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28 2013

カート・ビュシーク&アレックス・ロス/マーベルズ

マーベルズ表紙

“私達は、彼を尊敬していた…彼ら全部を。
 そして私達は、恐怖に震え死に怯えている時ですら…
 心の底では信じていた。きっと彼らが現れて必ず何とかしてくれる、と。
 そう、別の時代…夢のような時代だ。
 それは命がけの冒険であり…
 素晴らしいオペラであり…
 地上最大のショーだった。
 そして、この街に住む者全員が…
 いつも最高の指定席に座っているのだ”


それは畏敬の対象か?脅威の象徴か?
その日、人類はマーベルズ(驚嘆すべき者達)に出逢った―。


太平洋戦争前夜、野望に燃えた若者達がいた。カメラマンを目指すフィル・シェルダンもその一人だ。しかし、突如現れはじめた超人類達の存在が、彼の人生に大きな影響を及ぼしていく。その人智を超えた力に驚愕し、脅威と戦う姿に熱狂し、やがて人類を脅かす可能性に戦慄する……。

我々を遥かに超えた力を持つ存在“マーベルズ”は、人類に何をもたらすのか!?リアリスティックな視点が冴えるカート・ビュシークの脚本と、全てのコマが芸術の域にまで達したアレックス・ロスのアートが生み出した至高の傑作を見よ!!


◆収録作品

1994年01月:Marvels #1
1994年02月:Marvels #2
1994年03月:Marvels #3
1994年04月:Marvels #4
1994年08月:Marvels #0


◆マーベルズ(驚嘆すべき者達)
今から10年以上も前に小プロから刊行された邦訳本『マーヴルズ』
傑作と名高い一作ながら、既に絶版となっていたためにプレミアが付いていたのですが、アメコミファンからの復刊を望む声が多かったため2013年7月24日に復刊版が発売!
本書は2010年に発売された新しい原書が底本となっています。
タイトルも現在のMARVELの日本語表記に合わせて『マーベルズ』に変更。

さらに、旧版では一部セリフは灰色に塗りつぶした枠の上に日本語訳が載せられていたが
新版ではこんな感じに変更

また、一口に復刊と言っても1998年に発売された邦訳本とは若干内容が異なっています。
旧版から32ページ追加されているのですが、1998年版にあった『カート・ビュシークのコメンタリー』『アレックス・ロスのコメンタリー』『ジョン・ロミータ(Sr.)のコメンタリー』はカット。
代わりにこの新版では、新たに『イラスト、試し描き、スケッチ』『スコット・マクラウドによる寄稿』が楽しめます。

ネイモアさんスケッチ
ネイモアさんのスケッチは2ページもあるぞ!しかも本編でも出番が多いという素晴らしい待遇

内容の紹介。
本作の主人公はスーパーヒーローなどではなく、カメラマンを目指す一般市民『フィル・シェルダン』
1939年、フィニアス・トーマス・ホートン教授の手によって作られたアンドロイド『ヒューマントーチ』(初代)の登場を境に現れはじめた様々なマーベルズ(驚嘆すべき者達)の姿を、フィルの持つカメラとその眼を通して眺めていく事になる物語。

メタ的な事を言うと、1939年10月の『Marvel Comics #1』から、1973年の『Marvel Feature Vol.1 #10』までのマーベルユニバースをこの一冊でざっくり把握することができます。

フィルとジェイムソン
若かりし頃のフィル・シェルダンとJ・ジョナ・ジェイムソン

上記の画像のように、若かりし頃のキャラクターが登場する場面も結構見逃せない部分。
キャップの1ファンに過ぎなかった頃のニック・フューリーがちらっと出てきたりする場面も面白い点。
(ナチスと戦うキャプテン・アメリカについて、フィルにインタビューされた時のニックの発言)
「ケンカを売った張本人に落とし前をつけさせようってんだから、結構なこったぜ!
 俺も早く手ェ貸してやりてえんだがな」


そして戦争が終わり、新たなヒーロー…ファンタスティック・フォーの結成、雷神ソーの登場、ジャイアントマンの出現、サブマリナーの再登場、そしてキャプテン・アメリカが現代に復活し、ますます熱狂の渦に巻き込まれるニューヨーク。
しかしそれと同時期に、『人類の敵』であるミュータントが出現。

ミュータント差別
「彼らは犯罪者…殺人鬼なのだ」

科学者によるとミュータントは人類が進化したものであり、いずれホモ・サピエンスに取って代わると言われている人種。
市民は彼等ミュータントを徹底的に差別し、罵詈雑言を浴びせレンガを投げて攻撃し追い払おうとします。
ストーリーが進むにつれて、単純にヒーローの活躍を称賛するだけだった世間の反応にも少しずつ変化が現れていくようになっていくのです。

◆感想
アレックス・ロスの描く美麗なアートと、一般市民の視点に立つことでヒーローの居る社会をリアルに描写するカート・ビュシークの秀逸な脚本。
最初はヒーローが現れたことでちょっとした騒ぎになり、次第に市民もヒーローを受け入れ持ち上げるのですが、時間が経ってそれが当たり前になると、今度は市民がヒーローに対して懐疑的な視線を向け始めます
また、X-MENのシナリオの基本設定である『人間によるミュータント差別』もマーベルズのストーリーの重要な部分に組み込まれており、フィルはヒーローに対する世間の無理解に対し、次第に苛立ちを募らせていくのでした。

フィルのジャーナリズム精神が少しずつ変化していく様も、本作の面白みの一つ。
マーベルズが傑作であるのは、単純にマーベルユニバースの移り変わりを美麗なアートとともに楽しめるからというだけではなく、『フィル・シェルダンという一人のカメラマンの人生』を丁寧に描いているためでもあるのです。

ちなみにこのマーベルズには『Marvels: Eye of the Camera』という2009年2月~2010年4月にかけて全6話で発表された続編が存在します。


続編といっても時間軸はまた過去に遡ったりもしているようで、本書で出番が無かったヒーローが登場したりもする模様。
また、この続編ではフィルの最期が描かれているため、まさに『マーベルズの完結編』といえる内容だとか。
見ての通り単行本も既に出版されているため、できればこの作品も邦訳されて欲しいなぁと思う今日この頃。
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2 Comments

WRRRYYYYY  

大学でのテストとレポートを終え、久しぶりに京都へ行き三冊分の新刊を買ってアメコミ分を補給中。イイ本を買って良かったとこの場で感じた。

2013/08/07 (Wed) 21:14 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>WRRRYYYYYさん
同じく一般市民の目線からヒーローを描いたDCの『レガシーズ』とはまた違った形のアプローチとなっていて良い作品でしたよね、マーベルズ。
今回復刊されたのは本当に嬉しいです。

2013/08/07 (Wed) 21:47 | EDIT | REPLY |   

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