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29 2012

ジム・スターリン&ジョージ・ペレス他/バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー

デス・イン・ザ・ファミリー

“彼にとって大事なのは悪人と戦うことだけ”
“本当の母親に会いたいという俺の気持ちすら理解できないさ”


逃れられない最大の悲劇。
家族の死が彼の人生に影を落とす。


二代目ロビンのジェイソン・トッドは中東のどこかにいる母親を探すため、単身で旅に出た。だが、そこに待ち受けていたのは突然の死と悲劇の真実だった――バットマンは彼を救うことができなかったのか……。
バットマン史に残る悲劇を描いた「デス・イン・ザ・ファミリー」。
コミックファンの心にも深く刻み込まれ、ベストセラーになった20年以上前の名作がいまここに甦る。

表題作のほか、三代目ロビンとなる少年ティム・ドレイクが初めてロビンのコスチュームを着て活躍する「ロンリー・プレイス・オブ・ダイイング」も同時収録。両作品とも1980年代後半に発表されたバットマン史における欠かせないエピソードである。


◆収録作品

1988年12月:Batman #426
1988年12月:Batman #427
1988年12月:Batman #428
1989年01月:Batman #429
1989年10月:Batman #440
1989年11月:The New Titans #60
1989年11月:Batman #441
1989年12月:The New Titans #61
1989年12月:Batman #442
2006年03月:Batman Annual #25 ※1ページのみ収録


◆最大の悲劇
『二代目ロビンの死亡』というエピソードの存在そのものはちょっとバットマンを知っている人なら聞きかじったことがあるはず。
それほどの有名エピソードでありながら、これまで邦訳が発売されていなかった事にちょっと驚きました。
ここ最近はやや新しめな作品の邦訳が続いていましたが、久々にクラシックな名作が発売されたのはありがたいですね。
二代目ロビンの死亡という重要エピソードはこれまでウェブサイトの解説ぐらいでしか知らなかったので、
本書でようやく作品そのものを読むことができてテンションが上がりまくりでした。

◆デス・イン・ザ・ファミリー
2代目ロビンの本当の母親探しと、その過程で訪れることになる死の悲劇が描かれる名作エピソード。
冒頭はバットマンとロビンであるジェイソン・トッドの共闘シーンから入るのですが、ここでジェイソンの問題児っぷりがここぞとばかりに描写されます。
バットマンの命令を無視し、ひとり先走って危険な戦い方をする始末。

問題児
結構問題児

結果ブルースからロビンとしての活動禁止を言い渡され、ウェイン邸を飛び出すジェイソン。
街をふらつき、昔に住んでいた家の近くまで訪れた時、偶然母親の友人だったウォーカーと出会う。
彼女からドレイク家の部屋に残っていた思い出の荷物を受けとり、ウェイン邸に一度帰宅。
荷物の中には古い写真などが入っており、それを眺めながら両親の思い出に耽っていた。

その中には両親の個人的な書類も入っており、出生証明書を見ると、
なんと母親の名前の欄には別人の名前が記載されている事を発見してしまう。
ジェイソンを育てた母親の名前はキャサリン・トッド
しかし、出生証明書に記載されている母親の名前は「S」で始まる名前だった!
ただ、「S」以降は汚れてしまっており名前が判別できない。
そこでジェイソンはバットケイブのコンピュータを使用して母親に該当すると思われる3人の人物を特定し、ブルースに一言も相談せず、クレジットカードをパクり、単身母親探しの旅に出るのであった。

犯罪を行う資金稼ぎのために、中東にミサイルを持ち込み活動するジョーカー。
ジョーカーを追う過程でジェイソンに都合良く偶然再開し、母親探しを手伝うバットマン。

ジョーカーの追跡とジェイソンの母親探しという2つの調査を並行させながら進めていくというストーリー。
その結果、ジェイソンはジョーカーの卑劣なワナによって殺されてしまうことになるのですが…

この展開、何と電話による読者の投票によって決定したというのです。
これも有名な話ですね。

img054.jpg
ロビン生存の展開にするなら左の電話番号に、死亡する展開にするなら右の電話番号にTEL!

結果、僅差で「死亡派」勝利を収め、2代目ロビン・ジェイソン・トッドは死亡することになってしまうのでした。
本作のライターであるジム・スターリンは「ロビンを殺したのは私じゃなくて読者だ」と主張したとか。
それまで2代目ロビンはイマイチ人気を得られていなかったという事実も解説されており、ちょっと切ない気持ちになりました。

ちなみにこの邦訳版には「ロビン生存の得票数が多かった場合」のストーリーの最終ページがちょこっと収録されています(2006年『バットマン・アニュアル#25』にて初めて発表されたイラスト)
これがちょっとシュールな絵面なので必見。

あ、それと本編第5章ラストからの展開も正直ちょっとカオスなんですが…これ以上はネタバレになるのでどんな内容かは実際に読んで確かめてみてください。

◆バットマン:ロンリー・プレイス・オブ・ダイイング
ティム・ドレイク
生足

「ディック様が去った後、旦那様がジェイソン様を引き取ったのは、
 単なる相棒ではなく……息子を求める気持ちもあったのです」
「これは素人の精神分析であり、旦那様は否定なさるでしょうが…
 …ブルース様は悪と戦うことだけでなく、
 家族をもつことにも強い執着を抱いています」


3代目ロビン、ティム・ドレイクの仮デビューが描かれる一篇。
(本格デビューはまだまだ先)
ティムはバットマンとロビンに憧れるあまり、自力でバットマンとロビンの正体を突き止めたという13歳にして卓越した調査能力を発揮しているのが凄い少年です。
末恐ろしい…

ここ最近の邦訳『バットマン・アンド・サン』など)で登場するティムはすっかり成長した姿になっているので、この少年時代の姿は今見ると逆に新鮮でした。

『ロンリー・プレイス・オブ・ダイイング』にはニュータイタンズ#60、#61も収録されており、貴重なティーンタイタンズの邦訳も兼ねております。
ちなみに本作のライターであるマーブ・ウルフマンはカートゥーンネットワークで放送されていたアニメ『ティーンタイタンズ』の脚本にも関わっていました。

2012y09m29d_170705255.jpg
アニメ『ティーンタイタンズ』のレイブンとスターサファイア。かわいい

そしてこちらがコミックのレイブンとスターサファイア。
1コマ目左の女性がレイブン。左から4番目の女性がスターサファイアです。

ティーンタイタンズ
あまりティーンには見えない面々

レイブンが特に濃ゆい。

あと、グリーンアローの相棒であるスピーディー(画像の1コマ目左から2番目の人物)の登場人物紹介の解説文が、弓の名手であること以外は「過去はヘロイン依存症だった」ということしか書いていなくてちょっと吹きました。
それはもう忘れてあげて!

◆感想
これまでソフトカバー路線に変更して若干低価格で邦訳アメコミをリリースしてきた小プロ。
しかし今回は豪華にハードカバー&2篇収録という仕様で読み応えたっぷりの高くて分厚めな本として発売されました。

個人的にはやっぱり表題作の『デス・イン・ザ・ファミリー』が面白かったです。
これからも定期的にクラシックな名作を邦訳してほしいところ。
バットマンに限らずですが。

それと、絶版となってしまった『バットマン:HUSH』が読みたい!
現在ではすっかりプレミア価格で手が出せないのですが、小プロが復刊に向けて動いているらしいのでそれに期待!
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4 Comments

流浪牙  

いんだよ、細けぇ事は@ジェイソン・トッド

そういえばmichaelさんはあれほどのアメコミを購入・購読するのに
経済的な負担や読む時間などはそれほど掛からないのでしょうか?
俺の場合はどうも其の辺がネックになってしまって、今ひとつ読み損ないが出てしまって……
(あとは図書館で借りて読む本があったりするので時間が取り辛かったりするし)

それにしてもジェイソン・トッドというキャラクターはそんなにみんな不評だったのですかね?
似た様な性格と系統のヒーローだって結構いるのですから、それほど悪くなかったんじゃないかという気も。

あとDCスーパーヒーローズは名作なのでmichaelさんにも是非一読の程をお奨めさせて戴きます。

2012/10/03 (Wed) 00:24 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>流浪牙さん
>あれほどのアメコミを購入・購読するのに経済的な負担や読む時間などはそれほど掛からないのでしょうか?
月の娯楽費に1万~2万も割けばひと月に発売されるアメコミで欲しい作品は充分購入できるのでなんとかなってます。
読む時間は計ったことないので分かりませんね~。
ただ、僕は積読するタイプじゃないんでどんな本でも(よっぽど分厚いヤツでなければ)基本その日のうちに一気に読んじゃいます。

>DCスーパーヒーローズ
買おう買おうと思ってはいるんですけど新刊の邦訳アメコミに目移りしてしまってなかなか…

2012/10/03 (Wed) 23:52 | EDIT | REPLY |   

久仁彦  

通ってる書店で入荷しないので未だに読めないワタクシ。
『ノーマンズランド』も邦訳検討中とか過去の名作が邦訳されるのは嬉しいですねー。
お財布は死に掛けですが…。

『DCスーパーヒーローズ』はいいですよー。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』ぐらいのオススメです。
方向性は全く違うけどそれぐらいオススメ。

2012/10/04 (Thu) 17:24 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>久仁彦さん
DCスーパーヒーローズ、ボーンアゲイン並みにおススメなんすか!!
そこまでプッシュされるとかなり気になってきますね…

2012/10/05 (Fri) 22:33 | EDIT | REPLY |   

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