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01 2013

クリス・クレアモント&フランク・ミラー他/ウルヴァリン

ウルヴァリン(フランクミラー)表紙

「あいつは俺にそっくりだ。
 ケンカ好きで、殺しも辞さない。あいつは本当の俺を心から愛してくれた。
 だが真理子の前に出ると自分を変えたくなる。
 俺はどちらも愛してたが、どちらも失った。そして何より…
 自分自身を失った。
 それでも人生は、この砂利みたいに動かせるはずだ」


A RONIN IN JAPAN

愛する人、矢志田真理子からの連絡が途絶えた。不安に駆られたウルヴァリンは、居てもたまらず日本を目指す。
そこで彼を待っていたのは、伝統と因習に囚われた摩訶不思議な東洋の神秘だった。

敵地で孤軍奮闘する彼を待つ新たな出会い。幾多の困難を乗り越えて、彼は真理子との恋を成就できるのか。

1982年に発売されたウルヴァリンの記念すべき独立誌第1弾。
原作は、X-MENの代名詞的存在であるクリス・クレアモント。作画は、当時、『デアデビル』で脚光を浴びていたフランク・ミラー。
アメリカンコミックスの長い歴史で初めて、現代日本の姿を綿密に描いた話題作、ついに邦訳。

加えて、その後日談となる『アンキャニィX-MEN』#172、#173も収録。
ウルヴァリン伝説の起源を目撃せよ!


◆収録作品

1982年09月:Wolverine #1
1982年10月:Wolverine #2
1982年11月:Wolverine #3
1982年12月:Wolverine #4
1983年08月:Uncanny X-Men #172
1983年09月:Uncanny X-Men #173


◆EAST MEETS WILD
ウルヴァリンというヒーローは登場初期、それはもう暴力的で野蛮なキャラクターだったとか。

小っちゃいオッサン
この1シーンだけ見ていると信じられませんね

しかし『インクレディブル・ハルク』誌で初登場し、その後X-MENのメンバーとして再登場を果たした彼はその暴力的なキャラクターで読者からの人気を得て、第一線で活躍するヒーローに成長したのです。
そしてマーベルコミックスの中では「ウルヴァリンを主役にしたリミテッド・シリーズを作ろう」という声が上がり、X-MENシリーズのメインライターでもあるクリス・クレアモントがこのウルヴァリンの単独シリーズのライターに指名、まだ駆け出しでありながら『デアデビル』誌で注目されていたフランク・ミラーをアーティストに起用して『ウルヴァリン』誌の制作がスタートしたのでした。

ミラーはこの当時の暴力依存症のような性格のウルヴァリンを扱った作品を描くことに乗り気ではなかったようなのですが、ライターであるクレアモントは最初から暴力的な内容の脚本を書くつもりはなく、頭の中にあった「ウルヴァリンを“失意のサムライ”として描き直す」ストーリーを考えていたとのこと。
こうしてウルヴァリンというキャラクターを理性的で普通の人間のような面のある性格に作り直し、『ウルヴァリン』という作品を生み出したのです。

この1982年に作られた全4話の『ウルヴァリン(第1シリーズ)』は、今月公開される映画『ウルヴァリン:SAMURAI』の原案となった作品。
映画と同じく日本を舞台とした、渋いストーリーを魅せてくれるクラシックな名作なのであります。

ウルヴァリンは日本に呼び戻されたという恋人・真理子に連絡をしようとするのですが何故か繋がらない。
そこでウルヴァリンは日本の東京に直接向かい、古い仕事仲間の木村朝雄に会った事で、真理子は政略結婚の道具にされてしまった事を知るのです。
望まない政略結婚をさせられて苦しんでいる真理子の元に向かうウルヴァリン。
矢志田家にこっそり乗り込んで彼女に対面するのですが…

真理子とウルヴィ―
ウルヴァリン「DV夫だと…許せん!!」 ピム「ビクッ」

しかし真理子の夫に発見され、矢志田家の配下による毒手裏剣攻撃で意識を失うウルヴァリン。
目を覚ますと、そこには矢志田家当主・矢志田信玄の姿が。
信玄と1対1の勝負を挑まれるウルヴァリン。
最初は互いに木刀を用いて戦っていたのですが、信玄に押されて旗色の悪くなったウルヴァリンはなんと自分のクローを取りだして攻撃を仕掛けてしまいます。
そんな手段を用いたのにも関わらず木刀一本で信玄にのされ、ウルヴァリンは銀座の外れの路地に放り出されるのでした。

愛する女の目の前で心を砕かれ、魂を折られ、「殺された方がマシだった」と思うほどに恥に苦しむウルヴァリン。
「死なないだろ」とツッコむのは野暮)
果たしてウルヴァリンは真理子を救い出すことができるのか――?

◆感想
「惚れた女を救う」
たったそれだけのシンプルな理由で矢志田家に立ち向かうウルヴァリンの姿が最高にカッコいい。
本作のライターはクレアモントなのですが、実際はミラーもプロットの構築に大きく関わっていたようで、善悪云々ではなく己の使命を成就するために戦う“サムライ”のようなウルヴァリンを描くハードボイルドなストーリーを楽しむ事が出来ます。

ただ、『ウルヴァリン』の話は全4話で綺麗に完結していますが、同時収録された本作の後日談となる『アンキャニィX-MEN』#172-#173は「え、ここで終わるの?」と感じてしまうぐらいに凄く中途半端な終わり方をします。
その後の展開は解説書で説明されているのですが、正直言うとコミックで読ませてほしかったところ。
(シルバーサムライとの戦いを堪能できたのは良かったけども)

本作『ウルヴァリン』が発表された当時はインターネットもない時代なため、もっと想像で補ったトンデモ日本が飛び出すかと思いきや作中での日本の描写は割と自然です。

とはいっても忍者のような外見の暗殺者集団『ハンド』は出ますし、矢志田家の描写は和風というものを若干取り違えたような感じですが、それでも目黒の高級住宅地の風景や、向こうでは知名度が不明にも拘らず丁寧に描写している『忠臣蔵』を演じる歌舞伎のシーン、繁華街を駆け巡るウルヴァリンと雪緒のシーンに、ローマ字表記での日本語での会話、そして(一部妙な名前はあるものの)自然な日本人キャラのネーミングなど、日本に関する資料を必死にかき集めて書いたと思われる部分が非常に多いのです。
本作は間違いなく、現代のウルヴァリン像を形作った不朽の名作と言えるでしょう。

血戦

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