ツルゴアXXX

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30 2013

スコット・スナイダー&グレッグ・カプロ他/バットマン:梟の夜

梟の夜表紙

『現在ゴッサムにいるバットの仲間に告ぐ。
 今夜、梟の法廷が暗殺者を解き放ち、40人弱を殺そうとしています。
 法廷のターゲットはゴッサムの要となる有力者たちです。
 ターゲットの氏名一覧をアップロードしました。
 暗殺者のタロンはすでに行動を開始しています。
 彼らの戦闘能力は非常に高く……再生能力も持っています。
 残念ながらターゲットの多くはもはや手遅れ…
 ケイブへの回線は……できるかぎり開けておくように努力します』


梟三部作、完結!
今宵、知られざる梟の夜が幕を開ける……。


バットマンは「梟の法廷」コート・オブ・アウルズなど単なるおとぎ話にすぎないと考えていた。だが、今は違う。実際の不死身の暗殺者タロンに殺されかけ、「梟の法廷」の存在が19世紀にまで遡るものだと知った。ゴッサムシティを支配する謎の秘密結社「梟の法廷」が、闇の騎士を始末すべくタロンの群れを解き放ったとき、バットマンの仲間たちも命懸けの戦いを繰り広げていた……。
本書は「バットマン:梟の法廷」と『バットマン:梟の街』の裏側で起きていた出来事を収録した作品である。バットマン関連誌で展開されたクロスオーバー大作『バットマン:梟の夜』にて、梟三部作は完結する!


◆収録作品

2012年06月:Batman Vol.2 #8
2012年07月:Batwing #9
2012年07月:Batgirl Vol.4 #9
2012年07月:Batman and Robin Vol.2 #9
2012年07月:Nightwing Vol.3 #8
2012年07月:Nightwing Vol.3 #9
2012年07月:Red Hood and the Outlaws #9
2012年07月:Detective Comics Vol.2 #9
2012年07月:Birds of Prey Vol.3 #9
2012年07月:Catwoman Vol.4 #9
2012年07月:All-Star Western Vol.3 #9


◆NIGHT OF THE OWLS
梟の法廷編第1巻『バットマン:梟の法廷(THE NEW 52!)』のラストシーンで、大量に街に解き放たれたタロン達。
第2巻となる『バットマン:梟の街』ではバットファミリーがこの街の有力者を狙うタロン達を食い止めるために動いていた描写がなされていたのですが、その辺の下りは割とあっさり片付けられ、すぐに組織の巣に向かうバットマンのストーリーに切り替わっていきました。
実はこの頃は『梟の夜』と呼ばれるクロスオーバーイベントを展開しており、バットファミリーがタロンらと戦う話は各バットマン関連誌の方で描かれていたのです。
本書はそのクロスオーバー部分のエピソードを纏めた一冊。バットウィングやレッドフード&アウトローズ、キャットウーマンなど普段の邦訳ではなかなかお目にかかれないヒーローのエピソードが楽しめます。
さっそく(『梟の街』から再収録されたバットマン#8を除いて)それぞれの作品を紹介!
バットウィング#9

バットウィングVSタロン

「アフリカではこういうのを妥協と言うんだ」

バットマン・インクに所属するコンゴ共和国担当の黒人バットマン、デビット・サヴィンビさんの活躍が拝めるバットウィングの邦訳がまたもやって来た!
バットウィングが戦うことになるタロンは組織に“一種の怪物”とまで言わしめ、今日まで引退させられていたアレキサンダー・ストーントンという凶暴な男。
任務以上に虐殺を楽しんでいるかのような節があるこの狂犬にバットウィングはどう立ち向かうのか!?
シンプルにバットウィングのアクションが格好良く、またラストシーンがなかなかに痺れる一編です。
バットガール#9

バットガールVSタロン

「家族に会ひたいです。
 もうすぐ会えるでせう。この労働が終われば、家に帰れます。
 あなたの娘 歩美より
 一九四四年 十一月一三日」


下半身不随の致命傷から奇跡的に回復し、バットガールとして自警活動を行っているバーバラ・ゴードン。
彼女が戦うことになるのは、少女のような体格のタロン。
本作は日本を絡めたエピソードなのが最大の特徴。
ここで登場するタロンは第二次世界大戦中、日本軍が用いた『風船爆弾』により顔に大火傷を負ったマリーと言う名の少女です。
そんな彼女が現代のゴッサムで風船爆弾を用いて警察署に襲撃をかけてきたため、バットガールはその対処にあたるという内容。
本作のラストシーンは、レッドフード&アウトローズ#9のラストシーンに繋がるようになっています。
余談ですが、日本の、それも1944年の戦時中の日本の描写はそれなりに丁寧なのにも関わらず疎開先の教師の姿がチョンマゲなのにはちょっと吹きました。
バットマン&ロビン#9

ダミアン軍人と共闘

「お前みたいなガキに命令される覚えはない」
「そのガキは6歳の頃にクラウゼヴィッツやジョミニを読んでたんだよ、
 バカ野郎!
 ゲーム機をいじりまわしてたお前らとは違うんだ!
 いいからオレの言うとおりにしろ!
 タロンは常に動き続ける。こっちもそれに合わせるんだ!」


空軍州兵の指揮官であるベンジャミン・バローズ少尉が狙われているとの連絡を受け、一番近くにいたダミアンが救出に向かうという一編。
少尉の部下たちと協力しながらタロンの猛攻を掻い潜っていくのです。
ダミアンが的確に指示を出して敵を追い詰めていく戦闘シーンは一見の価値アリ。

アルフレッドから連絡を受けた際、父がタロンを撃退中と聞いてその後の話を聞かずダミアンがすぐ屋敷に戻ろうとするちょっとした1シーンが個人的にお気に入りです。
どんどん親密な親子関係になってるじゃないの(ほっこり)
ナイトウィング#8-9

おじいちゃんVSナイトウィング

「リチャード・グレイソン。この街の血脈を裏切った男。
 俺の子孫。曾孫よ。愚か者が」


前々巻『梟の法廷』でバットマンを追い詰めたものの敗北、拘束されていたものの、前巻『梟の街』のタロンらによるウェイン邸襲撃の際に仲間によって救出され、そのまま何処かに消えたタロン『ウィリアム・カップ』
『梟の法廷』のラストでナイトウィングことリチャード・“ディック”・グレイソンの曾祖父でもあるという衝撃の事実が明らかになった彼は、完結編である『梟の街』ではその後どうしていたのか全く語られていませんでしたが、このクロスオーバーで唯一2話も用いて明かされていたんですね。

「グレイソン一族の恥」と言い放ち襲い掛かる曾祖父に対し、ナイトウィングは何を思うのか。
ウィリアム・カップの過去編を交えつつ、ナイトウィングが己の曾祖父でもあるタロンと決着をつけるという本書で最も重要なエピソードです。
「灰色の息子」なんて言い回しを思いついたライターの発想力に驚く。
レッドフード&アウトローズ#9

レッドフードとフリーズ

「まいったね。不死身の暗殺者と心の傷を癒すトークタイムかよ」

元2代目ロビンであるレッドフードことジェイソン・トッドが仲間の二人を引き連れて救出に向かった街の有力者はなんとミスター・フリーズ。
彼は自衛策としてチャイナタウンを氷の城に変えているため、レッドフードたちはフリーズをタロンから守りつつ、フリーズから街も守るという厄介な戦いに赴くのでした。
救出に来たにも関わらず抵抗するフリーズにキレ、スターファイヤーが攻撃を仕掛けたりでもうてんやわんやな一方、レッドフードはタロンと対峙するのですが、境遇が似た者同士通じるものがあり、腰を落ち着けて会話をすることに…
意外な形でタロンとのケリを付ける一作です。
それにしてもレッドフードの過去に何があってバットマンらと距離を置いているのかが本当に気になる。
その辺りが語られるエピソードを今後日本語で拝む事はできるのでしょうか。
ディテクティブコミックス#9

ブラックマスクとアーカム

「ここはゴッサムで一番安全な場所だ。
 自慢じゃないがこのアサイラムの警備体制は全米一…
 …いや、世界一だ」


時系列的にはバットマンが屋敷内に侵入したタロンの撃退後、リンカーン・マーチの元に向かう前の話。
タロン達がアーカム・アサイラムの責任者ジェレマイア・アーカムを始末せんとアサイラムを急襲するという展開。
そこにバットマンが駆けつけてタロンと戦うのですが、アーカムは「私の聖域を傷つけられてたまるものか」と囚人を開放したり患者であるブラックマスクを操ったりと、結構トンデモな行動を取り始めます。
狂人を収容するアサイラムの責任者もまたマトモな人物ではなかった。
バーズ・オブ・プレイ#9

※タロンには彼女たちがこう見えている

「逃げ足の速い害虫どもだ。いつでも逃げていつでも捕まる。
 それでも害虫はなくならない」


女性だけで構成された、法の網から逃れる悪と戦うヒーローチーム『バーズ・オブ・プレイ』
そんな彼女たちが相手するタロンは、『ゴッサムの害虫どもを駆除するために戦う』狂人ヘンリー・バラード。
セリフだけ見るとアンチヒーローっぽい言動に見えなくもないタロンですが、上記の画像のように彼の目には普通の人間が悪人のように映っているため、やはり相当な危険人物なのです。
っていうかカタナちゃん顔怖っ!!
ブラックキャナリーの超音波ボイスで頭蓋骨を粉砕してもすぐに復活し襲い掛かるこのタロンを、彼女たちはどのようにして撃破するのか!?
キャットーマン#9

タロンとペンギンとキャットウーマン

「あたしには特技がある。
 錠を見ただけで、開けるのに何秒かかるかすぐにわかる。
 走りやすいハイヒールもすぐにわかる。
 虐待を受けながら育てられた人間もすぐにわかる。
 あたしも同じだから」


いつの間にか『スパーク』というイケメンと行動を共にしているキャットウーマン。
柄の部分に梟が模られている短剣を集めていた彼女は、残る1本がペンギンの住処にある事を知りスパークと共に向かうのですが、そこにペンギンの命を狙うタロンが急襲してくるという展開です。

で、このタロン。妙に感情に流される所がある男で、獲物をすぐに殺そうとせず、「品位に欠ける」と言う理由で相手に短剣を渡し自分と戦うように言い放っちゃう奴なのです。
その結果任務でミスを起こすことが多かったらしく、今回街に放たれるまで300年以上休眠させられていたのだとか。
「ゴッサムの自称皇帝であるペンギンを殺せば名誉は回復する」と組織に言われ、ペンギンの命を狙うタロン。
しかし彼はそこでかつて自分が無くした梟の短剣を発見し…
ラストのキャットウーマンとタロンの会話シーンの流れはなんとも切ない。
今回収録されているエピソードの中では、ナイトウィングの次に好きな一編です。
オールスター・ウェスタン#9

オールスターウェスタン

「住んでる人を殺して自分の土地にする奴もいるけどね。
 そんなことすりゃ、しっぺ返しを喰らうもんさ」


まさかの非バットマンタイトルともクロスオーバー。
しかし設定面では結構バットマンとの関係性が強かったりもします。
この『オールスター・ウェスタン』は、1880年代のゴッサムシティを舞台とした西部劇モノ。
しかも荒くれ者の主人公ジョナ・ヘックスと一緒に行動している男は、後にあの『アーカム・アサイラム』を創設するアマデウス・アーカム
さらに本エピソードでは若かりし頃のアラン・ウェインも登場したりと、バットマン関連のネタがバンバン飛び出すため結構ニヤニヤできるのではないでしょうか。
ただストーリーは前回までのエピソードをがっつり引きずっているため、解説を読まないと理解し辛かったり…
とはいえ中々に興味深い内容でした。

◆感想
読み終えて「あれ?バットウーマンは?」と思ったのですが、どうも解説を読んだところバットウーマン誌は元々クロスオーバーに参加していないとの事。
#1だけ邦訳を読んでちょっと気になっていた作品だったので残念。
あとレッドロビンことティム・ドレイクの活躍が全然見当たらなかった。
(ティーンタイタンズ誌で別の敵と戦っていたのが理由だとか)

それはそうと、本作に登場するタロンは非常に多種多様です。
そして『ダークナイト:姿なき恐怖』に登場したタロンのように、彼らにも様々な背景がある。
重要エピソードであるナイトウィング編を筆頭にどれも面白い外伝エピソードとなっているので、梟の法廷編をより深く楽しむためにも必携の一冊だと言えましょう。
単純に珍しい作品の邦訳が読めるという意味でもおススメですが。
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1 Comments

アウル  

これ見た後に改めて「梟の街」見ると、バットマンって常人なのに常人じゃない
よな~って感じましたw
バットファミリーが1~2人のタロン倒すのにやっとという状況で、
あの人事前情報やらあることを差し引いてもタロン5~6人+2~3人=計9人!?
倒してるんですね~・・・・どっちが怪物なんだかわかんなくなっちゃった(´・ω・`)

2013/09/01 (Sun) 22:37 | EDIT | REPLY |   

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