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25 2013

グラント・モリソン&フランク・クワイトリー/JLA:逆転世界

逆転世界表紙
「世界は平和だ」

ここは善悪が逆転した世界――。
反物質宇宙アンチマター・ユニバース にようこそ……。


ウルトラマン、オウルマン、スーパーウーマン、パワーリング、ジョニー・クイック。彼らは史上最悪のスーパーヴィランであり、かの有名な“クライム・シンジケート・オブ・アメリカ(CSA)”のメンバーである。CSAの強大な力は世界の隅々にまで行きわたり、彼らが築き上げた悪の帝国が揺らぐことはなかった。
だが、CSAの“歪んだ鏡像”が異次元の世界から現れたとき、彼らは初めて存亡の機に立たされた。
CSAの面々は“ジャスティス・リーグ”と名乗る異次元からやってきた集団を阻止することができるのか?
それとも難攻不落の悪の帝国は“法と正義の自由”という名の“暴力”の前に崩れ去ってしまうのか?


◆収録作品

2000年01月:JLA: Earth-2


◆逆転世界
『NEW52』『アースワン』シリーズと、真新しめなDC作品を邦訳してきた小プロですが、ここで一旦古めな作品の邦訳にシフト。
本作『JLA:逆転世界』は、1985年に起こったクロスオーバーイベント『クライシス・オン・インフィニット・アース』(ヴィレッジさん邦訳いつになったら出してくれるのん…?)の後に誕生した新しい世界「ポスト・クライシス・アース」を舞台としたJLAのエピソードとなっています。
当時メインのストーリーラインを展開していた世界ですね。
原題が『JLA:EARTH 2』な事や、作中でJLAの居る世界の事を便宜上「アース2」と呼ばれているため多元宇宙の「アース2」での物語と勘違いしそうなのですが全く無関係です(正直ややこしい)

JLAのいる世界とは別の世界『反物質宇宙』からやってきた男「アレキサンダー・ルーサー」
本来はスーパーマンの宿敵でもあるレックス・ルーサー。しかし彼の居る『反物質宇宙』とは善と悪が逆転しており、そこではCSA(クライム・シンジケート・オブ・アメリカ)という強大な力を持つヴィランチームが世界を支配しているのだという。
この反物質宇宙のルーサーはたった一人正義を名乗って悪に満ちた世界で孤独な戦いを続けていたのだとか。
しかしそれでもCSAから勝利を収める事は出来なかったため、CSAの圧政を止めさせるためにルーサーが発見したこの世界のスーパーヒーローチーム『JLA』に救援を要請しに来たのです。
異次元世界のトラブルにも干渉すべきかどうか、すぐさま会議を開くJLA。

JLA会議中
ダイアナさん心なしか男らしいっすね

こうして、反物質宇宙に行く事を決めたJLA。
そしてルーサーが孤独に戦ってきた向こうの世界のあまりの陰鬱な光景に驚愕することに…

◆ヴィランチーム『クライム・シンジケート・オブ・アメリカ』
反物質宇宙を拠点として悪の限りを尽くす強大な力を持つヴィランチーム。それが『CSA(クライム・シンジケート・オブ・アメリカ)
正義のヒーローチーム『JLA』とは正反対の存在というだけあって、どいつもこいつもクセのありすぎる設定となっているキ○ガイ染みた性格の奴らです。

CSAの悪い会議
正世界・アース2の存在を知るや否や、動揺するどころか新しい世界を征服できるとノリノリのご様子

リーダーはその強大な能力を自らの征服欲の為に使う男『ウルトラマン』
常に人民を見下ろし見張っており、少しでも自分を侮辱する声が聴こえればすぐに対象を殺してしまう。
恐怖で人を支配する恐ろしいヤツ。
ちなみにホントの初登場はあの光の国の人よりも早い1964年。

次にチームの頭脳役『オウルマン』
彼は幼い頃、母親と弟(もしくは兄?)のブルース・ウェインが強盗に殺されたという悲劇的な過去を持つ男。
しかしそれを『警察本部長である父トーマス・ウェインが二人を守れなかったからだ』と歪んだ逆恨みをするようになり、市庁舎のゴードン局長と手を組み、ゴッサムで犯罪を重ねては警察と敵対するヴィランとなったのです。

そして紅一点の『スーパーウーマン』
女性離れしたパワーと能力を持っているという点はワンダーウーマンと共通しているのですが、そこは逆転した世界。
ウルトラマンの愛人でありながら、オウルマンとも関係を持ち、さらに普段の顔はデイリー・プラネットのロイス・レーンでもあり、社内でジミー・オルセンを「いじめて」楽しんでいる男遊びの激しいとんでもない女。
終盤ではマーシャン・マンハンターの強さを見るやいなやすぐさますり寄ってくるシーンがあったりと、とどまることを知らないビ○○さを見せつけてくれる凄いキャラ。

ヤバいキャラなのが『ジョニー・クイック』
「合成加速剤」なる薬を腕に注射してフラッシュのような高速移動を可能にするヴィランなのですが、その光景ははたから見ていると薬物依存の患者そのもの。
薬が切れると会話もままならなくなるという体たらく。
しかし一発キメれば高速移動も高速思考も思いのまま。
本編ではちょっとギャグキャラっぽく描写されていますが、正直ネタが黒すぎてこの人怖い。

他がアレすぎて相対的にマトモに見えるのが『パワーリング』
といってもリングの思念を具現化できる能力を都市の破壊や脅迫に用いている描写があるので十分彼もヴィランなんですけどね。
本編ではグリーンランタンの力で作られたプラズマ障壁を解除しようとして結局成功できなかったり、JLAとの決戦ではワンパンで片付けられたりとこれといって印象に残らなかったのが悲しい。

こんな感じで強い上に(パワーリングだけサゲた紹介になっちゃったけど)厄介な性格持ちが集まっているCSA。
JLAの面々は彼らにどうやって立ち向かっていくのか!?
それは本編で。

ちなみに、設定が改変される『クライシス』以前のアースに登場したCSAの面々はこんな感じでした。

いい笑顔のウルトラマン
とても楽しそうに市内で強盗をしまくるCSAの図

◆感想
JLAとCSAの戦いだけでは終わらず、さらにもう一捻り加えた展開になっておりなかなかに目が離せないストーリー。
善と悪のぶつかり合いを描きつつも、結末はなんとも皮肉めいた終わり方。
『善悪が逆転した世界』というのはJLAが思っているような単純な世界ではないのです。
もっと根本的な部分が逆転している感じというか…ヒーローコミックのお約束をネタにしたメタ的な話なんでしょうか。
本作に登場する正義の味方、ルーサーが毎回CSAを追い詰めては『あと一歩という所でミスしてしまう』というのもひょっとすると…

キャラ設定の異なる並行世界物はこれまでも数多く翻訳されてきており、そろそろ食傷気味になるかなとちょっと思っていたのですがそんな考えはどっかに吹き飛びましたね。

トーマス・ウェインと息子ブルース・ウェイン
並行世界のトーマス・ウェインと出会うバットマン

バットマン好きとしては、並行世界のバットマン絡みの話は何通り見てもグッとくるものがあります。
本作ではモリソンがトーマス本部長をちょっと歪んだキャラにしてくれていたおかげで感動はしなかったけどね!
でもオウルマンがアース2にやってきて、この世界のウェイン夫妻の墓標を見るシーンは…

CSAのぶっとんだキャラ造形にも目が行きますが、それ以上にストーリーや作中に盛り込まれた演出が秀逸でした。
どちらかといえば反物質宇宙の住人とCSAが主役寄りな作風なのも面白い。
過去に邦訳されたモリソンバットマンのような台詞の省略やコマからコマへの飛躍、クセの強いセリフ回しといった要素は見られず、ストーリーが把握しにくくなっているような内容ではないので、そういう面でもおススメなモリソン作品です。
(全104ページと短めな作品なので話の進むテンポはやたら早いですが)

余談ですが、巻末のぶっとんだ著者紹介(モリソンは情け容赦なく標的を殺害云々~、クワイトリーがペンタゴンの暗殺者につきまとわれている云々な内容)もこの邦訳ではしっかり訳されています。
さらに訳者の高木亮氏もそのネタにしっかり乗っかっていてちょっと吹いた。

ウルトラマンはリョナラーなんですかね

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2 Comments

溝渕  

今日買って早速読んでみました!
あの結末は…
スーパーウーマンの「結局なにがしたかったのよあいつら」とか
政治家たちの「元に戻った」発言を見ると本当にやるせないというか
彼らにとっては正義が悪
ワンダーウーマンの「善行が善行を呼ぶはず」も結局理解できなかったと思うと
本当に皮肉ですね

2013/04/27 (Sat) 21:31 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>溝渕さん
スーパーマンはCSAが何かを学んだことを期待してたのに結局ああいう結果になってしまって何とも言えない気分に…
でもこの後の再登場でウルトラマンとスーパーウーマンがJLAに助けを求めるエピソードがあるみたいなんですよね。
『逆転世界』以降のCSA登場回をもっと読んでみたいところです。

2013/04/28 (Sun) 14:12 | EDIT | REPLY |   

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