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28 2012

グラント・モリソン&トニー・S・ダニエル他/バットマン:ブラックグローブ

ブラックグローブ表紙

「さて、世界最高のクライムバスターたちは、
 ジョン・メイヒュー殺人事件の謎を解明できるのか?
 それとも、この島で一人ずつ無残な死を迎えるのか?
 賭けは始まった。ブラックグローブは予言する。
 24時間後にお前たちは全員死ぬ」


闇の騎士に忍び寄る暗黒の影……。
最大のミステリーが幕を開ける!!


謎の組織“ブラックグローブ”とは一体何者なのか!?グラント・モリソンによる新“バットマン・サーガ”第一部の終幕『バットマン:R.I.P』へと続く前日譚『バットマン:ブラックグローブ』。
闇の騎士の終焉は刻一刻と迫っている……。

バットマンとロビンは、ジョン・メイヒューなる人物が所有する島に招待され、往年のヒーロークラブの面々と過ごすこととなった。だが招待主であるジョンは現れず、ジョンの皮を被った謎の人物がスクリーンに映し出され、自分がジョンを殺したと話し始めた。そして男はバットマン達に次のように告げた。「この殺人事件の謎を解明するか? それとも死を選ぶか? ブラックグローブは予言する。お前達全員の死を」。この予言どおり、ヒーロークラブの中から第一の犠牲者が出てしまう。ブラックグローブの正体とは?そしてバットマンの運命は…

『バットマン・アンド・サン』から本書へとどのように繋がっていくのか? また「バットマンは"父親"に殺される!?」というショッキングな見出しで話題となった『バットマン:R.I.P.』(小社より5月下旬刊行予定)へとどう続いていくのか......謎が謎を呼ぶグラント・モリソンの新"バットマン・サーガ"はまだ始まったばかりである……。


◆関連作品過去記事
【バットマン・アンド・サン】
【バットマン:ラーズ・アル・グールの復活】

◆収録作品

1951年06月:Batman #65
1954年09月:Batman #86
1955年01月:Detective Comics #215
1957年08月:World's Finest Comics #89
1959年05月:Detective Comics #267
1963年06月:Batman #156
1964年03月:Batman #162
2007年08月:Batman #667
2007年09月:Batman #668
2007年11月:Batman #669
2008年02月:Batman #672
2008年03月:Batman #673
2008年04月:Batman #674
2008年05月:Batman #675


◆黒の事件簿
ブラックグローブの前に、本書の後半に収録されている『バットマン:黒の事件簿』を紹介。
この短編群は、『ブラックグローブ』『R.I.P』ストーリーの元ネタとなっている50年代のバットマン作品集となっています。
さすがに原書である『Batman: the Black Casebook』の収録作品全てをこの邦訳版に掲載しているわけではないのですが、それでも8篇収録とかなり多めに邦訳されています。
(残りは『R.I.P.』に収録?)


その内2編は無限在庫で有名『BATMANオリジナル・コミック日本語版』の収録作と被っているのですが、翻訳が新たに行われているので、その違いを楽しむのも面白いのではないでしょうか。

エバートールド版 黒の事件簿版
左が『オリジナルコミック日本語版』、右が『黒の事件簿』

2編読み比べた感想としては、オリジナルコミックの翻訳のほうが基本台詞回しやナレーションの文がシンプルな印象を受けました。

これ以外の収録作品でブラックグローブとの関わりが大きい作品は、ヒーロークラブ絡みのエピソードでしょうか。
本編ではこのあたりの話が過去の出来事として扱われているような感じでした。
あくまで一部の要素をモリソンがストーリーに組み込んでいるだけですが。

ヒーロークラブ
バットマンに刺激を受けてヒーローとして活動を始めた他国の人々

『足を骨折してしまったロビンの代わりにバットマンがウイングマンというヒーローを相棒に据える!?』というエピソードと、『バットマンが世界各国のヒーローたちに技を伝授しようとゴッサムに招待した最中、ノッツ・カーダインという悪人が犯罪予告を出してきた!』『慈善家ジョン・メイヒューがヒーローたちの業績を称え、「ヒーロークラブ」を設立、世界各国のヒーローたちは誰を会長にするか悩む』という3つのエピソード。

なかでもロビンとウイングマンのエピソードは、『自分はバットマンにとって不必要な存在になってしまった』と思い込んでしまい、ウイングマンに対して嫉妬したり自暴自棄になったり、バットマンに対して『すっと一緒だったのに僕を捨ててあの男と一緒になるの!?(意訳)』と言い放ったり、バットマンとロビンのコンビはホモホモしいと皮肉られても仕方ないような一編となっていました。

他にもマン・オブ・バッツ酋長として自警活動を行ってるインディアンのエピソードや、異次元世界の妖精『バットマイト』登場のエピソードや敵の変身光線を浴びて獣人と化してしまったバットマンのエピソードなど今観ると若干カオスなエピソードが盛りだくさんです。

翻訳のノリもあえて軽めな感じにしている印象を受けました。
BATMANオリジナル・コミックの再来とか言ってみたりして。

本書の前書きにもあるのですが、ブラックグローブを読む前にこの黒の事件簿を読んだほうが、本編に盛り込まれたネタをより楽しむ事が出来ると思います。
個人的には『バットマン・アンド・サン』の時みたく元ネタから先に収録してくれても良かったんですが。

ちなみに今回、訳者の高木亮氏が自身のブログ上で「黒の事件簿に収録されてもおかしくないような」珍エピソードの紹介を独自になされています。
【黒の事件簿・補遺 (50年代編)】

◆ブラックグローブ
黒の事件簿を読んだ後だと気が滅入るくらい殺伐としている本編ブラックグローブ

冒険家、ジョン・メイヒューが作ったヒーロークラブ。
孤島で行われるその会合に久々に参加するバットマンとロビン。
どこかのほほんとしていたヒーロークラブの面々もモリソンの手に掛かればどこかアレなC級ヒーローたちに早代わり。
精神病院送りを経験していたり、すっかり肥満体になっていたり、酒に溺れるようになっていたり…

徹底的に旧作のイメージを壊しに掛かるキャラ付けになっているのがすさまじい。
そしてジョン・メイヒュー殺人事件が発生。
ヒーロー達はミステリー物のテンプレが如く、いがみ合いが起こったり独自の推理を披露したりするのでした。

テンプレ
ミステリーが楽しめる久々のバットマン邦訳作品ですね

そして第一、第二の殺人が起こっていくのです。
孤島、主催者の死亡、連続殺人というシチュエーションが揃ったらそらもう推理モノにならざるを得ない!

幻覚
黒の事件簿のネタはバットマンが見る幻覚とか色々なアレンジを施して拾っていく

ブラックグローブ後編はバットマン・アンド・サンから登場していた『バットマンの3人の幽霊』絡みのストーリーにシフト。
バットマンが見る幻覚が頻繁に挿入され、さらにモリソン節全開のバットマンのセリフ回しが飛び出す若干クセのある展開になってます。
アーカム・アサイラム初見時の頃の何がどうなっているのかちょっと分かりにくいあの感じを思い出しました。

バットマイト
バットマイトの背中にはクモ型の生物が寄生している

旧作でははた迷惑なイタズラ小僧ぐらいの印象しかなかったバットマイト。
モリソンにかかれば『ブルースにしか見えない、人の心に踏み込んでくる幻覚としての存在』という暗い作風にマッチした現代風の設定になって登場。

バットマンの3人の幽霊の正体がついに明かされるものの、ブラックグローブの正体やダミアン関連のエピソードはまだおあずけ。
『バットマン:R.I.P』でひとまず第一部完となるようですが、全部纏めにかかるのか第二部に向けてまた伏線を張る形になるのかどうかが気になります。
『R.I.P』以降のバットマンの邦訳はさらに過去の作品群みたいですし、ある程度綺麗に終わってくれないと邦訳しか読まない身としては悶々とした日々を送る事に…

◆なんか好きな1シーン
ないです
ないです

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