ツルゴアXXX

ARTICLE PAGE

31 2013

ガース・エニス&ジョン・マクリア他/ヒットマン Volume1

ヒットマン第1巻表紙
「俺の名はトミー・モナハン。金を貰って人を殺す。
 そういう仕事だ」

「犬溶接マン」
――という強烈な名前とそのキャラクターでネット界隈を局地的にくぎ付けにしたアメコミがついに翻訳!!

『独特のアトモスフィアがあり、凄い。』
ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼズ(『ニンジャスレイヤー』原作者)絶賛
ゴッサムシティを舞台にした二流・三流ヒーローたちの銃弾にまみれた日常。


◆収録作品

1993年   :Demon Vol.3 Annual #2
1996年03月:Batman Chronicles #4
1996年04月:Hitman #1
1996年06月:Hitman #2
1996年07月:Hitman #3
1996年08月:Hitman #4
1996年09月:Hitman #5
1996年10月:Hitman #6
1996年11月:Hitman #7
1996年11月:Hitman #8
1997年   :Hitman Annual
2000年09月:Hitman/Lobo: That Stupid Bastich


善悪の間のグレイゾーン
昨年9月、ツイッター上であるアメコミのヒーローが大きな話題となりました。
その名も『犬溶接マン』

犬溶接マン

悪人に対し無言で犬を溶接して戦うという発想の源が狂っているこのヒーローに関する諸氏のツイートはtogetterに纏められたことでさらに拡散され、アメコミファン以外の層にもその名が轟く結果となったのです。

【犬溶接マン(翻訳:海法紀光氏)】

そんな犬溶接マンが登場するゴッサムシティが舞台のアメコミ『ヒットマン』が、名付け親である海法紀光氏の手によって邦訳されエンターブレインからまさかの刊行!
今回邦訳に踏み切ったのは『犬溶接マンが広く話題になったため』というのが理由の一つとなっているのだから驚き。
ネットでネタ的に話題になった事で、これまで邦訳されるようなタイトルではなかった作品がこうして出版されたのだから何というか分からないものですね。

しかし、この作品の主人公は当然犬溶接マンではありません。
『トーマス・モナハン』というアイルランド系ターミネーターのような外見の男が主人公です。

hitman.jpg

彼は吸血エイリアン・グロンスに襲われたことで透視・読心というスーパーパワーを手に入れ、超人専門の殺し屋に鞍替えした男。
金を貯めてゴッサムシティを飛び出し、ニューヨークで悠々自適な暮らしを手に入れる日を夢見て、トミーは今日も殺しの仕事を請け負うのです。
主人公がこんな感じなので、超人や怪物がバンバン登場する作品にも関わらず、ジャンル的にはスーパーヒーロー物とは言い難い内容。
しかしトミーは「善人は決して殺さない」という信念も持っており、決して悪人という訳でもありません。

本作の舞台となるのはゴッサムシティであり、バットマン絡みのキャラクターがちょくちょく登場します。
#1-3はなんと「ジョーカーの殺害依頼」をトミーが請け負うという内容。
そしてバットマンがジョーカー殺害を依頼した人物を捕えるためにトミーを追いかけるというストーリーです。

バッツにゲロをひっかけるトミー
バットマンにゲロをひっかけるトミー

だがそこにトミーの殺しの腕を見込んだ地獄の住人が『マウザー』という怪物を送り込み、契約を迫ってくるというオカルティックな展開が盛り込まれていきます。
このマウザーという怪物が『地獄に堕ちたナチスのSS将校5名を合体させたヤツ』というぶっ飛んだ設定なのだからまた驚き。
しかし#4-7では『モー・ダブルズ』というシャム双生児のマフィア・ボスが登場。
毎回毎回読者に凄まじい衝撃を与えてくれるキャラがバンバン登場します。

また、トミーの親友『ナット』との名コンビっぷりも見所の一つ。

ナットとトミー
左のちょっと太い黒人がナット

彼はあくまで普通の人間ですが、トミーに負けず劣らず銃の扱いに長けており、高い戦闘力でどんどん敵を撃ち殺していきます。
普段はトミーと軽口を言い合う仲ですが、トミーの身に危険が迫れば必死になって彼を救い協力し、トミーが落ち込めば時に説教もする。
まさにトミーの最高の親友と言えるカッコいい男なのです。

◆SECTION EIGHT!
話題となった犬溶接マンが所属するヒーローチーム『セクション8』(軍隊用語では「精神上の問題で入隊不可」の意)が本編に登場するのは、実はもう少し先のエピソード。
それ故にこの第1巻では、本来は出番はありません。
しかしせっかく犬溶接マンが知名度を引き上げたおかげで邦訳刊行と相成ったヒットマン。この第1巻では本来原書の第7巻に収録されていた2000年の作品『ヒットマン/ロボ』というエピソードを、今回特別に前倒しして収録しています。

このエピソードはDCユニバース最強の一角である荒くれ者の宇宙の賞金稼ぎ『ロボ』という男とヒットマンが戦うというエピソード。
ロボは国内では『DCvsマーベル』の邦訳、格闘ゲーム『インジャスティス』(DLCキャラとして)登場していますね。
あ、あと『バットマン:ザ・ラスト・エピソード』収録の短編にもチラッと出てきてたな…

 

ヒットマンがロボと戦う過程で犬溶接マンが所属するヒーローチーム『セクション8』と協力し、ロボを罠に嵌めて打ち倒すというストーリーが描かれている一作です。
セクション8の紹介記事は過去に書いたので下記の記事で。
【ゴッサムシティのヒーローチーム『セクション8』】

セクション8VSロボ
ロボに攻撃しようとして(案の定)味方に誤射するフレンドリーファイア

気になるセクション8のメンバーの邦訳版でのネーミングですが、犬溶接マンを除く他のメンバーは原語のままとなっていました。
ドッグウェルダーだけ知名度の関係からか『犬溶接マン』というインパクト抜群のネーミングが採用されています。
一人だけこのぶっ飛んだネーミングになっているのは意見が分かれるところかも。
個人的には一人だけ変えちゃうぐらいなら『ドッグウェルダー』にしてほしかった派。
それか犬溶接マン以外のメンバーも仮に付けられていた和名にしちゃうとか…

ちなみにこの1巻では犬溶接マンの出番は少なめです。
でも印象に残る描かれ方をしていますし、セクション8のアレすぎる戦闘シーンも充分に堪能できますよ!

◆感想
ガース・エニスの書くヒットマンのストーリーは全編通してバイオレンスで下品でユーモラス。しかし時には悲劇的な展開になることもあります。
この辺をバランス良く織り交ぜながら、テンポ良く痛快で爽快な話が展開していくため、どんどん読み進めていってしまう魅力がある作品となっています。
#8に至ってはDCのクロスオーバーイベント『ファイナル・ナイト』が起こっているにも関わらず、ヒットマンらは酒場で仲間と思い出話に話を咲かせるだけというマイペースっぷり。

あと海法紀光氏の翻訳による各登場人物のセリフ回しが非常に軽妙でこれがまた面白い。
近年の邦訳には珍しく多くのキャラの喋り方に個性が付いているのがまた。
(ただバットマンの一人称が『俺』なのはちょっと違和感がありましたが)

そして、本編以外の作品も色々収録されていて満足感が大きいです。
『ヒットマンアニュアル』、上記で触れた『ヒットマン/ロボ』『デーモン・アニュアル#2』『バットマン・クロニクル#4』
特に『デーモン・アニュアル#4』はヒットマンの歴史的な初登場エピソードとなっており、加えてオリジンが描かれるという重要エピソード。
さらに貴重な『デーモン』誌の邦訳にもなっている要チェックな一作です。

『ヒットマン』、本当に面白くて僕の(脳内)おススメ邦訳アメコミランキングで上位に食い込むほどにハマってしまいました。
邦訳アメコミにおいて必要になることもある事前知識が殆ど不要なため、そういう面でもおススメの一冊。
話題となった犬溶接マンの活躍はこの第1巻では少ないですが、彼に興味を持った人がこの『ヒットマン』という作品にハマって、最終的に海外コミックそのものにのめり込むきっかけになると嬉しいですね。
用語解説だけでなく、本作でアメコミに興味を持った人に向けて『DCコミックスとはそもそも何か』という詳しい解説、加えてDCコミックスのマニアックなヒーローやヴィラン達の紹介(ヒットマンとは無関係な人選で、かつ若干ネタ方向寄りな文章ですが)もあり、巻末コーナーも非常に充実しています。

このヒットマンは全60話で既に完結している作品ですから、是非最終話まで邦訳を続けてほしいところ。
原書も全7巻で刊行されており、今回の邦訳ではその1巻と2巻を合本化(加えて7巻の『ヒットマン/ロボ』を前倒しして収録)した一冊となっているため、分量的にはそこまで非現実的な話ではないはず…
まあその前に邦訳本の二巻を楽しみに待つことにしましょうかね!

ちなみに『セクション8』の本編初登場となるエピソードが収録される2巻の発売日は2014年冬だとか。
…遠っ!!待ちきれない!!
※追記:2014年2月頃刊行という意味との事でした。

ところで『ヒットマン』のキャラクターはNEW52の世界にも存在しているんでしょうかね?
存在していたとしても生みの親であるガース・エニス以外のライターに扱えるのか気になる。

◆NEW52世界でのトミー達
※2014年5月26日追記

ヒットマン最終回の微ネタバレになるかもしれないんで、困る方はスルー推奨。

上記で「『ヒットマン』のキャラクターは現在のNEW52世界にも存在しているのか?」と疑問を呈したわけですが、結論から言うと存在しました。

2014年3月発売の『バットマン&ロビン』第2シリーズ#27(厳密には『バットマン&トゥーフェイス』と改題中)にて、カメオ出演レベルですがしっかりと登場しています。

バットマンアンドロビン第2シリーズその1縮小

バットマンアンドロビン第2シリーズその2縮小

移動経路として何故かヌーナンのバーを経由しているバットマンが、たまたま?店番をしていたハッケンと出会うという1シーンです。
トミーやナット、バーの店長であるヌーナンにセクション8は写真のみの登場。

……ひょっとしたらヒットマン最終回と同様の出来事がNEW52でも起こっていたのかもしれないんで(ハッケンがヌーナンのバーで働いているのももしかすると…?)、NEW52世界でもトミー達が再登場するのかと言われると、今のところはなんとも。
関連記事

5 Comments

久仁彦  

『ヒットマン』最高でしたねー。

普段のドンパチっぷりに挟まれたしんみり話がスゴク好きです。
名作と誉れ高いスーパーマンとの共演話もゼヒ読みたいので、このペースで邦訳完走していただきたいですね。

犬溶接マンが流行ったならあれとかこれとかも流行らせれば…とも思いましたが
こういうノリは元々『ヒットマン』ファンだった海法紀光さんクラスの強烈な後押しが無ければ難しいかな?

2013/09/01 (Sun) 12:24 | EDIT | REPLY |   

NONAME  

>2014年冬
twitter情報ですが、2014年の1月か2月辺り~ということでした
https://twitter.com/zenfta/status/373810078228283392

2013/09/01 (Sun) 13:49 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>久仁彦さん
個人的に近年の邦訳アメコミの中でも最大のヒットです。早く続きが読みたい…! 久仁彦さんの言うスーパーマンとの共演話ってのも気になりますし、完結するまで売れて欲しいところですねー。

>あれとかこれとかも流行らせれば…とも思いましたが
アンケートに「翻訳してほしいコミックスがあれば~」という項があったので、とりあえず僕はモリソンの『Animal man』と『Dial H』を書いて送りました!
なんとなくこの手の出版社の方が国内であまりメジャーじゃない作品を出してくれそうな気がして…

>>NONAMEさん
そういう意味だったのか…勘違いしてた恥ずかしい!(赤面)
情報有難うございます。記事を修正しました。

2013/09/01 (Sun) 18:33 | EDIT | REPLY |   

アウル  

ガース作品は原著でもスラング多様で他のアメコミよりもアメリカを感じられる
ので嫌いではないです(個人的に)

あの宇宙盗賊(ロボ)、こんなとこでも大活躍とはなんとも応用が効くキャラなんだと
今更ながらに感服ですw
ガチの殴り合いでならスーパーマンと互角でコメディー補正でデッドプール並みに
死にづらいから使いやすいんでしょうかね?(^^;

2013/09/03 (Tue) 11:47 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>アウルさん
>あの宇宙盗賊(ロボ)、こんなとこでも大活躍とは
大活躍…というよりは、トミー達のこすずるい戦法にひっかかりまくってとことんノされるという扱われ方でしたね。
あのロボですら退却せざるを得ないセクション8…恐ろしいぞ。

2013/09/07 (Sat) 19:54 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment