23
2013
グレッグ・パク&ジョン・ロミータ Jr./ワールド・ウォー・ハルク
- CATEGORYアメコミ(MARVEL)
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「人は勝手に呼び名を変えてくる。救世主…破壊者。
肝心なのは…自分が何を選ぶかだ」
WORLD AT WAR,
WAR WITH THE HULK!
シビル・ウォー前夜、世界のさらなる安定を願うアイアンマンらイルミナティのメンバーは、人類最大の脅威となり得るハルクの地球外追放を決定する。
シャトルに乗せられ宇宙に流されたハルクは、蛮族の惑星サカーに漂着。数奇な運命を経て、サカーの王となる。
后を迎え、新たな人生を歩み始めたハルクだったが、シャトルの不意の爆発により、サカーは灰燼に帰した。
今やハルクに残されたのは、彼から后を、全てを奪ったイルミナティの復讐の念のみ。かくしてハルクの旅が始まった。
捨てたはずの故郷への旅が。
シビル・ウォーに揺れた世界を襲うさらなる激震!怒りに燃えるハルクを前にヒーロー達に勝機はあるのか?
マーベルユニバースを引き裂くバトル巨編、ついに邦訳!
◆収録作品
2007年08月:World War Hulk #1
2007年09月:World War Hulk #2
2007年10月:World War Hulk #3
2007年11月:World War Hulk #4
2008年01月:World War Hulk #5
◆ブチ切れハルク
人類の脅威ともいえる力を持ったハルクがこれ以上地球で『暴走』しないよう、イルミナティのアイアンマン、Dr.ストレンジ、ブラックボルト、Mr.ファンタスティックは彼を騙してシャトルに閉じ込め、宇宙の彼方に追放してしまいました。
(『ロード・トゥ・シビル・ウォー』収録の『NEW AVENGERS:ILLUMINATI』にて)
ハルクに対処するための他の手段がどうしても見つからなかったために取った苦肉の策だったのですが、その行為は読者の目にはまず間違いなく非人道的に映ったことでしょう。
コミックの中でもネイモアさんはイルミナティの行為に強く憤りましたし、未邦訳のエピソードですが従姉のシーハルクも当然アイアンマンと衝突。
(そしてアイアンマンに返り討ちにされ変身能力を奪われちゃいました。ヒドイ)
そしてハルクは一人、見知らぬ惑星サカーに漂着してしまうのですが、そこで彼は数々の戦いを通して、なんと王の地位にまで上り詰めてしまいます。
これは本作の前日譚であり、2006年4月~2007年6月にかけて展開されたインクレディブル・ハルク#92~#105のエピソード『プラネット・ハルク』にあたるのですが、邦訳する予定は無いようで、本書では全話解説という形でフォローされています。
@takoma1206 刊行予定はないのですが、そのかわりに、ワールドウォー…に、プラネットハルクの細かいストーリー解説が載る予定です。
— vb_amecomi (@vb_amecomi) May 22, 2013
邦訳版が出ないのは残念ですが、代わりにプラネット・ハルクをアニメ化した『超人ハルク サカールの預言』がDVDとBDで発売されているので、こっちで楽しむのもアリかもしれません。
王として、多くの民のために過酷で危険に満ちた惑星サカーを作り直し、カイエラという女性を后に迎え、新たな人生を歩む決意を固めていたハルク。
だがそこに新たな悲劇が。
ハルクを乗せていたシャトルは現在惑星サカーの広場に飾られていたのだが、実はそのシャトルには爆弾が仕掛けられていた!
すぐに状況を察したハルクは、シャトルを宇宙に投げ飛ばそうとするも間に合わず大爆発。
結果、惑星サカーの百万の民が死に絶え、愛した妻のカイエラもその爆発に巻き込まれて死亡してしまいます。
自分を追放するだけではなく、その爆弾で殺害しようとしていた…いや、多くの民を殺害したイルミナティに対して、とうとう怒りを爆発させるハルク。

表情が最高にゲスいイルミナティ(※注:あくまでもハルクの視点です)
ハルクはイルミナティの4人に復讐するために、仲間たち『ウォー・バウンド』の面々を引き連れて地球に舞い戻ることを決意するのであった。
…いやぁ、ストーリーの冒頭だけでもうハルクにしか感情移入できない展開ですね。
◆ハルクは止まらない
今回のクロスオーバーもまたもや内輪揉めなストーリー。
本作の見所はやはりハルクの大暴れっぷり。
ハルクはその怪力が注目されてきたヒーローですが、本作でのハルクは理性も取り戻しており、さらに手が付けられないことになっています。
この事態に対処するため、現在分裂中の二つのアベンジャーズ、『シークレットアベンジャーズ』と『マイティアベンジャーズ』の面々も共闘。
あの手この手でヒーローたちはハルクの侵攻を喰い止めようとするのですが、手を尽くしても純粋にパワーのみで押し切られてしまうという絶望っぷり。
ただあくまでもハルクの狙いはイルミナティであり、他のヒーローに対しては戦闘不能にするだけに留めています。
イルミナティと無関係のヒーローに攻撃を仕掛ける時のは、向こうがハルク達を喰い止めようとするときだけ。

イルミナティの4人だけは絶対に許さないよ
無関係の市民を巻き込むことが無いようしっかり避難勧告は出してますし、もし戦闘中に市民が危険な目に遭うことがあればすぐさま助けに向かうヒーローらしさもちゃんと持ち合わせています。
(作中のあるシーンでは読者のハルクの株が上がり、代わりにあるヒーローの株がただ下がりすることは確実)
あくまでハルクは敵サイドのストーリーなんですが、正直ハルクの怒りがもっとも過ぎて、イルミナティを守ろうとするヒーローよりもハルクの方を応援したくなってしまうのも事実。
ただ、#3での『ハルク追放は妥当』だと考えているロス将軍の主張もこれまた抱いて当然の意見なんだよなぁ。

戦う敵はハルクだけではない!
ハルクの側近『ウォーバウンド』も登場します。
スパイダーウーマン曰く「昔のハルク並みに強い」面々。
ハルク一人だけでも誇張抜きに手こずるどころか勝てるかわからないのに…とことん厄介な状況ですね。
ウォーバウンドのメンバーの中にさりげなく小プロX-MEN3巻に出てたブルードが居てビックリ。
宇宙の寄生生命体であるブルードは数多く居るので、あのブルードとは当然無関係でしょうけど。
◆感想
ようやくイルミナティの面々が徹底的に断罪されたことで、シビル・ウォーの邦訳あたりから読者に積もっていた何とも言えない感情が少しは取り払われたのではないでしょうか。
もうボッコボコにされてますよ。「ヒーローコミックとは何だったのか」っていうぐらいのレベルで。
ビランが全く登場しない作品なのに。
イルミナティの面々ですが、少なくともアイアンマンはちょいちょい見せる暗い表情を見れば自責の念に駆られているのは何となく伝わってはくるんですよね。
でもアイアンマンの内面描写が(邦訳で読める範囲では)少ないから、どうしても非人道的な部分ばかりが目立ってしまいます。
結果だけ見れば最悪な選択しかしてしてないし。
本作含め自分一人で色々な問題を抱え込もうするのは社長の悪癖ではなかろうか。
まあとにかく、本作は終始バトルの連続で、かつただハルクが暴れるだけではないストーリーになっていて最高に面白かったです。
…まあ、案の定鬱展開が盛り込まれてるんでスカッとするお話じゃないけどね!
終盤、色々あって統合失調症がひどくなってるセントリーが満を持して出撃するシーンは滅茶苦茶熱い!
(セントリーがハルクと非常に親しいという設定は邦訳だけだと描写不足でピンときませんでしたが)
これまでアメコミのクロスオーバーの邦訳は基本的に本編のみであり、『ハウス・オブ・M』や『シビル・ウォー』はタイインありきな部分もあって話に物足りなさを感じることが多かったのですが、本作『ワールド・ウォー・ハルク』はかなり密度の濃い内容だったので本編だけでもかなり満足できました。
や、もちろんタイインも邦訳されるに越したことはないんですけど。
表紙にいるX-MENとかパニッシャーとかネイモアさんとか本編には全然登場してないし。
ちなみに本作の時系列は7月発売の『マイティアベンジャーズ:ベノム・ボム』の直後。
(セントリーの精神病が悪化した理由もここで描かれるとの事)
個人的にはニューアベンジャーズシリーズを順番に読んでセントリーについて知っておき、かつシビル・ウォー周りの作品を読んでイルミナティへのヘイトを充分に高めたうえで読んでほしい一作です。

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