描くことにしたとの事らしいです。
結果的には桑田次郎先生のシャープでカッコいいタッチで描かれるバットマンが拝め、海外でも高評価を得る要因となったわけですからこれで良かったと思う!

◆PICK UP キャラクター 死神男
死神男だひひひ
「ひっひひひ わらわせるな
 おれをつかまえることなど だれにもできないんだ
 ひーっひひひ………」


1巻収録の「死神男の巻」にて登場。
自分の生死を自在に操ることができ、ドクロの仮面と服は肉に喰いこんだかのように取れなくなっている不気味なヴィラン。
自分で死ぬことができるため裁判で死刑にすることができず、共同墓地に埋めても部下に掘り出してもらい自力で復活してまた悪事を重ねるという厄介なヤツなのだ!
ちょっとツッコみたくなる能力だけど、実際に作品を読んでみると薄気味悪さが勝って意外と怖い。

桑田次郎版バットマンでヴィランとして登場しているこの死神男、原作のバットマンでは1966年5月の『Batman #180』にて、『Death Man』という名前で一発キャラとして登場しております。

batman#180

原作では初登場で即退場したために露出の少ないヴィランだったのですが、その後2011年1月の『Batman Incorporated #1』にてまさかの復活!
死神男自体は元からバットマンのヴィランではあるのですが、これはライターのグラント・モリソンが桑田次郎版をリスペクトして逆輸入した形になるのだとか。

ロードデスマン再登場!
あの不気味な笑い方もしっかりと継承されている模様
(実は他の方も『ひひひ笑い』をされているのは置いといて)

そして彼は日本に居るバットマンファミリー、ジロー・オサムの宿敵として登場するのでした。
(『Batman Incorporated』はバットマンが自ら世界を回ってスカウトした人材で構成された、クライムファイターの組織連合「バットマン・インク」の戦いを描くシリーズです)

ジロー・オサム
ジローは「桑田次郎」、オサムは「手塚治虫」から命名したとの事
両方名前から持って来てるせいで妙なネーミングになっちゃってる点はツッコんじゃいけない

今後の邦訳バットマンで拝める事を期待したいところ。
翻訳の際は『ロードデスマン』じゃなくて是非『死神男』で!

その他のヴィランについてはこちらの記事を。↓
【桑田次郎版バットマンに登場するヴィラン図鑑】

◆感想
面白い!!
全く古さを感じない…とまでは言いませんが、クライムファイター色の強い現在のバットマンとは異なり、SF色が強く新鮮味のある展開が目白押しで読んでいてワクワクします。

登場するヴィランも前述した死神男や、実験の失敗で顔を失い気が触れたデントン博士、ボールのように自在に跳ね回って攻撃を仕掛けてくるボール男、竜巻や洪水などを自在に発生させることができる魔神ゴゴ、怪獣、惑星の名前にちなんだ犯罪を起こす惑星王、そしてゴリラ
どの敵も非常に個性的。
そして人智を超えた攻撃を仕掛けてくるヴィランに燦然と立ち向かうバットマンとロビンが実にカッコいい。
ヴィランが特殊能力を得ている合理的な理由もキチンと作中で説明されるため、ほどほどにリアル感を残しているバランスも良い。

こっからは不満点…といってもそんな深刻な内容じゃないですけど、ページによって印刷の質に差があるのが気になります。鮮明なページもあれば(読むのに支障はないレベルですが)かなり荒い画質のページもあり。
古い作品なんで、多分一部は雑誌から直接取り込まざるを得なかったんでしょう。これは致し方ない部分かも。
次に差別用語があったであろうセリフは明らかに修正が入っています。
(例:1巻の196ページ6コマ目等)
それと『Bat-Manga!』に収録されていた当時の関連商品の紹介ページや、漫画に挿入されていた広告などの資料は未収録。

 

あとはー…アマゾンのレビューでも触れてる人がいましたが、3冊の本を収納するBOXが本当にキッツキツな点。
1回取り出した後に再収納しようとするとカバーにダメージが入りそうな勢いでキツめ
本の出し入れがし難いというのは結構ネック!

しかし本当に「良く復刊してくれた!小学館ありがとう」と言いたくなる本です。
ちなみに本書の値段は7980円。
7980円と聞くと一見高そうに思えますが、全3冊ということは1冊あたり2660円。
普段紹介してる邦訳本と大して変わらない値段なんでそこまで高額という訳ではないですね(感覚麻痺)

今読んでも充分に楽しめる、ちょっと毛色の違うSFアクション活劇なバットマン!
様々な作戦を練って強敵と渡り合うバットマンとロビンの戦闘シーンは痛快。
あと一応アメリカが舞台なんだけど、登場人物のデザインが基本日本人的なので世界観がなんだか独特。
アメコミの日本がコレジャナイように、本作のアメリカもコレジャナイ感が強め。
固有名詞のブレなども昔ならでは(『ゴッタムシティ』とかロビンの本名が『ディック・グレイン』と表記されてる点とか)。
そういうのも全部ひっくるめておススメな一作

あと、解説によると死神男の話は当時の最新エピソード『Batman #180』を採用したとの事で、他にもアウトサイダーの話など、どのエピソードも提供された原作を元に日本向けのアレンジを加えて制作されたんだとか。
3巻の解説には原作との対比表が載っているので非常にありがたい。

最後に一言!1巻ラスト&2巻に収録されているエピソード「ドロ人間の復しゅう」を読む前に、こちらの前日譚となるエピソード「怪盗ドロ人間」が収録されている3巻を先に読む事をお勧めします。
少年画報の話を纏めた3巻を1巻にすれば良かったのにと思わなくもない。
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4 Comments

流浪牙-NAGARE@KIBA-  

>ジョーカーやペンギンといった有名処のヴィランは登場せず
そのへんの人たちはいないんですか……狂人描写に定評のある我等が桑田先生だったら
ジョーカーはじめ有名処の皆さんと気ちがい病院もといアーカム病院
きっと味わい深く描いて戴けたかもしれない、とチョット残念な気持ちになったり。むむむ、だいぶくるってやがる……

2013/12/09 (Mon) 22:31 | EDIT | REPLY |   

アウル  

バットマンが日米問わず人気なのは常人ゆえに自分たちと親近感が沸くからなんでしょうね(一部アクション等常人か?と疑う所は多々あるがw)
スーパーマンのアンチテーゼから出来たとはいえ、ここまで愛されるなおかつ
異国でもコミック化しようとはボブ・ケインも想像していなかったでしょうな。

2013/12/10 (Tue) 18:53 | EDIT | REPLY |   

michael  

>> 流浪牙さん
桑田次郎先生の書くジョーカーは確かに見てみたかった…!
ただクレイフェイス(2代目)や何故かフラッシュのヴィランであるウェザー・ウィザードが登場してたりと、微妙に知名度のあるヤツらが顔を出していたんでそこはちょっと嬉しかったり。

>>アウルさん
>異国でもコミック化しようとはボブ・ケインも想像していなかったでしょうな。
麻宮騎亜先生や夏目義徳先生が漫画化してたりしますしね!

2013/12/11 (Wed) 23:43 | EDIT | REPLY |   

notyou  

そちらのブログを見て『Batman Incorporated』を購入しました。

絵だけでもなかなか楽しめました。

ただ来月10月末に翻訳出版されると聞いて正直「悔しい」と思いました。

トホホ・・・

2014/10/12 (Sun) 12:01 | EDIT | REPLY |   

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