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03 2022

ダニエル・キブルスミス&ジャン・バザルデュア他/ロキ:地球に落ちて来た神

ロキ地球に落ちて来た神表紙

「王の仕事は簡単だろ?」
「んなわけあるか!
 それに、一番信頼してる顧問がなんでお前にすぐ秘密を漏らすんだ」

「俺はソーだからさ」
「またそれか。なんでもそれで答えてるだろ」
「ロキ、自分の責務を投げ出してはいかんぞ。
 ヨトゥンヘイムの王である以上、民はお前を必要としている」


マーベル・ユニバースのトリックスター、ロキは
驚異の英雄マーベル・ヒーロー
なのか、それとも……?

霜の巨人として生まれ、アスガルド人として育てられたロキ。彼は戦争で英雄となった功績によって、生まれ故郷ヨトゥンヘイムの王座についていたが、とある目的のために王座をほったらかして地球を訪れる。一方で別の次元では、隙だらけの王座を狙う邪悪な影が動き始めていた!ロキは王座を守る責任を全うし、自身の目的を果たすことができるのか!?


◆収録作品

2019年09月:War of the Realms Omega
2019年09月:Loki Vol.3 #1
2019年10月:Loki Vol.3 #2
2019年11月:Loki Vol.3 #3
2019年12月:Loki Vol.3 #4
2020年01月:Loki Vol.3 #5


◆悪戯の神、嘘の神、そして物語の神───ロキ。
あけましておめでとうございます!!!!!
新年一発目のアメコミレビューは、今まで個人誌のレビューを書いてなかったキャラクター……、マーベル・シネマティック・ユニバースの影響で、いまや押しも押されぬ人気キャラクターの一人となっている有名ヴィラン、ロキの作品を紹介したいと思います。

彼の個人誌の邦訳は『ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ』『ロキ:エージェント・オブ・アスガルド』と出てはいますが、今回取り上げるのはロキの第3シリーズの邦訳『ロキ:地球に落ちて来た神』!!
さっきロキの事を有名ヴィランと書きましたが、実は本作の時点でのロキは2019年のクロスオーバーイベント『ウォー・オブ・ザ・レルムス』(未邦訳)という戦いでニューヨークに霜の巨人を侵攻させていた自分の父ラウフェイ王を倒した事でミッドガルド(地球)の救世主になり、加えてアスガルドの王である義兄ソーと並び、巨人の国ヨトゥンヘイムの王という立場に就いているため、すっかり英雄的な立ち位置に変化しております。
しかしただただ王として国の統治をするだけの人生はロキにとっては退屈なようで、ロキは兄であるソーと同じように『王とヒーローの二足のわらじ』を履きたいのだとか。
そこでロキは自分をアベンジャーズに入れてもらうため、アイアンマンことトニー・スタークに直談判する!!……というユーモラスなツカミでストーリーが進行していきます。

爆笑するソー
爆笑するソー

本作の面白い部分は、ロキの悪戯の神だったり嘘の神だったりする異名ではなく、『物語の神』という設定に着目したメタフィクション的な作風。
ロキが『ハウス・オブ・アイデア』というあらゆるマーベルヒーローの集合無意識が書物の形で保管されている異空間に召喚される展開があるんですが、そこではロキよりも年齢が下のはずのヒーローの人生に多すぎる物語が詰め込まれている描写だったり、ハウス・オブ・アイデアに住む、少年少女の姿をしたチルドレン・オブ・エターニティナウ(現在)ゼン(過去)と取引する事で時系列的に登場するのが無茶な別々の物語に参加できる能力を得られたりと、『人気キャラクターは刊行されるコミックが多い』『人気キャラクターは他誌の出演も多い(作家陣は時系列の整合性は深く気にしていない)』という現実の事情を反映した描写なのがなかなかシュール。

実際ロキは個人誌の刊行点数は2022年1月時点ではさほど多くなく、昔とは異なり名誉も権力も手にしたロキは『退屈』と現状『何でもない神』である事が悩みのタネであるため、現在と過去に自らの語られていない物語を増やす事ができるというナウとゼンの取引に飛びついてしまうのだった!

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◆感想
前述したロキの『物語の神』という設定を全面に推しだしたメタフィクションな演出や、「私もアベンジャーズの元祖メンバーみたいなもんだろう?」的なノリでアベンジャーズに参加しようとする姿、今回のメインヴィランであるナイトメアを倒すための『嘘』『悪戯』全開っぷりなロキのやり口など、作家兼コメディアンでありバラエティ番組の脚本も手掛けている本作のライター、ダニエル・キブルスミスの作風の魅力が十二分に溢れ出ている一作だと思います。
過去・未来・現在と、様々な時間軸の『物語』が入り乱れていく構成が実に楽しい。
あと、弟ロキのこととなるとどうにも評価が甘くなる兄上の姿もちょくちょく描かれるので、ソーロキがアツい方にもオススメの一冊でもありますね。作中で「あの筋肉バイキングの弱みと言えばお前くらいだからな」と呆れるトニーの心中は察するに余りある……。

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ただ、このロキ第3シリーズである『ロキ:地球に落ちて来た神』は実は打ち切りタイトル。本書収録の#5が最終話であり、意味深な未来の戦い……アンファーザー襲来の描写を筆頭に、#4ラストと最終話の#5では打ち切られなければ描きたかったのであろう様々な展開を示唆して終了しちゃいます。

ミッドガルド向けにメガネとTシャツで変装している(けどもいつものツノは外さない)味わい深いロキのファッションやら、義兄ソーの王とヒーローを両立する姿に憧れてはいるものの、真っ当に王の仕事をしたりヒーロー活動する気はさらさらない相変わらずっぷりや、ちょくちょく入る過去のコミックのパロディシーンなど、ロキファンの「こういうロキが見たかったんだよ!」なキャラクター性が詰まりまくっている内容なだけに、ヨトゥンヘイム王座周りの話や自身の側近であるターフの掘り下げ、未来世界のヴィラン、アンファーザーが所持しているウルトロンっぽいムジョルニア『ミョルトロン』の詳細など、肝心要のメインストーリー部分が全体的に宙ぶらりんなまま終わるのがなんとも歯がゆい……!!続いていればもっと色んなギミックを仕込んでいそうな物語に発展していきそうだっただけに、#5での終了はあまりに早すぎる。
だからまあ、本書を読むのであれば『ロキの小生意気系ヒーロー(?)っぷり』を眺めて楽しむための作品と割り切るくらいの気概で臨む感じの方が良いかも……?
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