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13 2011

ジュリー・デュウシェー/マイ・ニューヨーク・ダイアリー 日本語版

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「結局、この街は私に合わないことが分かった。
 ここに住むには怖くて冷たすぎる。
 本当に怪物のような街…そう、何もうまくいかなかったわ!」


1991年に、ジュリーはある日突然NYに引っ越した…
この作品で描かれるのは、嫉妬深いボーイフレンド、自分の才能への不安、持病のてんかんの悪化、酒とドラッグなどNYでのトラブル続きのイカれた彼女の生活。
彼女独自の視点でリアルで生々しく描かれた内容は女性に対するあらゆる幻想や予定調和を引き剥がし、
世界中の女性の中で高い評価と共感を得ている。

~作者について~

1965年生まれ。カナダ出身。フランスのコミック作家F'murrやR.Crumbに影響を受ける。
1987年にカナダのモントリオールでアートスクールに通いながら、処女作、"Dirty Plotte"をミニコミックとして自費出版。これは夢、日記、様々な物語を組み合わせた作品で、後にコミックシリーズとしてDrawn & Quarterly社から出版される。

彼女独特の内面を深く見つめた問題提起型の作品は高い評価を得て、1991年にはコミック作家にとって名誉あるハービー賞で新人賞を受賞し、女性版R.Crumbと言われ、その後、ニューヨークに移住し、そこでの自身の生活を描いたコミックは1999年に"New York Diary"として出版される事となる。そして、一年後にはアーティストのコミュニティが活気づき始めていたシアトルへと移動する。
シアトル在住時に描いた作品は"Lift Your Leg, My Fish Is Dead! "として出版される。 次に1995年に、今度はベルリンへと移動し、同時に"My Most Secret Desire"が出版される。1998年にふたたびモントリオールに戻り、"Dirty Plotte"の最後刊を出した後、一時コミックから離れ、版画やプリントなどの他の表現方法を試みるが、これらの作品も彼女のコミックを出版し続けたDrawn&Quarterly社から出版される。

その後、週間誌の連載としてふたたびコミックを描きはじめ、モントリオールの都会生活を描いた"Madame Paul Affair"は2000年に一冊の本となる。
現在もモントリオールに在住し、創作を続ける彼女の作品は市内や世界中のギャラリーや展示会で観ることが出来る。



◆MY NEW YORK DiARY
この作品は、作者であるジュリー・デュウシェーがニューヨークに移り住んだ時のエピソードがモノローグ的に描写しており、いわゆる『だめんず』と同棲していた時の話やドラッグの話、セックスや持病の発作に襲われて場所を問わずいきなり気絶するというアレな感じのするさまざまな経験をリアルに描いています。

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人目が怖くて外出するにもハラハラ

女性が主役といっても決して華やかな物語ではなく、全編通して生々しい話ばかり。
ニューヨークに来て彼氏と同棲を始めながら仕事をするも、期待していたニューヨークの生活のギャップと急激な発作、ドラッグと酒が原因で徐々に弱り始めるジュリー。
さらにジュリーへの依存から段々サイコになっていく彼氏との関係も悪化し始め…というお話。

これまでの数々の男性遍歴を経て挫折や失望を味わいシアトルへの引越しを決意するまでの日々が描かれます。

◆the FiRst TiME
タイトルには『ニューヨーク・ダイアリー』とありますが、本書の初めには『the FiRst TiME』という作品が収録されています。
こちらはジュリーが短大生だったころのエピソード。
これがまた面白い!

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絵を描く事が好きなはずなのにやる気が出ない

試験無しで入る事が出来る「モントリオール短期大学」の美術科。
そこははみ出し者や落ちこぼればかりが集まるダメな学生の巣窟。

ジュリーは絵が描く事が好きで美術科に入ったはずなのになぜか授業に熱中できず、いつしか授業は許容範囲ギリギリまでサボるようになり、課題も合格がギリ貰える程度にしか力を入れない始末。
まさにダメな大学生の鑑ですね。

初めてできた彼氏は哲学科の人間で、話す話題と言ったら思想系の話や政府の陰謀論ばかり。
最初はジュリーも「世界の全てを知っているような賢いヒト!」という印象を持っていたようですが、時間が経つにつれ話を聞くのに段々と疲れて来たようで…

次にできたボーイフレンドはぱっと見チャラい感じの男なんですが、意外とシャイな一面がある事を知り「カワイイ!」という印象を持って付き合います。
が、これがまた女に強く依存する男だということが判明し3週間で破局。
しかし男はそれ以降もしつこく付きまとい最後には…なエピソードなど盛りだくさん。

美術科の授業をやり過ごすように終わらせ、周りの男に振り回される鬱屈とした日々が描かれます。
それにしても見事なまでにダメ男とばかり付き合っていますね…

◆感想
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彼氏とドラッグを楽しみつつコミックの仕事をするジュリー

驚くほどに自分をさらけ出して描いているジュリ-・デュウシェーの『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
人に読まれることになる作品なのに自分を取り繕う事無く、徹底的に壮絶に描いたこの自伝は強く惹き込まれます。
自分の能力に対する漠然とした不安など、色々共感できる部分も多かったり。
海外コミックというギャップを殆ど感じること無く読み進める事が出来るのではないでしょうか。

個人的には福満しげゆき先生の『僕の小規模な失敗』(「生活じゃないよ!」)のような作品が好きな人に薦めたい作品。

この間取り上げた『HATE』もそうですが、僕はこんな感じの下卑た人間ドラマを描いた作品は結構好きです。
この手のコミックも色々読んでみたいのでプレスポップには期待しちゃいます。
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