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28 2012

マーク・ミラー&ブライアン・ヒッチ/アルティメッツ

アルティメッツ表紙

「何を笑ってる?」
「この状況にさ。周りを見ろよ…
 数年前のシールドはあんたと俺だけ。任務はソ連の崩壊だった。
 なのに今、あんたは雷神を宇宙人の元に送り込むわ、
 伝説のキャプテン・アメリカに指示を出すわで…
 超クールなことになったもんだぜ」

「悪くないだろう?行くぞ、諸君」

世界的な脅威から人類を護るため、
最強のチーム“アルティメッツ”が集結する!
映画『アベンジャーズ』の原点ともなった超大作を見よ!

この本は、あたかも錬金術のようなものだ。ただ人々が寄り集まっているものとは違う、良いチームと同じく、全てが連携しているのだ。この本は読んでいて面白いだけではない。
壮大なストーリーテリングがあり、ライター、アーティスト、キャラクターの絶妙な合致がある。読者はこの本を読んで楽しい時間を過ごし、読後は絶対必読コミックだと感じる事だろう。
                  ―ジョス・ウェドン(映画『アベンジャーズ』監督・脚本)

スパイダーマン、グリーン・ゴブリン、X-MEN、マグニートー……。超常パワーを持つ驚くべき存在が次々と現れた現代アメリカ。従来の武器や考え方では対処不能と判断した政府は、少数精鋭の最強チーム“アルティメッツ”の結成を命じる。その目的は、新世代の脅威から人類を護ること――。
気鋭のコミック作家マーク・ミラー&ブライアン・ヒッチにより、映画にも匹敵する超大作が生み出された。マーベルの新ライン「アルティメット・ユニバース」の中心的作品となった、スーパーヒーロー・エピックを初邦訳!


◆収録作品

2002年03月:Ultimates #1
2002年04月:Ultimates #2
2002年05月:Ultimates #3
2002年06月:Ultimates #4
2002年07月:Ultimates #5
2002年08月:Ultimates #6
2002年09月:Ultimates #7
2002年11月:Ultimates #8
2003年04月:Ultimates #9
2003年07月:Ultimates #10
2003年09月:Ultimates #11
2003年11月:Ultimates #12
2003年12月:Ultimates #13


◆別世界のアベンジャーズ
この本の帯にはこんな宣伝文句が書かれています。
「映画『アベンジャーズ』の“原点”となった超大作を初邦訳!!」
映画『アベンジャーズ』を見てアメコミに興味を持った人に手に取ってもらえるように考えて作られた宣伝文句なんでしょう。

で、本書『アルティメッツ』ですが、実際に本作を読んだ人の感想は正直容易に想像できます。
「僕の知ってるアベンジャーズとは全然違う」と。

◆アルティメット・ユニバース
本作の舞台となる『アルティメット・ユニバース』とは、マーベルが2000年代に立ち上げた新しいライン。
マーベルは新規読者を獲得するため、正史シリーズは続行させたまま、もう一つキャラクターや舞台の設定を現代的なものに作り変えて第一話からスタートさせた新シリーズを始めることにしたのです。
それが『アルティメット』という作品群!
メインタイトルを『アルティメット・スパイダーマン』『アルティメット・X-MEN』『アルティメット・ファンタスティック・フォー』と少なめに絞り込んでいるため、正史シリーズよりもキャラの繋がりを把握しやすくなっているのも特徴です。

本作『アルティメッツ』は、そんな『アルティメット・ユニバース』の中心タイトルとなっている作品なのです。

◆アクの強いヒーロー達
「今からアメコミを楽しもうにもストーリーやキャラの人物関係が膨大になりすぎててついていけそうにもないよ…」という新規読者が入り込みやすいよう、新設定のストーリーで第一話から楽しむことができるこの『アルティメッツ』

「予備知識が無くても楽しめる」というコンセプトそのものは素晴らしいのですが、『現代的な設定』に変更されたのが特徴なこの作品、
基本的に登場人物がどこかしらアレなことになっています。

まず衝撃的なのが、正史シリーズでは「高潔なヒーロー」というイメージが特に強いキャプテン・アメリカ。
本作では「敵に勝つためなら多少ゲスい手を使うことも辞さない」ヒーローに変貌。
キャラ的にはより「軍人らしい」性格になっているというか。

オカマ野郎だとさ!
単細胞なハルクを焚き付けるためにウソを吹き込んで戦わせる

ハルクことブルース・バナー博士はスーパーソルジャー血清を解析できなかった上、同じ科学者であるハンク・ピムがジャイアントマン実験を成功させたことで不満と怒りを溜めこんでいる暗ーい男。
それもあって一旦ハルクに変身すると敵味方の区別なく大暴れする…と、これだけなら正史と大きな差はなさそうですが、本作では性欲も解放されているのがミソ
人を喰おうとするシーンもあり、バイオレンス度が増し増しに。

そしてアイアンマン。
エキセントリックな性格で女好きなのは正史に近い感じですが、それに加えて昼間っから酒を飲みまくるというアル中気味なキャラに。
(やたら酒を飲む理由も本書内で明かされますが)

なかなか面白い設定改変なのがソー。
『アルティメッツ』ではヒッピーを率いている『自称神』の平和主義者として登場。

ヒッピー雷神
終始うさんくさい男として描かれるがその能力は本物

「我は汚れた地球を浄化するため、父神によってヴァルハラより転生させられし雷神なのだ」
と本人は言うものの、それを証明するシーンは一切無し。
このミステリアスな雰囲気がなんかいい感じじゃあないでしょうか。

最後に、本作を読んだ人全員が「こいつはクズだ」という感想を持ったというヒーローを紹介。
ハンク・ピムことジャイアントマンです。

ミュータントである妻ワスプと『人体を巨大化できる薬品』を開発し、ジャイアントマンとしてアルティメッツに参加、世界の平和のために戦う天才科学者…とここまで書けば聴こえは良いのですが、実は少しでも自分の周りで不満のある出来事が起こると、その怒りを妻ワスプにぶつけてしまうという酷いDV癖をもったヒーローなのです。
(実は正史でもDVシーンがあったりはするのですが、本作と比べるとその原因はまだマトモ)

DV男アントマン
こんな仕打ちを受けても、
妻のワスプは「良い時が悪い時を埋め合わせてくれる」ためにハンクについていくのだとか

ちなみに、ヴィレッジから刊行された『ソー:マイティ・アベンジャー』では綺麗なハンク・ピムが見れます。参考までに。

この他には映画同様、ホークアイ、ブラックウィドウもシールドのエージェントとして登場。
初登場となる第8章の冒頭のシーンはなんとなくマトリックスを連想させる絵になってます。

また、『アルティメット・X-MEN』からクイックシルバーとスカーレット・ウィッチも登場します。
姉弟でありながら『ちょっとアヤシイ関係』に見えるのがなんともいえない。

◆感想
…このように、新規読者を獲得するのが目的の新シリーズの割に、キャラ設定が明らかに万人受けしない感じになっているのが最大の特徴な『アルティメッツ』

ストーリーもチームアップの理由が『軍事力では解決できない脅威に立ち向かうためにスーパーヒーローチームを結成し、来るべき決戦に備える』という所まではいいものの、その肝心の脅威と戦うことになるストーリーにシフトするまでが非常に長いのがネックです。
それまでは長い会話シーンが続いたり、暴走したハルクを止めたり、ハンクのDVシーンを見たり、そのDVの事実を知ってキレたキャップがハンクとやり合ったりするという内輪もめ展開が続くため、なんというか盛り上がるシーンまでかなり長い『タメ』がある作品でした。

それでも最終決戦のシーンは映画『アベンジャーズ』のようにスケールの大きい展開なので、待った甲斐は十分にありましたけどね!
『ヒーローらしさ』が出るまで凄く時間がかかる人たちだ。

アルティメッツアッセンブル
あ、ヒーローコミックっぽい!

読んでみると映画『アベンジャーズ』の元になったっぽい部分はキャラクターデザイン以外にも要所要所に見受けられます。
そういう部分を見つけてみるのも楽しみ方の一つかもしれません。

本書は全13章構成で全376ページの非常に分厚い1冊。そして未邦訳のエピソードも残り13章。
タイトルに『Vol.1』とは打たれていませんが、是非とも残りのエピソードも翻訳して『Vol.2』を刊行してほしいところです。
これ1冊でもストーリー的にはかなりキリよく終わっていますが。
残りのエピソードは映画の内容とはよりかけ離れるらしいものの、ようやくロキが登場するみたいですし。
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2 Comments

久仁彦  

「キャラ設定が大変オカシイ」という前情報だけ聞いてちょっと躊躇してたのですが
実際読んでみたらべらぼうに面白かったです。
購入の切欠を作ってくれたmichaelさんに感謝。

誰もが一概にオカシイとは言えず「自分の思う許せない領域」に踏み込まれたら
タガが外れてしまう人揃いなのだという印象を受けましたねー。
ジャイアントマンのDVに怒るキャップとか。いや、これで十分オカシイんだけど。
そして一番性格悪いのは原作の人と絵描きの人だと思います(巻末のコメンタリー読みながら)。

2013/01/04 (Fri) 09:07 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>久仁彦さん
ミラーのコメンタリーは見どころが多いですよね。
物議を醸し出しそうな第5章ラストの「キャップがハルクに変身していないバナーの顔を蹴り飛ばす」というシーンに対して、「キャップは彼を落ち着かせるために偽りの穏やかさを見せ、バナーがハルクに戻る前に気絶させたんだ」という納得のいく解説がなされてましたし。

いやーキャップは『正直バナーにムカついたから』という理由で蹴り飛ばしたわけじゃ無かったんですねー納得ですねー。

色々過激な内容になっているのが魅力ですねこのアルティメッツは。
ゲッターロボで言えばTV版とは別にOVA版を楽しむみたいな感じでしょうか?

2013/01/04 (Fri) 22:05 | EDIT | REPLY |   

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