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07 2013

ポール・ディニ&アレックス・ロス/DCスーパーヒーローズ

DCスーパーヒーローズ

「偉大なるスーパーヒーロー達が自省している間に、
 読者は彼らの心情に思いを馳せてみてほしい。
 “リアリティ”の幻想は、我々の眼だけでなく、心をも魅了してくるだろう。
 スーパーマンやバットマンは挫折を経験したが、
 ロスとディニは本書で素晴らしい成功を収めたのだから」


DCコミックス最強のヒーローたちが、
今、地球を救うために立ち上がる!


世界中の飢餓をなくし、犯罪撲滅へ終わりなき闘いを挑み、病気の子供たちの望みを叶え、平和の探求の中から真実を求め、世界に恐怖の疾病が広まる前に宇宙からの脅威を食い止める……。これは、崇高な行為を全うするためには危難すら厭わない勇敢なる冒険者たちの物語である。

アイズナー賞受賞チームであるライターのポール・ディニとアーティストのアレックス・ロスの驚くべき才能により、未だかつて誰も成し得なかった手法で、スーパーヒーローたちは命を吹き込まれた。息を呑むような美麗なアートとともに卓越した文章で綴られた本書を読めば、彼らがなぜ世界最強のスーパーヒーローと呼ばれるのか、理解できるだろう。

1998年から2003年の5年間にわたり、進められてきたこの一大プロジェクト。全世界に向けて再構成された燦然と輝く多彩なスーパーヒーローたちの叙事詩はここから繰り広げられるのだ。


◆収録作品

1999年01月:Superman: Peace on Earth
1999年11月:Batman: War on Crime
2000年12月:Shazam! The Power of Hope
2001年11月:Wonder Woman - Spirit of Truth
2002年11月:JLA: Secret Origins
2003年11月:JLA: Liberty and Justice


◆偉大なスーパーヒーロー達
本書は1999年から2003年にかけてポール・ディニとアレックス・ロスのコンビが発表した、6冊のタブロイド判コミックスを1冊に纏めた本です。

かつて、このコンビの6作品のうち、小プロから『スーパーマン:ピース・オン・アース』『バットマン:ウォー・オン・クライム』という2作品が2000年6月に刊行、その5年後にジャイブから『JLA リバティ&ジャスティス』が発売されていました。
しかし現在ではどれもプレ値がついており(2013年6月現在)、ちょっと手が出しにくい邦訳本になっています。

  

「評価が高い作品群なのに、今となっては邦訳が絶版で読むことができない」と、買える時に買っておかないと間違いなくほぞを噛むことになるという典型的な邦訳アメコミの後悔パターンに陥っていたのですが、何と小プロがそれまで未邦訳だった「シャザム!:パワー・オブ・ホープ」「ワンダーウーマン:スピリット・オブ・トゥルース」を含めた完訳版を2011年12月に刊行。

計400ページという分厚さを誇る1冊が、過去の邦訳を必死に買い漁るよりもよっぽどコスパが高い値段で発売されたのでした。
というわけで、収録されている作品の内容をざっくりと紹介。

◆SUPERMAN:PEACE ON EARTH
飢餓VSスーパーマン

「何年もの間、救える限りの命を救ってきた。
 人々に指示するのは私の役目ではない。
 でも、世界から飢餓を撲滅しようとする私の姿を目にすれば、
 刺激を受けて、行動を起こす人達もきっといるはずだ。
 やろう。その価値はある」


クリスマスの日、街にツリーを届けに来たスーパーマンは、歓声を上げる人々の中で苦痛に歪む悲鳴を上げた一人の女性を発見し救い出す。
彼女の痩せ細った身体を見て、何日も食事を口にしていない事が見て取れた。
スーパーマンは、裕福に暮らす人々が居る陰で、貧困層の人々が飢餓にあえいで苦しんでいる事を知る。
彼は、義父ジョナサン・ケントの言葉を思い出していた。

“大昔から人間は、どう分けるかでもめてきた。
 誰もが自分の分け前ばかり気にして、周りの事など気にも留めない。
 皆の目を覚ますことができるのは、それができるのは、私欲に走らない特別な人間だけだ。
 己を捨て、高き理想に仕える人間だけだ”


スーパーマンは国議会議事堂に赴き、「一日だけ余剰穀物を上に苦しむ人々の元に運ばせてほしい」と申し出る。
行動を起こすことで、他の人々も刺激を受けてこの問題に真剣に立ち向かっていくはずだと。
ボランティアの協力も受け、様々な土地へ救済に向かって人々に希望を与えていくうちに、スーパーマンは「自分は正しい選択をした」と確信する。

だが、スーパーマンが次に向かったヨーロッパの戦禍の街では、食料を受け取っても皆一様にして暗い表情だった。
やっと口を開いた一人の少年は、スーパーマンにこう言った。
「明日も来てくれるの?」
スーパーマンは思わず目を逸らしてしまう。

その後も各地に食料を運びに向かうスーパーマン。
彼はそこで、自分の試みが簡単には成功しないものだという事を思い知らされることになる…

◆BATMAN:WAR ON CRIME
少年とバットマン

「犯罪は、触れた者を例外なく傷つける。肉体であれ、精神であれ。
 それは痛みと死を残し…思考と魂を汚染する。
 最後に残るのは絶望だけだ」


夜、いつものように犯罪と戦い街の浄化に取り組んでいたバットマンは、犯罪によって両親を失い、孤独な身の上となった少年マーカスと出会う。
少年が警察に保護されていくのを見送るバットマン。

ここペイサイドは、かつては健全に栄えた地域だったのだが、大資本が郊外への移転を決めてから徐々に荒廃が始まってしまった。
ここに住む多くの市民が犯罪を「現実的で楽な収入源」と考えるようになった結果、治安の悪い地域と化してしまったのだ。
バットマンは何度も犯罪者たちを警察に引き渡してきた。しかしその人々は出所して単調な労働に馴染もうとしても、それを続けていく方法を知らないがために、また犯罪に走ってしまうのである。

ある日、チンピラのグループが電器店を襲撃している現場に遭遇する。
すぐさま彼らを鎮圧するバットマン。
そこで、彼は再びマーカスと遭遇するのであった…

◆SHAZAM!:POWER OF HOPE
病院の子供たちとシャザム

「キャプテン・マーベルであろうと、勝利を望めぬ戦いもある」
「そうかもしれませんが、だからと言って戦う事を諦めたくはないのです。
 今しも悲しみに沈まんとする人のために、戦い続けたいのです。
 あの子達にそうしたように…」


スーパーヒーロー、キャプテン・マーベル。
その正体は15歳の少年、ビリー・バットソン。
ビリーはヒーロー稼業を行う傍ら、キャプテンを追いかけるラジオレポーターの仕事もこなしていた。
仕事を終えたある日、彼はオーナーのモリスからキャプテン宛のファンレターを受け取る。
これも有名税だと自分に言い聞かせて、自宅で手紙を広げるビリー。
様々な手紙を開封していくうちに、ある一通の手紙が目に留まる。
それは、市立小児病院のミラー先生からの手紙で、「是非キャプテン・マーベルに病院を訪問してほしい」との内容だった。
子供たちの描いた絵が同封されているのに気付き、ビリーは口を開いた。

「シャザム!」

翌日、子供たちの元を訪れるキャプテン・マーベル。
彼は子供たちに自分の様々な戦いの話などを聞かせてやり、たちまち病院内での人気者になった。
しかし、彼に興味を示さない…というよりも、避けようとしている子供の姿もあった。
キャプテン・マーベルは老師の言葉を思い出す。

「悲しみに打ちひしがれた一人の子供が、キャプテンに希望を見出す日が来る、
 心してその日に備えよ…」


◆WONDER WOMAN:SPIRIT OF TRUTH
ワンダーウーマンVSテロリスト

“『倫理に従えば、あなたの慈愛の心をわかってくれるはずです。
 あなたこそは、真実と理解への道標だという事が』
 …そうならば、どんなに善いでしょうね。
 道標も持たず、論理も慈愛も忘れて、
 突き進むだけの人間のいかに多い事か…”


テロリスト、路上犯罪、火災現場、希少動物を狙うハンター、ハイテクを悪用する窃盗犯、列車転覆事故…ワンダーウーマンは様々な悪と戦い、そして人々を救うために世界中を飛び回っていた。

ワンダーウーマンは休息のため、一度故郷の島アマゾンに帰り、改めて決意する。
自然と文明が完璧に調和している自分たちの島のように、外の世界も平和にしてみせると。

「私の存在が人々の目を開かせる手助けになればと思うわ。
 私の言葉に耳を傾けてくれさえすれば…」


休息の時は過ぎ去り、ワンダーウーマンは今一度、人間たちの世界に舞い戻る。
彼女は次に公民権運動が独裁国家を揺るがしている状態の国に向かい、暴力が巻き起こる事態になる前に、大使として大衆の声を聞くように指導者たちに訴えに向かう。
だが、指導者たちは口では謝辞とアマゾンへの敬意を払うものの、その瞳には「女に何ができる」と言わんばかりの嘲りの色が浮かんでいた。

ワンダーウーマンは、使命の重さと達成までの道程の険しさに挫けそうになってしまう…

LIBERTY AND JUSTICE
ウィルスVSJLA
「友と立つ喜びに勝る喜びはない。
 いつ、いかなる時も…
 集いし我ら、
ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」

ペンタゴンから緊急の連絡が入り、ジャスティス・リーグのメンバーが緊急招集される。
その内容とは、アフリカで謎のウィルスによるパンデミックが起こっており、一つの村が壊滅するほどの被害が起こっているというものであった。

事件の実体が見えないため、早速現地に向かうマーシャン・マンハンターとフラッシュ、そしてグリーンランタン。
調査を進めるうちに、彼らはウィルスの発生地点を特定する。
発生地点は隕石が落下したクレーターからであり、この疾病の原因は隕石に付着してやって来た新型のウィルスが原因である事を知る。

救助活動を行うリーグのメンバーたち。
だがそこに、近隣諸国からやってきた戦闘機が、ウィルスが発生している村を焼き尽くさんと飛来してくるのであった。

◆感想
最後の『JLA:リバティ&ジャスティス』だけは複数のヒーローが活躍する娯楽作的な一作ですが、それ以外の四作品はリアルな諸問題に取り組むヒーローの姿を丁寧に描いたストーリーとなっています。
吹き出しを全く用いない(これまた『JLA:リバティ&ジャスティス』だけは例外)ため、コミックというよりは絵本的な感じなのも特徴的。

プラスティックマンオリジン

それと、本書では様々なDCヒーローのオリジンを2ページ使った見開きのコミックで知ることができます。
オリジンが掲載されているのは以下のヒーロー。

スーパーマン
バットマン
キャプテン・マーベル
ワンダーウーマン
フラッシュ
グリーンランタン
アクアマン
マーシャン・マンハンター
グリーンアロー
ホークマン
アトム
プラスチックマン


本書がよく「アメコミにハマりたての人向け」と言われるのは、作中のストーリーで各々のヒーローの魅力を最大限に引き出しているだけでなく、オリジンの収録により複数のDCヒーローについてざっくり知ることができるという面もあるからです。
『ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ』の面々(アダム・ストレンジ、ザターナ、メタモルフォ、エロンゲイテッドマン、ファントム・ストレンジャー、レッドトルネード)は残念ながらキャラ紹介だけですが。

“現実の社会問題にヒーローたちが立ち向かう”という内容から、ヴィランとの戦いは皆無
しかし本書は読者に現実で起こっている様々な社会問題の根深さを訴え、その問題を認識させることをエンタメ性を損なわせない程度に作中で描いていくという名著。
アレックス・ロスの美麗なアートとポール・ディニの描く野心的なストーリーが堪能できるこの一冊、非常におススメです。
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