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17 2012

デビッド・ラッファン&トニー・ハリス他/スパイダーマン:ウィズ・グレート・パワー

ウィズ・グレート・パワー

“そう、キミはAMAZING SPIDER-MAN”
“キミはスターだ!”
“金、名声、パワー、全て手に入れた”
“女の子も”
“どんなコだってよりどりみどり”
“最高の人生だ”

大いなる力には…

その続きは何だ?何か文句でもあるのか?自分が手にした力を満喫して何が悪いんだ?

その時の彼なら、きっとこう言っただろう。クモの力を手にした“直後”のスパイダーマンならば……。

スタン・リーとスティーブ・ディッコが生み出した齲蝕のヒーローは、半世紀の時を経て、世界的なポップアイコンとなった。

さえない高校生が超能力を手に入れ、有頂天になるものの、自らの傲慢から最悪の悲劇を招いてしまう。そのあまりにも有名なオリジンに、本書は新たな光を当てた。オリジナルのストーリーでは、わずか2ページで語られたにすぎない“話題の人”スパイダーマンの姿を、5話のミニシリーズとして綿密に描いてみせたのだ。

突然、力を手に入れた高校生、しかも、これまで鬱憤を溜めてきた少年は、どんな行動に走るだろうか?そんな彼を周囲はどのように受け入れ、あるいはいかに利用しようとするだろうか>

本書に登場するスパイダーマンは、“まだ”スーパーヒーローではない。超人的なパワーを“売り物”にする人気プロレスラー、TVタレントだ。そんな彼がいかなる過程を経て、アメリカを代表するヒーローへと成長していったのか。共にその過程を見届けて欲しい。

なお今回は、スパイダーマン生誕50周年を記念して、彼が初登場した『アメイジング・ファンタジー』#15(8/1962)を全編、初邦訳。
半世紀前、この異色のヒーローがいかなる状況の中で誕生したのか、改めて実感していただけるだろう。


◆収録作品

1962年08月:Amazing Fantasy #15
2008年03月:Spider-Man: With Great Power... #1
2008年04月:Spider-Man: With Great Power... #2
2008年05月:Spider-Man: With Great Power... #3
2008年08月:Spider-Man: With Great Power... #4
2008年09月:Spider-Man: With Great Power... #5


◆A LONG TIME AGO...
誰でも一度は妄想したことがあるのではないでしょうか。
「自分が超人的な力を得て、各所で大活躍するという」現実離れした妄想を。
どんな人でもこういう空想・妄想を描いたことはあると思います。僕もあります。

簡単な前置きはこの位にして本作の紹介。
主人公のピーター・パーカーはミッドタウン高校に通うさえない高校生。
周囲からは科学オタクの嫌われ者扱い。
同級生のフラッシュ・トンプソンには毎日のようにからかわれ、鬱憤を募らせる日々を送っていました。

さえない高校生
やめてくれよ...(絶望)

6歳のころから育ててくれているメイ伯母さんとベン伯父さんは、とてもピーターの事を大切にしてくれてるものの、ピーターが心の奥底に抱えている不満には全く気付けていません。

そんなある日、科学の発表会に参加したピーターは、その中で放射線に被曝したクモに咬まれ、超人的な力を手に入れてしまいます。

いきなり人生が変わる超能力を手に入れたものだからピーターは当然有頂天に。
プロレスラーのクラッシャー・ホーガンに挑戦しあっさり勝利した事からスカウトされ、レスラー、そしてTVタレントの道に進むピーター。
謎のマスクマン、スパイダーマンとして一躍TVスターとなり、金も、名声も、気になるあのコも全て手に入れたのです。

TVスターのスパイディ
すっかり調子に乗っているスパイディ

ピーターの人生は順風満帆!これまでのさえない日常から完全にオサラバできました。

…ところが、一日の生活のほとんどをプロレスラーやTVスターとしての時間に割いているため、学校の成績はダダ下がり。
しかも連日連夜深夜に外出、帰宅…
またピーターはスパイダーマンとしての活動はベン伯父さんやメイ伯母さんには隠して行っているため、ベン伯父さんとメイ伯母さんは突然青あざを作ってきたり、高価な物を買うようになり始めたピーターの姿を見ては強く心配します。

ベン伯父さんとメイ伯母さん
「あんなにいい子だったのにまるで不良のようになってしまった…」

超人的な力を持ちながらその力を自分のためにしか使わないピーター。
本作の終盤では、今一度『自分のこの力は何のために使うべきなのか』を考え直すことになる事件が起こるのです。

◆感想
“スーパーヒーロー物”としてのスパイダーマンではなく、あくまで一人の青年、ピーター・パーカーの姿を徹底的に掘り下げて描かれているこの『スパイダーマン:ウィズ・グレート・パワー』

スパイダーマンの初登場エピソードのリメイク的なこの作品(といってもレギュラーシリーズとは異なる世界の物語という設定ですが)
ヒーロー物としてではなく、一人の青年のヒューマンドラマとして読むことができる内容でした。
ただ、ラストシーンでは確実に読者の顔が曇ります。
…その後パーカー家に訪れる悲劇を知っているだけにね。

ちなみに、この作品ではほんの数ページだけ映画『アメイジング・スパイダーマン』新デザインの元となったコスチュームを着たピーターを拝むことができます。
(第2話の「フランク“チョッパー”パローネ」戦のシーン)
映画スタッフは妙にマニアックな所からネタを引っ張ってきてたんだなぁ。

◆『アメイジング・ファンタジー』#15(8/1962)
本書にはおまけとして『アメイジング・ファンタジー』第15号が丸々翻訳されています。
スパイダーマン以外のコミックまでついでに邦訳されているという面白い試み。

スパイダーマン初登場エピソードはこの間発売されたばかりの『ベスト・オブ・スパイダーマン』にも収録されているため読み飛ばしてしまいそうになりますが、前者の本とは訳者が異なるため翻訳の違いや、底本の違いによる微妙なカラーリングの違いを比べて楽しむことができます。
そこまでマニアックな視点で楽しめる人が多いのかは知らぬ。

【鐘を鳴らす者】
鐘を鳴らす者

地中海に浮かぶちっぽけな火山島。この島には昔気質の漁師が多く暮らしており、その中に鐘撞きのペドロスという村民がいた。
彼は毎日一日の始まりを告げる鐘を鳴らしていた。
ある日、村の火山が息を吹き返し、噴火する可能性が出てくるという大事件が起こった。
村の人々は島を捨て、本土で新天地を探す決意をするが、ペドロスは一人、鐘を鳴らすために島に残ると言い張るのであった。


【棺の中の男】
棺の中の男
「怖がるでない」とか言われても

犯罪者、ロッコ・ランクは警察官から逃亡していた。
そして適当な近隣の博物館の窓に飛び込み警官をやり過ごしたのだが、いつまでもここにいるわけにはいかない。
そんな中、いきなりロッコは喋るミイラに話しかけられ、柩に匿ってやると提案される。
最初は訝しがるものの、「誓ってミイラになぞはしない」という言葉を信じることにし、柩の中に隠れることにしたロッコ。
しかし…


【街のどこかに火星人が!】
街のどこかに火星人が!

とある場所に火星人のものと思われる謎の宇宙船が墜落した。
さっそく捜索隊が派遣されたものの、乗員は発見できず、また密かに姿を消したという事実からは火星人に友好的な意図はないと判断し、TVで該当地域の人々に火星人が発見できるまで外出を控えるようにと警告した。
それから数週間を過ぎてもいまだに捜索の甲斐はなく、人々は恐怖の中にいた。
そんなニュースを見ていた一組の夫婦。
夫が出かけた後、コーヒーが切れているのに気付いた妻は、「少し外出するぐらいなら大丈夫だろう」と買い物するために家を出たのだが…


スパイダーマン以外はほんの5ページ以下で終わる軽めの短編集となっています。
どれもしっかりとしたオチがついており、ショートショートのような面白さがある作品ばかりでした。
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