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14 2013

ジョン・ネイ・リーバー&ジョン・カサディ/キャプテン・アメリカ:ニューディール

キャプアメニューディール

「自分達のやった事の意味がやっとわかった…
 9月11日になってようやく。
 あの日までは…やるべき事をしたまでだと答えていただろう…
 ヒトラーとナチを倒し、悪の枢軸軍を滅ぼすためと。
 だが今は…その目に何が見える?
 1945年2月13日、そして14日の光景…
 この人々は兵士ではなかった。なのに殺された」


9.11が落とす影の中、
キャプテンアメリカはテロの脅威に立ち向かう


2001年9月11日、ニューヨーク。消防士、警察官、レスキュー隊が人々のヒーローとなった―ワールドトレードセンターの崩壊に際し、自らの命を危険に晒して。恐ろしい事件ではあったが、驚愕から覚めた多くの人が、瓦礫の下の生存者を探すべく、我が身を省みない献身を見せた。しかし半年が経つと、テロへの恐怖をかつてないほどに募らせたアメリカ国民はヒーローを渇望するようになった。ためらいなく正義を遂行する兵士―合衆国最高の戦士を。それこそが、スティーブ・ロジャースであり、星条旗を纏ったスーパーソルジャー、キャプテン・アメリカなのだ。

センタービルの小さな町を、アル・タリクを名乗るテロリストが占拠。多くの町民を人質に立て籠もった。救助は不可能に思えた―キャプテン・アメリカを除けば。彼の任務は無垢なる人質の命を守り、テロリストを打ち倒す事。多くの命を犠牲にした非道なテロリストに対し、スティーブ・ロジャースは、これ以上、命を奪わせはしないと、固く心に誓うのであった。

この特筆すべきエピック―2002年にマーベルナイツ・ブランドで発売された―はキャプテン・アメリカの新たな方向性を示した。昨今のヒステリックな政治風潮に流される事なく、星条旗を掲げるこのヒーローは、アメリカの自由を体現してみせたのだ。我々が彼を最も必要としているその時に。


◆収録作品

2002年06月:Captain America Vol.4 #1
2002年07月:Captain America Vol.4 #2
2002年08月:Captain America Vol.4 #3
2002年09月:Captain America Vol.4 #4
2002年10月:Captain America Vol.4 #5
2002年12月:Captain America Vol.4 #6


◆9.11に直面するキャプテン・アメリカ
本作は、2001年9月11日に発生したあの『同時多発テロ事件』を題材とした作品です。
【Wikipedia:アメリカ同時多発テロ事件】
上記にある『マーベルナイツ・ブランド』とは『ハードな描写を可能とする』基本的にはクライムヒーローを中心に活躍させるための大人向けのレーベルなのですが、本作は現実に起こった事件を取り上げる重いテーマなのもあってか、基本シリーズとは異なるこのレーベルから発売となりました。

キャプテン・アメリカの目を通して描かれていく9.11直後のアメリカ。

怒りの矛先
中東系というだけでテロとは無関係な市民が襲われる1シーン

テロによって家族を失った遺族のやり場のない怒り。
フューリーから戦地に赴く指示を断り、テロの跡地で作業を続けるキャップ。

それから7ヶ月後、今度はセンタービルの小さな町がテロリスト達に占拠される。
アル・タリクと名乗るそのテロリストたちは、破砕型地雷を大量に設置して立て籠もったのである。
現場に急行するキャップ。
彼の前に立ちはだかる敵にはなんと子供たちも含まれていた。

戦災孤児

かつてアメリカ人が戦争に用いた地雷によって、手や足を失ってしまった子供達。
このシーンの後のテロリストの主張がまた印象的。
「アメリカ人が死ねば残虐行為だと騒ぐが…我々が死ねば…“巻き添え”で済まされる」
人々の命を救うため、テロリストと戦うキャプテン・アメリカ。
だが、テロリストがテロを起こす動機となったその根源はアメリカにある。
アル・タリクを倒した後、キャプテン・アメリカは報道カメラに向かってある行動を取る。

正体を明かすキャップ

それは、「全世界に向けて自らの素性を明かす」というものだった。
『事件の責任を全て負い、さらにテロリストの目を自分に向けさせる』という手段を取るキャプテン・アメリカ。
これもまた本作屈指の名シーン。

ここまでが全6話中3話目までのざっくりとした展開です。
本作のストーリー展開で最も感心させられるのが、事件の記憶も冷めやらぬ2002年6月に発表した同時多発テロ題材の作品でありながら、単にテロリストに報復する等という感情的な展開に走るのではなく、極めて冷静な視点からキャップの独白を通してアメリカのあり方を説いている内容になっているという点。

フランク・ミラーのホーリーゲフンゲフン
フィクサー&バーグラー「・・・・・・」

テロがもたらした複雑な問題をしっかりと分析しつつ正義の意義を問う本作『キャプテン・アメリカ:ニューディール』
2011年に出版されたキャップ邦訳の中ではこれだけ異彩を放っていますが、本作は作中で描かれるキャプテン・アメリカ像も含めて間違いなく傑作なので、強く一読をお勧めしたいところ。
しかし映画『キャプテン・アメリカ』に便乗した邦訳で、こういう独特な作品をチョイスするヴィレッジのセンスったら。

9月11日

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2 Comments

流浪牙  

フィクサー&バーグラー「・・・・・・」

ああ……あ……あの閃光のように冴え渡ってたフランク・ミラーがこんなになっちまって……
こんな……見る影もねぇほどボロボロによ……

2013/03/17 (Sun) 09:56 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>流浪牙さん
ヴィレッジは『オールスターバットマン』と『ホーリー・テラー』というダブルパンチでかかってきたので、
小プロも対抗して『前から検討しているというシン・シティの復刊』を進めるべきですね。
評判のいいミラー作品をもっと邦訳しよう(提案)

2013/03/17 (Sun) 13:45 | EDIT | REPLY |   

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