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24 2022

エド・ブルベイカー&グレッグ・ルッカ他/ゴッサム・セントラル:狂気と哄笑と

狂気と哄笑と表紙

『ジョーカーの凶行から一夜明けた2日目の朝です。クリスマスまであと2日。
 市民たちは恐怖に凍りつき、街は息を潜めています。
 今朝、全メディアがジョーカーから単純で残酷な警告を受け取りました…
 …誰もが標的だと。
 8つの“狙撃カメラ”が市内のどこかに仕掛けられ、
 次の襲撃時刻を示すらしいタイマーもあります。
 警察が何もできない以上、市民を守る手立てはなく、
 今朝のゴッサムの様子はパニック一色です。
 次の凶行まであと2時間ほど……近年稀に見るほどの大脱出が始まっています。
 ケーン橋から203号線まで渋滞が確認できます。
 これ以外の橋やトンネルでも、同じような光景が見られます。
 事態は一刻を争いますが、
 市警もハル臨時市長もこの危機に対する解決策を提示できていません。
 昨夜の映像を見ると、関係者たちの苦悩が一目でわかります。
 街は息を潜め、犯人は次の攻撃を待っています…
 …あるいは、影から差し伸べられる救いを。
 …アンジーがお伝えしました』


バットマン英雄になるたび、刑事たちんでいく──。

クリスマスが近づくゴッサムで、全市民を人質としたジョーカーによるゲームが始まった。
刑事たちは街を守るため、総力を挙げて捜査に乗り出すが、ジョーカーを逮捕するどころか次々と犠牲者を出してしまう。
特殊能力もハイテクな装備も持たない刑事たちは、ゴッサムでは無力なのか?バットマンに正義をゆだねるしかないのだろか?
ゴッサムシティのリアルを、刑事たちの活躍から描き出すDCの傑作シリーズ第ニ巻!


◆収録作品

2003年11月:Gotham Central #11
2003年12月:Gotham Central #12
2004年01月:Gotham Central #13
2004年02月:Gotham Central #14
2004年03月:Gotham Central #15
2004年04月:Gotham Central #16
2004年05月:Gotham Central #17
2004年06月:Gotham Central #18
2004年07月:Gotham Central #19
2004年08月:Gotham Central #20
2004年09月:Gotham Central #21
2004年10月:Gotham Central #22


◆関連作品過去記事
【ゴッサム・セントラル:正義と悪徳と】

◆Jokers and Madmen
ゴッサム市警、GCPDの重大犯罪課……MAJOR CRIMES UNIT、『MCU』の刑事たちを主役としたシリーズ、『ゴッサム・セントラル』の邦訳版第2巻がついに刊行!!
第1巻の邦訳が出たのが去年の3月であり、それ以降は特に続刊のアナウンスが無かったので「1巻で刊行終了しちゃったのかな……」と思いきや昨年12月に2巻の邦訳が発表され、今年4月についに発売!!
ゴッサム・セントラル第2巻である『狂気と哄笑と』は4つのエピソード、全部で12号分が収録され、全288ページというかなりボリューミーで読み応えのある一冊に仕上がっています。
ってわけで早速各エピソードを紹介!

***

最初に収録されているのは一話完結の短編、『夢想家と理想家』
主人公となるのはMCUの刑事ではなく民間企業の社員であり、秘書としてゴッサム市警に派遣されており、必要な時はバットシグナルを点灯する役割も担っている女性、ステイシー
バットマンに強いあこがれを抱いており、時折バットマンと恋仲になる妄想に浸る彼女は、ゴッサム内で霊柩車に積み込まれていた遺体が何者かに盗まれたという事件のその顛末を耳にして、引退前のゴードン本部長がかつて話した言葉を思い出す……というストーリー。
世の中の犯罪者の多くは根っからの悪人ではなく、自らの行動の結果を考えられない人であり、単なる異常者よりもそういう浅慮で無分別な人間が増えている社会の方が問題だ……というのを提起している内容で、なかなか考えさせられる一本です。

そして2話目が、ヴィランとしてジョーカーが登場する目玉回『狙撃ゲーム』
ゴッサムシティ市長のディッカーソンがオフィスで、公立学校の管理人であるパーネルが校庭で何者かに狙撃されて殺されるという連続殺人事件が発生。
そしてMCUの刑事たちがパーネル殺害の現場に向かって捜査を行っている最中にも犯人による狙撃が行われ、3人が死亡、検視官のノラ・フィールズも右手を吹き飛ばれるという重症を負ってしまう。
銃撃の軌道を見定めていたジョシー・マック刑事が狙撃犯がいたビルを発見し、仲間とともに部屋に踏み込むと、そこにはパソコンが置かれており、画面にはバットマンを挑発するジョーカーのメッセージが残されていた。
これだけでは終わらず、さらにジョーカーの凶行は続く。

ジョーカーによる犯行予告

ジョーカーは次の狙撃位置を示すカメラを新たに『8つ』設置しており、その映像を公開。ただしうち7つはフェイク。
制限時間以内に狙撃を行う場所を特定できないと、次の犠牲者が生まれてしまうというゲームを仕掛けてきたのだ。
MCUは必死に捜査を続けるが、見つかるのは本命ではなく囮のカメラばかり。
臨時市長となった副市長のハルはその状況に苛立ち、無能と思われているイメージを回復するために事件とは無関係であるジョーカーの元部下のチンピラ集団である『キラー・クラウンズ』の逮捕をマスコミの前で行うよう指示を出し、MCUはただでさえ貴重な制限時間を浪費させられる羽目になってしまう……というストーリー。

『バットマンとジョーカー』の二人の戦いに市民が、そして刑事が巻き込まれ命を失うという理不尽さ。
ジョーカーに対して後手ばかり打ってしまう警察がマスコミによって世間から非難され、ビジランテとして活動するバットマンが結局事件を解決して英雄視されていく虚しさ。
ラストシーン、マギー・ソウヤー警部とマイケル・エイキンス本部長二人の会話がなんともいえない読後感を残してくれる一作です。
ちなみにこのエピソードはゴッサム・セントラル連載当時、2002年10月に起こった無差別狙撃事件『ベルトウェイ狙撃事件』がモデルになっているとか。

3本目のエピソードはミステリー度合いが高めな内容の『人生は失意に満ちて』
ウォッシュバーン製薬の経理部で働く女性、ステファニー・ベッカーが殺され、容疑者として彼女が死亡する直前に乗ったタクシーの運転手である、ビリルという男が浮上。彼はベッカーの死後、彼女の銀行カードを使い、二度も別のATMで金を引き出そうとしたものの暗証番号が分からず諦めた記録が残っていたのである。
しかしビリルは「自分は殺していない。ATMに向かったのも当時酔って現金を持たずタクシーに乗り込んだベッカーが、自分に暗証番号を伝えて金を引き出すよう指示した」と証言するのだった。
それでも疑いの目を向け続ける刑事たちだったが、検査報告書でベッカーが『テッツ』という薬物の過剰摂取により毒殺された事実が発覚。加えて、またもウォッシュバーン製薬で働く女性がテッツで死亡するという事件が発生。MCUのトミー・バーク刑事とダグマー・プロホノフ刑事、ビンセント・デル・アラツィオ巡査部長とジョエリー・バートレット刑事はウォッシュバーン製薬に隠された闇を解き明かすために捜査する……というストーリー。
プロの音楽家の息子を持つものの、刑事の仕事もあってかすれ違いが続いているプロホノフ刑事のエピソードや、ちらっと登場して重要な情報を与えて去っていくハントレスなど、前述したジョーカー登場エピソードに比べると全体的に派手さは抑えめなものの見どころが多い内容で、個人的にはこの2巻でけっこうお気に入りの一編です。

そしてこの第2巻を締めくくるエピソードが、この『未解決』という一編。
ハンバーガーショップで立てこもり事件を起こしたホームレスのケニー・ブッカーはマーカス・ドライバー刑事との接触を要求。
実はケニーとマーカスは昔からの知り合いであり、またケニーは、自らが高校時代に巻き込まれた未解決事件である、ロッカー爆破事件の生き残りの一人であった。彼はマーカスに対してこの過去の事件の真相のようなものを断片的に語り、そのまま手に持った銃で自殺し、立てこもり事件は幕を閉じた。
マーカスがケニーから聞いた最後の言葉……それは「自分は嫌がったのに、頭の中で囁き続けている小さい男が無理やり犯行を行わせた」という支離滅裂なものであったが、この発言に単なる精神崩壊とは思えないものを感じ取ったマーカスは未解決のロッカー爆破事件の再捜査をデビット・コーンウェル警部補に頼み、マック刑事と組んで調査に乗り出す。
そして過去の資料を調べる中で、あの爆破事件を最後に捜査していた人物が、とある出来事により退職してしまったハービー・ブロック刑事であった事を知る。マーカスは捜査ファイルを今も個人的に所有しているハービーに接触し、捜査への協力を依頼するのだが……昔気質で過激な手段を取ることもしばしばあるハービーは、新たに見つかった証拠によってこの未解決事件がいよいよ解決できるという大きな進展のために、独自に先走った行動に出てしまう……という内容です。

刑事魂は失われていないハービー・ブロック

謎が謎を呼ぶミステリアスな展開と、捜査を進める事で明らかになる意外すぎて、また実に悲劇的な真実。実に読ませるエピソード!……なんですが、渋カッコいい印象が強いハービー・ブロックがこの時期は色々とうらぶれたキャラクターになってるので、彼のファンにはなかなか辛い描写も多めだったり。

◆感想
めちゃくちゃ面白かった!!!!!いやマジで面白いこのシリーズ。

邦訳版ゴッサム・セントラルは全4巻のバージョンが底本になっているので、あと残り2巻もなんとか刊行してほしいところ。バットマンないしバットファミリーの出番が本当に抑えめで刑事たちがメインという画は一見地味に見えるかもしれませんが、主人公がスーパーヒーローでない分、ヴィランと相対した時の緊張感は普段のバットマンタイトルとは比べ物にならないほど高いですし、毎回起こる謎めいた事件の真相に迫っていくという物語構成もあって先が気になってどんどん読み進めてしまうデキ。スパイスとして織り交ぜられる刑事たちの人間ドラマにも見入ってしまう。
あと、『狙撃ゲーム』に登場する、刑事たちにクソ女と罵倒されまくりな記者のアンジー・モリーナがあんだけトラウマ必至な怖い目に遭っておいて、最後の『未解決』で強かなことをやってる姿がちらっと描写されてるのには少し吹いてしまった。

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