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05 2013

フランク・ミラー&ジェフ・ダロウ/ハードボイルド

ハードボイルド表紙

「やめろ!」
「ニクソンどうして…私たち力を合わせるのよ…」
「いやだ!」
「私たちならヤツらを止められる…ねえ、思いしらせてあげましょうよ…
 そうして私たち、どこかで幸せに………」

「オレはあんたとは違う!オレは普通の人間なんだ!」
「ニクソン…あなたしかいないの…」
「オレはどこにでもいる普通の男なんだーーー!」


ハードボイルド 三部作

フランク・ミラー&ジェフ・ダロウの黄金コンビが描く、
アメリカン・スーパーアートコミック!
ファン待望の究極の一冊。


◆スーパーアートコミック
『ハードボイルド』は、1990年9月から1991年3月にかけて、全3話で発表された作品で、邦訳版は1994年3月に発売されました。
ディティールを極限まで描きこむことで知られるアーティスト、『ジェフ・ダロウ』のアートが楽しめる貴重な邦訳(ひょっとすると唯一かな?)です。
映画『マトリックス』のコンセプトアートを手掛けたことでも有名ですね。
ジェフ・ダロウは日本びいきな方でもあり、本作の中にもちょいちょい背景やら登場人物が着ているTシャツなどで日本語が出てきたりします。
本書の表紙のアートもこの邦訳版のためだけにわざわざ書き下ろしてくれたものだったり。

【ジェフ・ダロウのアート】

加えてライターは『バットマン:イヤーワン』『デアデビル:ボーン・アゲイン』で、渋くてカッコいいストーリーを魅せてくれたフランク・ミラー。
本作は世界観を必要以上に説明したりはせず、またミラー作品特有のモノローグもなし。
とにかく過激で迫力のあるアクションシーンに重点を置いており、読者は、最終話直前にさしかかるまで“電波な独り言を言いながら標的を殺害する主人公の活躍”を見ることになるのです。
これだけだとどういう内容やねんって感じなので、ざっくりと#1のあらすじを紹介。

◆HARD BOILED
「動くんじゃない。オレの名はニクソン。収税官吏だ」
口では自分の職業を収税官吏と語る主人公・ニクソン。
しかし彼が実際に行っているのは、標的に定めた人物の殺害である。

緻密すぎるアート
標的の殺害のためならば他に人的被害が出ようとおかまいなし

標的を殺害するも、満身創痍となってしまったニクソンはそのまま道に倒れ込んでしまう。
だが、ウィルフィード家電から送り込まれた救護スタッフがすぐさまニクソンを回収し、大掛かりな手術を施してニクソンを元通りに再生した。

そこで彼は目を覚ます。
心配した妻のベッキィと子供の二人が駆け寄る。
子供たちを安心させて、改めて寝なおすニクソンだったが、彼はまた、さっきまで見ていた“悪夢”に苦しめられてしまう。
そんなニクソンの姿を見て、ベッキィは衣服を脱ぎ、彼を起こして二人でセックスを始める。
そこに子供たちが乱入し、ニクソンの腕に謎の注射を施す。
子供たちの不可解な行動に疑問を抱く暇もなく、ニクソンはゆっくりと目を閉じる…

次の日の朝。
子供たちの成長を楽しみにし、車に乗って毎朝なじみの道を走る、ごく普通の生活を愛する彼は、家族に見送られながら仕事に向かう。

「…すべてがオレの名前と同じでありふれてる。
 セルツ、カール・セルツ。オレは保険調査員のセルツだ」


◆#2~#3(最終話)の見どころ
大爆発に巻き込まれ死傷レベルの傷を負っても何故か痛むそぶりは全く見せない主人公。
#2まで読み進めると(というか#1の時点で意味深な描写が多いのでピンと来るのですが)主人公の負った傷の部分から機械が見え隠れしており実は主人公の正体がロボットであると読者は主人公よりも一足早く気付ける作りになっています。

ババアと市街戦

自分の事を人間と信じて疑わない主人公。
彼はウォルフィード家電に回収されるたびにデータを書き換えられ、自分が本当は暗殺者をやっていることにも、自分の名前が毎回変わっていることにも、そして自分の家族が偽りの存在である事にも気付けない…

しかし、上記の老婆との戦闘では相手が想像以上の強敵だった事もあってそうとうな深手を負ってしまいます。
そして、自分の剥がれ落ちた皮膚を見て、ようやく自分がロボットである事を知ってしまうのです。

自分の正体を知る

さらに戦った老婆の正体は同じくウォルフィード家電に作られたロボット。
彼女の目的は主人公に自分がロボットである事を自覚させること。
二人で力を合わせてウォルフィード家電からの解放のために社員を殺害し、ロボット同士幸せに暮らしていこうと提案してくるのですが、自分の事を人間と信じていたい主人公はこれを強く拒否。
主人公は彼女を完全に破壊し、とにかく家に帰ろうとフラフラと歩きだす…

ちなみに『暗殺者』という記述は原文そのまま。
暗殺という割には周囲を巻き込みすぎな描写が多いのですが、そこは突っ込んではいけない。
一応彼を作ったウォルフィード家電が警察と結託して何とか後始末をしているとの事。

創造主に頼みごとをする

最終的にウィルフォード家電に乗り込み、社員を殺害しながら自分を造りだした閣下の元に向かう主人公。
しかし激戦が続いた結果、彼の身体はもはやボロボロだった。
彼は最後の力を振り絞って、閣下に“ある頼み事”をする…

◆ハードボイルド ~神経塔を破壊せよ~


コミックぐらいしか展開されていなかった『ハードボイルド』ですが、何気に1998年7月30日にプレイステーションでゲームも出ていました。
クリオ・インタラクティブ(Cryo Interactive)という会社が開発した作品で、日本ではジーク株式会社から発売。

最後はウィルフィード家電に戦いを挑むという展開自体は原作と同じなものの、何故か常に車に乗って戦う3Dレースシューティングゲームというジャンルとなっておりますが、実際の所レースゲー要素は皆無。
(車のスピードを変化させられたり、コースアウトでミスになるという仕様だけはそれっぽいけども、正味STGではそんなに珍しい要素ではない)

なんで普通のアクションゲームじゃないのかが甚だ疑問ですが、他でアップされていたプレイ動画を見た分には無難な3DSTGという印象を受けたので、ちょっとだけ気になる一作。
買いたいほどじゃないけど。


◆感想
ぶっちゃけた話、ストーリーはそこまで内容があるわけではないです。
タイトルこそ『ハードボイルド』ではあるけども、中身は別段そこまで渋い物語が展開されるわけではない暴力的な近未来SFアクション物でしたし。
帯でも「アメリカン・スーパーアートコミック!」と煽られている通り、ジェフ・ダロウの緻密すぎるアートを最大限に楽しめるように作られたストーリーという印象。

しかし、どちらかといえばアートよりストーリー重視な僕でも、全ページ全コマに徹底して異常なまでに細かく書き込まれたジェフ・ダロウのアートを見ていると、多少ストーリーが微妙でも充分に満足できました。

微妙とはいっても、#3の要所要所のセリフ回しや、ラストシーンが『主人公にとってはこれがハッピーエンドなんだろうな』ってな感じに締め括られているあたりは結構好き
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