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17 2011

ダニエル・クロウズ/カリカチュア日本語版

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「僕は人種差別主義者なんかじゃない!
 ただ古い絵の無垢なところが好きなだけさ…
 現代はあらゆるものが‘皮肉’と‘自意識’に侵されてるよ…」


『ゴーストワールド』の世界にはまった人にお薦め!
選りすぐりの9つの短編はリアリズム&キャラクター中心の要素が強く、資本主義とポピュラーカルチャーがうずまくこの社会を浮き草のように漂流する人々の孤独を、乾いたユーモアたっぷりに描いた辛辣な世の中批判!
ミシェル・ゴンドリー監督とのコラボレーション作品の公開が待たれるダンの初期名作短編集!

~ダニエル・クロウズについて~

アメリカのオルタナ・コミック作家。

1961年シカゴ南部生まれ。十歳年上の兄の影響もあって子供の頃からコミックやパルプマガジン、さらに当時のアメリカンB級ポップカルチャーの刷り込みも深く、その影響は作品の端々に滲み出している。

ニューヨーク・ブルックリンのPratt Institute を卒業後、86年に「Lloyd Llewallyn」にてFantagraphics books社からデビュー、更に「EightBall」を活躍の場としながらと「Like A Velvet Glove Cast In Iron」、「Caricature」、「David Boring」等の長編、更に数多くの短編を発表。

現在は初期に見られた50年代MADマガジン風スタイルからストーリーテリングの妙味も加わった作風への変化も見られ、文学的なものやフィルム・ノワール的なものを巧みにブレンドした魅力溢れる作品を発表、アメリカンオルタナティブ・コミックのトレンドとして内外を超え多くの作家に影響を及ぼしている。

その他、過去に幾度とHarvey Awardsを受賞(Best Writer 、Best Continuing Series, "BestSingle Issue" Award in 1998)更に「Weirdo」「Esquire」「Village Voice」「NEWYORKER」で重ねて作品や自身の特集が組まれ、更に数々のミュージシャンのレコードジャケットやコカ・コーラ社の缶アート作品「OkSoda」や「Gen-X」等のデザインや、「コム デ ギャルソン」の広告にも「Caricature」の1コマが使用されたりしている。

テリー・ツワイゴフ監督による自作の映画化「ゴーストワールド」「アートスクール・コンフィデンシャル」では、脚本を担当した。

現在は妻エリカと共にオークランドに在住。


◆ダニエル・クロウズ作品集
表紙がもの凄く異様な雰囲気を放っていますが、別に不気味なホラー作品が収録されているとかそういうわけではないです。
本書は映画にもなった『ゴーストワールド』の作者、ダニエル・クロウズが活動初期に発表した短編作品集。
どこか「行き場の無い雰囲気」に支配されたような内容のものが多い、そんな作品たち。
現代社会を鋭く風刺しつつも、単に世の中を批判するだけは終わらないように作られた話が多め。

とりあえず、収録作品9つを紹介していきます。

◆CARICATURE
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都市から都市へ移動し、人々の似顔絵を描く事で生計を立てているマル・ローゼン。
ヒップスター気取りの少女、セダに出会った事で自分の中に自己欺瞞がある事に気づき、空虚感に支配されてしまう。
自分が似顔絵描きという職業を選んだ理由も、『アートで食べていくには(絵について知識があるわけじゃない)バカ相手じゃないと無理』心の奥底で自覚していたからという事も悟ってしまう。
しかし、今さら生き方を変えることもできず後悔だけが残ってしまったというお話。

◆BLUE ITALIAN SHIT
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1970年代後半のニューヨークが舞台。
社会不適応者である様々なルームメートに囲まれ、毎日をただ漠然と過ごす18歳青年の物語。
主人公がとにかく自意識過剰で、外では荒っぽいタフガイを気取り、家ではルームメイトを心の底で見下して過ごす。
終始孤独感に包まれている一編です。

◆THE GOLD MOMMY
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床屋で髪を切ってもらうもお金を持っていない事に気づき、床屋の主人に靴と靴下を預かられてしまった主人公のヤークス。
現金を下ろせる場所を探して町をさまよい歩いている途中、亡くなった父のオフィスを発見。
父が何の仕事をしていたのか知らなかったので、ふと色々調べてみるが結局分からずじまい。
ただ、オフィスに巣食っていたネズミのような生き物の巣から自分の名前がいくつも書かれているよくわからない紙の切れ端を見つける。

いまいち話がよく分からないまま終わってしまうため、なんともスッキリしないお話。
無くなった父親がヤークスの名前を使って『何かをしていた』から主人公は殺されてしまうのでしょうが、話にさして起伏が無いのもあって唐突な終わり方に感じてしまい、面白みに欠ける作品でした

◆MCMLXVI
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1966年のアメリカ文化にのめり込んでいる青年の独白。
この主人公ときたら周囲の人間がハマっているものはなんでも心の底で『くだらない』と切り捨てちゃう。
そのせいで『懐古趣味』なんて言われしまう始末。
「どいつもこいつも僕のことなんかわかっちゃいない…」と終始苛立っています。

い、痛い…

「こういう変に自尊心の高いタイプのオタクって確かにいるよなぁ」と感じる作品。

◆LIKE A WEED, JOE
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『BLUE ITALIAN SHIT』の主人公が少年の頃の物語。
甘やかし放題の祖父母の下で暮らし、毎日を退屈に感じながら過ごしていた夏の頃のお話。
ビーミスという2つ年上の少年を祖父母に友人としてあてがわれるも、特に何か大きな出来事に遭遇することも無く過ぎ去っていく日常が描かれています。

◆IMMORTAL, INVISIBLE
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14歳のハロウィンの夜。
周りの子供たちはいかにも「ハロウィンの準備は万端!」な家に飛び込んでいくのですが、主人公はあえて直感で選んだ家ばかり選びます。
「自分の行動には深い意味があるのだ」と訳も無く信じ込んでいる主人公。
その結果、ろくすっぽ大したお菓子が貰えず…という話。
妙な背伸びの仕方をする少年が少し滑稽な一作。

◆GREEN EYELINER
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「学生時代はイケてなかったワタシ、でも今はこんなに魅力的になったのよ!」強く思い込んでいる23歳の女性、モナ・ビードルが主人公。
自分に自信をつけて学生時代に憧れていた男に会いに行くも、まったく相手にされないまま終わってしまう。
その後、モナは映画館で銃を取り出し周囲をパニックに陥れる事件を起こしちゃいます。
結果警察官に抱きかかえられることになり、絵的にはモナがヒロインのようにみえる光景が映し出されて終わるという話。

自分が思っているほど、周囲から見てモナは魅力たっぷりな女性ではなかった…というこれまたアイタタタな一編でした。

本作は米国雑誌「エスクワイア」の小説特集に掲載された初のコミックでもあります。

◆GYNECOLOGY
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フォーク・シンガーでもある産婦人科を取り巻く、病んで行き場を失った現代に生きる人々の物語。
これだけ3話構成でちょっぴり長め。
批評家や一過性のブームなどに対する鋭い風刺が盛り込まれている作品です。

◆BLACK NYLON
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ヒーローもののお話。
といってもこの作品では、カッコよさの欠片も無い悪い意味で滑稽なヒーローの姿が描かれています。
ささいなトラブルを目撃したら(心の中で「私は暴力的な人間だがけじめはつけているのだ」と言い訳してから)その場では対応せず、家に帰ってコスチュームを着てから暴力的な手段に訴える。
後輩ヒーローのスーパーボーイにはなめられ、女には認知を迫られ、かつて子供を救った恩に付け込んで診療所の先生にケガを治してもらう、そんなヒーローです。

ヒーローなのにどこかひねたストーリーを楽しむ事が出来る一篇。

◆感想
…で、本書を読んだ感想ですが、正直に言うと…「あんまり面白くなかった」です。

殆どの主人公は周囲の人間を、世の中をどこか見下している斜に構えたヤツが多いんですが、そんな主人公自身も読者からすれば「さしたる人間じゃない」と思わせるように話を作っているのは上手いです。

ただ、そんな主人公たちの独白を延々と見せられて終わるだけの話が多い!ホントに多い!
(「オチ」がついている作品もちゃんとありますが)

基本的にコミックとしての面白さを望むような短編集ではないと感じました。
う~ん、この辺は合う合わないがあるのかなぁ…作者の乾いたユーモアを楽しめるかどうか。

代表作の『ゴーストワールド』から入った方が良かったかも。あまりにもこの短編集が合わなかったので購入するかはちょっと分かりませんが。
映画から入ろうかな?
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