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25 2011

グラント・モリソン&デイブ・マッキーン/バットマン:アーカム・アサイラム完全版

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"Let the FEAST OF FOOLS BeGiN!"…いざ、愚者の饗宴を始めん!

「ここに来い。狂気の館に。お前のいるべき場所によ」

犯罪者専門の精神病院『アーカム・アサイラム』で暴動が発生した。ジョーカーの誘いに乗って一人乗り込んだバットマンを待ち受けていたのは、トゥーフェイス、マッドハッターら危険な囚人達だった。
彼らと対峙し、悪夢の館を彷徨うバットマンは、いつしか正気と狂気の狭間に陥っていき……。


◆収録作品

1989年10月:Arkham Asylum: A Serious House on Serious


◆A Serrious House on Serious Earth
Sho Pro Booksアメコミ復刊ランキングで堂々の1位を獲得したバットマン屈指の問題作と煽られている、
グラント・モリソン&デイブ・マッキーン
『バットマン:アーカム・アサイラム 完全版』を紹介します。

コミックの絵の枠を超えた、もはやアートとも言ってよいデイブ・マッキーンの迫力のある絵と、
グラント・モリソンのシナリオによって読者を狂気かつ幻想的な世界へ誘ってくれます。

しかし問題作と呼ばれるだけあってその内容はやや難解で…

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絵画のような絵だけどコミック

◆STORY
アーカム・アサイラム(精神障害を持つ犯罪者専用の精神病院)で暴動が発生。
囚人たちは職員を人質に取り、異常な要求を突きつけてきていた。
暴動の首謀者であるジョーカーの誘いに乗り、単身アーカム・アサイラムに乗り込むバットマン。
そこに待ち受けていたのはかつてバットマンが対峙したヴィラン達だった……

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お友達=ヴィラン達

職員を人質に取られ、ジョーカーの要求を呑まざるを得ないバットマン。
ジョーカーの要求は、人質の命がかかった『かくれんぼ』だった。

『1時間やるから好きな場所に隠れろよ。ただし、出口は全部封鎖してあるぜ
 1時間たったらお友達が探し始める』
『ゲームは真夜中までだ!行け!行くんだ!』


かつての敵と対峙しながら狂気にまみれた館をさまようバットマン。
職員の一人である心理療法士「ルース・アダムス(ルーシー)」が行った言語連想テストを受けた事により、
バットマンの精神はかき乱されていた。

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よみがえる忌まわしい記憶

アーカムに居続ける事で徐々に狂気にあてられ、正気と狂気の狭間に陥っていくバットマン…
彼は自分の辿る道に何を思うのか?

◆OUT OF THIS WORLD
本作ではバットマンとヴィランの戦いよりも、
ヴィラン達が狂気に囚われているようにバットマン自身も狂気に囚われているのではないか。
悪人に恐怖を与えるバットマンは人々に恐怖を与えるヴィランと何が違うのか。
バットマンも狂人なのではないか?

というバットマンの精神面を大きくクローズアップしたストーリーとなっています。

メインストーリーと並行して、アーカム・アサイラムの創始者、アマデウス・アーカムの日誌も作中に挿入。

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妻と娘に改築した治療施設で暮らす事を提案するアーカム
それが悲劇の始まりであり、この館に狂気を蔓延させる事になる

アーカムを襲った悲劇を契機に、彼は次第に狂気に陥っていく。そして狂人がはびこっている現在のアーカム・アサイラム。
本作終始人間の狂気を見せられつづけるサイコな作品となっています。
挿入されるキャプションの文章が難解であり、登場人物のセリフも理解しづらい発言が多く、
終始狂気に塗れているストーリーなために問題作と扱われるのでしょう。

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頭が痛くなる狂人たちのセリフ(一部) 実は映画や洋楽からの引用も混じっていたり
『コマドリがいっぱい!』 『誰がバンビを殺したの』 『血だ!』 『オレンジ?』
『せまい!せまい!』 『神様って昆虫なんだって』 『ネズミの独裁者』

実際、一回読んだだけでは話の流れがいまいち理解できませんでした。
何回か読み直し解説を読んで、コマに秘められた意味、作者がこめたシーンの意図を理解した感じであります。
意味ありげなシーンが多い分、意外と再読性に優れている作品かも?

この完全版ではグラント・モリソンによる本作の脚本も併録されているため、
話の流れが掴み難くなったら一度解説書と合わせて読むのもアリかもです。
とはいえシーンの説明や裏話まで描いてあるので気になる人はやっぱり再読したときのほうがいいかもですが。

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◆本作のトゥーフェイスさん
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ルーシーの行った精神治療の結果、コインを用いた『二者択一への強迫観念』を取り除く事に成功。
コインの代わりにサイコロを与え選択肢を6つに増やし、適応させることができた現在は、
『タロットカードを与える事で選択肢を78に増やす』
という段階を踏んだ治療を実践している。

しかし……
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選択肢が増えすぎた事でトイレに行く決断すらまともに下せない状況になり、その結果失禁までしてしまいます。
性格も気弱になりなんというか見るのも痛々しいです。

ここまで精神が破壊しかけているトゥーフェイスが本作のラストではどうなるのか。
個人的に好きなヴィランであるトゥーフェイスの顛末はこの作品の見所の一つでもありました。

◆感想
本作は解説必須というくらい難解な言い回しが多い作品ではありますが、
登場人物の精神面を深く掘り下げた独自の雰囲気を持つストーリーはやっぱり大きな魅力です。読み返して細かな演出に気づきハッとさせられることも多め。
(ジョーカーの「エイプリルフール」発言が後のアーカムによるマーティン殺害シーンにかかっていたりなど)
『サイコスリラー』な内容と言えばいいんでしょうか。

本書付属の解説書では足りない部分は、翻訳を務めた『アメコミくえすと』の高木亮氏がさらに細かい解説と関連リンクを用意されています。
【アーカム・アサイラム 注釈】
個人的にジョークの解説と登場した固有名詞のリンクがありがたい。

ちなみに完全版の本書でのジョーカーのセリフには『怨霊』という特殊フォントが使われているのですが、
こちらも高木亮氏が提案されたのだとか。
ジョーカーの狂気を表現したようなホラーフォントであり、ある意味日本語版だけのお楽しみですね。
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2 Comments

No Name  

凄い参考になりました!
買いました!!今から楽しみです。

2016/07/13 (Wed) 01:09 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
モリソンとマッキーンが描く狂気の世界をどうぞ堪能してください!

2016/07/17 (Sun) 12:03 | EDIT | REPLY |   

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