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10 2012

レン・ウェイン&ジョー・キューバート他/DCユニバース:レガシーズ Vol.1

レガシーズ表紙_convert_20120217220759

「想像もつかんだろうが、
 子供の頃は、彼らの活躍をラジオで聞くのが何よりの楽しみでね
 どの家もラジオが居間の中央に鎮座していたものさ」
「夜になると家族全員がラジオの前に集まって、
 ヒーロー達の冒険譚に耳を傾けた。そういう時代だったんだよ…」


第二次世界大戦が間近に迫った1930年代末。アメリカは、未だ大恐慌の傷痕に苦しんでいた。
そんな混沌な時代にあって、人々の希望の星となったのが、当時、ミステリーメンと呼ばれた第一世代のスーパーヒーロー達である。
クリムゾン・アベンジャー、サンドマン、アトムら、彼らスーパーヒーローの登場は、人々の、引いてはアメリカのあり方に大きな影響を及ぼしていく事となる。

1935年の創設以来、75年以上もの歴史を誇るDCコミックス。
本書は、大都会メトロポリスの警官であるポール・リンカーンの目を通して、DCコミックスの歴史を振り返るDC創立75周年記念作品である。

ライターにベテランのレン・ウェインを迎え、アーティストには、1943年にDCでデビューした大ベテラン、ジョー・キューバートを始め、ホセ・ルイス・ガルシア=ロペス、ジョージ・ペレス、デイブ・ギボンズ、ウォルト・サイモンソンら、DCコミックスの歴史を築いてきた名アーティストらが集結、ストーリーだけでなく、スタッフの面でも、DCコミックスの75年間を俯瞰できる内容となっている。

上巻となる本書では、スーパーヒーローの誕生から、宇宙を揺るがせたクライシスの勃発までを、実に250人以上のキャラクターを織り交ぜながら描いている。
コミックスの歴史を、コミックスとして描いた意欲作であり、DCコミックスのファンならば必携の一冊と言えるだろう。


◆収録作品

2010年07月:DC Universe: Legacies #1
2010年08月:DC Universe: Legacies #2
2010年09月:DC Universe: Legacies #3
2010年10月:DC Universe: Legacies #4
2010年11月:DC Universe: Legacies #5



DCコミックス75周年記念という事で制作されたこの作品。
本書、『DCユニバース:レガシーズ』は、1935年から始まったDCコミックスの75年にも及ぶ(作品内の)歴史で起こった数々の事件をチョイスして構成されています。
ポール
ゴールデンエイジの始まりをその目で見た人

その歴史の語り部となるのが単なる一般人の『ポール・リンカーン』というおじいちゃん。
この人の思い出話を織り交ぜながら数々の出来事を回顧していくというストーリー。
ミステリーメン

最序盤に登場するのはクリムゾン・アベンジャー『ジャスティス・ソサエティ』のなどの面々。
超古参ヒーロー達の活躍が拝める興味深い章になっています。
個人的には『サンドマン』(左上)がお気に入り。

そして、大戦後のヒーローコミックスの衰退を「議員たちに批判されてヒーロー達が引退」という展開でメタ的に表現してからは、次世代のヒーローが現れるまで世間はTVに逃避するという風に描かれていきます。
西部劇
『ウェスタンコミックス』のキャラクターはTVドラマの登場人物という扱いで登場

このあたりでは刑事モノ冒険モノのコミックのキャラが多く登場していきます。
スーパーヒーローばかりでなく、他のジャンルのコミックのキャラもしっかり拾ってきててなかなか面白いです。

そしてこの後すぐに次の世代を担うヒーロー、スーパーマンバットマンワンダーウーマンアクアマンフラッシュグリーンランタンなど今も第一線で活躍する面々が登場。
語り部のポールさんは、この新たな世代のヒーローの登場に心躍らせていくのでした。

サイドキックという存在も登場し、一度は引退したヒーロー達(初代フラッシュや初代グリーンランタン)の現役復帰も合わさって、またも隆盛を極め始めます。
そして数多く現れることになるビラン達と戦っていくのです。
ヒーロー勢ぞろい
先輩たちと後輩たち

この時代、ヒーローとビランは『ある暗黙のルール』に従って戦っていました。
それは「ビランが犯罪を起こす→ヒーローが捕まえる→ビランが脱獄する→ビランが犯罪を(ry」というパターンを繰り返し、尚且つ決して深刻な犠牲は出さないというもの。
これは、当時はまだまだコミックブックが子供向けの時代だったことを上手くストーリーに落とし込んだ演出となっています。

しかし現実では1964年の『ディテクティブコミックス』にてバットマンのストーリーがシリアス寄りに方向転換、それに倣って他でもショッキングな表現を盛り込んだコミックが増え始めます。

レガシーズではこの現実での出来事を「世の中の流れが変わりはじめた」という展開に落とし込み、「希望に満ち溢れていた世界がじわじわと変化し始める」ように演出。
とことんメタフィクション的な展開ですね。

そしてラストではDC世界の大事件『クライシス』が発生。
(邦訳版クライシス・オン・インフィニット・アーシズがまだ未発売なのにレガシーズで先取りしてしまった感が)
Vol.1で描かれるのはとりあえずここまでとなります。

他には『SNAPSHOT』というゴールデンエイジ期のキャラクターが登場する短編が4編と、キャラ紹介ページ、レガシーズで取り上げられた事件の元ネタの紹介ページが収録されています。

『SNAPSHOT』まず邦訳で活躍が見られないキャラクター達がメインに取り上げられているので要チェック。

読んだ感想としてはとにかくお祭り作品としての印象の方が強い感じでした。
DCコミックスの歴史を追いかけるといっても、現実の出来事はあくまでメタ的な表現に抑えていましたから。
そこまで解説メインって感じではなかったです。
あと、DCキャラクター大事典で気になったキャラを調べていくのも楽しい。

Vol.2以降はスーパーマンの死などの重いエピソードを盛り込んでいくようなので期待。
あとポールおじいちゃんの人生譚も微妙に楽しみです。
アイウォンチュー_convert_20111016203654
アンクル・サムがDCコミックのキャラだと知ってちょっとビックリ

小ネタ

邦訳版で気になった点
YZ.jpg

最初のキャラ紹介のページで、サンダーボルト(ワイズ)だけ初登場の年月日が書かれていないのと、
誤植

P.82よくある感じの誤植があったのが気になりました。
下巻は誤植やら表記漏れが無いようにして欲しいものです。
ミョーなカバーアート

カバーアート

邦訳版の巻末に掲載されているカバーアート集。
レトロなカバーアートが揃う中、『ALL-STER COMIC #3(WINTER 1940)』のアートだけミョーに小奇麗というか、絵柄もディフォルメの効いたポップなヤツとなっておりかなり浮いています。

本来のカバーアートはこちら。
orizinaru.jpg

それが何故かこんな絵に。
ポップな

このポップなアート、実はFred Hembeckという海外のカートニストが描いた絵なんです。
自サイトでカバーアートのパロディイラストを公開されているのですが、どうも邦訳スタッフが間違えてこの絵を引っ張りしてきてしまったのではないかと。

ちなみにFred Hembeck氏は他にも色々なカバーアートの解説を交えてパロディイラストを大量に描かれているので要チェック。
【Hembeck.com】
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