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04 2011

フランク・ミラー&クラウス・ジャンセン他/バットマン:ダークナイト

バットマン・ダークナイト表紙
「明日が思いやられる…
 全身の筋肉が悲鳴を上げ、痛みで、身動きすらままならない事だろう
 自分の年を考えろ。もう若くはない…
 …いや、今の私は30代だ。いいや、20代だ。
 胸に撥ねる雨粒は洗礼の雫…。
 私は再び生を受けたのだ…」

◆収録作品

1986年03月:Batman: The Dark Knight #1
1986年04月:Batman: The Dark Knight #2
1986年05月:Batman: The Dark Knight #3
1986年06月:Batman: The Dark Knight #4
2001年12月:The Dark Knight Strikes Again #1
2002年01月:The Dark Knight Strikes Again #2
2002年07月:The Dark Knight Strikes Again #3


◆ダークナイト・リターンズ

ゴッサムシティから暗黒の騎士バットマンが消えて10年、引退した55歳の大富豪ブルース・ウェインは、ありあまる情熱を抱えながらも、一市民として平穏な生活を送っていた。
だが、エスカレートする犯罪行為によって荒廃していく街の姿に、ブルースはついに復活を決意する。かつての仇敵も犯罪活動を再開し、再び戦いの中に身を投じたバットマンだったが、その活躍は以前のようには世間から受けいれてもらえなかった。
政府の管理下にないスーパーヒーローの存在を認めない米国政府は、ついに対バットマンの切札として一人の戦士を送り込む。
それは、米国政府の指揮下に下り、「政府のイヌ」と化したかつてのヒーロー、スーパーマンだった……。


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目つきが危ないブルースさん

バットマンとしての活動を終えてから10年も経過し、今や55歳になったブルース・ウェインが現在のゴッサムシティを支配している”ミュータンツ”に襲撃された事でかつての闘志を燃やし、バットマンとして活動を再開するというお話。
あくまでIFな世界観ですが、それでも本作が後のアメコミに与えた影響は大きめ。

かの『ウォッチメン』と並び、アメコミに『リアルなドラマ』を盛り込み、新たな方向性を示した傑作と呼ばれています。
当時(1986年)冷戦の終結過程にあったアメリカの世相が作品にも反映されており、全編通して終末思想が漂う感じの内容。
政府を皮肉ったような描写もあり、上記のあらすじにもあるように最終的には合衆国と対峙するような展開が盛り込まれています。

また、作中では頻繁にゴッサムのTV番組の映像を挿入する特徴的な演出がアリ。

本作のバットマン、肉体は見た感じ変わらずムキムキなんですが、さすがに年齢的な問題もあって戦うたびに体にダメージが残るという状態に。
そんな状態でも戦いになるとがぜん興奮しだす描写がなされており、どこか危ない感じの人物として描かれているのが印象的です。

執事のアルフレッドも95歳という高齢でありながら未だに一緒にいるのですが、ブルースがこの年になっても一人身な上に、さらにバットマンとしての活動を再開してしまうものですから、
言い放つ皮肉もさすがにキツめなものになってます。
結局結婚もせず子を持たなかったこと年齢による衰えを皮肉られるのはリアルで言われると胃がキリキリしそう。

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本作のロビンは『キャリー・ケリー』という13歳の女の子。『ダークナイト・リターンズ』だけに登場する3代目にして初の女性ロビンです(あくまで本作のみのキャラですが)
バットマンに命を救われた事をきっかけにバットマンの相棒として志願します。

体操が得意でコンピュータに詳しいという設定があるのですが、後者の設定は続編のほうで生かされることに。

ちなみに本作では初代ロビンであるディックとはもう10年も連絡が取れず、さらに2代目ロビンであるジェイソンは既に死亡している(ように仄めかされている)という状態。

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本作にはおなじみのヴィランもちょっとだけ登場するのですが、特に注目したいのはジョーカー
バットマンが引退してからはすっかり生気を失い殆ど笑う事も無くアーカムで廃人のような生活を送っていたのですが、バットマンが復活したと知るやいなや復活。
ゴッサムで市民を虐殺し、さらにテロを行うという大事件を引き起こします。

その行為に対してついに殺意をあらわにするバットマン。
IFとはいえジョーカーとの最終決戦の描写は鳥肌モノ。
ジョーカーの最期はかなり印象に残るものになっています。必見。

さらにこの後はバットマンVSスーパーマンという大型対決が待っているハードな展開。
普通ならかなり卑怯な手段を用いているのですが、それでもただの人間であるバットマンがスーパーマンと戦う姿はこれまた必見。

それにしても多くのヒーローが引退した中、唯一政府の管理下に置かれ、いい様に使われているスーパーマンは見ていて結構ツラい。

◆ダークナイト・ストライクス・アゲイン
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「よせ、ラーラ。彼は唯一の希望だ。
 このクソ野郎が我々の唯一の希望なんだ」


舞台はバーチャル大統領が笑顔を振りまき、思考が麻痺した合衆国を侵食していく近未来。
国家によって封じ込められたスーパーヒーロー達……アトムが、フラッシュが、グリーンアローが、そして多くのヒーロー達が解き放たれ終結していく。
その背後にいるのは、もちろんあの男。前作よりさらに老い、しかしさらに過激になって帰ってきた!
彼らはアメリカを再び変えられるのか?
そして彼と対極に位置するスーパーマンが選びとる運命とは……?


前作から15年も経過した2001年に発表されたまさかの続編。
前作だけでも充分に完成されていたために多くのファンが驚き、戸惑ったとか。

ストーリーもバットマンが一応の主役ではあるものの、実際は多くのスーパーヒーロー(スーパーマン、グリーンランタン、アトム、フラッシュ、ワンダーウーマン、クエスチョン等々…)が入り乱れる内容に変わっているためちょっぴり雰囲気が異なる作品。
ですが、現代社会を皮肉るという面は前作同様です。
本作でのバットマンは犯罪と戦うのではなく、圧制に対してテロを起こすという行動に。
バットマンが革命を起こす際人々に言い放った「タイツを穿け、子供達よ…」は迷言。

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本作にもストーリー中にTV番組や世間一般のリアクションを挿入する演出が入ってます

本作は時々「バットマンというよりスーパーマンが主役に映る」面があります。
今作では自分の一族であるクリプトン人を人質に取られ、政府の傀儡と化してしまうという散々な設定で登場。
この世界を支配しているのはスーパーマンの宿敵・レックス・ルーサーブレイニアックであり、ストーリーはルーサーの軍勢と戦うものになっていくのもあって余計にバットマンのストーリーという印象が薄れていくような感じが…。

また、やたら印象に残るのが強いクセのあるアート
『サイケな雰囲気が漂う現代社会』という世界観に合わせてあえて単調にしているのかは分かりませんが、それにしても個性が強い絵に変わってます。
前作、『ダークナイト・リターンズ』と同じくフランク・ミラーのアートですが、個人的に「どうしてこんな絵に…」と思わなくも無いシーンがあったりしました(インカーの塗り方が個性的なせい?)

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これとか。
マントで体が隠れているのですが一瞬何事かと思いました。

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プラスティックマン(グラサンの方)エロンゲイテッドマン元からインパクトの強いヒーローですが、本作のアートと組み合わさって何かもうとんでもない絵面に。

ただ、よくよく見るとフランク・ミラーのアート自体は前作と大きく変わってはいない気がします。
やっぱり色塗りのセンスがドギツいせいで印象が変わってしまってるだけなのかな。

◆感想
実はこの本、まだバットマン以外の他ヒーローの興味が薄い頃に購入したのもあって、『ダークナイト・リターンズ』非常に楽しめたのですが、続編の『ストライクス・アゲイン』あまりハマらなかったというのがありました。

『ストライクス・アゲイン』にもバットマンファンなら驚かされる展開が盛り込まれているのですが、それ以上に他の多くのヒーローに裂かれているページも非常に多く、初見の頃はストーリーに絡まれてもいま一つピンと来ない事が多かったです。
続編はある程度DCコミックスのヒーローを知ってからの方が楽しめると思うタイトル。

それでも傑作ストーリーである『ダークナイト・リターンズ』(新訳されてます)と、
その続編タイトルである『ストライクス・アゲイン』の2作品が一度に読め、フランク・ミラーによるオリジナル・プロットやスケッチ、ネーム下描き、アートギャラリーなどの70ページにわたる資料ページが収録された読み応えのありすぎる本書。
アメコミの不朽の名作と言われているだけあって非常に中身の濃いストーリーでした。
おススメの一冊。
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