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10 2012

スタン・リー&スティーブ・ディッコ他/ベスト・オブ・スパイダーマン

ベストオブ表紙

“寂しげな後ろ姿が闇のなかへと歩き去っていく。
 少年はようやく理解したのだ。
 大いなる力には大いなる責任が伴うということを”
“こうして新たな伝説が生まれ、
 空想世界の英雄リストのなかに、新ヒーローの名前が加わることになった!”

今から50年前、短命に終わったコミック誌『アメイジング・ファンタジー』の最終号がマーベル・コミックスから発売され、そのなかで新しいタイプのヒーローが誕生した。
その名はピーター・パーカー。友達のいないガリ勉少年だった彼は、放射線を浴びたクモに咬まれ、クモと同等のパワーを手に入れることになった。こうして誕生したのが驚異(アメイジング)のスパイダーマンである。彼はマーベルの看板キャラとなっただけでなく、コミック界でもトップクラスの人気キャラクターへと成長した。


本書には、各時代を代表するスパイダーマンの傑作エピソードが収録されている。スパイダーマンのクリエイターであるスタン・リーとスティーブ・ディッコが手がけた古典作品のほか、ジョン・ロミータ・シニア、ロジャー・スターン、ロン・フレンツ、トム・デファルコ、ディビット・ミッチェリーニ、トッド・マクファーレン、マーク・バグリー、J・M・デュマティス、サル・ビュッセマといった著名作家の作品も読むことができる。

今や伝説ともいうべきスパイダーマンの誕生秘話、キングピンが登場する「引退宣言」、グリーン・ゴブリンの狂気を描いた「オズボーンの遺産」、そして感動のヒューマンストーリー「スパイダーマンを集める少年」といった歴史的名作のほか、ドクター・オクトパス、リザード、ヴェノムといった宿敵との忘れがたきバトルの数々も必読である。これらの物語を読めば、なぜスパイダーマンがこれほどまでに普遍的なキャラクターになれたのか、その理由が分かるはずだ。


◆収録作品

1962年08月:Amazing Fantasy #15
1966年02月:The Amazing Spider-Man #33
1966年07月:The Amazing Spider-Man #50
1984年01月:The Amazing Spider-Man #248
1985年02月:The Amazing Spider-Man #271
1989年07月:The Amazing Spider-Man #317
1992年06月:The Spectacular Spider-Man #189
1992年08月:The Amazing Spider-Man #365


映画『アメイジング・スパイダーマン』公開時に便乗して発売されたスパイディの邦訳がまさかの『ワン・モア・デイ』1冊のみという現実から早数か月…
映画アメスパのBD&DVDの発売が近づいて、ようやく色々なスパイダーマン邦訳の発売ラッシュが始まりました。
そして小プロから発売されたのがこの『ベスト・オブ・スパイダーマン』
なんと1470円というこれまでの3000円近い(最近は2500円ぐらいの価格帯だったりしましたが)価格設定から大幅にお求めやすい値段で発売されました!

本書はカバーが存在しないという、かつて小プロから発売された『マーヴルクロス』『オンスロート』と同じ仕様。
最近小プロの邦訳アメコミでは少しでも価格を下げようとソフトカバーにしたり紙質を変更したりと安くなるような努力を行っておられましたが、ついにここまで安くなるとは思わなんだ。

今後の発売予定の邦訳アメコミを見るに、毎回こういう仕様でいくわけではないようですが、これからもこういう低価格路線の邦訳もちょこちょこ発売してほしいところですね。
ベスト・エピソード

最近邦訳アメコミでは暗いストーリーの作品ばかりを読み続けてきたため、そろそろ痛快なストーリーを読みたいと思っていたところにスパイダーマンのクラシックストーリーの発売。

「ようやくスパイダーマンが軽口を叩きながらビランと戦うというスカッとしたアメコミが読めるぞ!」と期待していたのですが、ふたを開けてみるとスパイディの顔が曇りまくる重いエピソード登場しまくりのベスト選集でした。

スパイダーマンは不幸エピソードが多すぎて未だに語り草になるのですが、本書を読むとこういう作風は昔からだったことがよく分かりました。
img092.jpg
それはスパイディにとって残念な報告だった

しかし、重くシリアスな内容とはいえ心に深く残る作品が多いです。

大事なおじを数日前に見逃した泥棒の手によって殺されたことで、大切なものは自分の家族だけと考え、大いなる力を他のことに使おうとしなかったことを悔やむピーターの姿が描かれ、ヒーローになる決心をする『スパイダーマン誕生!』

学生生活とヒーロー活動の両立に疲れ、「ヒーロー人生がもたらしたのは不幸だけだった」と考えるようになりついにコスチュームを捨てる『引退宣言』
引退
映画『スパイダーマン2』でこのシーンは忠実に再現されていましたね

新聞で紹介されるほどのスパイダーマンファンの少年、ティム・ハリソンのもとにスパイダーマンが現れ、これまでの活動を振り返りながら思い出話をする感動作『スパイダーマンを集める少年』

スポーンの原作者として有名なトッド・マクファーレンがアートを担当したヴェノムとの戦いを描く1作『ヴェノム再び』
ヴェノム
アクションシーンの迫力はダンチ 登場人物の顔の濃さもダンチ

…などなど色々な作品が収録されいるのですが、僕が個人的に一番気に入ったエピソードは本書のラストを飾る『オズボーンの遺産』
父の跡を継ぎ、2代目グリーン・ゴブリンとなったハリー・オズボーン。
既に正気を失ってしまっている彼がオズボーン一家のもとに帰ってくるというお話。
グリーンゴブリン

原作未読でもサム・ライミ版スパイダーマンを見ているとすっと入り込めると思うストーリーです。

すっかり壊れてしまっているハリーの姿を見て嘆き悲しむ妻リズの姿と、グリーン・ゴブリンとなっている事を良く知らず父親に甘える息子ノーマン、そしてヴィランと化したハリーに対して怒りを露わにするリズの義理の兄マーク(モルテンマン)
なんともやるせないラストで締めくくられる悲しいストーリーとなっています。

本エピソード中ではスパイダーマンのこの台詞が印象的。
「ハリー、僕の秘密を公表したければするがいい。かまうものか」
「僕なら平気だ 僕の不幸は今に始まったことじゃない」

「あのエピソードがない!」とか「あのヴィランとの戦いがない!」とかを言い出すとキリが無いのですが、それでも長いスパイダーマンの歴史の中から良質なエピソードが8本チョイスされており、充分にスパイダーマンという作品を楽しむことができる1冊になっています。
底本となった本『THE VERY BEST OF SPIDER-MAN』1994年10月に発行された本というのもあり、新しめの作品は全く収録されていないのがちょっぴり残念な点なのですが。

今後もこういう低価格路線でクラシックストーリーの邦訳をバンバン出してほしいところです。
小ネタ

◇カットされたナレーション
14ページに本来ナレーションが入るであろう吹き出し部分が空欄になってます。
ナレーション
コマの下のピンクの帯部分にナレーションが入る

小プロ山本将隆氏のツイッターによると、「底本とした版にはテキストは無く、送られてきたデータの版にはテキストが存在していたため、ナレーションをカットする方を選んだ」との事。
後に原文とその訳がツイートされました。

(原文)
Be sure to see the next issue of AMAZING FANTASY -for the further amazing exploits of America's most different new teen-age idol-SPIDERMAN!

(訳)
アメリカが生んだ規格外の新たなティーンエイジャーアイドル、スパイダーマンの驚くべき功績を記した『AMAZING FANTASY』の次号をお見逃しなく!


◇解説補足

ベスト・オブ・スパイダーマンは傑作選という都合上、次回への引きがあるまま終わってしまうエピソード連続したエピソードの一部だけ切り取ってきた作品がちらほらあるため、かなりの部分を解説で補っている部分があります。
発売後、訳者の高木亮氏がブログで更にちょっとした補足解説をアップしていました。

【ベスト・オブ・スパイダーマン補足】
ルーク・ケイジの妻、ジェシカ・ジョーンズは高校時代ピーターに片思いしていたという小ネタです。

【ベスト・オブ・スパイダーマン 解説追加】

◇スパイダーマンに黒目がある
目玉
ちょっと珍しい絵面

ピーターの瞳がマスク越しに見える1シーン。
現在では『マスクの目はマジックミラーになっている』という設定にそぐわないという理由から再販分では黒目は消されているのだとか。
しかしこの邦訳版は1962年当時のカラーリングを基にデジタライズされたため、そのまま黒目も残った状態で収録されています。

余談ですが、邦訳されたこの『アメイジング・ファンタジー#15』『マーヴルクロス』第10号にも収録されており、そちらではカラーリングが異なっているのだとか。

【Amazing Fantasy #15 最終ページ比較画像】
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