ツルゴアXXX

ARTICLE PAGE

26 2011

リー・ベルメホ/バットマン:ノエル

ノエル_convert_20111226005848
“彼の家は暗くて陰気な場所”
“主人の心と同じく、ぽっかり空いた黒い穴だそうだ”
“彼はそれが気に入っていた。
 スクルージは人づきあいが苦手で孤独が好きだった”
“人生のほとんどを仕事に費やしている。他の人にかまう暇などなかった”
“他の人間など邪魔者でしかなかった”

クリスマス・イブのゴッサムシティから物語ははじまる。
冷酷無慈悲に犯罪と対峙するバットマンは、周囲からは血も涙もない男だと恐れられている。
イブの夜、バットマンは相棒だったロビンの幻影を見て、過去の自分を振り返っていた。
そして、ある事件を追っていくなかで、彼はキャットウーマン、スーパーマン、ジョーカーの三人と出会い、自分の生き方について自問していくのだが......。


◆収録作品

2011年11月:Batman: Noël


◆リー・ベルメホ最新刊!
過去に邦訳出版された『ジョーカー』で迫力あるアートを魅せてくれたリー・ベルメホの最新作となる『バットマン:ノエル』。リーは今作ではなんとアート、脚本の両方を担当しています。
また、原書は先月2日に出たばっかり本当に真新しい作品。
さらに邦訳版は価格変更があり、『2310円→1890円』で登場しました。
邦訳版が原書TPBと殆ど変らない値段で発売されたってのはかなり大きいのではないでしょうか。
今後も小プロさんにはこんな感じの値段で頑張ってほしいです。

で、本作『バットマン:ノエル』ですが、ストーリーはかの名作『クリスマス・キャロル』が元になっています。
元になっているというか、ほぼ原作に沿ってバットマンらしく展開するため、『バットマン版クリスマス・キャロル』といった感じでしょうか。

◆クリスマス・キャロル
クリスマスキャロル1984_convert_20111226014350本作の下敷きになっている『クリスマス・キャロル』についてちょっと解説。超有名なお話ですけどね。原作は『チャールズ・ディケンズ』という人です。

物語の主人公である初老の商人のスクルージは吝嗇家で、クリスマスイブの夜にも金儲けに精を出し、人を冷たく突き放すような男。そのせいで多くの人に嫌われているのですが、ある夜、7年前に死んだ共同経営者のマーレイの亡霊が現れ、現在のスクルージを諭し、生き方を変える最後のチャンスとして3人の精霊がスクルージの前に現れることを告げます。
そして1人ずつ会うことになる3人の精霊。1人目の精霊はスクルージの過去を、2人目の精霊は明るい家庭や、貧困に苦しむ人々の姿を、そして3人目の精霊は『スクルージが死亡した後の悲惨な未来』を見せたのでした。
この現実を見せられたスクルージは激しい衝撃を受け、たった今経験した未来を今からならまだ変えることが出来ることを知り、改心して人々から愛されるような人間に変わって、クリスマスを心から楽しむようになったのでした…というお話。

ちなみに画像は1984年のテレビ映画『クリスマス・キャロル』です。何度も映像化されている『クリスマス・キャロル』ですが、個人的にこれが一番印象に残ってます。

◆3人の精霊
『クリスマス・キャロル』に沿ったストーリーというのもあってか、原作のスクルージにあたるポジションとなっている本作のバットマンは相当に孤独で冷たい人間として描写されています。
あらすじには『周囲からは血も涙もない男だと恐れられている。』とありますが、これが実際そうなのだから困っちゃう。
あまり格好良いという印象は持てないかも。

そんな感じの性格のバットマンが、いつものように事件を追っていると現れるのが原作での精霊にあたる3人の人物。

1人めキャットウーマン_convert_20111226172528
アンタはそんな暗い男じゃなかったよ!

1人目の精霊に相当するキャラクターは『キャットウーマン』
原作のようにバットマンが昔は快活な男だった頃を思い出させる役割を担っています。
イメージ映像が快活というかバカバカしいノリだった60年代のTVドラマ時代なのが、昔と現在で作風が変わっているというメタな部分も表現していてちょっと面白い1シーンです。

2人めスーパーマン_convert_20111226172546
この作品のスーパーマンはバットマンと対照的なヒーローとしての描写が特に強い印象

2人目の精霊役を担うのがスーパーマン。スーパーマンはバットマンに『幸せな人々の日常』と、『周りの人間が彼をどう思っているのか』を見せるのでした。
ゴードンですら、本人が居ない場所ではそこまで友好的なわけではないという現実を見せられるという、読者的にもちょっぴりショックなシーンがあったり。

3人めジョーカー_convert_20111226173726
ジョーカーはいつもどおり

そして3人目の精霊がまさかのジョーカー。
バットマンが死んだ後の凄惨な世界と、誰も彼の死を悲しむことがないという悲惨な未来を見せる役どころです。
ジョーカー自身は別に彼を諭しに来たとかそういうわけじゃなく、いつも通りバットマンを襲っただけなんですけどね。
何気に今作のジョーカーのデザインも『ジョーカー』と同じくヒース風なのは要チェック。

◆感想
『クリスマス・キャロル』は何度も何度もリメイクされている名作。
中にはウォルト・ディズニー・カンパニーが手掛けたおなじみのキャラ達でのリメイクもありますよね。

ディズニー_convert_20111226212253
これも名作

その中に新たにバットマン版のリメイクが加わったとみても良いような感じの一作でした。
基本的な話の流れは原作のそれのままで、本作のバットマンは本当にスクルージに近いキャラ付けになっていますし。
読了後には清々しい余韻が残る一冊です。
是非ともこの季節に読んでおきたい作品。
関連記事

0 Comments

Leave a comment