ツルゴアXXX

ARTICLE PAGE

01 2012

グラント・モリソン&アンディ・キューバート他/バットマン・アンド・サン

バットマンアンドサン表紙

「オレの行動に指図するな 母さんは何でもさせてくれた」
「ここではそうじゃない。アルフレッドが手伝う。わかったな」
「あなたのお部屋までご案内いたします」
「るせェ」
「はぁ…昔の誰かを思い出します」

“息子”の罪の報いは“父親”に訪れる……。

『バットマン:アーカム・アサイラム完全版』『WE3 ウィースリー』の奇才グラント・モリソンと『バットマン:ザ・ラスト・エピソード』(いずれも小社刊)の天才絵師アンディ・キューバートが“ダークナイト”の正史を塗り替えたことでで知られる名作『バットマン・アンド・サン』。新たな“バットマン・サーガ”はここから始まり、壮大なる物語はいまもなお続いている……。

バットマンの息子ダミアンが登場する『バットマン・アンド・サン』のベースとなった約20年前の秀作にして、ダミアン誕生秘話を描いた『バットマン:サン・オブ・デーモン』も同時収録。

時を超え、複雑に絡み合うバットマン、ラーズ・アル・グール、タリア、そしてダミアン。閉ざされていた歴史の扉がいま開かれる!


◆収録作品

1987年09月:Batman: Son of the Demon
2006年07月:Batman #655
2006年08月:Batman #656
2006年11月:Batman #657
2006年12月:Batman #658
2007年04月:Batman #663
2007年05月:Batman #664
2007年06月:Batman #665
2007年07月:Batman #666


◆新たなバットマンサーガ
フランク・ミラーアラン・ムーア作品が立て続けに発売されてきた邦訳アメコミ。
今年2012年は驚くほどのグラント・モリソン推しとなっています。
(実際は「意図的にプッシュしているわけではない」とのことらしいですが)

そして夏に公開予定の『ダークナイト・ライジング』に合わせて、バットマン作品も多く邦訳される事になりました。
その第一弾となるのが、「バットマンに息子がいた!?」という目を引く掴みとなっている本作『バットマン・アンド・サン』
ようやく邦訳でバットマンの息子・ダミアンを拝む事ができるようになりました。

この邦訳版は『バットマンの息子』という設定のベースになったいわゆる元ネタ的な作品『バットマン:サン・オブ・デーモン』と、モリソン脚本によるダミアン・ウェインの初登場作品『バットマン・アンド・サン』の2作品を収録。
300ページ近い大ボリュームとなっているのが嬉しいです。

ちなみに、今回はタイトルの解説と用語解説は本文中に掲載されています。
そのため、解説の小冊子(投げ込み解説)は無し。

あと今回の邦訳では目次が用意されているのが地味にありがたいです。
それと、ここ最近の小プロの邦訳アメコミはちょっと前までに比べると価格設定が若干下がってきた気がします。

◆バットマン:サン・オブ・デーモン
ライター『マイク・W・バー』の手によって、バットマンがラーズ・アル・グールと手を組んで共通の敵・ケインと戦うストーリーが描かれる作品。
しかもその過程でラーズ・アル・グールの娘・タリアとねんごろになり子供が出来てしまうというなかなか衝撃的なエピソード。

ご懐妊_convert_20120301203454
普通にラーズ・アル・グールと良い家族関係を築けているというのがまた面白い光景

しかし正史でバットマンに子供ができ父親になるという展開はファンに受け入れられず、結局94年の『ゼロアワー事件』というクロスオーバー展開で時間軸を修正するついでに不都合な設定も消滅させたため、この作品の『タリアとの間に子供が出来た』という設定が完全になかったことになってしまったのです。

本書の解説によるとこの設定は今や雑誌の特集でトリビアとして扱われてしまうほどにないがしろにされているモノだったとか。
完全に黒歴史認定されていた不遇な一作

しかし、2006年になってモリソンが『バットマン・アンド・サン』にてこの設定を掘り起こしてもう一度正史の設定に組み込み、新たなバットマンのストーリーを展開していくことになるのです。

ちなみに、本作『サン・オブ・デーモン』を読む前に過去にジャイブから発行されていた『バットマン:テイルズ・オブ・デーモン』を読んでおくと若干ですが事前知識を得ておくことができます。

◆バットマン・アンド・サン
犯罪帝国の後継者を作るために過去、バットマンにクスリを盛って子を宿し、息子ダミアンを生んだタリア。

バットマンはタリアの策略に嵌ってしまい、ダミアンをとりあえず引き取る事に。
しかしダミアンは口と態度が悪いかなりの問題児
しかも戦闘訓練を施されているために非常に手のかかる子供なのでした。

叱るバッツ_convert_20120301203534
「いいかげんにしなさい!!」

ダミアン以外にもタリア率いるマンバット軍団との戦い、バットマンが関わる事になる謎の殺人事件など、バトルとサスペンス要素が合わさった見所の多いストーリー。

狂人_convert_20120301203516そして、チャプター4とチャプター5の間に『真夜中の道化師』というジョーカーメインのちょっとした小説が収録されています。
『バットマン・アンド・サン』冒頭ですぐに退場してしまうジョーカー分はここで補給。
『第6節』ではジョーカーの思考が文章で表現されているのですが、ちょっと何言ってるかわからない感じの狂った内容となっています。
『アーカム・アサイラム』の時も感じましたがモリソンの狂人描写は普通に怖い。

ハーレイ・クインのジョーカーに対する異常な愛情も挿入されるためなんかもうコレだけで読みきりのコミックが作れるんじゃないかというぐらいの濃密な内容となっています。
あとやたらグロい。

そして、本書ラストを飾るチャプター7、『ベツレヘム』
バットマン誌のバックナンバーが#666に到達した事を記念して執筆された本作は唐突にこれまでのストーリーの流れを無視し、死亡した父ブルース・ウェインに変わって新たなバットマンとなったダミアン・ウェインが主役近未来のゴッサムを描くストーリーが描かれています。

謎の未来世界_convert_20120301203553
謎の中二系ストーリー

バーバラ・ゴードンが亡き父に代わって本部長となっていたり、アルフレッドはダミアンの飼い猫の名前だったり、『バットマンの後継者』を名乗る謎の人物との戦いが描かれたりと、何がなんだか分からないけれど妙に惹きつけられる一篇

◆感想
モリソンによる長大なバットマン・サーガのまだまだ序章に過ぎないという触れ込みの本作、『バットマン・アンド・サン』
この長い長いストーリーは5月下旬発売の『バットマンR.I.P.』ようやく第1部の完結となるらしいです。
原書で刊行されている第2部、第3部もこのまま月刊バットマン状態で邦訳し続けていって欲しいですね~。

兎にも角にも、『バットマン・アンド・サン』の作中で示される『バットマンの息子』というテーマがこれからどう展開していくのか、今後の邦訳が非常に楽しみです。
2006年からメインストーリーを担当することになったというこのモリソンのバットマンは、まだまだ始まったばかりだ!
関連記事

0 Comments

Leave a comment