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06 2019

フランク・ミラー&ブライアン・アザレロ他/バットマン/ダークナイト:マスター・レイス

バットマンダークナイトマスター・レイス表紙

「我が子らよ、ともに見つめようではないか…日没ほど美しいものがこの世にあろうか?
 一日の終わりを眺め、その日になしたわざを、称賛するかのように太陽が沈んでいく。
 地球の人々よ、汝らに3日間の猶予を与えた…その答えを聞こう」

『FZZZ』
『FZZZ』
『FZZZ』

『くたばれ』
『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』
『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』『くたばれ』

巨匠フランク・ミラーが描く
「ダークナイト」神話

1986年『ダークナイト・リターンズ』は、アメリカンコミックスに後戻りができないほどの衝撃を与えた。
2001年『ダークナイト・ストライクス・アゲイン』は、ヒーローコミックスの既成概念を覆すことに挑んだ。
そして、生ける伝説フランク・ミラーとブライアン・アザレロの本作
『バットマン/ダークナイト:マスター・レイス』で、
暗黒の騎士はみたび現代に挑戦する!
現代アメコミの礎となる傑作が、ついに邦訳化!


◆関連作品過去記事
【バットマン:ダークナイト】

◆収録作品

2016年01月:Dark Knight III: The Master Race #1
2016年02月:Dark Knight III: The Master Race #2
2016年04月:Dark Knight III: The Master Race #3
2016年06月:Dark Knight III: The Master Race #4
2016年08月:Dark Knight III: The Master Race #5
2016年12月:Dark Knight III: The Master Race #6
2017年02月:Dark Knight III: The Master Race #7
2017年05月:Dark Knight III: The Master Race #8
2017年07月:Dark Knight III: The Master Race #9


◆MASTER RACE(支配種族)
1986年に発表された、フランク・ミラーによるハードな近未来を舞台にしたエルスワールド物のバットマン……『ダークナイト・リターンズ』
ブルース・ウェインがヒーローを引退して10年が経過したゴッサムは犯罪行為がエスカレートしており、街は荒廃の一途を辿るままになっていた。
その現状を憂い、ブルースは55歳という年齢でありながらバットマンとして復帰を決意する……という物語が描かれるのですが、その中で犯罪者狩りに興奮を覚える危険な一面を抱えるバットマンが描かれたり、トゥーフェイス、ジョーカーといったゴッサムヴィランとの壮絶な戦い、政府の管理下に置かれたスーパーマンとの激突……などといったハードな展開が盛り込まれていました。

ミラーによるとこのDKRは当時のアメリカの政権の怒り、社会間格差への不満を制作の原動力にしており、その演出やストーリー展開はコミックブックの歴史に残るほどに強いインパクトを与える出来で、今もなお不朽の名作として名前が上がる一作となっています。

それから15年後の2001年に、まさかの続編『ダークナイト・ストライクス・アゲイン』が発表。
圧政を強いる世界の支配者、レックス・ルーサーとブレイニアックに対して、バットマンを筆頭にスーパーヒーロー達が立ち上がり革命を起こすという、前作とはまた趣の異なるスーパーヒーローの物語が展開していったのです。
そしてバットマンが袂を分かったかつての相棒、ロビンことディック・グレイソンとの衝撃的な再会もこの作品で描かれました。

そして2015年4月……DCコミックスはフランク・ミラーによるダークナイトシリーズの第3作『DK3』……『バットマン/ダークナイト:マスター・レイス』を大々的に発表!!
原作・脚本はフランク・ミラーとブライアン・アザレロの二人で務め、メインアーティストはアンディ・キューバートというベテランの布陣!!
2015年11月に連載が開始され、“ダークナイト・ユニバース”と称される新たなダークナイトの物語が紡がれることとなったのでした!!

ブルースウェインは死んだ

当然ながら本作は第1作の『ダークナイト・リターンズ』、第2作の『ストライクス・アゲイン』読んでいる事が前提の作りなので、いきなり本作から読み始めないように注意ね!!
ちなみにダークナイト・リターンズの前日譚であり未完である『オールスター:バットマン&ロビン ザ・ボーイ・ワンダー』の要素は全くと言っていいほど盛り込まれていないので、この作品はチェックしなくても大丈夫です。こっちはいつになったら完結するんだ……。
それじゃあそろそろ本作のあらすじを紹介。

***

『ストライクス・アゲイン』から3年後が舞台となる本作では、バットマンのサイドキックとして活躍し、現在の『バットマン』として自警活動を行っていたキャリー・ケリーの口から『ブルース・ウェインは死んだ』と語られるところから物語がスタートする。

視点は変わり、スーパーマンとワンダーウーマンの間に生まれた娘……ラーラは、前作の戦いでスーパーマンが見事ルーサーから取り返した、クリプトン星の都市と住民を縮小して保存した容器『キャンダー』を科学者のヒーローであるアトムことレイ・パーマーの元へ持ち込み、中に住んでいる縮小されたクリプトン人(キャンダー人)の解放を依頼する。
以前スーパーマンと解放を試みて失敗した経験のあるアトムはこの申し出を快諾。クリプトン人のバアルの助けを得て、自身の縮小技術をベースに、彼らを元の大きさに戻す装置の開発についに成功する。
さっそく装置を起動させ、クリプトン人たちの人生に希望を取り戻そうとしたが……それは終末の引き金であった。

カルト教団の長であるクリプトン人クアル

キャンダーの中のクリプトンの文化にはカルト教団も生まれており、その長であるクアル率いるクリプトン人の一団が他の数多くのクリプトン人を既に虐殺していた。
そしてキャンダーから解放されたクアルとその一団はキャンダーそのものを破壊し、クリプトン人のパワーをもって地球を支配するために行動を開始する。そこには、彼らの考え方に同調したラーラの姿もあった。
圧倒的武力を用い、一瞬にして都市を消し去る力を持つクアル達に萎縮する各国。
『バットマン』はこの事態を前にして、如何なる行動を選択するのだろうか……?

***

……こんな感じで、今回はヴィランの設定といい展開的には結構スーパーマンの物語的な雰囲気もあったり。
実際作中でもスーパーマンの活躍が多く、ダークナイトシリーズではずっと希薄だったスープスとバッツのチープアップっぷりをこれでもかと言わんばかりに前面に押し出したストーリーも楽しめるようになってます。
もう「本作でのチープアップを大々的に盛り上げるために前2作でスーパーマンが散々な目に遭ってたんじゃないか?」と思うくらいには展開がアツイ。

それと本作『マスター・レイス』は本編1エピソードの後に毎回、『ダークナイト・ユニバース・プレゼンツ』という題の、各ヒーローを主役とした短編エピソードが挟まれています。
基本的にメインのエピソードアートは全てアンディ・キューバートが担当しておりますが、この短編エピソードは一部を除いてどれもアートをフランク・ミラーが担当。
本作のミラーのアートはなんかエピソードによって丁寧だったり雑だったりでやけに印象が変わるのですが、これはどっちかというとインカーとカラリストの仕事が大きいのかもしれない。

◆感想
ミラーのダークナイトシリーズの総決算とも言える内容で最高に面白かった!!!!!

個人的に前作『ストライクス・アゲイン』が正直「うーん……」なデキで、DKRに連なる作品の『オールスター:バットマン&ロビン』ミラーの持ち味であったハードボイルドな作風が消えてただただ露悪的な内容だったのもあり、00年代以降のミラーの作品のクオリティに疑問を感じるようになってまして。そこに来てストライクス・アゲインから10年以上間隔が空いてのダークナイトシリーズの新作は期待と不安が入り混じっていたんですが、本作は第1作の『DKR』のオマージュをちょくちょく盛り込みつつ、丁寧に過去作の後日譚と新たな戦いに至るまでの盛り上げ方、次々に続く怒涛の展開、そして印象に残るミラー特有の渋いセリフ回しのクオリティが復活しており、近年の露悪趣味が過ぎていた暴力表現も本作ではかなり抑えられていて、真っ当にダークナイトの、そしてスーパーヒーローたちの神話が描かれていく物語に仕上がっておりました。
大好きだったかつてのフランク・ミラーの作風がここに来て完全に復活してたよ!!!!!
アンディ・キューバートによるアートも結構フランク・ミラーに寄せた雰囲気になっていて、いつもとは印象が異なりこれがまたカッコイイ。他にもエドゥアルド・リッソなどがアートを担当していたりするのですが、どの方も基本ミラーっぽさを意識している感じです。

全編通してかなり綺麗に物語が纏まっておりこれが最終章とも取れる内容で、実際当初は本作がダークナイトシリーズの完結編としてアナウンスされていたのですが、ミラーはこれを本作の刊行前の時点ですぐに撤回し、第4部の構想がある事も仄めかしている模様です。本作を読み終えた後だと「マジか……!これ以上何をやるんだ……!?」って思ってしまうんだけど、実際発売されるとやっぱ読んじゃうかもしれない。
【FRANK MILLER To Return For THE DARK KNIGHT IV】

それと今回の解説書はフランク・ミラーのデビューから本作『DKⅢ』に至るまでの仕事歴と、時代毎のDCコミックスの背景を詳細に纏めているのですが、その文章量が5ページ以上にも渡るとんでもないテキスト量となっていて、もうこれを読んでおけばフランク・ミラーというライターを一通り把握できる事間違いなしといえる内容に仕上がっています(一方で用語解説は語るべき事が少ないのもあってかあっさり目)
ここまで詳細にフランク・ミラーを日本語で解説してるテキストって他に無いんじゃないか……?必見なデキだ!!

キャリーとインデル本部長

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2 Comments

hush  

いつも参考にさせてもらっています

初めて書き込みをさせていただきます。
いつも、こちらのサイトの記事を読んで、次に買うアメコミを決める参考にさせてもらっています。
ダークナイトリターンズでアメコミにハマったくちで、マスターレイスは気になっていたので、記事を読んで早く読みたくなりました。
今後も更新楽しみにしてます。

2019/07/12 (Fri) 23:09 | EDIT | REPLY |   

michael  

>>hushさん
ありがとうございます!僕もミラーのダークナイトリターンズはアメコミハマりたての頃に買った邦訳だったりするので、特に思い入れが強い作品だったり!

2019/07/13 (Sat) 07:33 | EDIT | REPLY |   

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