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2021
ダン・スロット&ハンベルト・ラモス他/スパイダーマン:スパイダーアイランド
- CATEGORYアメコミ(MARVEL)
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「行きなさい。ウェブの許す限り。
もう守護者はスパイダーアイランドの第一の教訓を得たから。
ここでは…大いなる責任を伴っていても…
…大いなる力がいくらあろうと、その意味は…全くない」
“大いなる力には大いなる責任が伴う”
このことを理解していない人々が
スパイダーマンの能力を手に入れてしまったら……?
科学者として働きながら、スパイダーマンの活動を続けるピーター・パーカー。
仕事も私生活も充実し、全てが順調であるかのように思えたある日、人々をスパイダーマン化させる謎のウイルスがニューヨークに蔓延し始めた。
この前代未聞の事態を収束させるため、スパイダーマンとアベンジャーズが動き出すが……その背景には恐ろしい陰謀が渦巻いていた!
◆収録作品
2011年07月:Spider-Island Spotlight
2011年09月:Amazing Spider-Man #666
2011年10月:Spider-Island: Deadly Foes
2011年10月:Amazing Spider-Man #667
2011年10月:Amazing Spider-Man #668
2011年11月:Amazing Spider-Man #669
2011年11月:Amazing Spider-Man #670
2011年12月:Amazing Spider-Man #671
2011年12月:Amazing Spider-Man #672
2012年01月:Amazing Spider-Man #673
◆関連作品過去記事
【スパイダーマン:ニューウェイズ・トゥ・ダイ】
◆Welcome to Spider-Island
『スパイダーバース』といえば!!マーベルユニバースに数多く存在する並行世界……別アースのスパイダーマンが大勢集まり巨悪と戦う、今や映画スパイダーマンの原案にもなるほどのスパイダーマンの代表的なお祭り作品ですね。
しかし実は、スパイダーバースに先駆けて『スパイダーマンだらけ』な構図が楽しめるスパイダーマンのタイトルがあったりします。
それが今回レビューする、2011年発表のスパイダーマン関連誌の大型イベント『スパイダーマン:スパイダーアイランド』!!
スパイダーバースとは異なる方向性で、右を見ても左を見てもスパイダーマンなストーリーが堪能できる一作ですよ!!!
ライターは安心のダン・スロット。スパイダーマンで何か読みたければ、とりあえずこの方の作品を選んでおけば間違いないくらいには面白い……ってくらい評価の高いライターです。
ってわけでそろそろ内容紹介。
本作のメインヴィランはジャッカルことマイルス・ウォーレン。
ピーター・パーカーのかつての恋人であり、現在は故人であるグウェン・ステイシーに強く執着し、彼女の死に関わっているピーターを逆恨みしているという、二人がかつて通っていた学校のなかなかヤバい性格の元生化学教師。
そんなジャッカルが、ニューヨークに遺伝子改造したトコジラミを大量に解き放ち、人々に『スパイダーマンのようなスーパーパワーを与える』という怪事件をひっそりと引き起こした!
またたく間にこのウイルス感染は広がっていき、今やニューヨーク市民の殆どがスパイダーマンと化してしまったのである!!
突然スーパーパワーを手に入れるやいなや、さっそくその力を堪能する人々。
こうしてニューヨークのマンハッタンは世間から『スパイダーアイランド』と呼ばれる事になってしまった。
この珍事に伴い、クモの力を悪用し、スパイダーマンのコスプレをして大暴れする悪人たちも当然出現。
『既にスーパーパワーを持っているヒーロー達にはウイルスに感染しない』事が分かり、アベンジャーズがこの事態の鎮圧に向かう。
一方でスパイダーマンはコスプレをして暴れている悪人たちと見分けが付かないというのもあり、アベンジャーズの面々から「邪魔だからすっこんでろ!」と言わんばかりに仲間外れにされてしまう(かわいそう)。
ただ、スパイダーマンはスパイダーマンでこの混乱に乗じ、「自分もこのウイルスに感染してスーパーパワーを得た」というテイでピーターの姿で気兼ねなく能力を使える現在の状況を楽しんでいたりするあたりはちゃっかりしてる。

現恋人、カリー・クーパーとのウェブスイングを楽しむピーター
ちなみに何故かメリー・ジェーンはこのウイルスになかなか感染しない
しかし、ジャッカルの目的は当然ながらニューヨーク市民をスパイダーマンにするなんて事ではない。
このウイルスは進行が進むにつれ、最終的には自我を失ったクモの怪物へと変貌してしまうのである!!
加えてジャッカルの背後には『黒幕』が存在しており、ニューヨークをスパイダーアイランドに作り変えたのも、この黒幕の大いなる目的のためなのであった……というのが本作のストーリー。
ただでさえスパイダーマンアンチをこじらせているJ・ジョナ・ジェイムソンは、今回の大事件に気が狂わんばかりにキレまくっているからもう大変。
そこにアンチ・ヴェノムが持つ特殊能力が今回の事件解決の鍵になったり、現在エージェント・ヴェノムとして活躍しているフラッシュ・トンプソンも大きく物語に絡んだりと、アベンジャーズだけでなくスパイダーマン関連のキャラクター達も色々登場してストーリーを盛り上げてくれます。
「ニューヨーク市民がスパイダーマンになってしまう」という、一見すると斜め上過ぎる設定が実際に読んでみるとここまでエンタメ性の高い物語に仕上がるとは驚きだったり。

他のアベンジャーズメンバーとは違い常人なのでウイルス感染によってスーパーパワーを得られたホークアイ
しかし調子に乗り出した途端怪物化してしまう(即落ち2コマ)
◆感想
面白かった!!!!!
そして改めて『クローン・サーガ』の邦訳が出ていないのは勿体ないなぁ……と少しだけ思う内容だった(関連性については本編や本書の解説書で)。
それとこの時期のスパイダーマンは『スパイダーセンスを失っている』ので、普段とは異なり戦闘シーンの緊迫感が強めなのもポイントです。
エピローグにはマーベルには珍しくサービスシーン盛り盛りな場面があって目を引き、そこから心温まる展開を挟みつつ……からのパーカーラックという切なさもぶつけて来るのがほんとスパイダーマンのいつものヤツって感じでした(良かった)。
本作『スパイダーアイランド』はスパイダーマン関連のクロスオーバーイベントなんですが、タイインは未邦訳で本編のみの収録なのでスパイダーキング戦の下りなどの部分がちょくちょく唐突だったりするのはご愛嬌。
解説書収録のタイイン解説も、『Spider-Island: Deadly Foes』のOut of the Picture編、アメイジング・スパイダーマン誌のバックアップ連載『Infested』、『ヴェノム』第2シリーズ#6-9のあらすじ紹介のみに留まっています。
実際はもっと他ヒーローを主役としたタイインが色々とある模様。
【Spider-Island (Event) | Marvel Database | Fandom】
でもって本作、最後の最後にはダイイング・ウィッシュ編からのスーペリア・スパイダーマン編への布石を打って本作の物語は幕を閉じます。
『スパイダーマン:ブランニュー・デイ』から始まったダンスロスパイダーマンのストーリー群、合間合間のエピソードが飛び飛びとはいえ、大まかな流れが掴めるくらいには色々邦訳されている現状はありがたいですね……。

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