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28 2022

J・マイケル・ストラジンスキー&ジョン・ロミータJr.他/アメイジング・スパイダーマン:カミングホーム

スパイダーマンカミングホーム表紙

「これからの流れはこうだ。貴様は逃げ、そして私は追う。
 私は、疲れない。飽きない。そして、諦めない。
 貴様は先に行くだろうが、私はいずれ追いつく。
 貴様の姿はすでに捕らえた。
 どこに隠れようが、私はいつだって貴様を探し当てることができる。
 数時間、数日、最長でも1週間もあれば私は貴様にたどり着く。
 貴様の体力は限界を迎えるだろう。
 そして、貴様は死ぬ。
 その前にひとつ教えてやろう。
 貴様を殺すのは、けっして個人的な理由からではない」


アメイジング・スパイダーマン:カミングホーム

人生をとおして、ピーター・パーカーは、孤独感に苛まれてきた。放射線を浴びたクモに噛まれ、クモ同様の能力を授かった彼は、その秘密を誰にも明かすことはなかった。
その特殊なパワーを自らの利益のために利用した結果、最愛なるベンおじさんの命は奪われることとなる。ひとりの人間であるとともにスーパーヒーローとして宿命を背負うピーターの葛藤を理解する者は、これまでに誰ひとりとも存在しなかった。
そんななか、ピーターと同様のパワーをもつ謎の人物が彼の目の前に突如現れる。謎の人物は、一体誰なのか?
彼を取り囲む集団の正体は?そして、ピーターを追い求め、アメリカの地を踏んだ古代からの悪霊とは?


◆収録作品

2001年06月:Amazing Spider-Man Vol.2 #30
2001年07月:Amazing Spider-Man Vol.2 #31
2001年08月:Amazing Spider-Man Vol.2 #32
2001年09月:Amazing Spider-Man Vol.2 #33
2001年10月:Amazing Spider-Man Vol.2 #34
2001年11月:Amazing Spider-Man Vol.2 #35


◆What hidden secrets about Spider-Man's powers will be unearthed?
なんと!!小学館集英社プロダクション、ヴィレッジブックス以外の出版社が新たにマーベルコミックスの邦訳版刊行に参戦したぞーーーーっ!!!!

その出版社は『アシェット・コレクションズ・ジャパン』!!様々なテーマに絞ったパートワーク……いわゆる『分冊百科』を数多く出版している会社で、今回『マーベル グラフィックノベル・コレクション』と題した書籍で、毎号様々なマーベル・コミックスの邦訳本を刊行していくのだとか。
その第1号となるのが、今回初邦訳である『アメイジング・スパイダーマン:カミングホーム』だ!映画『スパイダーマン:ホームカミング』の原作本と勘違いして買われる事をちょっと期待してそうなチョイスな気もするね!

そんでもって本書、この手の分冊百科のやり方とはいえ、アメコミの邦訳本が創刊号特別定価で499円という破格の安さなのが衝撃的。普段の邦訳本が定価2000円~3000円……時には5000円を超える事もあるだけに、この価格はどうかしてるぜ……!
しかもハードカバーで紙質もしっかりしている1冊なので、最後まで採算取れるレベルで刊行し続けられるのかが怖くもある。
とはいえ2号目は『X-MEN:ダークフェニックス・サーガ』は特別価格で1299円であり、3号目は『アイアンマン:エクストリミス』は定価1999円となるので、だんだんと相応の値段になっていくのかもしれない。

ちなみに『マーベル グラフィックノベル・コレクション』のラインナップは現時点で第10弾まで予告されているんですが、今の所チョイスされた作品は既存の邦訳本と被りまくっており、初邦訳は本書と第5号の『ヴェノム』第2シリーズくらい。ちなみに本書の巻末によるとニール・ゲイマンの『エターナルズ』『ワールド・ウォー・ハルク』も出す予定らしい。被り倒してんな……!
というか、2020年の12月に『マーベルのアメリカンコミックスの邦訳版はすべて小プロが出す』という契約を小学館集英社プロダクションが交わしていたのにそれは一体どうなってるのか謎である。
(厳密には『マーベルが権利を持っているキャラクターのコミックスの翻訳権は小プロが独占する』という契約らしく、締結後でも円谷プロから許諾を受けて制作されているマーベル・コミックス版ウルトラマンのシリーズはヴィレッジブックスが邦訳版を出版しています)
この『マーベル グラフィックノベル・コレクション』の底本はフランスの『Hachette Partworks』という出版社から刊行されていたものだからセーフ、という説や、実は本書の試験販売が一部地域で2021年の3月末から行われており、企画自体は小プロの件の契約前から動いていたためにセーフ、という説が上がっている感じです。実際のところはよく分からないけども!

本書の翻訳は、「ちょっと固さを感じるかな……?」という感じ。というのも本書は海外の方が日本語訳を担当しているらしく(本書はクリストファー・ハリソンという方が翻訳者)、その後に日本人スタッフが読みやすくなるよう校正している……っぽいです。おくづけを見た感じ。ただまあ日本語がおかしい!っていうレベルのセリフは特に無く、普通に物語を楽しめるクオリティの翻訳ではあります。この『マーベル グラフィックノベル・コレクション』の翻訳の質は……例えるならG-NOVELSが出してる邦訳コミックの翻訳のクオリティに近い。伝わるだろうか……?
解説は小プロやヴィレッジが付録として付けてくれているような解説冊子というものはなく、巻末でマーベルヒーロー(本書ではスパイダーマン)の設定を紹介する解説ページと、担当ライター&アーティストの紹介、ラフスケッチ集などといったコンテンツが纏められている形です。解説に関してはやっぱり小プロやヴィレッジが出す邦訳の方が充実してるかな。
まあ『マーベル グラフィックノベル・コレクション』の解説はこのくらいにして、そろそろ作品の方のレビューに移ろうかね!!

***

本作『アメイジング・スパイダーマン:カミングホーム』は、1999年1月にスタートした『アメイジング・スパイダーマン』第2シリーズの担当ライターがJ・マイケル・ストラジンスキーにバトンタッチした#30からの、当時のスパイダーマンの『新章』ともいえる物語。
あの宿敵グリーン・ゴブリンを討ち果たし、スパイダーマンの姿を封印してMJ(メリー・ジェーン)との幸せな結婚生活への日常へとシフトした……と思いきや、今度はヴィランチーム『シニスター・シックス』との激闘、そしてMJの命が脅かされる事件が起こってしまう。『二人が穏やかな夫婦生活を送る事が不可能』であると分かり、ピーターとMJは別れてしまう……という展開を経てスタートするエピソードです。悲惨すぎる……。

エゼキエルとピーター

そんな感じで強いモヤモヤを抱えたままスパイダーマンとして活動していたピーターはある夜、自身と同じような能力を持ち、またピーターがスパイダーマンである事を知っている謎の実業家『エゼキエル』と出会い、何度か交流を重ねるうちに彼はピーターのよき理解者となっていくという展開が。
スパイダーマンのオリジンといえば『放射線を浴びたクモに噛まれた事でスーパーパワーに目覚めた』という設定ですが、本作では「スーパーパワーを得たのは本当に放射線を浴びたクモに噛まれた事が原因だったのか?」という『スパイダーマンの力のルーツの謎』に迫るミステリアス要素が前面に出ているのが面白い点。
ピーターの持つスーパーパワーのルーツには、動物と人間を繋ぐ『トーテム・パワー』なるモノの存在が関わっている……という神秘的な設定を新たに生み出しており、本作からの新キャラ、エゼキエルはそういう新設定をピーターに伝える役割を担っております。

そして、本作のヴィランはそんなトーテム・パワーを太古の昔から餌にして生き続けている捕食者……その名も『モールン』!!
ヨボヨボの老人のような姿だったモールンは脅して用意した人間の部下を利用して、餌となる人々ひっそりと捕らえてその力を少しずつ回復し、スパイダーマン……ピーター・パーカーがクモのトーテムである事を察知した彼は、ついにNYの街に現れ大殺戮を開始する。
かつてない反応を示すスパイダーセンス!いくら殴り続けても一向に通らないダメージ!そして全く疲労を覚えない肉体!
スパイダーマンのスーツを脱ぎ、ただのピーター・パーカーに戻ってもモールンはパワーそのものを察知して追跡してくるため、いくら逃げても猛スピードで追いつかれてしまうし、そもそも逃げていると今度は罪なき人々がモールンの餌にされてしまう。
かつてない強敵でなおかつ無作為に人の命を奪う残忍さを持ったこの最凶のヴィランに、スパイダーマンはどう立ち向かっていくのか……!?

最強の敵モールン

◆感想
……という感じで、本作『スパイダーマン:カミングホーム』は14年後に発表されるスパイダーマンの一大クロスオーバーイベント『スパイダーバース』へと繋がっていく要素が多く初登場する、見どころの多いかなりの重要エピソード!これがめちゃくちゃ面白かった!!
予備知識を全く仕入れず本作を読んだので、まさかこんなにスパイダーバースに繋がる設定やキャラがバンバン出てくる作品だったとは知らず読み進める毎にテンションが上りました。
特にモールン、スパイダーマンのキャラの中でも屈指のカリスマ性を持つ強キャラヴィランだと改めて思った。

あとピーターが母校のミッドタウン高校の臨時教員になるという展開も本作からであり、校内で起こるいじめ問題にかつての自分を見出し、ピーターなりに悩める生徒を救おうとする姿が描かれていて、これもまたカッコいい場面。
過去の邦訳だと『フレンドリー・ネイバーフッド・スパイダーマン:シビル・ウォー』でも教鞭をとるピーターの姿が楽しめます。

店頭の販促チラシに掲載されていた邦訳予告だとか

『マーベル グラフィックノベル・コレクション』はツイッターで貰った情報によると、11号以降からは『ファンタスティック・フォー:アンシンカブル』、『アベンジャーズ・フォーエバー Part1&Part2』、『アメイジング・スパイダーマン:クレイヴンズ・ラスト・ハント』、『ニューX-MEN:E・イズ・フォー・エクステンクション』、『シークレット・ウォー』と未邦訳だったタイトルが結構多めで、それと本書の巻末の予告によると本作カミングホームの続きである『アメイジング・スパイダーマン:レベレーションズ』というのも出るので、既存の邦訳本と被りがある以上さすがに定期購読はしないけど、初邦訳タイトルが出たらそれは買っていこうかな!って感じです。

覚悟を決めてメイおばさんに電話するピーター

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4 Comments

蝙蝠と蜘蛛のファン  

クレイヴン・ラストハントはグウェンステーシーの死より評価が高いのと英語版のリストにはデアデビルのガーディアンデビルというミステリオのかなり重要なエピソードがリストにあったので楽しみです。
しかし、シニスターシックス関連が英語版の時点で存在しないのが残念です。
英語版の出版記録を見ると2012年(実写版アメイジングシリーズがスタートしたばかり)からスタートで一巻のカミングホームはそのままなのでホームカミングを予言したかのようです。

2022/01/29 (Sat) 18:40 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>蝙蝠と蜘蛛のファンさん
>デアデビルのガーディアンデビル
デアデビルもあまり邦訳に恵まれてない作品なんで、英語版リストにあるタイトルが一通り来てくれる事に期待したいですね……!

2022/01/31 (Mon) 09:01 | EDIT | REPLY |   

オクキク  

ちょっと訳が硬いのや日本語版独自編集だったり、その割に刊行済みのものと被りが多かったり…と不安な要素もありますがまず電子化などで再販がかからないであろうヴィレッジ系のプレミア商品(直近で言えば「ソー:リボーン」?)などの刊行に期待したいところです。
価格もこの調子で1999円を維持していけばかなり求めやすい価格で邦訳デビューへのハードルが下がるのでは…などと期待してしまいます(笑)

2022/02/02 (Wed) 22:31 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>オクキクさん
>ヴィレッジ系のプレミア商品
過去の邦訳と被りがあるとはいえ、現在入手困難なタイトルが多いのも事実なのでありがたく感じる方も多いでしょうね!
公式サイトを見た感じだととりあえず100号までは刊行し続けるみたいなので、どんなタイトルが邦訳されるのか、底本となった原書の刊行リストを眺めながらワクワクしております。

2022/02/03 (Thu) 20:54 | EDIT | REPLY |   

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