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27 2013

ジェフ・ジョーンズ&ゲーリー・フランク/バットマン:アースワン

バットマンアースワン表紙

「お前は世間知らずの坊やだ。戦う男には程遠い。戦争すら知らない。
 感情に流され……ミスを犯す。
 拳銃も戦術も事前調査もない。コウモリの服だけ。ケープが役に立つか?
 ここはゴッサムだ。警官も味方じゃない。市民も味方じゃない。
 この世界では誰もが私利私欲で動くだけだ。お前には無理だ。
 なすべきことをなしとげるだけの覚悟がないからだ。
 お高くとまっているだけでは敵は倒せん」


新時代の“闇の騎士”―。
あなたはまだバットマンの本当の物語を知らない。


「バットマンはヒーローではない」
「ただの人間である」
「間違いを犯し、弱く、怒りっぽい」


敵と味方の境界線があいまいなゴッサムシティで、闇の騎士になろうとするブルース・ウェインの前途に、かつてないほどの困難が立ちはだかる。復讐に燃えるブルースは、両親を殺した真犯人や、犯罪者を野放しにする汚職警官に罰を与えることを誓い、狂気に満ちた自警団活動に乗り出す。
もはや誰も……アルフレッドですら彼を止めることはできない―。

人気作家のジェフ・ジョーンズとゲーリー・フランクが“闇の騎士”の新たな神話を創造した『バットマン:アースワン』においては、過去の設定や常識はもはや通用しない!

本書は、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストに入った『スーパーマン:アースワン』の系譜につらなる第2弾として発売され、本書もニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストにランクインし、第1位となった名作である。

マスクを被ったバットマンの目が見えるというのは久しぶりのことである。
だが、これは小さな変更点などでは決してない。バットマンの真の魅力は内面にあることを、ジョーンズとフランクはよく理解している。
そして今、まったく新しく、かつ衝撃的な姿が明らかにされる。
表面だけではなく内面も。

―ブラッド・メルツァー
 (ベストセラー『偽りの書』著者、『アイデンティティ・クライシス』ライター)

『スーパーマン:シークレット・オリジン』で“鋼鉄の男”を再定義したジェフ・ジョーンズとゲーリー・フランクが、今度はブルース・ウェインに取り組み、才能ある作家の手にかかれば、バットマンの伝説も決してマンネリにはならないことを証明してくれた。
アルフレッドは元英国海兵隊、ペンギンは実に不気味でサディスティックな悪人と化している。見事だ。

―デイビット・S・ゴイヤー
 (映画『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『マン・オブ・スティール』共同脚本家)

バットマンに新しいアレンジを加えるなんて不可能だと思うかもしれない。
しかし、ジョーンズとフランクがそうではないことを証明してくれた。
独創的で、驚きと情感に満ちている。必読の一冊である。

―デイモン・リントロフ
 (テレビドラマ『LOST』プロデューサー)


◆収録作品

2012年07月:Batman: Earth One #1


◆異伝:バットマン
バットマンといえば、常人でありながら極限まで鍛え上げた肉体と卓越した頭脳を持ち、また優れた科学技術を用いた多くの秘密兵器を駆使して、スーパーマンらのような超人にも負けず劣らずの活躍を見せるスーパーヒーロー。
コミックや映像作品を見ているともう正直「この人ホントに人間か?」と疑いたくなるようなハイスペックぶりで有名な男ですよね。

そんなバットマンですが、彼のイメージを損なわずに、この現代に改めて再解釈して作り出すとしたらどういうキャラクターとなるのか?
その作品の舞台となるのは正史世界とはかかわりを持たない『並行世界』
現代風リメイクとして2012年7月に発表された本作『バットマン:アースワン』でのバットマンは、どのような形で世に送り出されたのかといいますと…

着地失敗
無様

なんと、弱いヒーローという設定で登場したのでした。

冒頭、とある悪人を追いかけていたバットマンは秘密兵器のワイヤーガンを繰り出そうとするもあっさり故障し、仕方なく改めて追跡を再開すると今度は悪人が建物から建物に飛び移ったので、バットマンも同じくジャンプして飛び移ろうとしたら見事に失敗し上記の画像のようなザマに。
何とか立ち上がるものの、その場で強盗の現場を見かけてしまうバットマン。
落下でダメージを受けてフラフラになった彼が取った行動は…見て見ぬフリ。

弱いんです。どうしようもなく弱いんです本作のバットマン。
正史世界なら数コマで捕まえそうな悪人すら、グダグダした追走劇の末に取り逃がしてしまうんです。

でも実際そんなものかもしれませんよね。
マンガじゃないんだから超性能な秘密兵器なんて用意できませんし、ただがむしゃらに肉体を鍛えてもいきなり犯罪者たちにぶつかったところでうまく立ち回れません。
しかも銃は絶対使わないという頑固なポリシーまで持っているのが大きなハンデ。

このアースワンの世界では警察もそう。

ゴードンとブロック

正史世界では腐敗した市警の良心として、またバットマンのよき理解者として活躍するゴードン刑事も、この作品では悪人たちを恐れて街の犯罪に目をつぶってしまう弱い人間として描かれています。
何故なら悪には敵わないから。
ゴッサムを支配する悪に立ち向かおうとすれば、自分の周囲に危害が及んでしまうから。
マンガのように正義を貫き続けることなんてできないのです。

アルフレッドとブルース
諦めずに悪と戦おうとするブルースを何度も諌めるやたらいかついアルフレッド

しかしそれでも諦めずに自警活動を続けるバットマンのこの行動は、この腐りきったゴッサムシティを変えるきっかけとなっていきます。
ラストの流れはありがちな展開だけれども非常に熱い。
弱い人間でありながら、戦おうと決意して勇気を振り絞り立ち上がる姿は誰がどう見てもヒーローでした。

◆PICK UP キャラクター ハービー・ブロック
ハーベイ・ブロック「もしあれを解決したら…映画化間違いなし」

タレ目とニヤケ面がひっじょ~に印象的なゴードン刑事の相棒。
彼は『ハリウッド・ディテクティブ』というTV番組で主役もやっている芸能人刑事。
好き好んで芸能人をやっているだけあって案の状かなり目立ちたがり屋な性格らしく、ゴッサムシティにやってきたのも未解決事件である『ウェイン夫妻殺害事件』の謎を解いて脚光を浴びるのが目的。

絶妙に腹の立つ表情で、かつ事件に取り組む動機がアレなのもあって初登場から読者に苛立ちを与えてくれるのですが、動機は何であれ彼の持つ正義感は本物。
報復を恐れて街の犯罪に目をつぶるゴードンと衝突したりもします。
ゴードンがもう一度悪に立ち向かえるよう奮い立たせるのも彼です(そのきっかけとなった事件の引き金も彼なんですがそれはまあ置いといて)
第一印象は悪いですが、バットマン、ゴードンと並んで非常にカッコいいキャラとして活躍!
読み始めと読了後で読者に与える印象がここまで変わるキャラも珍しい。
そんな彼が、本作で起こる事件のあまりの凄惨さを目の当たりにして心に深い傷を負ってしまうラストシーンは何とも言えない…

ちなみに『ハービー』という名前が付いていますがトゥーフェイスことハービー・デントとは無関係

ハービー・ブロックアニメ

正史世界やアニメでは、ちょっぴり太い渋めのベテラン刑事として活躍しています。
最近の邦訳だと梟の法廷にも登場してましたね。
過去の翻訳だと「トゥーフェイスであるハービーと名前の綴りが同じでややこしい」という理由からあえて『ハーベイ』『ハリー』という名前に変更されることがあったらしいですが、近年の邦訳では『ハービー』に統一されているようです。

◆感想
…というわけで今回紹介した『バットマン:アースワン』、これ超おススメです。
アレンジされまくった既存のキャラクター達が新鮮というのもあるのですが、それ以上にやはりシナリオが良い!

ジェフ・ジョーンズの作品が邦訳されるたびにベタ褒めしまくっている気がしますが、この人の描くヒーローの描写は内面描写も含めて素晴らしいんですもの実際。

色々伏線を張りつつ、ラストでは続編を匂わせる締め括り方をしており、既に本国では2013年内に『バットマン:アースワン』の新作が発売される予定があるとの事なので、是非邦訳でも追いかけてほしいところです。

ちなみに今回も、訳者の高木亮氏が自身のブログで独自に補足解説を行っております。
【バットマン:アースワン 補足】
【用語解説の訂正】
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4 Comments

アウル  

ハービーブロック・・・どっかで聞いたことあると思ったらあのおっさんでしたかw
目立ちたがりだが正義感自体は本物、態度は悪いが正義感はゴードンと同様な正史と似て非なる設定は面白かったですね。

グラッブルガン壊れ、屋根飛び移り失敗、強盗放置、ホームレスのおばちゃんに金を恵む、自家用車で帰宅・・・どっから突っ込んでいいんだかわからなかったのが正直な気持ちですw

バットマンの目が見える・・・コミックではほとんどないことだけに、お陰でリアル感が出てよかったです(ノーラン版バットマンをコミック化したらこんな感じになるのかな)

そしてアルフレッドの設定変更もすごかったですね、まさか義足になろうとは。
ダーナイトリターンズのアルフレッド並みに辛口で、なおかつ両親を失くしたブルースにとって親でもあり師でもある・・・燃えましたw

最後に、マーサがアーカムの親族とは知りませんでしたが、これってハービーが双子みたいにオリジナルの設定なんでしょうかね?

2013/03/28 (Thu) 02:04 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>アウル さん

>これってハービーが双子みたいにオリジナルの設定なんでしょうかね?
う~ん、これまで読んだ邦訳を見た限りでは本作オリジナルで間違いないと思うのですが…
すいません、僕もアメコミはまだまだ知識が浅い身なので、設定面の質問をされてもあまりハッキリとした回答はできないんです…i-241

2013/03/28 (Thu) 17:53 | EDIT | REPLY |   

ホセ  

表紙だけみて敬遠してましたがあなたのサイトで興味を持ち読みました!メチャクチャ面白かった!ありがとうございます!!今後も参考にさせてもらいます!

2013/07/06 (Sat) 10:15 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>ホセさん
僕の描いたレビューで興味を持ったってのは嬉しい言葉ですねー、ありがとうございます!
今後も自分のペースで邦訳アメコミの紹介記事を書いていくと思うのでよろしくお願いしますね。

2013/07/06 (Sat) 23:03 | EDIT | REPLY |   

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