ツルゴアXXX

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23 2011

デニス・オニール&ニール・アダムス/グリーンランタン/グリーンアロー

グリーンランタングリーンアロー表紙

「ヒーローを気取るのもいいがな、その前に人間だろうが、お前は!
 いつまでガーディアンどもの操り人形でいるつもりだ!
 宇宙の出来事なんざ忘れちまえ、アメリカを思い出せ!
 この国は今、病に苦しんでるんだぞ!
 子供が命を奪われ、正直者が迫害に怯え、
 不満を溜めた若造どもが大学を引き裂いてる…
 メンフィスじゃ立派な黒人が死に、ロサンジェルスでは立派な白人が倒れた…
 何かが狂ってる!そうとも、この国のモラルは地に堕ちた!
 このままじゃ、この国はおしまいだ!」


“悪はいつも身近にあったのだ。見慣れた顔の奥に……”

宇宙の平和を守ることを使命とし、パワーリングと呼ばれる指輪がもたらす絶大なパワーで悪を挫く“グリーンランタン”と、得意の弓術で正義を貫くヒーロー“グリーンアロー”。
とある事件をきっかけにアメリカ大陸横断の旅に出ることになった二人は、病んだアメリカに潜む真の「悪」の姿を目の当たりにする……。はたして、人種差別、麻薬、環境汚染など当時のアメリカを悩ませたリアルな社会問題に、二人のヒーローはどう立ち向かうのか?

デニス・オニール×ニール・アダムスの名クリエイターコンビがおくる衝撃の問題作、初邦訳でついに登場!


◆収録作品

1970年04月:Green Lantern Vol.2 #76
1970年06月:Green Lantern Vol.2 #77
1970年07月:Green Lantern Vol.2 #78
1970年09月:Green Lantern Vol.2 #79
1970年10月:Green Lantern Vol.2 #80
1970年12月:Green Lantern Vol.2 #81
1971年02月:Green Lantern Vol.2 #82
1971年04月:Green Lantern Vol.2 #83
1971年06月:Green Lantern Vol.2 #84
1971年08月:Green Lantern Vol.2 #85
1971年10月:Green Lantern Vol.2 #86
1971年12月:Green Lantern Vol.2 #87
1972年04月:Green Lantern Vol.2 #89
1972年08月:The Flash #217
1972年10月:The Flash #218
1972年12月:The Flash #219
1974年02月:The Flash #226


◆GREEN POWER!!
今でこそ人気の高いDCコミックのヒーローであるグリーンランタン(ハル)とグリーンアロー(オリバー)
しかし両者とも1960年代の頃は人気が低迷していたという『落ち目』なヒーローだったのです。
グリーンランタンの不人気っぷりに至ってはシリーズ存亡に係るほどの大ピンチ状態。

この『グリーンランタン/グリーンアロー』は、「ダメならやめればいいや」というとんでもない極限状態から生まれた名作なのです。
人気が低かったからこそ自由なストーリーが許されたのでしょうか。

本作で取り扱う内容はなんとリアルな社会問題

黒人差別_convert_20111023210925

『人種差別や麻薬、環境汚染と、ヒーローがいてもどうにもならなかった問題にハルとオリバーはどう立ち向かっていくのか!?』という、基本ヴィランと戦うのがメインのアメコミの中ではかなり異色のストーリーです。
現在では珍しいわけではないのですが、様々な社会問題をコミックスに反映させる事を最初に試みたことで本作は高い評価を集めたのだとか。

この作品が発表されたのは1970年。まだまだコミックの対象が子供向けだった時代の作品ですが、話が小難しくなり過ぎない程度に深く社会問題に切り込みつつ、ヒーロー物らしく明確な悪人は登場させるという、子供に向けて問題提起した作品でありつつも充分に年齢層の高い読者の鑑賞にも堪える内容となっています。
基本的に一話完結なのでテンポ良く読めるのもGood.

この翻訳版はオニール&アダムスコンビのグリーンランタン全話を全て1冊に収録したものすごく豪華な本。
向こうで2000年に発売されたリプリント版は『フラッシュ』#226のみ未掲載。この#2262004年に発売された全2巻のTPB版でようやく収録されたため、完全に1冊に纏めきったのはこの邦訳版のみというちょっと優越感を感じる本です。

◆様々な登場キャラクター
良いトリオ_convert_20111023211706

ストーリー序盤の頃はハル、オリバー、人間に変装したガーディアンという異色の組み合わせが楽しめるのも本作の魅力の一つ。

頭の固いイヤな上司という印象が強いグリーンランタンのトップ、ガーディアンズ。

彼らが与えた『何でもない惑星にぶつかりそうな流星群を喰い止める』と言う嫌がらせのような仕事を無視してハルは地球のトラブルの解決に向かっちゃいます。
その事をガーディアンズに強く咎められるのですが、傍で聞いていたオリバーの「お前らに人間の何が分かる!?自分の目と耳で体験しろ!」という発言を聞き入れ、一人のガーディアンが人間の姿に変装してハルにアメリカの様々な土地を探索する任務を与え、同行する事を決めたのでした。

そうして2人と旅を続けていくうちに人間というものを学んで変わっていくガーディアンの姿は、ある種鉄板な流れですが見ていて面白いです。

お馴染みのキャラクターもきちんと登場します。
序盤での登場時はカルトに洗脳されてしまうブラックキャナリー。
まだ元恋人、ハルがグリーンランタンだという事を知らない頃のキャロル・フェリス。
リバースでの印象と違い一人称が僕で性格も大人しめなガイ・ガードナーが負傷した代わりに、新たなグリーンランタン候補に選ばれる黒人のジョン・スチュワート。
グリーンアローのサイドキック(相棒)であるスピーディーは衝撃的な扱いで登場します。

おなじみヴィランもちらほら登場。
ブラックハンドはやたら金をかけた回りくどい悪事を働きます。
そして宿敵・シネストロはまさかのと一緒に登場。

シネストロの妹がこんなに可愛いわけが無い_convert_20111023214844
彼女の名は『ウィッチクイーン』
シネストロの事を『兄者』と呼び慕っているようです。
兄貴に似て肌は真っ赤でデコが広く、顔が長い。
ただ、このキャラクターは妹と思わしい描かれ方をしつつも登場はこの1作のみという超マイナーキャラなのだとか。

なめまかしい生足とセクシーな衣装妹キャラで魔女っ娘という魅力を兼ね備えた彼女は世が世なら萌えキャラとして広く認知されていた事でしょう。

◆PICK UP キャラクター グリーンアロー
グリーンアロー_convert_20111023220810「これが…現代社会ってヤツ…か…」

超人というわけではなく、単に弓矢の名手という、スーパーヒーローというよりビジランテ的な存在のグリーンアロー。
しかしその弓の腕は常人のレベルを遥かに超えており狙ったものを確実に打ち抜くそのカッコよさは特筆モノ。

本名、オリバー・クイーン
彼女は柔道の達人ブラックキャナリー(ダイナ)

ロビンフッドのような外見のこの男、非常に皮肉屋な性格で、ヒーローというにはやや浮いた感じのキャラクターです。

初期のストーリーでは富豪でプレイボーイで個性的な髭も無かったらしいのですが、財産を失うというテコ入れが入ってから現在のようなキャラクター像になったのだとか。
どうも旧設定ではバットマンと被ってたから変更したんじゃないか>という大人の事情を邪推してしまう…

とにかく、破産してからも慈善活動家としての顔を忘れていないグリーンアロー。
シニカルなキャラクターですがそういう面もしっかり残っているのです。

貧しくなった事で逆に視野が広くなり、独自の正義感を持つようになったオリバー。
本作ではパフォーマンス染みた活動家に共感しちゃったり性格が大きく異なるハルと意見が対立して喧嘩したりブラックキャナリー絡みの事になるとすぐに熱くなるために、レストランでの食事中、彼女に絡んだ酔っ払いにチリソースをぶっ掛けたりと、かなり個性的なヒーロー像を見せてくれます。

本作の描写でブレイクを果たす事になったというのも納得。

◆感想
麻薬_convert_20111023221427

様々な社会問題を盛り込む姿勢を見せ、強い人気を博したとされている本作ですが、当時は売り上げが振るわず『グリーンランタン』誌は休刊してしまったのだとか。
『評価と売り上げは必ずしもイコールにならない』という図式は当時から存在していたんですね~。
フラッシュ_convert_20111023225012
それでも殆ど関係の無い『フラッシュ』誌に舞台を移してしっかりと完結したというのはナイスですね。
休刊になっても打ち切りENDにはならなかったというのは作り手に愛されている感じが伝わってきます。
40年以上前の作品なのに古臭さというのは殆ど感じない作品です。
名作ってのはホントに色褪せないものなんですねー。
個人的にアートもストーリーも今日まで翻訳されたグリーンランタンの作品では一番好みでした。
特に序盤のグリーンランタン、グリーンアローの若者コンビとガーディアンのジイさん3人が各地を旅していくロードムービー風の展開はホント大好き。
スーパーヒーロー物を普段読まない人にもおススメしたい。

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