ツルゴアXXX

ARTICLE PAGE

02 2012

グラント・モリソン&トニー・S・ダニエル他/バットマン:R.I.P.

バットマンRIP表紙

「マーサの遺族はトーマスがマーサを殺して自分の死を偽装したと主張している
 本部長、トーマス・ウェインは……現在でも生きている可能性があるんだよ」


バットマンは“父親”に殺された……。
R.I.P.――闇の騎士よ、安らかに眠れ。


精神と肉体を極限まで鍛え上げた究極の人間、バットマン。
だが、世界一の名探偵と称される彼にも限界はある。そして今、彼の弱点を知り尽くした敵が現れた。
その名は“ブラックグローブ”。
この正体不明の強敵が、闇の騎士を完膚なきまでに破滅させようと動き出した。
ブラックグローブの狙いはバットマンですら防御できないもの……
それは、“バットマンの心”そのものだった!

ブラックグローブの容赦ない心理攻撃の前に、バットマンは狂気の淵へと追い込まれていく。
そんななか、不気味な犯罪者達は徒党を組み、ゴッサムシティとそのヒーローたちを蹂躙していく。
さらに彼らはジョーカーを解放して、死と混沌という嵐のフィナーレを飾ろうと企てていた。
バットマンはこの史上最大の危機から脱し、愛する街を守るために己の心の闇へと深く足を踏み入れる事になった。だが、“ブラックグローブ”の正体が明らかになった時、はたして闇の騎士は無事生還できるのだろうか……。
本書は、バットマン史における一大イベントをまとめた衝撃作であり、バットマンとジョーカーが大きな転機を迎えるファン必読の作品である。

『バットマン:ブラックグローブ』では未収録だった『バットマン:黒の事件簿』の5編を同時収録!『バットマンR.I.P.』に影響を与えた50~60年代の物語をご堪能あれ!


◆収録作品

1956年09月:Detective Comics #235
1957年09月:Detective Comics #247
1957年12月:Batman #112
1958年02月:Batman #113
1960年09月:Batman #134
2008年06月:Batman #676
2008年07月:Batman #677
2008年08月:Batman #678
2008年09月:Batman #679
2008年10月:Batman #680
2008年12月:Batman #681
2009年01月:Batman #682
2009年02月:Batman #683


◆モリソンバットマンサーガ第一部最終章
2012年1月から続いたグラント・モリソン推しも本作『バットマン:R.I.P.』でようやくひと段落(モリソンによるアメコミ評論本『スーパーゴッズ』の発売が控えてはいますが)
『バットマン・アンド・サン』から長らく続いたバットマンサーガ第一部もこの作品で完結となります。

【グラント・モリソン&アンディ・キューバート/バットマン・アンド・サン】
【グラント・モリソン&トニー・S・ダニエル 他/バットマン:ラーズ・アル・グールの復活】
【グラント・モリソン&トニー・S・ダニエル他/バットマン:ブラックグローブ】

◆黒の事件簿
例によって本書は後半ページがストーリーの元ネタ作品の収録『黒の事件簿』で構成。
邦訳版『ブラックグローブ』で未収録だった5編を読む事が出来ます。
やっぱり先に読んでおくほうが本編を楽しむことが出来ると思います。

というか個人的にこういうのは前半に持って来た方が本の構成としては良いと思うんですが。
邦訳『バットマン・アンド・サン』の時は元ネタになった作品を前半ページに収録してたのに~。

オリジナルコミック 黒の事件簿
今回もオリジナルコミックと一話収録作品被りが 左がオリジナルコミック 右が黒の事件簿
『父トーマス・ウェインも昔コスチュームに身を包んで悪と戦っていた!』というお話

で、黒の事件簿ですが、例によって非現実的で荒唐無稽なストーリー展開の作品が色々入ってます。

いきなり別の惑星『ズー・イン・アール』にテレポートさせられたバットマン。
この惑星に住む『ズー・イン・アール』のバットマンによってこの世界に引っ張り出されたのだった! 
ここでは地球人の肉体が強化されるため、普段では発揮できないようなパワーを得るバットマン。

ドラえもんでこんな感じの話を読んだ事がある気がする
ドラえもんあたりでこんな感じの話を読んだ事がある気がする
既にバットマンで使われていたアイデアだったとは…

バットマンがスーパーマンのように超人的なパワーで暴れるという珍しいシーンが飛び出しまくりの一作です。

もう一作紹介。
南米にある共和国の大統領の要請で、反乱軍と戦うことになるバットマンとロビン。
反乱軍は虹のようなカラフルな怪獣を送り込み、バットマンたちを苦しめる!といった内容。

虹怪獣
怪獣の力によって体をペラペラにされてしまうバットマンとロビン

『どうやって反乱軍はこんな怪獣を手なずけていたのか』とか『そもそもこの怪獣は何処から来たのか』とかそういう説明は一切なし。
むしろ怪獣は存在して当然といった空気。
こういったように、バットマンの正史から消えて当然といったエピソードがボンボン出てきます。

古きよき時代から生まれたこの50~60年代のバットマンのストーリーは、モリソンにとってはインスピレーションの宝庫となっていたのだとか。
今読むとトンデモな内容の50~60年代のアイデアを、リアル寄りな世界観となったバットマンのストーリーに現代的なアレンジを施してぶっこんだモリソン。
先ほども述べましたが本編をより深く楽しむために、モリソンがこのシュールなバットマンのストーリーを本編でどのようにアレンジしていたのかを知るためにも、黒の事件簿から先に読む事をおススメしたいです。

ちなみに今回も、訳者の高木亮氏が自身のブログ上で「黒の事件簿に収録されていてもおかしくないような」珍エピソードの紹介をなされています。
【黒の事件簿・補遺 (60年代編)】

◆Rest In Peace
謎の組織ブラックグローブ
謎の組織ブラックグローブ

本書の帯にある『バットマンは“父親”に殺された……』という一文が異様に目を引くこの作品。
ストーリー序盤で「トーマス・ウェインが現在もどこかで生きている」という可能性が示唆されます。
ここに来て大きな謎が提示されるという事態に。

『バットマン・アンド・サン』から続いてきたストーリーはある程度畳まれているものの、第二部に向けて謎を残したまま終わってしまうため、本作まで読み終えても若干もやもやしたものが残るというのが正直な感想です。
ラスボスも謎に満ちた存在なのですが、その正体は『バットマン&ロビン』(未邦訳)のストーリーまでおあずけ。

ジョーカー
笑顔を浮かべな

インパクトがあったのがキレにキレまくってるジョーカー。
ジョーカーの空想シーンの内容はグロいやら狂っているやらで衝撃的です。
上記の画像は空想世界でゴードンとロビンとナイトウィングを殺害しているジョーカーです。

ジョーカー自身は『バットマン・アンド・サン』での登場以来ずっとご無沙汰だったのですが、『R.I.P.』では、ブラックグローブに「バットマンの死の舞踏」に招待され、バットマンの前に立ちはだかります。

ジョーカーのキレキレっぷりも凄いんですが、バットマンのほうもまた凄い。
バットマンはあらゆる事態を想定して対策を講じているヒーローなのは言わずもがな。
しかし、自我を破壊する心理攻撃の対策まで用意していたというのは衝撃でした。

ブラックグローブのリーダー、ドクター・ハートの心理攻撃に対抗するためにあらかじめ用意していたもう一つの人格『ズー・イン・アールのバットマン』

ズー・イン・アールのバットマン
本シリーズでのバットマイトがどういう存在なのかもここで明かされる

悪と戦うためとはいえここまで徹底しているのを見ると、ブルースもどこか狂っているんじゃないかとか思ってしまったり。

エピローグでは『ズー・イン・アール』という名前は何から取ったものなのかが明かされるのですが、これが巧くておもわず唸ってしまいました。
モリソンの発想力に感服。
元々オリジナルではそういう意味合いを持たせた名称では無かった筈なのにしっくりきてます。

◆感想
『R.I.P』の後には「執事が犯人」「執事は見た」という短編2作が収録されています。
ブルースが自分の人生を振り返るという内容…と見せかけてダークサイドの部下、モッカリとシミアンが監禁したバットマンからクローンを精製しようとするストーリー。
途中からは「両親が殺害されず、バットマンが誕生しなかった世界」が描かれたりと結構混沌とした内容になっています。ブルースの現実の記憶と妄想の記憶がぐちゃぐちゃに描かれるかなり難解なお話。

この短編はクロスオーバーイベント『ファイナル・クライシス』と関連している作品。
ついでに言うと“バットマンが死ぬ”ことになる重要なイベントが起こるのはこの『ファイナル・クライシス』であり、時系列も『R.I.P.』と近いんで邦訳を期待したいクロスオーバーなんですが…今のところ特に予定がないのが残念。

余談ですが、2年前に一足早く邦訳されていた『バットマン:ザ・ラスト・エピソード』は、
『R.I.P』(#676-683)のすぐ後のエピソードとなっているらしいです(ラストエピソードは#686)
と言ってもこちらはストーリー的な繋がりは特に無い、独立した短編なんですけどね。

それでも炎は燃え続ける、永遠に
クロスオーバー『ファイナル・クライシス』のラストシーン
この人物はひょっとして…?

関連記事

2 Comments

流浪牙@主に泣いてます  

「BATMAN R.I.P」=「バットマン/ブルースよ、安らかに眠れ」ってな感じでいいんですかね

>ズー・イン・アール
以前観たブレイブ・アンド・ボールドの「The Super-Batman of Planet X!」はソレが原作でしたか……
てっきりアニメオリジナルの話だとばっかり思っていたのですがね。

2012/06/02 (Sat) 22:06 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>流浪牙さん
>~ってな感じでいいんですかね
はい。
中身読むとバットマン、全然安らかに眠れるような状況じゃなかったですけどね!

>「The Super-Batman of Planet X!」はソレが原作でしたか……
B&B版ではストーリー展開は異なっているみたいですがこっちも面白そうですね。
B&Bはまだ全話観た事ないんでDVDとか出して欲しいところ。

2012/06/03 (Sun) 10:54 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment