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21 2012

ハービー・ピーカー/アメリカン・スプレンダー

表紙
『「元気でさえいりゃ」人生そんなに捨てたもんじゃないぜ。』

ありふれた日々の中にもドラマがある!

「ハービーは、おれにとって生まれて初めて出会った正真正銘の“ヒップスター”だ」
                          ――――ロバート・クラム

全米の賞レースを席巻した映画「アメリカン・スプレンダー」の原作である、25年も連載が続くカルト・コミックの日本語版。
サエない普通の毎日をコミックにすることで、自己の表現手段と愛する妻を手に入れたハービーの物語。


◆映画で使われているジョー・マネリの『パニオッツ・ナイン』

◆このコミックの中にあなたの人生そのものがある
『この物語は作者のハービー・ピーカーと、
 その周囲の人々の日常を淡々と描くものです。
 過度な期待はしないでください』


…ってな具合に、この作品は作者である『ハービー・ピーカー』が、日々生活した中で直面した何気ない出来事をコミックにしたというそれだけの内容。
日本でもこういう感じに私生活をマンガにしている作品は多いですよね。
海外コミックであるこの『アメリカン・スプレンダー』もそういう作品の一つ。

日々の私生活をそのまま書き綴っているだけなので、たいしたオチがつかないまま終わるエピソードも少なくないです。
しかし、それでもどこかユーモアが盛り込まれていたり、ちょっとしたドラマを感じてしまう作りになっている不思議な面白さがあるのがこの『アメリカン・スプレンダー』

レジ並びはアート
いかに手早く清算が済むレジを見極めるか…レジ並びはアートだぜ!

この作品が発表されたのは1976年。現実をありのまま描くこの手法はコミックの媒体では当時は斬新だったのもあり、カルト的な人気を得ることになったのだとか。
この邦訳版は1976年から1984年に発表されたエピソードをチョイスして収録されています。
原書の1巻~9巻からエピソードを抜き出して318ページに収めたベスト版的な感じでしょうか。
こうなると邦訳版未収録のエピソードも気になる。
ちなみに原書は2008年に最新刊が出版されているようです。

この作品も他のアメコミのようにアートは別の人が担当。
そのアーティストの一人はなんと、アングラコミックを調べていると良く名前が出るあの『ロバート・クラム』
『フリッツ・ザ・キャット』とかの作者として有名ですね。
ハービーの趣味であるジャズ・レコードの蒐集で知り合った友人に紹介してもらったことがきっかけで仲良くなったのだとか。

クラムにアートを頼むよ!
ピークを過ぎたアーティストだったクラムを俺が拾ってやったのさ!(フィクション)

ハービーがコミックの世界に足を踏み入れるきっかけになったのはクラムの存在があったから。
「子供向けのコミックは制限が多い。
 アングラコミックは表現の可能性を広げてくれたがまだまだ出来る事は多いはず。
 小説、映画、演劇と同じくらいコミックで多くを表現できるはずだ!」
とハービーは考え、大雑把にレイアウトしたページの上に棒線画などを書いてクラムともう一人コミック作家であるボブ・アームストロングに見せたところ、なかなかに評判が良く、二人がイラストを付けてくれた事で『アメリカン・スプレンダー』が生まれたのです。

寝よ寝よ!
マジですること無い日なので寝る

読みながらそれとなく共感して楽しむこの『アメリカン・スプレンダー』
『海外の人の日常生活なんて共感できるんだろうか?』と読む前は思ってたのですが普通に楽しめますね!
のんびり読み進めていける作品でした。
ありふれた日々を綴っているだけなのにちょっとしたドラマを感じる事が出来るそんな一冊。
「芳文社の萌え4コマ雑誌のキャラが全員こ汚いオッサン&オバサンに差し替えられたとしても問題ないぜ!」な方にオススメ。

ただ、『ASSAULTS THE MEDIA(マスコミとの戦い)』というエピソードは読んでてちょっと辟易しましたけど。
「コミックの掲載が途絶えてしまったトラブル」をコミック化した内容です。
その凄まじい文字数からもハービーの不満が伝わってきます。
4Pだけなのに読み終えるのに時間が掛かる一編。

不満ぶちまけ
愚痴が吹き出しにビッシリと!

◆映画『アメリカン・スプレンダー』感想
レジ選び
【公式サイト】

ハービー役のポール・ジアマッティの自然な演技が良い映画版。
映像面ではコミックと実写を織り交ぜ、さらに作者のハービー・ピーカー本人も登場し尚且つナレーションを行うなどちょっぴり小洒落た演出が多いです。

映画の前半は邦訳された『アメリカン・スプレンダー』のエピソードを交えつつ、ハービーのサエない、しかしどこかクスリとくる日常を描いていくのですが、途中からTV出演のエピソードや妻ジョイスとの生活がメインになり、そして終盤はハービーが癌を患い、闘病生活に入るという展開に。
そしてその闘病生活をコミック化するため、妻ジョイスと『Our Cancer Year(我々の癌の年)』(未邦訳)という作品の制作を行いはじめるというエピソードにシフトしていきます。

日常を描くだけの原作とは異なり、映画はもう少しノンフィクションドラマ寄りの作品になっています。
「サエない日常を送っている」といっても傍から見ればハービー・ピーカーの人生は充分サクセスストーリーですからね。

それでも原作が原作なだけに特に大きな盛り上がりのあるストーリーではないのですが、コミックを書き始めてからのハービーなりに輝いているスプレンダー人生を観ていくのは中々面白いです。

こういう一風変わった映画もアリですね。
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