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02 2012

マーク・ミラー& デイブ・ジョンソン他/スーパーマン:レッド・サン

レッドサン

「人は私を兵士と呼んだ。だが、それは違う。私は兵士ではない。
 兵士は必ず命令に従う。敵を知り、敵を憎む。
 自国民のためだけに戦って命を捧げる。
 私は正しいことのために戦う」


偉大なるアメリカン・ヒーローが、ソ連の英雄として生まれ変わる!?

彼は別世界から来た驚異の男。河の流れを作り変え、素手で鋼鉄を曲げる英雄。平凡な労働者の代表として、スターリン、社会主義、そしてワルシャワ条約の拡大のために、終わりなき戦いを続けていた。時は冷戦時代。敵対国アメリカに立ち向かうのは。ソ連のスーパーヒーロー、スーパーマンだった……。

エルスワールドを描いた本書では、『キック・アス』のマーク・ミラーの手によって、誰もが知っている“スーパーマン”の話が大胆に改変された。そう、地球に墜落した宇宙船はアメリカではなく。ソ連の集団農場に墜落したのだ!

スーパーマンのコミック・シリーズのなかでも異色作かつ傑作として評される『スーパーマン:レッド・サン』。脚本の完成度が高く、あらゆるコミック・ファンに推薦できる一冊である。
また巻末にはアートを担当したデイブ・ジョンソンとキリアン・ブランケットのラフスケッチも収録。


◆収録作品

2003年06月:Superman: Red Son #1
2003年07月:Superman: Red Son #2
2003年08月:Superman: Red Son #3


◆Red Son Setting
スーパーマンは何処で生まれてもスーパーマン 『もしもスーパーマンの乗っていた宇宙船がアメリカではなく、ソ連の集団農場に墜落していたら?』という何とも好奇心をくすぐられるIFストーリーが描かれるのが本作「スーパーマン:レッド・サン」
あの優しいケント夫妻に拾われず、ソ連のヨシフ・スターリンの元で育っていくことになるスーパーマン。
この設定だけ読んで、スーパーマンが共産主義の信奉者となって世界と戦うというアレなストーリーを勝手に想像していたのですが、実際見てみると、ソ連で生まれ育とうがスーパーマンはスーパーマンでした。
ソ連で生まれ育っても彼の目的は「人を救うこと」
胸のマークがSマークから「鎌とハンマー」に変わってはいますが、政党や党首選びや政治の駆け引きには一切興味を示さず、ただただ市民や同志を助けることに尽力するのです。
スーパーマンらしい。

そうは言っても他の国からすればスーパーマンのその超人的な能力は脅威でしかありません。
アメリカはスーパーマンに対抗するため、天才科学者レックス・ルーサーに対スーパーマン兵器の開発を依頼するのでした。
しかし結局スーパーマンにその対抗兵器が打ち破られてしまうアメリカ。

レックス・ルーサー
天才VS超人

ルーサーは徹底的に敗北を与えるための計画を練るため研究に没頭するようになるのでした。
ちなみにこの世界では、ルーサーはなんと正史でのスーパーマンの妻、ロイスと結婚しています。
何がどうなってそうなったんだろう。

一方、スターリンが死亡してより一層世の中が荒んでいたソ連。
恐怖や飢餓に苦しむ人々の姿を見て、スーパーマンは国家元首に就任することを決めたのです…

第2章、そして最終章となる第3章ではさらなる怒涛の展開が待ち受けています。
当時の社会情勢をさりげなく組み込んで展開していくストーリー。
新たに登場するキャラクター。

そして面白い役どころになっていたのがバットマン。
何と彼、スーパーマンの圧政に対してゲリラ活動を続けている無政府主義者として登場します。

ロシアンバットマン
ロシアンバッツ

帽子が暖かそうなアレンジコスチュームに身を包み、スーパーマンの前に立ちはだかるバットマン。
人間でありながらあの手この手を駆使してスーパーマンを追い詰めるバッツの姿はなかなかに脅威。
本作ではバットマンだけでなく、ワンダーウーマン、グリーンランタン、グリーンアロー、フラッシュも設定を変更して登場します。
(グリーンアローとフラッシュはチョイ役ですけど)
グリーンランタン・コァの改変設定がこれまた面白いので要チェック。

◆感想
『ソ連で生まれ育とうがスーパーマンはスーパーマン』とは書きましたが、ストーリーが進むにつれ、「人を救う」という主義自体はぶれてはいないものの、はたから見れば救世主願望を持った狂人にしか見られていないという状況に陥ってしまいます。

スーパーマン大統領
流血沙汰だけは避けて世界を統一していくスーパーマン

スーパーマンは世界を救おうとしているだけなのに…
バットマンのスーパーマンに対する台詞や、ラスト付近のスーパーマンの叫びは非常に印象に残るものとなっていました。
また、単なる宿敵として登場するわけではないレックス・ルーサーの姿も素晴らしい。
エンディングはなんか「このストーリーの流れでそういう展開にする必要はあるのか」って感じで賛否が分かれそうですけども。

そんな傑作エルスワールド物の本作『スーパーマン:レッド・サン』
アイズナー賞にノミネートされたというのも頷けるデキの作品でした。
IFストーリーとはいえ、スーパーマンの邦訳が久々に読めたというのも嬉しいです。
映画『マン・オブ・スティール』が来年公開ですし、ちょこちょこスーパーマンの邦訳を出していってほしいところ。

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2 Comments

No Name  

何故かヨドバシ吉祥寺に入荷していたので即購入。
このお話や他のエルスワールドでもそうなんですけどスーパーマンがある一定の思想や目的を持って行動してしまうと必ず問題になりますよね…(インジャスティスしかり今作しかり)
最近発売したアンチェインド紙で語られていた「スーパーマンは確固たる目的を持たず常に最善とは何かを私達と同じように悩みながら行動している」という姿が本来のスーパーマンなのであって一つの思想に固まった姿はマジで凶悪なインベーダーでしかないということが作家陣の見解なんでしょうか。


…それにしても今作ルーサー、頭脳という名の力押しがスゴイ。これ十分にスーパーマンよりヤバい奴ですよ。個体的に

2016/02/18 (Thu) 21:17 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>No Nameさん
>何故かヨドバシ吉祥寺に入荷していたので即購入。
最近になって再販されましたからね!Amazonの在庫も復活してます。
個人的にも大好きなエルス物なので多くの人の目に触れるきっかけが増えたのはうれしい!

>…それにしても今作ルーサー、頭脳という名の力押しがスゴイ。これ十分にスーパーマンよりヤバい奴ですよ。個体的に
ルーサーの天才っぷりが常軌を逸してましたねこの作品では。
エピローグでルーサーが果たした功績が素晴らしすぎてなんかもう変な笑いが出てきた。

2016/02/19 (Fri) 16:39 | EDIT | REPLY |   

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